CANARY 〜ばいきんまん・THE・AFTER〜


ばいきんまんのコスチュームに身を包んだオスカーは、こちらも、ドキンちゃんのコスチュームをつけたアンジェリークを
軽々と抱いたまま、するりと、ばいきんUFOならぬエアカーに乗りこんだ。
オスカーばいきんまんとアンジェドキンちゃんがこれから繰り広げるであろう愛の交歓を
期待に胸膨らませ、目を爛々と輝かせて待っていた面々に、オスカーはにやりと笑って、「ばいばいき〜ん」と言うや否や
エアカーを発進させ、エアカーはあっという間に彼らの視界の外に消えて行った。
あとには、肩透かしをくってがっかりしている者大半のぼやきと、若干名の怒声が渦を巻いていた。

エアカーの座標を、これもばいきん城ならぬ自分たちの私邸にセットすると、
オスカーは自分の膝のうえにちょこんと収まっているアンジェリークの腰を抱きぐいと自分のほうに引き寄せた。
「きゃん」
先ほど受けていた愛撫の余韻に、まだぽやんとしているアンジェリークはオスカーの為すがままその厚い胸に倒れこむ。
「身を挺して俺を守ろうとしてくれたお嬢ちゃんに、お礼をしないとな・・」
オスカーは片手で腰を抱いたまま、細い顎を摘んで上向かせ、自分の顔をはすかいにして、アンジェリークの唇に触れる。
「んんっ」
アンジェリークの瞳が一瞬驚いたように見開かれ、同時に唇がうっすら開いたその時すかさず、
オスカーは自分の舌をアンジェリークの口腔内にねじ込むように差し入れる。
口の奥に隠れているアンジェリークの舌を絡めとり、縦横に舌を動かしてはきつく吸い上げる。
腰にまわした手は、まろやかな臀部をさわさわと撫でさすり始めた。
「んっ・・んむ・・ふ・・」
口を塞がれているアンジェリークが切なげに喘ぐ。
『ようやく逃げなくなってきたな・・』
オスカーは、アンジェリークの舌を味わいながら、こんな事を考えていた。
キスの際、オスカーが舌を絡めてもアンジェリークが舌を口腔の奥に引っ込めなくなってきたのはここ最近のことだ。
もっとも、引っ込めたところで、すぐオスカーの舌はアンジェリークの舌を絡めとって思う存分嬲っていたのだが。
アンジェリークもいやがって舌を逃がしていたわけではなく、驚いて反射的に逃げていたと言った方が正しい。
オスカーに教えられるまでアンジェリークは大人のキスをまったく知らなかったからだ。
初めて舌を入れたときは、噛まれそうになってしまい、これが愛する者同士が普通に行うキスなのだと
オスカーはアンジェリークに説明したくらいだ。
しかし、アンジェリークはこう言われても、どうしてよいかわからず、
侵入してくるオスカーの舌に戸惑ったように、自分の舌を逃がしてしまっていた。
それが、この頃ようやくアンジェリークの舌が逃げなくなってきた。
オスカーが舌を吸ってやると、瞳に霞がかかり、体の力も抜けるようになってきた。
まだまだ、自分からオスカーの舌に自分の舌を絡めてくるなどということは、想像にも及ばないようだが、
軽くオスカーの唇をちゅくちゅくと吸うような仕草も,見せるようになっていた。
この分ならアンジェリークが自分から舌を差し出してキスをねだるようになる日も、そう遠くないだろう、とオスカーはほくそえむ。
アンジェリークが自分の与える快楽に酔いしれ、夢中になってより一層の快楽を求める様は、いつでもオスカーをこの上なく興奮させた。
性に無垢だった彼女は、その無垢ゆえに、オスカーの与える愛技をなんの偏見も無しに悉く受け入れ、
いつもオスカーが意図した通り、いや、それ以上に、高らかな悦びの歌でオスカーに応えた。
その素直な反応に心弾み、より一層の悦びを与えてやりたくなって、オスカーはますますアンジェリークを激しく愛するようになる。
毎夜の睦言は無論のこと、休日ともなれば、それこそ、夜となく昼となく、
思い立つままにアンジェリークをその腕に閉じこめ、組み敷き、幾度となく刺し貫いた。
アンジェリークを自分の与える快楽に溺れさせたくて、何かに追いたてられるようにその肌を求めてしまう。
これは一方で、オスカー自身もアンジェリークに溺れていることに他ならない。
オスカーは自分でもそれを充分自覚していた。
『俺をこんなに熱くさせるのは君だけだ、お嬢ちゃん・・』
溢れ出す情熱に押されるままに、オスカーはアンジェリークの舌を貪るだけでは飽き足らず、彼女の艶やかな声を聞きたくなって
深い口付けから彼女の唇を解放した。
そのまま彼女の耳朶を唇で軽く食み、耳に舌を差し入れて舐った。
「ふぁ・・ん」
アンジェリークが鼻にかかった甘い声をあげる。
オスカーはその声に促され、柔らかな耳朶から、その滑らかな首筋に舌を這わせようとした途端、
鋭いビープ音が鳴り響き、エアカーが私邸に到着したことを知らせた。
『ちっ』
オスカーは内心軽く舌打ちする。
これだからエアカーは嫌いなのだ。情緒のかけらもない。
撮影で使うのでなければ、まず自分から乗ろうとは思わなかっただろう。
馬と違ってアンジェリークの唇に溺れていても、振り落とされる心配がないかわりに、
今、いいところだから、あとちょっと待っていてくれよ,と言う融通が全くきかない。
しかも機械の癖に、速く次の命令をだせと、逆に自分に命令を下すようなところも気に入らない。
しかし、気に入らないからといって放っておけば,この耳障りなビープ音はいつまでも鳴り止まずオスカーの神経を苛立たせる
仕方なくオスカーはリモコンでガレージのシャッターを開け、エアカーをガレージに収納した。

エアカーのキャノピーをあけ、アンジェリークを抱き上げたまま、オスカーはエアカーから降り立った
アンジェリークの体を一度わきに降ろしてからエアカーの動力を切り、ガレージのシャッターを閉める。
「ふ・・・」
深い口付けから解放されて、アンジェリークはその余韻を小さな吐息にかえた。
からだの奥に灯りかけた小さな炎はなんとか収まりそうだった。
私邸の裏手に作られたガレージをオスカーは普段ほとんど利用することはない。
公務への出仕には聖殿から迎えの馬車が来るし、私用の外出ならオスカーは愛馬を選ぶ。
だから、このガレージにくるのはオスカーは久方ぶり、アンジェリークにいたっては初めてだった。
「さ、帰ろう、お嬢ちゃん」
オスカーがアンジェリークに手を差し出すと、アンジェリークはオスカーの逞しい腕にきゅっとしがみついてきた。
裏庭を通って屋敷へ向かう。
アンジェリークはオスカーの腕を抱きかかえるように歩きながら、オスカーの顔を見上げて、嬉しそうに話しかけてきた。
「オスカー様。二人で外出したの、久しぶりですね。」
「そうだったか?そういえば、そうかもしれないな」
「こ・・この格好ははっきり言って恥ずかしかったんですけど、なんだか学園祭でお芝居やってるみたいで、おもしろかった!
 でも、わたしたち、あそこで帰ってきちゃってよかったんでしたっけ?」
オスカーに肌を晒されそうになったことは、その100倍くらい恥ずかしかったのだが
今更言えば、オスカーが気にすると思い、アンジェリークはそのことは敢えて言わなかった
オスカーが思いのほかセンシティブなことを、アンジェリークはよく知っていたので。
「ん?ああ、ジュリアス様が最後はしめてくださっただろう。きっと・・」
ビデオの出来不出来など、率直に言ってどうでもいいと思っているので、オスカーの返答はかなりいい加減で無責任である。
ビデオの出演を引き受けたのも、ドキンちゃんのコスチュームに身を包んだアンジェリークを見たかっただけだからだ。
アンジェリークはオスカーの思惑もしらず、相変わらず無邪気にオスカーに話しかけてくる。
「オスカーさまとお出かけできて、私楽しかったです。」
『確かにお嬢ちゃんとは、出仕するとき以外二人ででかけてなかったかもしれん・・』
アンジェリークと暮らすようになってから、二人が迎えた週末は5、6回といったところであろうか。
俗に言う密月が終わってまもない二人は、休日と言えば、屋敷はおろか自分たちの部屋からも、ろくに外に出ず過ごすことが大半だった。
もちろんオスカーがアンジェリークを手放さないからである。
オスカー自身は、休日の早朝に馬を駆り、早駆けなどを楽しむこともあったが、
元もとの基礎体力があまりに違う上、休前日は、またオスカーが体力の限界までアンジェリークを際限なく求めるものだから、
アンジェリークは休日の朝はつかれきってぐっすり眠りこんでおり、とても早朝の乗馬などに誘える状態ではなかった。
だから、オスカーはその間一人で愛馬を駆り、帰ってきてから、シャワーを浴びる。
シャワーの音でアンジェリークが起きる事もあったし、オスカーがキスでアンジェリークを起こすこともある。
しばしば、キスだけではすまなくなってしまうのだが、それはそれとして、そのあと、二人でブランチを取る。
ブランチを取ったあとは、またアンジェリークをベッドに戻すといった休日を過ごしていた事をオスカーは思い起こした。
『・・うーむ、これでは、お嬢ちゃんを外出させてないといわれても反論できんな・・』
オスカーは先ほどリュミエールに指摘された事を、いやいやながら、思い起こした。
『しかし軟禁しているとまで言われる筋合いじゃない』
オスカーは即刻自己弁護に走ったが、アンジェリーク本人がどう思っているのか気になって質問してみた。
「お嬢ちゃんは、休日は外出したいのか?」
「え?ええ、お天気のいい日なんかは,オスカー様と二人でそとに行けたら楽しいでしょうね」
「・・そうか、じゃあ、今度の休みには二人で遠乗りにでも行くか?」
アンジェリークの顔がぱっと輝いた。大輪の華が開いたような笑顔をみせる。
「いいんですか?嬉しい。オスカー様、じゃ、私、ランチボックス一生懸命作りますね!」
瞳を輝かせるアンジェリークを見てオスカーは、ちょっと、あくまでちょっとだが反省する
こんなに嬉しそうな顔をするなら、もっと外に連れて行ってやれば良かったかなと。
そして、その嬉しそうな顔がまぶしくて、オスカーの口元が綻ぶ。
「ふ、公務で疲れているだろう?そんな事はシェフにまかせておけばいいんじゃないか?」
一番アンジェリークを疲れさせているのは自分なのだが、オスカーはそんな事は全く頭に思い浮かばないようだ。
アンジェリークの頬がぷぅっと膨らむ。
「オスカー様、私の腕を信じてないんでしょ?普段他の方まかせだから、そういう時くらい、オスカー様に何か作って差し上げたいんですもの」
オスカーが嬉しそうに微笑んだ。
「そんなことはないさ。でも俺はお嬢ちゃんのその気持ちが何より、嬉しいがな・・・」
そうだ、こんなかわいい事を、何気なく言う。
だから、ますますかわいくなる。愛しさが増す。
そしてまた、甘い欲望が頭をもたげだす。
「・・・そういえば、お嬢ちゃんはどうして胸が大きくなったか知りたいんだっけな・・」
「え?あ、はい」
「じゃあ、これから、俺がじっくり教えてやろう」
裏庭を通り抜けた二人は裏口から自分たちの屋敷に入っていった。

いくら女王陛下の命令でやった事とはいえ、オスカーはこの格好を使用人たちに見られるのはちょっと躊躇われた。
それもあって、わざと表玄関には回らなかった。
アンジェリークを隠すように抱きかかえて、自分たち夫婦の私室に向かう。
使用人たちは絶対自分が好き好んでアンジェリークにこんな格好をさせていると思うだろう。
仕事と言って信じるわけがない。
その点について、オスカーは自分が使用人たちからどんな目で見られているか、結構冷静だった。
自分のアンジェリークへの耽溺ぶりは端から見たら滑稽なほどだろうと、ちゃんと自覚していた
だからと言って、オスカーはアンジェリークへの惑溺を隠すつもりなど毛頭なかったが。
回りからどう思われようと、自分たちが幸せなら、オスカーはそれでいいと思っていた。
オスカーの行動原理は突き詰めてしまえばただ一つ、アンジェリークが嫌がるか、嫌がらないかだけだった。
それに、使用人たち、特に古参のものは驚きあきれながらも、自分の変貌ぶりを喜んでいるようだった。
執事などはアンジェリークがこの家に来たとき、感涙に咽びながらアンジェリークの手を取って
「お嬢様、いえ、もう奥様でいらっしゃいましたね。奥様とお会いになられてから、お館様は夜な夜なの外出も、
 聖地からの脱走もぱったりとお止めになられて、私ども使用人一同が密かに胸を痛めておりましたご乱行もすっかり影を潜められ・・」
などと、切々とアンジェリークに訴えたりしたものだから、オスカーは顔色を変えて執事の挨拶に横槍をいれたものだ。
幸いアンジェリークは執事の言葉の意味がよくわからなかったようだが。
ただ、使用人たちに恰好のうわさの種をわざわざまいてやることもない。
そう思ったオスカーは、使用人たちに見つかる前に夫婦の私室へと急いだ。

部屋に入って、かぎを掛ける。
「私、着替えてシャワー浴びてきますね」
とアンジェリークが浴室に向かおうとした。
「お嬢ちゃん、待った。俺のところにちょっとおいで。」
オスカーはベッドのわきで手袋をはずし、サイドテーブルにぽんと放り投げながら、アンジェリークを引きとめた。
オスカーの心にちょっとした悪戯心が芽生えたのだ。
『あのかわいい衣装をお嬢ちゃんに自分から脱がせてしまう手はないな・・』
「なんですか?オスカー様?」
オスカーを疑う事をしらないアンジェリークはぴょこぴょことオスカーに近づいてきた。
オスカーはアンジェリークの腰を軽くだきよせると、突然沈痛な表情でアンジェリークに謝りはじめた。
「お嬢ちゃん、すまなかった。俺はお嬢ちゃんにあやまらなければならない・・」
真剣な面持ちでアンジェリークに訴える。心の中でにやにや笑いながら。案の定アンジェリークはびっくりしたようだ。
「ど、どうしたんですか?オスカー様・・」
「俺はお嬢ちゃんが外出する自由を奪っていた。
 お嬢ちゃんが出かけたい気持ちにも気付かず、いつもお嬢ちゃんを自分の手元に縛り付けていた。許してくれ」
「そ、そんな事ないです。私はオスカー様のそばにいられれば幸せなんです。そんな事思ったこともないです・・」
アンジェリークが可哀想なほど、うろたえている。
オスカーは、ちょっと可哀想になったが、ここはぐっと我慢して、さらに打ちひしがれた様子をしてみせた。
「リュミエールに君を幽閉かよくて軟禁しているも同じだといわれてしまった・・すまない・・」
「そ、そんな事までリュミエール様おっしゃってたんですか・・」
「俺は自分で自分を許せない・・君を心ならずも(うそである)軟禁してしまっていたなんて・・」
「オスカー様、私、軟禁されてるなんて思った事、いちっどもありません!私がオスカー様のそばにいたいから、いるんです!
 だから、もう、そんな事おっしゃらないで・・」
「いや、お嬢ちゃん、俺は自分が許せないんだ。どうか、俺を殴ってくれ。」
「えええええぇ〜〜っ!わ・・私、そんなこと、できません!」
ますます、アンジェリークは動揺してしまった。泣き出しそうな顔になる。
『お嬢ちゃん、すまない』こう思いながらもにやつきそうな口元を引き締め、オスカーは心を鬼にして、セリフを続けた。
「いや、そうしてくれないと、俺の気がすまない・・本気じゃなくていいんだ。
 ほら、今日やったお芝居のVTRをオリヴィエに見せられたとき、女のこのキャラクターがかわいいパンチをだしてただろう?
 女のこがお嬢ちゃんしかいないかから、今日の芝居には登場しなかったが・・あんな感じでいいから・・」
アンジェリークは明らかにほっとしたようだ。しかし、それでも、まだ、すすんで行う気にはなれないらしい。あたりまえといえば、あたりまえだが。
「ま、まねっこでパンチすればいいんですね?そうしたら、オスカー様のお気がすむんですね?」
「ああ、セリフも忘れずにな・・・」
オスカーはアンジェリークにすまないと思う気持ち20、噴出しそうになる気持ち80といったところか。
渾身の精神力で沈痛な表情を保っている。
アンジェリークは女のこキャラクターのセリフを思い出したようだ。
こちらはこちらで渾身の勇気を振り絞っているようである。
「じゃ・・じゃ・・いきますよ・・めろんぱんなの・・じゃない、アンジェドキンのめろめろぱ〜んち!えいっ!」
アンジェリークが軽く丸めたかわいいこぶしで、オスカーの胸板にぽすんと触れた途端
オスカーはにやりと笑って、
「おれさま、めろめ〜ろ〜!」
と言うや否や、ぐぁばと、アンジェリークをベッドの上に押し倒した。
「きゃんっ!」
アンジェリークは何がなんだか訳がわからず、軽い悲鳴を上げた。
オスカーはアンジェリークが抵抗する暇を与えず、細い手首をその大きな手で一まとめに掴んで
アンジェリークの頭上に固定するように、おさえつけた。
そのまま、アンジェリークに激しい口付けを与える。軽く開いた口に強引に舌を深く差しいれ、その舌で口腔内を犯す様に貪る。
「んむむぅ・・・」
アンジェリークは瞳を大きく見開いたまま、されるがままになっている。状況を理解できていないようだ。
オスカーはアンジェリークの舌をきつく吸い上げながら、あいた片手で衣装の上からアンジェリークの乳房を激しく揉みしだきはじめた。
横たわっていても、そのお椀を伏せたような形のいい乳房は、横に流れることもなくつんと上を向いている。
そのいただきの頂点付近を大きな掌でこするように刺激する。
深い口付けと、乳房への愛撫にアンジェリークの瞳ははやくも靄がかかったように、とろんとし始めた。
その様子を見て、オスカーはアンジェリークの手の戒めはゆるめず、唇だけを解放した。
「・・なに?・・オスカー様・・いったいどうなさったの?・・」
アンジェリークが弱弱しくオスカーに尋ねる。未だにオスカーが何をするつもりなのかよくわかっていないようだ。
オスカーはにやにや笑いながら、アンジェリークにこう言った。
「俺は君のパンチで、君にめろめろにされたからな。女にめろめろにされた男がする事と言ったら、一つしかないだろう?」
ここまでいわれて、アンジェリークは初めてオスカーの意図を理解した。
瞳にみるみる生気が蘇り、翠の焔が燃え立った。
「ひどいっ!オスカー様!私をだまして、からかったのね!」
どうやら、怒らせてしまったようだ。無理もないがと思いながらオスカーはその強い光を放つ翠碧の瞳に見惚れてしまう。
なんて美しく輝く生きた宝石なのだろうと。
「もうっ!オスカー様のばかっ!わたし、私、本気で心配したんだからぁ・・」
最後ははんべそになってしまい、眦に涙が滲み出す。
しかし、その瞳の美しさは涙にも曇ることはない。
オスカーは、唇で涙をすっとかすめるように拭うと、真面目な顔でこう言った。
「すまない、お嬢ちゃんがあんまり、かわいいから、ついからかいたくなっちまってな・・
 でも、お嬢ちゃんの事を今すぐ抱きたいってのは本気だぜ?」
「んもうっ、かわいいって言えば、私が誤魔化されると思って!
 ・・・え・・今すぐ?・・よ、夜じゃだめなんですか?せ、せめて、シャワー浴びてから・・」
「ほら、お嬢ちゃんはそうやって、すぐ俺の腕から逃げようとする・・小鳥みたいに・・
 だから俺はワナを仕掛けてお嬢ちゃんをつかまえなくちゃならなくなるんだ・・」
「そ、そんなぁ・・・」
「なんにせよ、お嬢ちゃんが俺を『俺様、めろめ〜ろ〜』にしたんだからな?さ、責任は取ってもらうぜ?」
「そ、そんなのこじつけです、詭弁です、屁理屈で・・んむむむむぅ・・」
アンジェリークの抗議の声はまたもや、オスカーの唇に飲みこまれた。

オスカーは再びアンジェリークの唇を貪りながら乳房を激しく揉みしだきはじめた。
多少強引にことを運んでも、アンジェリークが受け入れてくれるとわかっているから、できるのだ。
アンジェリークの体はオスカーの与える快楽に、心はアンジェリークを求める真剣な思いに、抗しきれずに開くと踏んでいるからだ。
もちろんアンジェリークを心から大切に思うオスカーは、
アンジェリークが自分から体と心を開く前に強引に押し入るようなことは絶対しないし、するつもりもない。
アンジェリークが心から自分を求めてからでなくては、自分もアンジェリークも快楽を極めることはできないと、わかっているから。
そして、アンジェリークが快楽を極める為に道筋を作ってやるのが自分の役目だとオスカーは思っている。
アンジェリークが快楽におぼれることこそ、オスカーの望みだから。
オスカーは衣装の上から乳房を揉みながら、乳房の先端にあたりをつけ、指で乳首を探る。
親指と人差し指で摘むように乳房の頂点を狙って愛撫すると、果たせるかな、乳首が衣装を持ち上げて存在を露にし始めた。
その乳首を今度ははっきりと摘み上げ、くりくりとこよりをつくるように指をうごかして愛撫する。
厚手のスパン地をしっかり持ち上げて、乳首がくっきりと浮かび上がってくる
その乳首をオスカーは衣装の上から、口に含んだ。
生地の上からこりりと、軽く歯で噛み、乳首の弾力を楽しむ。
直接行うと刺激が強すぎて痛みが勝ってしまう愛撫も、布地が丁度良い緩衝材になって、その刺激はあまやかになる。
「あんっ・・・」
思った通り、アンジェリークが甘い声をあげる。
オスカーの唾液に濡れた衣装がアンジェリークの肌にはりつき、よりはっきりと乳首の形が透けて浮かび上がる。
オスカーは立ちあがった乳首を布の上から何度も噛みながら、もう片方の乳首は指で先端を引っかくようにこすりあげる。
両の乳首から全身に走りぬける快感に、アンジェリークは全身の力が抜けていく。
オスカーに押さえられていなくても、もうその腕にはオスカーを跳ね除ける力も、そんなことをする気も微塵もなかった。
オスカーに刺激を与えられるたびに、吐息とともに自然と声が漏れでてしまう。
布が先端にこすれて、直接あたえられるものとは、それはまた違った快感なのだが
アンジェリークはその曖昧な刺激に、もどかしいような思いを抱いてしまう。
『オスカー様の唇・・もっとちゃんと感じたい・・・こんなこと思うの、変?』
アンジェリークは濡れた瞳で、自分の乳房に顔を埋めているオスカーをみやる。
アンジェリークが自分のことを見つめているのに気付いたオスカーは、微かに口の端をあげて、こう言った。
「どうした?お嬢ちゃん。俺になにか言いたそうだな・・」
オスカーはアンジェリークの手の戒めをほどく。
「・・オスカー様・・・あの・・・わたし・・」
「ん?どうして欲しいんだ?お嬢ちゃんは・・」
にやにやしながら、オスカーは尋ねる。わかっているんだわ、本当は、私の言いたいことは・・とアンジェリークは思う
袋小路に追いこまれた気分だった。
服の上からの愛撫も、わざと焦らすためのものかもしれない。
でも、自分から言わなければ、欲しいものは与えられない・・
オスカーと数え切れないほど愛し合って、アンジェリークはそれを学びつつあった。
「あの・・あの・・脱がせて・・直接触って・・」
アンジェリークはやっとのことで、これだけ言うと、耳まで真っ赤になってしまう。
オスカーはにやりと笑うと、アンジェリークの背に手を回し、ファスナーをおろすと衣装のえりを大きくはだけた。
肩を露にし、そのまま完全に乳房が姿を現すまで、衣装を引き摺り下ろした。
ただし、乳房より下には衣装を降ろさず露にするのは鳩尾のあたりまでに留める。うでもまだ抜かない。
アンジェリークの体は伸縮性のあるスパン地で軽く拘束されたようになってしまう。
オスカーは嬉しそうに露になったアンジェリークの乳房を見下ろすと、つんと上を向いてたち上がっている薄紅色の先端を口に含んだ。
「あんっ・・・」
アンジェリークが白い喉をのけぞらせる。
オスカーは乳房を掌で絞りあげながら、乳首の輪郭に沿って舐め、先端を舌先でつついた。
もう一方の乳首は親指と中指でこねるように摘み、人差し指の腹で先端をこすってやる。
「あっ・・あん・・くぅん・・」
アンジェリークは直接肌にうける愛撫に途切れなく声をあげる。
直接感じるオスカーの唇と舌の感触に、今まで感じていたものとは段違いの鋭い悦楽が胸の先端から全身を駆け抜けた。
オスカーは乳首を舌で嬲りながらも、アンジェリークに問いかける。
「お嬢ちゃんは、こうしてもらいたかったんだろう?」
「あっ・・そう・・そうなの・・オスカーさまぁ・・」
「ふっ、かわいいな、お嬢ちゃんは・・気持ちいいか?」
「あん・・気持ちいい・・気持ちいいです・・ああ・・」
「お嬢ちゃん、もっと舐めたり、吸ったりしてもらいたいだろう?」
ちゅっと軽く先端を吸ってオスカーが言う。
「ああっ・・はい・・いっぱい、いっぱい舐めて欲しいの・・・」
「こうすると気持ちいいだろう?気持ちいいから、もっとして欲しい、その気持ちがお嬢ちゃんの胸を大きくさせるんだ・・」
こういいながら、オスカーは乳首に甘噛みを与える。少し強めの刺激にアンジェリークの背がびくりとしなる。
「あっ!やぁんっ・・オスカー・・さま・・ほんと?・・」
「ああ、お嬢ちゃんが俺にもっと胸を触ってほしい、愛して欲しいと思うから、胸も大きくなるんだ。こうやっていっぱい愛してもらえるようにな」
実際はこの刺激に脳下垂体からエストロゲンという、女性らしさを増すホルモンがの分泌が増加して・・
なんてことをアンジェリークは知りたいわけではないだろうからと、オスカーはかなり修辞的な表現で事実を表した。
そして、更にアンジェリークを成熟させようと意図したわけではなく、
純粋にアンジェリークの乳房をこよなく愛しているオスカーは、執拗なまでに乳房への愛撫を繰り返した。
交互に乳首を強く吸っては、舌で舐り、先端を軽く噛んだ。
「ああっ・・そんなに噛んじゃ・・あぁん・・」
「だから、お嬢ちゃん、他の奴に胸が大きくなるわけは聞いちゃだめだぜ?他の奴らになんか教えてもらうなよ。それは俺の役目なんだからな・・」
「あっ・・あん・・私・・私も・・オスカー様じゃなくちゃ・・いや・・くぅん・・」
「ふ・・かわいいことを言ってくれるな、お嬢ちゃんは・・」
オスカーはもう一度アンジェリークの乳房を大きく口に含み、先端を舐めながら吸い上げた。
そして、空いた手をアンジェリークの股間に伸ばしていく。
腿を割って衣装のうえからその部分に触れると、そこはもう愛液が衣装の上までにじみ出て大きなしみを作っていた。
「ほら、お嬢ちゃんのここも、もう我慢できないみたいだな?服の上からでも、くちゅくちゅ言ってるぜ?」
「あぁん・・や・・」
「こっちも触って欲しいか?」
アンジェリークは、こくこくと首を立てにふる。その一生懸命な様子がまたかわいらしくて、オスカーは思わず軽く口付ける。
「じゃ、自分から足を開いてごらん?お嬢ちゃん」
アンジェリークはオスカーの言葉にゆっくりと足を開く。
「ふっ・・素直だな、お嬢ちゃんは・・そんなところがほんとうにかわいい・・」
オスカーはアンジェリークの衣装の脇から長い指を侵入させた。
衣装の下は網タイツと、衣装に響かないようオスカーが選んだTバックのショーツだ。
その網目と紐のような申し訳程度のショーツをかきわけ、オスカーの指は熱い坩堝のように蕩ける秘裂を探り当てた。
指に愛液をたっぷり絡ませてから、秘裂の上に息づいている花芽に指を沿え、アンジェリークを見下ろす。
アンジェリークはこれからオスカーに与えられるであろう更に強い快楽への期待に、頬を紅潮させ、瞳を欲情に濡らしてオスカーを見上げていた。
金の巻き毛、濡れている碧の瞳、ほんのり桜色に染まった肌。
「お嬢ちゃんは、小鳥・・そう、カナリアみたいだな」
なかでも一際よい声で鳴くという、羽毛が巻き毛のような、ローラーカナリア・・
「さ、お嬢ちゃん、君のかわいい囀りを、もっと聞かせてくれ・・俺だけにな?」
こう言ってオスカーは、花芽に沿えていた指を激しく上下させた。同時に舌を胸元から乳房の先端まで縦横に滑らせ、肌と言う肌を舐り尽くそうとする。
「あっ・・あああぁっ!」
予期していたとはいえ、いや、期待していたから、なおのこと、アンジェリークは花芽への鋭い刺激に激しく乱れる。
「ああん・・あん・・んんっ・・あぁっ・・」
「ああ、本当に、いつもいい声で鳴くな・・お嬢ちゃんは・・」
「あっ・・やぁん・・だって・・だって・・声出ちゃうの・・ああっ・・」
「それでいいんだ・・俺の小鳥・・」
オスカーは花芽をすりあげていた指をすべらせ、秘裂へぐっと差し入れた。
「ひぁんっ!」
中で指軽く曲げ、奥を探ると内壁がオスカーの指をきゅうっと締付けてくる。
その締付けを感じながら、奥に向かって指を突き入れると、アンジェリークの腰がびくんと大きく跳ねる。
「ああっ・・あっ・・やっ・・も・・もう・・」
「ああ、もっと感じたいのか?欲張りだな、お嬢ちゃんは・・」
オスカーはわざとこんなことを言う。
アンジェリーク自身は、もう充たされることを望んでいるのだろう。だが、オスカーのほうが、もっとアンジェリークの嬌態を楽しみたいのだ。
オスカーは一度秘裂から指を引き抜くと、鳩尾のところで留まっていた衣装をすべて引きずりおろした。
衣装と一緒にタイツと下着も降ろしてとりさる。快楽に上気している肌が、ようやく全部晒された。
オスカーも手早く自分の着衣を剥ぎ取る。自分の服はいつもの黒のアンダーだから脱ぐのは簡単だった。
アンジェリークはベッドに交差するように横たえられていたので、すんなりとした足はベッドの脇にたらされている。
その足首を掴んで大きく広げてから、オスカーは自分はベッドのわきに跪き、アンジェリークの股間に顔を埋めた。
手は秘裂を大きく押し開き花芽を露出させ、固くしこって艶々と輝いている花芽を舌で弾き、口に含んでは吸い上げる。
もう片手の指を再度秘裂に飲みこませ、長い指は肉壁をこすりながら奥を狙って突き入れられた。
「やっ・・あっ・・あああぁっ!」
服を脱がされる間、わずかな休息に息をついていた体は、この激しい愛技の刺激に耐えきれず、腰がびくびく跳ねまわる。
しかし、オスカーの舌と指はどこまでもアンジェリークを逃さず、愛撫がとまることはない
アンジェリークはきつくシーツを掴み、頭を左右に振りたてて、オスカーに懇願した
「やッ・・オスカー様・・だめ・・もう・・おねが・・」
「何をお願いしたいんだ?お嬢ちゃんは・・」
以前は、アンジェリークの体の様子を見計らって、言われなくても自分から挿入していた。
だが、アンジェリークの体が快楽をその身に刻みつけた証をオスカーは確かめたいのだ。
自分の与えた快楽が、アンジェリークの体と心に刻印されていれば、アンジェリークはそれを自分から求めてくるようになるはずだから。
「やっ・・オスカーさ・・意地悪・・しないで・・ああっ・・」
「ちゃんと言うんだ、お嬢ちゃん。言えるよな?言わないと、指で終わっちゃうぜ?」
オスカーが、わざと、指の抜き差しの勢いを強める。
指で乱れる点を刺激して、アンジェリークがもっと確かな量感を欲さざるを得ないように、追い詰めて行く。
「くぅっ・・オスカーさま・・オスカー様のが欲しいの・・あっ・・速く・・お願い・・」
オスカーがふっと口元を綻ばせる。
アンジェリークの体は、もうしっかり自分のものの感触を覚え、それに恋焦がれるようになってきている。
自分から強請るようになってきたことが、何よりの証拠だ。
「よく言えたな、お嬢ちゃん、そら、ご褒美だ」
オスカーは立ちあがると、ベッドのわきに投げ出されていたアンジェリークの足を大きくハの字に開いて、一気に秘裂を刺し貫いた。
「ひぅっ・・」
オスカーはそのまま激しく腰を打ち付ける。
自分の愛技にもう、アンジェリークの体は上り詰める直前まで高まっている。
焦らさず、高みを目指させてやろう。
そう、素直に強請ることができれば、それに見合うだけの快楽がもたらされることをアンジェリークの体に教えこみたい。
羞恥を押さえこむほどに、強く求めてくれれば、自分はいくらでも快楽を与えてやれるし、実際そうする。
それをアンジェリークの体に刻み付けたい。
そうすれば、アンジェリークはもっとオスカーを求めてくれるようになるだろう。
SEXの快楽は麻薬と同じだ。一度体が覚えれば、またその快楽を体は求めて止まなくなる。
官能の鎖で縛り、快楽と言う見えない檻にアンジェリークを閉じ込めてしまいたい・・自分から決して離れて行かないように・・
オスカーはそんなことを考えながら思いきり奥を狙って勢いよく、自分の物を突き立てる。
アンジェリークを信じていないわけではない。
むしろ、アンジェリークの自分に対するその真摯な思いにいつも、心は熱くなる。だから彼女をもっと欲しくなる。
だが、あまりに大事で、あまりに掛け替えがないから、心は根拠のない不安に苛まれる。
もし彼女を失ったらと思うと、恐怖に心は凍りつく。
だから、彼女をつなぎとめるために、快楽を利用する。
快楽をくびきに彼女を自分に縛り付けようとしてしまう。
そんなことをする必要はないと理性ではわかっていても、オスカーはそうせずにはいられないのだった。
オスカーは立ったまま、アンジェリークの足を掴んで、腰を持ち上げるようにして貫いているので、
アンジェリークの秘裂を自分の物が出入りする様が、はっきりと見える。
アンジェリークの愛液にてらてらと光る自分のものが抜き差しされる度に、紅い襞がめくりかえり絡みつく様子はオスカーの情欲をますます煽る。
「お嬢ちゃん、これがほしかったんだろう?」
「ああっ・・オスカーさまっ・・」
「お嬢ちゃんのここも、ほら、すごく喜んでる・・こんなに俺を締付けて、絡みついて・・」
「やぁっ・・そんな・・ああっ」
「素直になるんだ、お嬢ちゃん・・素直になれば、もっと気持ちよくしてやるぜ?」
傲慢とも取れるオスカーの言葉だった。だが、アンジェリークはオスカーの言葉が嘘でないことを知っている
頭でというより、自分の体がそれをよく知っているのだった。
『もっと?今よりもっと、気持ちよく?』
アンジェリークは、オスカーのこの言葉に最後の理性をも吹き飛ばされる
頭の中は、今与えられている快楽と、それを上回る快楽への期待で占められてしまい、もう何も考えられない。
新たな愛液があとからあとから止め処もなく溢れてくるのが、自分でもわかった。
「あっ・・オスカーさまぁっ・・気持ちいいの・・すごく・・・あぁっ・・」
「もっと気持ちよくなりたいか?お嬢ちゃん」
オスカーの心も熱くなる。そうだ、もっと官能の虜となれ、そして俺を求めろと・・
「んっ・・もっと・・もっとちょうだい・・オスカーさま・・」
「ああ、じゃあ、いっぱいついてやろうな・・」
「あっ・・あああっ!」
言葉通りオスカーはアンジェリークの最奥を狙って自分のものを激しく力強く突き立てた。
もう、アンジェリークに言葉もかけず、ひたすら、腰を打ち付ける。
「あっ・・ああっ・・だめ・・だめぇっ・・」
アンジェリークの秘裂がびくびくと収縮する。背中が大きく撓る。
オスカーはそれに耐えると、肩で息をしているアンジェリークの体をくるりと反転させ、息つく暇もなく後ろから分け入った。
「ひぁっ!」
「まだ、こんなもんじゃないぜ、お嬢ちゃん。もっと気持ちよくしてやると言っただろう?」
アンジェリークの腰をぐっと自分のほうにひきつけて、更に深く挿入すると、そのまますばやく腰を律動させた。
「ふぁああっ」
ぱんぱんと勢いよくオスカーの腰が自分の臀部に打ちつけられる。
その振動が、またアンジェリークを狂わせる。
「あっ・・あっ・・だめ・・また・・またおかしくなっちゃう・・」
「いいんだ、それで、もっとおかしくなって・・」
オスカーは片手を秘裂に伸ばし、激しく突き上げたまま、花芽を摘んでこすりあげた。
「ひぅっ!」
その刺激にまたアンジェリークは軽く気をやってしまう。
しかし、オスカーはまだ突き上げを緩めない。アンジェリークが高みに上ったまま、降りてくるのを許さぬように。

アンジェリークの腰をしっかり抱えこみ、リズムをつけて深く肉壁を抉りながらオスカーはアンジェリークの姿態をみおろす。
アンジェリークのほくろ一つない白い背中が、なだらかな坂道のようにオスカーの視界に広がる。
アンジェリークは顔をシーツに突っ伏し、過ぎる快楽にすすり泣きを上げている。
初めて後ろから貫いたとき、オスカーはアンジェリークが羞恥に嫌がるかと少し不安だったのだが、
アンジェリークはオスカーの予想外にこの体位に乱れた。
より深めの結合と、直接オスカーが見えない不安感が逆にアンジェリークを燃えあがらせる様だった。
お互いの肌を求めたいときはやはり、正面から見詰め合い、抱きしめあいながらの挿入のほうが充実感は大きいし
アンジェリークも安心するようだったが、中途で快楽をより高めるのに、後背からの挿入は効果的だった。
より深い愉悦をアンジェリークに与えると約束したオスカーは、今回は敢えてこの体位で最後までいくことにした。
「お嬢ちゃん、いいか?」
「あっ・・あぁっ・・はっ・・あぁ・・」
もう、アンジェリークは言葉をだそうとしても、出ないようだ。口から漏れ出すのは激しく苦しげな吐息だけだ。
「このまま、またイきたいか?」
アンジェリーク必死に頷いた。羞恥に躊躇う余裕はもう微塵もないようだった。
『そうだ、それでいい・・』
オスカーは更に、速く激しく腰を打ちつけ始めた。アンジェリークの腰を壊さんばかりの勢いで。
「ああああっ!」
アンジェリークの秘裂がきゅっと窄まった。
だが、それに逆らうようにオスカーは自分のものを引き抜いては、また勢いよく奥に向かって差し貫く。
アンジェリークは立て続けに達しているようで、秘裂は不規則に収縮し続けオスカーを絞り上げようとする。
そのアンジェリークの様子に、オスカーはもう充分だろうと判断する。それにオスカー自身もさすがにもう限界だった。
アンジェリークの熱く、きつく、それでいて柔らかく絡みついてくる肉襞に突き入れるたびに、
オスカーは自身が溶けて行きそうな錯覚を覚えた。
引き絞りに絞っていた欲望を解き放つ。
自分のものがアンジェリークの内部でどくどくと脈打ち、熱く精を迸らせる瞬間、例え様もない開放感がオスカーの全身を駆けぬけた。
そして、自分の精に胎内を満たされたアンジェリークが一際高い声をあげてから、スローモーションのように崩れ落ちて行く様子を
オスカーは、この上ない満足感をもって眺めていた。

シーツに突っ伏したまま、まだ息を荒げているアンジェリークのわきにオスカーはこしかけた。
アンジェリークの体を表に返して溢れ出す愛しさのままにその唇に軽く口付ける。
アンジェリークがオスカーの首に腕をまわし、素直に口付けに応じてくる。
そんなアンジェリークの態度がまた嬉しくて、そのままアンジェリークの体の上に、だが、体重はかけない様に倒れこみ、
その華奢な体を抱きしめてから、アンジェリークの隣に横たわった
肩をだきよせると、アンジェリークはその小さな頭をちょこんとオスカーの胸にのせる
オスカーは放出した後の軽いけだるさに捕らわれていたが、それは決して不愉快なものではなかった。
むしろ、心はとても充たされていた。肩に感じる柔らかな重みがより、充実感を増していた。
心地よく頭を空白にしていると、アンジェリークがオスカーに話しかけてきた。
少し、不安そうな声音で・・
「オスカー様・・私、この頃変なんです・・」
「ん?なにがだ?お嬢ちゃん」
不安そうなアンジェリークの様子にオスカーの意識が彼岸から戻ってきた。
「オスカー様に触れられるだけで、体が熱くなっちゃうんです。あの・・今みたいなことをしてなくても・・
 オスカー様と腕がふれたり、オスカー様に肩を抱かれたりするだけで、なんだか体中が熱いもので一杯になっちゃうんです。」
オスカーが嬉しそうに微笑んだ。それは自分も同じだからだ。
何気ないアンジェリークの態度や、微笑みに愛しさが体中に溢れてしまい、その思いのままにアンジェリークをつい求めてしまうのだから。
「・・・それは、でも嫌な感じじゃないだろう?」
「・・はい、でも、なんだか、涙が出そうになっちゃうことがあるんです。オスカー様と一緒にいられて嬉しいのに、
 胸が苦しくなっちゃって、泣きたくなっちゃうような気持ちになることがあるんです。こんなの変ですよね。オスカー・・きゃっ!」
オスカーが突然アンジェリークをきつく抱きしめたのだ。
抱きしめながら、オスカーはアンジェリークに囁いた。
「それは、俺たちがあんまり幸せだからだ、お嬢ちゃん。この幸せがあまりに大事だから、訳もなく不安になるんだ。
 でも、それは俺も同じなんだぜ。」
「オスカー様も?」
意外そうにアンジェリークが尋ねてきた。
「ああ、お嬢ちゃんは俺を愛してる。俺もお嬢ちゃんを愛してる。わかりきったことなのに、不安になる。
 お嬢ちゃんがどこかにいってしまったら、俺の元からいなくなってしまったら、と心配になってしまう。
 そんなことは有り得ないと、頭ではわかっているのにだ。」
そう、だから、彼女を縛りたくなるのだ。自分の不安をかきけす為に、過ぎるほどの快楽で。
「でも、お嬢ちゃんも同じように、俺のことを大事に思ってくれてることがわかって、俺は嬉しい。
 大事じゃなかったら、それが無くなった時のことを考えて不安になったりしないからな」
「当たり前じゃないですか!私が何より大事なのは、オスカー様です!私、自分より大事です!」
「ああ、でもそれも、同じなんだ。俺は自分より君が大切だ。お互いこう思えることはこの上ない幸せだ。
 だからこそ、時たま不安に駆られるんだ。あまりに大切なものがあるから・・
 俺たちの幸せは始まってまだ、日が浅い。俺たちが不安になってしまうのも、その所為もあるだろう
 きっとこの幸せをもう少し、当たり前のものと思えれば、明日もきっと、同じように幸せな日なんだと思えるようになれば
 この不安は少なくなるのかもしれないな」
「だったら、私、少しくらい不安なままでもいいです!」
アンジェリークが思いがけず、強い口調で言い募った。
オスカーは意外な思いに捕らわれる。彼女は不安なままでいいというのか?真意を掴みかねる。
「お嬢ちゃん?」
「だって、私、オスカー様といっしょにいられること、当たり前だなんて思いたくない。
 こんなに大事なこと、当然と思ったりしたら、撥が当たると思います。
 私、いろんなことや、いろんな方に感謝してます。
 自分が聖地にこられたこと、ロザリアが女王になってくれたこと。そして、オスカー様と会えて、好きになって
 オスカー様も私を好きになってくださったこと・・どれか一つ欠けても今の私たちはなかった・・
 だから、私、感謝する気持ちをわすれたくない。当たり前なんて思っちゃいけないと思うんです。
 ちょっとくらいの不安な気持ちは、それだけ幸せだからなんでしょ?オスカー様?
 それなら、不安な気持ちが起きそうになったら、ああ、自分は今すごく幸せだからなんだなぁって、思えばいいんですね?
 泣きたくなっても・・・オスカー様のことが好きすぎて、しあわせ過ぎて泣いちゃってもおかしくないんですね?オスカー様?」
アンジェリークのこの言葉に、オスカーは更にきつくその体を抱きしめた。
「・・・まったくお嬢ちゃんは強いな・・ほんとうにお嬢ちゃんには敵わない・・」
「?オスカーさま?」 
アンジェリークはわけがわからず、きょとんとしている。
「そうだな、俺もそう思うことにしよう。不安になっても、それはしあわせだからなんだものな?
 君と一緒に暮らせることを当たり前なんて思うようになったら、そのほうが悲しいことだな・・」
「いえ、あの、それは勝手に私がおもったことで、オスカー様に私の考えを押し付ける気はないです〜」
「いいんだ。俺もそう思うことで救われる・・そんな気がする・・ただ・・そうだな・・
 もしお嬢ちゃんが俺を好きな気持ちで胸が苦しくなるようなことがあったら、泣くまで我慢しなくていい。
 好きって気持ちを俺に伝えればいい。そうしたら、楽になるんじゃないか?」
「オスカー様・・」
「少なくとも、俺はそうしてるぜ?お嬢ちゃんのことがかわいくてたまらなくなったら、今みたいに遠慮なく発散してるからな?」
にやりと笑って、オスカーはちゅっと軽くアンジェリークに口付けた。
「あの・・あの・・じゃ、私がいきなり抱きついたり・・キ・・キスとかしちゃっても、オスカー様、驚いたり、嫌だったりしませんか?」
「俺がお嬢ちゃんに突然キスしたら、お嬢ちゃんは嫌か?嫌だった事があるか?」
アンジェリークがすごい勢いで、ぶんぶんと首を横に振った
「びっくりする事はあっても嫌だった事はないです・・」
『今日みたいに・・きゃっ、私ったら何考えてるの!』
アンジェリークは頬が熱くなってしまう。
オスカーはアンジェリークの内心を知ってかしらずか、嬉しそうな顔で
「だろう?俺がおどろいたような顔をしたとしても、それは嬉しい驚きってやつだ。だからお嬢ちゃんも遠慮なく
 そう言う気持ちは表していいんだ。俺もそうしてくれたほうが嬉しい。」
部屋の中は夕刻を示す暖かな朱色の光に充たされつつあった。
「さ、とりあえずは、着替えて日々の糧に感謝を捧げにいくか?そろそろ、夕食の時間だろう?」
「・・そういえば、お腹ぺこぺこです。」
「激しい運動をしたからな?」
「・・・ばか・・・」
アンジェリークの顔が赤いのは、夕日の所為ばかりではなかった。
二人はベッドからおきあがって、寛いだ部屋着に着替え、食堂に向かった。
食事の間中、給仕をしている使用人の視線がなにかおかしいことに、アンジェリークは気がついた。
なにかいいたそうな目つきで、しかし、こちらが視線をむけると、さっと視線を反らしてしまう。
たまに、含みわらいのようなものも聞こえるような気がする。
オスカーは、別段なにも気にしていないようだが、アンジェリークはなにか腑に落ちなかった。
食事が終わり、二人で腕を組んで部屋に戻る途中、アンジェリークはふと上を見上げて、固まってしまった
使用人たちのもの言いたげな視線の意味がようやくわかった。
「オ・オスカー様!触覚忘れてます!触覚!まだ、頭にしっかり付いてます!」
情事の最中か、着替えた時かはわからないが、何かの拍子にオスカーの頭の触覚がすこし後ろのほうに移動しており、
正面からよく見えなくなっていたため、お互いこれの存在をすっかり失念していたのだった。
次の日から少なくとも一週間、オスカー邸の使用人たちの間では、この触覚に対する様様な憶測が
実しやかに、かつ、かまびすしく飛び交ったことは言うまでもなかった。



「ばいばいき〜ん」「は〜ひふへほ〜」とオスカー様に言わせたからには、絶対
「俺様めろめ〜ろ〜」も言わせなくては気がすまなくて、そのためのシチュエーションをない知恵絞って書き上げました。しかし、こんな事にばっかり知恵絞ってどうする、わたし・・(爆)

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