Afterward 

面映いっていうのは、こういうことをいうんだろうな。

俺がお嬢ちゃんの肩を抱いて階下におりようとしたら真下のホールには人が溢れかえっていた。

屋敷中の使用人が全員集まっていたんじゃないかと思うほどだ。

ある者は声高に、ある者は意気消沈気味に、それぞれ思い思いのことをかまびすしくおしゃべりしている。

ところが俺とお嬢ちゃんの姿を認めた途端そのおしゃべりはぴたりとやみ、替りにその場にいた者全員の視線が一斉に俺たちに注がれた。

こういう状況が何を意味しているか俺がわからないと思うか?さっきから俺のかっこいい尻はむずむずしっぱなしだぜ。

見たくはなくても見えてしまう俺とお嬢ちゃんの喧嘩の顛末が気になっているということがありありとわかる顔・顔・顔…

しかし、それは下世話な興味本意のものじゃなく、お嬢ちゃんを心配してのことだというのは、すぐに、そしてはっきりとわかった。

俺を通り越して、お嬢ちゃんに危惧と憐憫に満ち満ちた視線が集まっているからだ。

一方たまーに俺に向けられる視線はといえば、これが氷の刃を眼差しに乗せたような冷ややかなものか、これみよがしにいやみったらしい非難がましいものばかり。

もし視線に物理的圧力ってものがあれば、俺はそこから一歩も動けなかったんじゃないかと思ったくらいその圧迫感たるや凄まじかった。

俺は視線を浴びることに慣れてないわけじゃない、むしろその逆だ。結婚前は麗しいレディたちから憧れと熱っぽい想いをこめた視線をなげられない日はなかったし、男どもからは嫉妬と羨望とやっかみの視線をこれまた毎日シャワーのように浴びてたもんだ。

その俺がこんな非難轟々の冷たい視線に満身創痍になる日がこようとは想像だにしなかったぜ…自業自得だから仕方ないけどな。

だがお嬢ちゃんは偉かった。この場の雰囲気に飲まれることもなく、慌てず騒がず、俺ににっこりと微笑みかけ、そそと寄り添ってきてくれたんだ。

その途端、その場にいた面々に安堵の表情が、波紋が広がるようにうわーんと伝わっていったんだ。陳腐な言いぐさだが、魔法の刷毛で安心という気分をさっと一なで塗り伸ばしたかのようだった。

俺に対する冷たい怒りの視線も一気に霧散した。

集まっていた使用人たちは心からほっとしたような顔で、潮が引くようにささーっとそれぞれの持ち場に散っていく。

やれやれ、お嬢ちゃんの笑顔のおかげで俺はどうやら無罪放免にされたらしい。お嬢ちゃんの笑顔の効果は絶大だな。

しかし、家中の者に喧嘩の原因からその一部始終から仲直りの様子まで注視されているというのは、なんともはや居心地が悪いというか、尻がおちつかないというか、気恥ずかしいものだな。

言っておくが、俺はお嬢ちゃんのことを『かわいい!愛しい!もう辛抱たまらん!』という感情をおおっぴらにあらわすし、ついでにそれを行動に移すことも間々あるが、それを恥かしいと思ったことは一度もないぜ。

隠そうにも隠しようがないし、隠す必要もないからだ。なにせ俺たちは天下に愛を誓った夫婦なんだからな。愛情表現に何の遠慮がいるっていうんだ。見たくないやつは見なければいいだけだ。もっとも、わざとみせつけることもあるが、それはいまだにお嬢ちゃんを諦めてないらしい物わかりの悪い2、3人に対してだけだ。

だが、喧嘩っていうのは、そう大声で触れ回りたいものじゃない。

今回、全面的に自分が悪いと思い知っているから尚更だ。

確かについさっきまで『俺は絶対悪くない』って依怙地な気持ちになっていたさ。それは認める。

だが、全ての事情があきらかになった今、そのことも含めて俺は猛省しているんだ。悔い改めようと反省している者を更に鞭打つような真似はしないでくれよ?

ここに使用人が集まっていたことといい、シェフがご馳走を用意していたことといい、家の者が俺より先にお嬢ちゃんのおめでたを知っていたのはまちがいないだろう。

お嬢ちゃんが突然一人で早退して帰ってきたら、そりゃ執事だって心配して訳を聞くだろう。お嬢ちゃんは恐らく執事を心配させない為事情を打明け、でも、俺には直接自分の口から伝えたいからと言って緘口令を敷いたに違いない。

俺にさえ知らさなければいいのだから、おめでたいニュースはあっという間に屋敷中を席巻したのだろう。それでなくてもお嬢ちゃんは人気者だし、人気者の噂話は伝わるのも早いからな。

で、俺が帰宅した時、恐らく屋敷中の者は、俺がこのニュースを聞いてどんな反応を示すか期待にわくわくして、その一瞬を待っていたはずだ。

ところがあにはからんや、俺は話しを最後まで聞かずに癇癪を起こして、あろうことかお嬢ちゃんを泣かせちまった。

おめでたいはずの事態がお嬢ちゃんの涙にかわってしまい、家中の者が慌てふためき、うろたえ、お嬢ちゃんを心配して集まったのは無理もない。それでなくとも普通の体じゃなかったんだからな。

俺が氷の視線に射殺されなかっただけでも奇跡みたいなもんだ。

今になって考えてみれば、俺が帰宅前に家の中がどんな様子だったのかこんな風に冷静に類推できる。

だが、俺はお嬢ちゃんを前にすると、状況を冷静に判断して類推するということが、酸素ボンベなしの8000m級登山ほどに困難になる。つまりほぼ不可能ってことだ。

なにせ、俺は控え目に言ってもお嬢ちゃんに恋してるし、はっきり言えばのぼせあがっている。(この自覚ならありすぎるほどにある)そんな俺がお嬢ちゃんの様子を第3者の客観的な視点で冷静に分析するなんてできる訳ないじゃないか。

人間わかっていたってうまくできないことってあるだろう?今回みたいに済んでしまったことならまだしも、その渦中にいる時には、俺にはお嬢ちゃんの行動をおちついて考察することなんて絶対にできやしない。

だけど、それをいい訳にするつもりはないぜ。俺がお嬢ちゃんを泣かせてしまったのは事実だからだ。まったくこれが他人だったらしばき倒している所だが、俺が俺をしばき倒すとお嬢ちゃんがまた哀しむからこれはやらない。

ただ、俺としては何か償いをしないと気が済まない気分だ。お嬢ちゃんがもう何も気にしてないとしても、自分が納得いかない。

だから俺は従容と罪に服役するような気分でお嬢ちゃんと一緒に食堂に向かった。

何せ、お嬢ちゃんを泣かせた罪は万死に値するし、このことは屋敷中の者が知っている。罰としてシェフが俺の皿だけ付け合せをグリンピースにしているかもしれない。

でも、仕方ないよな、それだけの事をしたんだから。

今日ばかりはてんこもりのグリンピースでもお嬢ちゃんが食べろといえば、おとなしく完食するくらいの心積もりでいたんだ、俺は。

 

食堂のテーブルにはお嬢ちゃんのいうところのご馳走がこれでもかとばかりに並んでいた。

しかし、意外なことに俺の好物も結構あるじゃないか。どういうことだ、これは?

お嬢ちゃんはにこにこしながら、給仕に引いてもらった椅子に腰掛けた。

「オスカー様、おいしそうですね、少し遅くなっちゃったけど、いただきましょ!」

「あ、ああ、本当にご馳走だな…俺の好物もあるとは思わなかった…」

お嬢ちゃんは一瞬きょとんとしてから、くすくす笑い出した。

「どうしてそんな風に思ったんですか?2人のお祝いだもの、2人の好きなものをシェフが作ってくださったんですよ、きっと。赤ちゃんは一人じゃ作れませんもの、ね?」

そりゃそうだが、うちのシェフは黙っていたらお嬢ちゃんの好物しかもはや作らないぞ、絶対。

そこで俺ははたと気付いた。お嬢ちゃんが2人のお祝いだからと言って、シェフにとりなしてくれたんではないだろうか。俺の好物もいれてやってくれって。そうだ、きっとそうに違いない。

お嬢ちゃんは、いつもさりげなく俺によかれと思うことをしてくれるんだ。そんなところがたまらなく、かわいく、いじらしく、健気で、俺の胸はお嬢ちゃんへの愛しさで一杯になるんだ。

それに引き換え俺はというと、お嬢ちゃんを困らせたり泣かせたり…我ながらつくづくどうしようもないヤツだ。

しかも、シェフが俺を懲らしめるために俺の嫌いな物をわざと出すんじゃないかと思っていたなんて、まったくこういうのを下衆の勘繰りっていうんだ、ああ、恥かしいったらないぜ。

ともあれ、俺は気をとりなおしてシェフの心づくしをいただくことにした。

せっかくのお祝いの席だしな。しかし、やはりアルコールがないとしまらんというか、少し物足りないな。

「お嬢ちゃん、せっかくだから乾杯といきたいところだが…妊婦にアルコールはご法度だよな?」

「私はかまいませんから、オスカー様だけ召しあがってくださいな。」

「いや、これは2人で祝いたい。形だけでいいから付き合ってくれないか、お嬢ちゃん。」

俺は給仕を呼んでワインを持ってくるよう命じた。すると、一分も経たないうちに給仕はコルクを抜いたワインをクーラーにいれて運んできた。まるで予め用意していたみたいだ。

そして、お嬢ちゃんのグラスには形だけ、俺のグラスにはたっぷり目にワインを注いでもらってから俺たちは軽くグラスをあわせた。ちりんと涼やかな音が鳴った。

「おめでとう…と俺がいうのも妙な感じだが…とにかく体を大事にしていい子を産んでくれ…」

しみじみと俺が言うと、お嬢ちゃんもグラスを掲げてにっこり微笑んだ。

「大丈夫ですよ、オスカー様と私の赤ちゃんだもの。いい子にきまってます。」

うーん、お嬢ちゃんのこう言う天晴れなまでに楽天的な所、好きだぜ、俺は。

そして俺たちがグラスを置いてカトラリーを手にとった時、突然背後から

「ご主人様、奥様、おめでとうございます!」

という斉唱と拍手がわあっと聞こえてきた。

驚いて振り向くと食堂にはいつのまにか使用人の主だったものたちがずらっと勢ぞろいして口々に祝いの言葉を述べていた。

ははぁ、連中、祝辞を言うタイミングを計っていたんだな、きっと。今まで俺の短気と癇癪のせいで祝辞を言いたくても言えずにやきもきしていたんだろう。言いそびれていた分、この機会をのがしてなるものかという気迫まで感じられた。

執事に到っては感涙に咽んでいる始末だ。そう言えばこいつは俺がお嬢ちゃんを屋敷に連れて来た時も泣いていたな。『お嬢様のおかげでお館様も真人間になってくださって…』とかなんとか言って…今考えてみるとこれって相当失礼な言いぐさのような気もするが、ま、この際細かいことはどうでもいい。お嬢ちゃんが蕩けそうに嬉しそうな顔で祝辞に礼を返している様子に、俺も幸せで蕩けそうだ。

俺にも当然祝辞の言葉が次々と浴びせられる。

いやあ、嬉しい、なんだかすっごく嬉しいぞお。俺もパパになるんだなって事がこうじわじわぁっと実感されてきて思わず顔がゆるんじまう。

ひとしきり言葉が交されるとシェフがずずいと一歩前に出てきりのない祝いの言葉を取り纏めた。

「お祝いの言葉は尽きませんが、おなかの赤ちゃんのためにもそろそろお食事にしていただくのはいかがでしょう。」

この言を合図に他の使用人たちが下がっていく。

そういや、そうだ。お嬢ちゃんは身二つなんだからたくさん食べてもらわないとな。

「そうだ、お嬢ちゃんはもう一人の体じゃないんだから、いっぱい食べて栄養をつけないと…」

すると、お嬢ちゃんがころころ笑って答えた。

「そんなにたくさん食べたらふとっちゃいますぅ。今からそんなに量を増やす必要はないんですよ。」

「だが昔から、妊婦は身二つだから倍食べろとかいわないか?」

「それは昔の話ですよ、オスカー様。カルシウムとか鉄分とか多めにとったほうがいい物もあるけど、食べすぎちゃって太っちゃうと高血圧になったり糖尿病になったり妊娠中毒症になったりあまりいいことないんです。今は体重をあまり増やさないように気をつけなくちゃいけないくらいなんですよ。」

「そ、そういうものなのか…」

お嬢ちゃんがそうだというならそうなんだろう。

クラヴィス様やジュリアス様ほど生きた化石じゃないが、俺の知識も相当古いのは確かだからな。なにせ生まれた時代が違いすぎる。しかし、それを差し引いても、男なんて子どもができた時点じゃそっち方面の知識なんてあまりないのが普通じゃないだろうか。

「じゃ、シェフには申し訳ないがカロリー控え目で、でも、必要なものは取れるような食事を工夫してやってくれないか。」

「あ、お手数でしたら、私、自分でやりますから…」

申し訳なさそうなお嬢ちゃんをシェフが即座にさえぎった。

「それは私の仕事ですから、ご遠慮は無用です、奥様。私も仕事の幅が広がるいい機会ですし…おいしいだけでなく体にいい食事のね。」

そうだろう、そうだろう、この館の住人は俺を筆頭にお嬢ちゃんのために何かしてやりたくていつもうずうずしてるんだから、こんな機会を逃すはずがない。

「お嬢ちゃん、せっかくだからシェフにまかせたらどうだ。餅は餅屋っていうし、仕事をうばっちまったらかわいそうだしな。」

「そうおっしゃってくださるなら甘えちゃおうかしら。これからつわりもあるかもしれないし…」

お嬢ちゃんに甘えてもらう…うーん、なんかシェフがうらやましくなってきた。俺にももっと甘えてくれていいんだぜ、お嬢ちゃん。

「そうか、つわりっていうのもあるんだよな…今の所は大丈夫なのか?」

「あ、はい、まだ平気みたいです。」

「気分が悪いときはすぐ俺に言うんだぜ?無理はするなよ。」

なんかありきたりなことしか言えないのがもどかしいな。やはり、明日即行で妊娠・出産における注意事項を勉強しよう。

それで思い付いたんだが、そういえば妊娠とか出産の時は休暇がもらえるんじゃなかったか?いくら俺の知識が貧弱でもそれくらいは知っている。

「そういえば、お嬢ちゃん、陛下はもうこのことはご存知なんだよな?」

「ええ、正式には言ってませんけど、もしかしたらって前置きして相談しましたから。」

「じゃ、明日にでも俺と2人で正式に謁見してご報告申し上げないとな。お嬢ちゃんも子どもを産むとなると執務は休まなくちゃならんだろう?そのお願いもしないと…」

「やだ、そういえばそうですよね。私うっかりしてました。産休をお願いしないといけませんよね。私ったら浮かれちゃって…オスカー様がおっしゃってくださらなかったら気がつかなかったわ。ありがと、オスカーさま…」

きまり悪そうにはにかむ姿がまたかわいいったらなかった。

こうして俺たちは明日のことを相談して、和やかな夕食をとった。

俺は食事をしながら、シェフがお嬢ちゃんの食生活をサポートするように俺がお嬢ちゃんにしてやれることが何かないだろうかとずーっと考えていた。

 

やっぱり食事は二人でするに限る。

うまい食事にうまい酒を楽しんだ後、俺は上機嫌でお嬢ちゃんと一緒に俺たちの部屋に戻った。

「オスカー様、お風呂は?」

「さっきシャワーを浴びたから俺はいい。お嬢ちゃんこそどうした?」

「私も、あの、お医者様にみていただく前にはいっちゃいました。」

「じゃ、とりあえず風呂はいいな。それなら…」

俺は真面目な顔でお嬢ちゃんに向き直った。

「お嬢ちゃん、ちょっと聞いてくれるか?そこに座ってくれ」

「は、はい。なんですか、オスカー様」

俺はお嬢ちゃんをベッドに腰掛けさせ、自分もその隣に座ってお嬢ちゃんの手を握りしめた。

「俺はお嬢ちゃんが俺の子を産んでくれると知ってすごく嬉しい。」

「はい…」

「ただ、俺も、妊娠すると女性の体にはいろいろ負担がかかるとか、お産がその…楽なもんじゃないらしいことくらいは知っている。俺たち二人の子どもなのに、お嬢ちゃんにだけ負担をかけるのが俺は申し訳ないし、心苦しい。」

「でも、それは…」

「わかってる、俺がかわってやれることじゃない。だから、せめて、俺はお嬢ちゃんの助けになりたい。お嬢ちゃんの体の負担が出切る限り軽くなるようにするし、お嬢ちゃんがいつも晴れやかな気分でいられるようにしてやりたいんだ。」

「オスカーさま…」

「その…お嬢ちゃんが幸せならおなかの子どもも幸せだろ?お嬢ちゃんが悲しんだら、きっと子どももなんだか悲しくなったりするんじゃないか?なにせなかで繋がっているんだからな…こんな考え方はおかしいか?お嬢ちゃん」

「そんなことないです。ほんとにそうなんです。お母さんの気分で赤ちゃんも嬉しくなったり沈んじゃったりするんですって。だから…」

「そうか…それなら、尚更…俺はいつもお嬢ちゃんが楽しく幸せでいられるようにしてやりたい。だから、その…お嬢ちゃんをもう決して泣かせたりしない。約束する…」

お嬢ちゃんがいきなりぶつかるような勢いで俺に抱き付いてきた。

「オスカー様、嬉しい…私すっごく幸せです。オスカー様が赤ちゃんを喜んでくださって、それに二人の子どもだっておっしゃってくださって…そのお気持ちがとっても嬉しいです…」

「当たり前じゃないか、お嬢ちゃん…」

俺はお嬢ちゃんの体を包み込むように抱きしめた。妊娠してるって言われて初めて気付いたが、そういえば以前よりふっくらしてる感じだ。なんだかふくふくとして気持ちよくて手放し難いぞ。いや、それでいったらいつだって手放し難いんだが。

俺はお嬢ちゃんの顎をくいとつまんでちゅっとキスをした。軽いキスは俺にとって条件反射みたいなものだ。側にお嬢ちゃんの顔があれば、自然と体が動く。

でも、すぐ物足りなくなって今度は意識して深いキスをしかけた。思い切り舌を差しいれてお嬢ちゃんの歯列を割り舌を絡めとる。

「んん…」

お嬢ちゃんもいやがらずに応えてくれる。お嬢ちゃんはほんとにキスがうまくなった。自分から舌を絡めて吸ってくれるようになったから俺もキスのしがいがある。コーチがいいから上達も早いんだ。

そして、これもいつものことといえばその通りなんだが、お嬢ちゃんの舌を堪能しているうちに、俺は更なる愛の交歓を欲する気分になっていた。喧嘩の詫び替りにも、せめてお嬢ちゃんには思いきり気持ちよくなってもらいたいしな。

名残惜しいが1度唇を離して俺はお嬢ちゃんの瞳を覗き込んだ。とろんと蜜がかかったように濡れている。よし、これならいける。

「お嬢ちゃん…抱いてもいいか?」

お嬢ちゃんが困ったように俺の胸にぐりぐりと額をこすりつけてきた。翻訳すれば『いやーん、オスカー様ったらぁ。いいですけど恥かしくてはっきりうんとは言えませ〜ん』といったところだな。

はっきりNOでなければYESだと解釈するぜ、俺は。というわけで俺は嬉々としてお嬢ちゃんの服を脱がし始めた。もちろん自分の服もさっさと外す。

ランジェリーを肌に纏わせたまま愛し合うのも一興だが、今日はお嬢ちゃんを全裸にしたかった。

妊娠してるって気付かなかったから、今までお嬢ちゃんの体の変化を注意してみていなかったからな。

俺はお嬢ちゃんをベッドに腰掛けさせたまま、一糸まとわぬ姿にさせた。ベッドに横たえるよりそのほうが全身がよく見えると思ったからだ。

お嬢ちゃんが恥かしそうに胸を隠そうとしたから、その手首を掴んで下に降ろさせ、そのまま首筋に唇を押し当てた。

「あ…」

お嬢ちゃんがくすぐったそうに首を竦める。

「オスカーさま…あの、もう少し暗く…」

俺はお嬢ちゃんの懇願を聞かない。お嬢ちゃんの体をつぶさに見たいと思っているのに暗くなんかしてたまるものか。

「だめだ、このまま…」

俺はお嬢ちゃんが何もいえなくなるように、もう1度首から肩にかけて舌を這わせる。背中に腕を回して抱き寄せ、その体を支えることも忘れない。お嬢ちゃんの体から力が抜けて自分を支えらなくなるのを見越してのことだ。

お嬢ちゃんも無意識のうちにか、しがみ付くように俺の首に腕を回してくる。お嬢ちゃんの細い指が俺の首回りをくすぐるように蠢くのがなんともいえず心地よい。

俺は胸元から乳房へと唇を滑らせていく。

お嬢ちゃんの乳房は体を横たえているときでも形は崩れないが、やはり上体を起こしている時の方がその美しさは一層際立つ。

その魅惑の存在に俺は改めて目を奪われる。

お嬢ちゃんの乳房はどうしてこんなにも蠱惑的なんだろう。

何度見ても、いや、見れば見るほど俺を虜にして放さない。

こんもりふっくらと盛りあがるどこまでも優しげで豊かなまろみ。その深い谷間に顔を埋めて包みこんでもらいたくなる。

なのに先端は挑発するようにつんと上を向いて俺の心臓をずがんと射ぬく。

可憐な乳首は『私を食べて』と俺を誘いかける熟し切った桜ん坊だ。だから俺は素直に唇をよせて食べてやる。もちろん今日も。

たわわな乳房を掌でたふたふと揺らすようにその豊かな重みを確かめながら、俺は乳首を唇ではさみこんで軽く引っ張った。

まじまじと見つめてみれば、乳輪の部分が若干大きくなり色も濃くなっているようだ。心なしか乳房全体も大きくなったような気がする。まったく毎日愛撫してるのになぜ気付かなかったんだろうな。

桜色の乳首もかわいいが、色が濃くなった乳首もこれはこれでなんともいえず淫靡で色っぽくてそそられる。なんとなく得したような気持ちで乳輪ごと口に含んで舌で粘膜部分の輪郭を丁寧になぞり始めた。

口の中でみるみる乳首の弾力がまし、固く尖っていくのがわかる。俺はその感触をこよなく愛している。

このこりこりっとした弾力がたまらなく気持ちいい。固くなればなるほど、俺も意地になったみたいに何度も舌ではじいてやりたくなる。飽くことなく吸いたてたくなる。それでも飽きたらないときは軽く歯をたてる。

「んくっ…」

しかし、歯をたててもお嬢ちゃんの声が甘くならない。いつもは軽く噛まれるとすごく乱れるのに。

「どうした?気持ちよくないか?」

「あの…ちょっと張ってるみたいで痛いんです。その…さきっちょが…それで最初変だなって思って…」

「そうか…じゃ、なるべく優しくする…嫌な時は嫌って言ってくれていいからな。」

きっと妊娠したせいで敏感になっているんだな。

俺はきつめの刺激は避け、とことん優しいビロードのような愛撫を心がけることにした。

こう言う時こそ男の真価が問われる。女性の体は微妙だから、同じ愛撫が同じ快感に結び付かない時もある。乱暴にされたいときもあれば、こよなく優しく傅かれたい時もある。状況を見極め、それによって如何様にもアプローチを変えられる柔軟さの有無が、できる男とそうでない男の違いなんだ。

世の中の大半の男はこれがわかってない。1度いいといわれると、同じことをばかみたいに繰り返す。でも、どんなに美味しい物でも続くとありがたみがなくなるし、飽きるだろう?愛撫だって同じだってことに気付かないんだ。

食べなれたものほどおいしいという部分も確かにあるが、偶に目先を変えるともっと食が進むってことがあるだろう?慣れ親しんだ物と目新しい物のバランスの匙加減が大切なんだと俺は思っている。

というわけで俺は乳首にねっとりと舌を絡ませたり、唇で軽く挟んで微かに吸いたてた。

指でもう片方の乳首もほんとに軽く摘んでは、触れるか触れないかの微妙な位置を保って指の腹で転がした。

「あ…んん…はぁ…」

よしよし、今度はいい声が零れてきたぞ。これぐらいの力加減が今日のお嬢ちゃんにはジャストフィットってことだな。

俺は両方の乳首を順番に指と唇でかわいがった。どうして、こうお嬢ちゃんのおっぱいは、触れば触るほどもっと触りたくなるんだろう。磁石でできてるみたいで、ほんとに俺の掌も唇も吸い付いて離れようとしない。

しかし、おっぱいもいいが、俺を待っているだろうもうひとつの場所も忘れる訳にはいかないからな。

俺は名残を惜しむ掌をなだめつつ、片手をお嬢ちゃんの股間に伸ばした。

柔らかな和毛を認めるとその奥に指を滑りこませる。

お嬢ちゃんも何気なく足を開いて俺の指を待ちかねたように受け入れてくれるのが嬉しい。

果たせるかなそこはもうぬめぬめのとろとろになっていた。ふっくらとした盛りあがりの表面まで蜜で溢れかえって、とろーりとろとろと糸を引いている。

俺を待ち焦がれているんだな、嬉しいぜ、お嬢ちゃん。だが、もちろんすぐいれてもらうことなんで望んじゃいないだろう?濡れたら即OKというほど女性の体は単純なものじゃないし、第一俺自身が物足りない。

俺は花弁の合せ目をくすぐるように指で探り、すぐにぷっくりと固くしこっているかわいい珠を見付けた。ぷりぷりとしたその珠をまずはそのまま指の腹で滑るように撫でる。もちろん指先にはお嬢ちゃん自身の蜜をたっぷりのせてある。

「んくぅ…ん」

お嬢ちゃんが鼻にかかったような甘えた声をあげる。この声は『もっとして!』の合図だから、俺は遠慮なくその珠を指先で転がし始めた。それでも先ほどのことがあるから、いつもより更に微かなタッチングを心掛ける。まだ皮を剥くのは早い。

俺自身はかなり指先のケアには気をつかっている。爪はいつも深爪ぎりぎりまで短くして、なおかつニッパーで切っただけでは切り口が鋭角になるから、仕上げにやすりもかけている。すべてはお嬢ちゃんの体に僅かでも傷や痛みを与えないようにだ。

それでも、俺の手はあくまで武人の手だ。重い剣を振るし訓練も欠かせないから、どうしても滑らかで柔らかな指という訳にはいかなくなる。こんな無骨な指で感じやすい部分を擦られたら苦痛なだけだろう。だから、俺は指でお嬢ちゃんを愛撫する時は自分でも物足りないくらいの触れ方を心掛けている。指でかわいい珠を直に触るなんてもっての外だ。

だから、俺は指での愛撫はあまりしつこくはしない。自分が夢中になってしまうと、ついフェザータッチを忘れちまいそうになるから、ある程度指で刺激した後はすぐオーラルに切り替える。このほうがかわいいお嬢ちゃんのあそこを見ながらという視覚的刺激も得られるし、何よりお嬢ちゃんの乱れ方が違う。

俺はお嬢ちゃんを座らせたまま、自分は床にひざまづきお嬢ちゃんの膝頭を掴んでぐっと足を開かせてから徐にお嬢ちゃんの股間に顔を突っ込んだ。

「あっ…」

お嬢ちゃんが慌てて足に力をいれようとする。お嬢ちゃんが恥かしがるのは予想済みなので、俺は慌てずに更にお嬢ちゃんの膝をたたせるようにして広げ、かわいい花弁が俺によく見えるような姿勢をとらせた。

「や…オスカーさま…」

お嬢ちゃんが困ったように顔を横に背けてしまった。俺にはずかしい所を見られていると思って居た堪れないのだろう。実際その通りだしな。

俺は指でお嬢ちゃんの花弁を押し開いて、じっくりとそこを見つめた。花弁の内側は鮮やかな濃いローズピンクで、お嬢ちゃんの白い肌の中でそこだけが目を射るほど鮮やかだ。

しかもお嬢ちゃんは金髪だから、そのローズピンクの肉のひらひらを金色の和毛が取り巻いている様はまさに花そのものに俺には見える。これほど美しく妖しい花はほかにはないだろうが。

とろとろと溢れ出す蜜は熟し切った果実のような濃厚な香りで俺を惹きつけてやまない。その蜜を滴らせた濡れ光る花弁はやはり以前より若干色味を増したように見える。まさにこれを盛りに咲き誇っている爛熟した花といったところか。

「お、オスカーさま…いや…そんなに見ないで…」

お嬢ちゃんが耐えかねたように途切れ途切れに言葉を発した。膝頭がぷるぷると振るえている。

俺はかまわず指で更に花弁を押し広げた。

「だが、見られていると思うと感じちまうんだろう?ほら、なにもしてないのにまた蜜が溢れてきた…」

実際広げた花弁の中心から止め処もなく滾々と蜜が溢れてくる。俺のほうがこの眺めに平常心を保っていられなくなりそうだ。それでなくてもお嬢ちゃんの蜜の香りに頭がくらくらしてきてる。

「や…そんなこと言わないで…」

お嬢ちゃんの語尾も震えている。俺もそろそろ眺めるだけでは苦痛になってきた。すっかり剥き出しにした一際赤く輝く小さな突起をそっと舌先でつついた。

「あっ…」

お嬢ちゃんの体がぴくりと震えた。

俺はその反応に気をよくし、花弁を思いきり押し広げたまま舌先でそのぷっくり膨らんだ突起を一心に舐め転がした。

いつもなら噛むというほどではなくとも軽く歯で挟んだりするのだが、今日はどうだろう。俺はお嬢ちゃんの反応に注意しながらそっとその珠に歯を当ててみた。

「んんっ…」

お嬢ちゃんが切なげに眉を顰めて首を横にふった。この程度の刺激なら純粋に気持ちいいようだ。

俺は大体の力加減の目安がついたので、愛撫に集中することにした。

思いきり花弁を押し広げた上で、舌を上下左右思い思いに閃かせて珠を弾くようにしたり、舌先で円を描いて舐めまわす。

舌にあたる珠の感触は更に弾力を増しはちきれんばかりになる。

触れるだけというくらいの気持ちで軽く歯をあてると、お嬢ちゃんがびくんっと震えた。

そんな様子がかわいくて、俺は花弁全体に唇を押し当てるようにすると、ふっくらしたもりあがりをはむはむと唇で食んでみた。まさにお嬢ちゃんを食っちまいたいという気持ちの現れだ。

時折舌を珠の少し奥にある割れ目に差し入れ、丸めた舌先で蜜を掬いとって飲み下してもみる。

「は…あ…はぁっ…あ…あぁっ…」

一声ごとにお嬢ちゃんの出す音域がどんどん高くなっていく。

舌を差し入れない時は、花弁を押し開いている指を少しずらして、それを蜜壷に出し入れさせる。爪を短くしているから、指の抜き差しは多少激しくしてもお嬢ちゃんの肉襞を傷つける心配はない。

お嬢ちゃんの蜜壷は俺の指を焼くほどに熱く蕩けていた。

指を回すようにして重なりあう柔襞をかき分けると、襞自体がねっとりと俺の指にからみついてくる。

舌で珠を転がしながら、蜜壷をかきまわしたらお嬢ちゃんの声が更にオクターブ跳ねあがった。

なんだか内壁も柔らかさが増しているみたいだ。今までより指の挿入も丁寧にしたほうがよさそうだな。

しかし、この一層柔軟さをました肉襞の感触といったら俺は喩える言葉を失うほどだ。

熟し切った果物の果肉の中にずぶずぶと指を差し入れているように捕らえどころがなく、際限なく突き入れたくなるような嗜虐心をそそる。

そのくせ俺が舌で珠を弄うたびに、この肉壁は俺が指一本動かすのもきついほど、きゅうきゅう締まる。

うねうねと絡み付いてくるように、やわやわと引きこんで放すまいとするように襞が蠢く。

すべてが俺に『早く来て』と懇願しているみたいに感じられる。こんな風にそそられたら、もう、俺のほうが限界だ。早くこの中に入って包みこんでもらいたい。絡み付いてくる襞をなぎ倒すように思いきり出し入れしてみたい。

俺のものはとっくに準備OKだった。というより、もう我慢できない状態だ。お嬢ちゃんに愛撫してもらっていないのが少し残念だったので、俺はあえてお嬢ちゃんに声をかけた。わざと呼気が花弁にあたるようにだ。

「お嬢ちゃん、すごく感じているな。こんなに溢れさせて…もっと弄ってやろうか?」

「いや…オスカー様、これ以上はもう…」

お嬢ちゃんが苦痛に耐えるように唇を噛んでいる。

伊達に夫婦をしてる訳じゃないから、俺もお嬢ちゃんが限界だってことはわかってる。

「もう、欲しくてたまらないのか?」

実際には俺も挿れたくてたまらない。俺が挿れたい気持ちと、お嬢ちゃんが挿れてもらいたい気持ち、どっちがより激しいんだろうななんてことをふと思った。

「ん…おねがい、オスカーさま…」

俺は立ちあがると自分がベッドに腰掛けてお嬢ちゃんの手をとり、俺を跨がらせるような形で向かい合わせにお嬢ちゃんを膝の上に乗せた。

お嬢ちゃんのおなかが大きくなってきたら、まずしばらくできなくなるであろう対面座位にしたかったんだ。

「さ、お嬢ちゃん、ほしかったら自分で導いてごらん。」

俺は自分のものをお嬢ちゃんの手に握らせた。

お嬢ちゃんの白い指が俺の棹に絡み付く。そのままお嬢ちゃんは俺のものの熱さと固さを確かめるようにやわやわと指の開閉を繰り返し、わずかばかりであったが掌を上下させて擦ってくれた。

しかし、お嬢ちゃんも俺のものをゆっくり愛撫するほどの余裕もないほど切羽詰っていたと見える。

僅かに腰を浮かすと自分で自分の花弁を押し開くようにして…それがまた俺に見せ付けてるみたいで、俺はくらくらした…俺のものに愛しげに手を添えてゆっくりとそれを自分の内部に収めていった。

その収め方がまた俺のもので押し広げられていく感触をじっくり味わっているみたいにゆっくりで、まるでその過程も俺にみせつけているかのようで、確かに俺は俺のものが少しづつお嬢ちゃんの内に姿を消して行く様子をつぶさにみていたが、そのあまりの淫靡さに頭が沸騰するかと思った。

お嬢ちゃんの濃い薔薇色に染まった花びらを無残なほど押し広げて、俺のものがぬるりと入っていき、それにつれて俺のものに押し出された透明な蜜がぽとぽとと滴って、俺の股間まで濡らしてるんだぜ。こんな淫靡な光景をみて平気でいられる男なんているもんか。

俺は一刻も早く突き上げたい気持ちを渾身の精神力で押さえ込み、お嬢ちゃんが俺のものを納めきるのを待った。

「はふぅ…」

俺のものが完全に姿を消した。つまり根元まで入りきるとお嬢ちゃんが安心したような吐息をついた。軽く閉じた目許はほんのり朱に染まって、唇が半びらきになっている。俺のものの感触をじっくり味わっているという表情がまた、とてつもなく色っぽい。こういう顔が間近に見られるのが対面のいいところだよな。

しかし、お嬢ちゃんのまつわりつく襞襞の感触に溶けそうになっているのは俺だって同じことだ。

肉壁が柔らかくなっているせいか、やっぱり以前より寸分の隙もなく包みこまれるような感触が増しているみたいな気がする。

俺はもう辛抱たまらずお嬢ちゃんのお尻を鷲掴みにして、いきなり思いきり突き上げた。

「ひぅっ…」

お嬢ちゃんがのけぞりかけ、あわてて俺の首にしがみついてきた。

一度ついた弾みはもう止まらない。俺は張りのあるお尻をむにむにと掴むように揉みながら、お嬢ちゃんの体を揺さぶり、下から突き上げまくった。

「あ…ああ…はっ…ふぁっ…」

お嬢ちゃんも俺が突き上げるたびに、無意識にかきゅうきゅうと俺をしめつけてくる。その締め付けに無理やり逆らうように自分のものを抜き差しするたびに、痺れるほどの快感が背筋を走りぬけて行く。

俺は快感に飲みこまれないよう意識して、目の前でぷるぷる揺れてる乳房の先端を狙い定めて唇で捕らえると、きつくない程度にそれを吸った。

するとお嬢ちゃんが、感極まったように俺の頭をぎゅっと抱きしめ

「ああっ!オスカーさまっ!好き!好きなのっ!」

と口走る。

ああ、俺も同じだ、いくら口で言っても足りないくらいお嬢ちゃんが好きだ。

「ああ、かわいいな、お嬢ちゃんは…俺も好きだ、本当に好きなんだ!」

言葉と供に更に抉るように突き上げた。

「ひぁっ…」

お嬢ちゃんの体が美しい弧を描いてそりかえる。俺はその動きを利用してそのままお嬢ちゃんをベッドに横たえると改めて上から覆い被さった。

お嬢ちゃんの背に腕をまわして体を抱きしめながら、更に素早い挿送を繰り返す。

やはり、抱きしめながらの挿入もおなかの大きくない今のうちだと思ったからだ。

お嬢ちゃんの手が俺の背中をもどかしげにさまよっている。

募りゆく快楽のもって行き場がなくて、どうしたらいいのかわからないというのが、よくわかる。

ああ、もっと乱れてくれ、何もわからなくなるほどに酔いしれてくれ。

気持ちよくしてやりたいんだ。もっと激しく、もっと深く、なにものにも替え難いほどの快楽を与えてやりたい。それは俺が、俺だけが君に与えることのできる特権であってほしい。

俺はお嬢ちゃんの体を抱く手に一層の力をこめ、片手でお嬢ちゃんの太腿を抱えこむように持ち上げてさらに密着度を高めて腰をグラインドさせた。

「くぁっ…やぁっ…もう…もう…」

お嬢ちゃんが白い喉をのけぞらせる。

「かわいい…ほんとにかわいいぜ、お嬢ちゃん。」

その喉に唇を押し当てて吸い上げる。

さあ、そろそろフィニッシュだ。

俺は深い挿入を保ったまま腰を擦り付けるように動かし、激しい律動なしに子宮口を自分のものの先端で捏ね回すように刺激した。

「あああああっ!」

お嬢ちゃんが一際高い声でなき、俺のものを搾り飲みこむように肉壁が収縮した。

それでも、俺は耐える。まだ、お嬢ちゃんが気をやったのは僅かな時間だ。これをもっと引き伸ばしてやりたい。

「っ…」

激しい律動を控えていたのが俺の耐久度をあげてくれた。

俺は先端で最奥をかきまわすように刺激し続け、お嬢ちゃんの口から声がでなくなるまでそれを止めなかった。

お嬢ちゃんが息も絶え絶えになり、俺にしがみつくものやっとという呈になって漸く、俺は俺自身のための律動…自分の物を刺激するための前後運動…を始めた。

お嬢ちゃんの体力も限界のようだし、これ以上のエクスタシーは却って苦痛になりかねない。挿入は長ければ長いほどいいというものじゃない。

俺はお嬢ちゃんの奥に重い衝撃は与えないように、腹側の肉壁を意識してカリですりあげた。浅く素早い挿送を繰り返す。

「はっ…はっ…あっ…」

もうお嬢ちゃんの口からは荒い呼気音しか出てこない。突き入れる角度を替えるたび、絡み付いてくる襞の感触もかわる。それを追求するようにさらに律動を速める。馴染みの感覚が膨れあがる。

「くぅっ…」

俺は引き絞りに絞っていた欲望を解き放った。一瞬世界が音を失う。砕け散る波頭のように爆発する快楽、そして例えようのない開放感がそれに続く。最後にじわじわと幸福感がこみあげてくる。

その幸福感に酔いつつ、俺はゆっくりとお嬢ちゃんの肩口に顔を埋めていった。

果てた後も離れ難くお嬢ちゃんの内部に自分のものをしばらく留めおいた。

俺の腕のなかでお嬢ちゃんの体はまだ小刻みに震えていた。細い腕が俺の背中を慈しむように撫でさすっているのを感じる。

俺はお嬢ちゃんに口付けた。お嬢ちゃんがいやいやをするように首を振る。息苦しいんだな。それでもお嬢ちゃんの顔は満ち足りて幸せそうだった。

お嬢ちゃん、満足してくれたか?せめてもの詫びになっただろうか?

俺の顔に疑問が浮きあがっていたんだろうか。

お嬢ちゃんが俺の裸の胸に頬をすりすりと摺り寄せてきてくれた。なんとなくほっとして俺はお嬢ちゃんの肩を抱く。細くて華奢な肩だ。

こんな華奢な肩をしてるお嬢ちゃんに心配をかけちゃいかんぞ、俺。と俺は改めて思ったさ。

そして俺は反省の意味をこめ、お嬢ちゃんとこれから生まれてくる俺たちのベイビィを一生あらん限りの力で守り抜くぞ!と心の中で誓いを新たにした。

まずはお嬢ちゃんのマタニティライフを万全の体制で支援するためにとりあえずは勉強だ。お嬢ちゃんの体にいいこと、悪いこと、注意すべきことをきちんと把握しないとな。

特に性生活に関してはもう少し詳しいことを調べねば。なにせ、母体が気持ちよければ、おなかの赤ん坊も気持ちいいんだってお嬢ちゃんのお墨付きももらったことだしな。

お嬢ちゃんを気持ちよくさせることに関しては全面的に俺の管轄&責任だからな。お嬢ちゃんが気持ちよければ胎教にもいいってことは、俺も一応赤ん坊の成長に手を貸せるみたいで、なんとなく嬉しいというか、やりがいがあるしな。

お嬢ちゃんが俺の胸に頬を乗せてうつらうつらし始めた。

俺はお嬢ちゃんの体が冷えないように上掛けを引っ張ってかけてやる。特におなかのあたりは念入りに。

でも、ほんとに嘘みたいだ。この俺がパパになるなんて。

初っ端で躓きかけたが、かえって自覚や決意ができてよかったかもしれん。

俺はお嬢ちゃんのこととなると頭に血が昇りがちだから、躓きもこれで最後とは言いきれないが、ま、なんとかなるだろう。

お嬢ちゃんの言うように、男でも女でも、きっといい子が生まれるだろうしな。根拠はないがなぜかそう思うんだ。

え?俺にもお嬢ちゃんの楽天主義が移ったのかって?それとはちょっと違うんだが…

だってなぁ、守護聖である俺が、女王候補だったお嬢ちゃんを愛して、お嬢ちゃんも俺を愛してくれて妻に迎えることができたってこと自体が奇跡みたいなものなんだぜ。

しかも、守護聖と女王補佐官の間に子どもができるなんて、聖地開闢以来の出来事じゃないだろうか。

まさに現代の御伽噺みたいだって思わないか?

だから何がおきても心配ないって気がするんだ。

だって御伽噺の締めくくりは必ず

Afterward they lived happily ever.(それからずっと2人は幸せにくらしましたとさ)ときまっているからさ。

                                                     FIN


創作の途中にしのちゃん様のイラストが隠し(ただしすっごくわかりやすいです)で挿入されていることに気付いていただけたでしょうか?あまりに危険度が高いので(ご覧いただけば納得していただけるはず・笑)今回は挿絵を別ファイルにさせていただきました。
以前のイラストでモザイクがよくわからなかったため、しのちゃん様がさらにがんばってくださいまして、今回はモザイクばっちりです(爆)で、こんなすばらしいイラストに創作つけずにおらりょうかとばかりに調子にのって書かせていただきましたのがオスカー様一人称H(爆)しのちゃん様に「アニバーサリー」を奉げたすぐ後だったので、やはり、あの後をひきとってここは一人称Hも書かねば片手落ちだろうと思いまして(笑)あ、「Afterward]っていうのは、「その後」とか「それから」という意味です。後書きの「Afterwords」ではありません、念のため。
でも、一人称だとあまり萌え度は高くないですね、どうみても(爆)でも、しのちゃん様には
「良いわね〜。オスカー様のH論がよくわかって。こんだけ女の体をわかってHしてるからうまいのね?ってとこがわかってよかったわ!」
と言っていただけたので、私としてはOKですわ(笑)
その分しのちゃん様のイラストがすごいから、それで萌えてくださいませね。しのちゃん様のコメントは
「今回のアンジェちゃんは。『くぅ〜〜〜・・・』って表情なんだけど・・・・。あまりの快感に身が縮ままってるの。オスカー様も、しっかりアンジェの花弁を押し開いて刺激してるからね。まさにくぅ〜って感じでしょ?」
だそうです(笑)
自分がオスカー様に同じようにされてる気分になってご覧いただくと一層味わいが増しましてよ(笑)
相変わらず煩悩を補完しあってる私としのちゃん様の共同作品をお楽しみくだされば幸いです。
 

創作の本棚へ TOPへ