「オスカー、今日も遅いのかな…」アンジェリークは見るともなしに壁の時計をみた。もう夜半過ぎといってもいい時刻だった。
最近、オスカーはとても忙しそうだった。いや、アルテマ・ツーレのCEO(最高経営責任者)に就任してからというもの、オスカーが忙しくない時などないのだが、最近それに拍車がかかっているようだった。
アンジェリークは、オスカーの会社内で仕事をした経験はないので、オスカーの仕事の詳細はよくわからない。だが、オスカーはいつもアンジェリークに、今、どういう類の仕事に取り組んでいるかは、アンジェリークにも簡潔に説明してくれている。こういうプロジェクトにかかっているから、今日は誰それと会食だ、出張だ、会議で遅くなる等々、可能な限り知らせてくれている。
そして、最近、どこかの国相手に大きな受注を取れるかどうかで、同業他社とアルテマ・ツーレがしのぎを削っているらしいことは知っていた。そのせいで、最近帰宅が遅いことも、オスカーがいつになくぴりぴりしていることも…
遅くなった時は先に休んでいていいと言われているが、アンジェリークはもう少し待ってみようと思っていた。オスカーと少し話したいこともあったし、他愛無い会話で、オスカーの神経をささくれ立ちが少しでも収まればいいのだけど、気分の変わる切っ掛けになればいいのだけど…と思うからだ。
普段のオスカーは気持ちの切り替えを器用に行う方だ。天性の物と言うよりは、若い時からそれを技術として身につけてきたからのようだった。限られた時間を無駄なく有効に使うための、そして自分の能力を最大限に発揮するための方便として。
なのに、そのオスカーが最近、ずっと神経を昂ぶらせている。いつも不機嫌だとか、怒っているのではない。ただ、緊張している。張り詰めている。そして、その緊張を中々解きほぐせないでいるようなのだ。気を休めたいのに、休めないとでもいうようなもどかしさを、オスカーは自分でも持て余しているみたいで、アンジェリークは見ていて痛ましくなってしまう。
「今度のお仕事、大変なんだろうな…」
ということまではわかっても、具体的に何が大変なのか、なぜ、オスカーがそこまで気を張り詰めているのかがわからない。そしてオスカーはどんなに忙しそうでも、自分には殊の外優しく接してくれるので、尚更、アンジェリークはなんとかオスカーの気を休ませてあげられたら、と思う。だが、具体的にどうしてあげるのがいいのか、ということになると考えこんでしまうのだ。
『オスカー…私にできること、何かないのかな…』
ふと、オスカーの机が目についた。夫婦の部屋に置いてあるこの古風なライティングビューローは、仕事用のものではない。オスカーの趣味の私物や雑誌などが一時的に置かれていることが多いようだった。
『そういえば…オスカー、最近よく、この机で何か熱心に見ていたわ…』
アンジェリークが浴室から出てきたり、着替えてクロゼットから出てきた時、オスカーが何か真剣な横顔で机に向っていたのを見た覚えがあった。自分の存在に気付くと、オスカーはすぐ柔らかな笑みを向けてくるので、それはほんの一瞬のことだったが…
「オスカー、何を考えていたんだろう…聞いてみてもいいのかな、聞かない方がいいのかな…」
そんな事を一人呟きながら、オスカーの気持ちになってみたくて、椅子を引き、ビューローの天板を開けてみた。品のいいステーショナリーが綺麗に整理された内側の棚の一角に、一際目をひく赤い柄のナイフと、明るいブルーの表紙の本が一緒におかれており、落ち付いた色調の机周りの中でそこだけが異彩を放っていて目をひいた。
そのナイフにアンジェリークは見覚えがあった。
「これ…オスカーと知り合って初めてのお誕生日に私があげたナイフ?…」
アンジェリークは、ナイフを実際に手にとってみた。
刃は綺麗に研がれている。柄の部分は若干汚れていたが、却ってそれが、いかにも長年愛用しているとでもいうような嗄れた味わいとなっている。
「オスカー、まだ使ってくれていたんだ…」
その事実にアンジェリークは心がじんわりと熱くなる。同時に、ナイフの下に置かれていた本が気になってそれも手にとってみた。新しいものではない。こちらもかなり古い本だ。表紙は元は鮮やかなブルーだったらしいがかなり色褪せている。本の角はつぶれて丸くなっている。表紙のかわいらしいうさぎのイラストがオスカーの持つ本にしては、不釣合いなイメージだった。絵本…というよりは童話か児童文学のようだ。そして、その本をぱらぱらとめくってみて、アンジェリークの眉が微妙に顰められた。
「これ…もしかして…オスカー…」
この本が、もしかして、オスカーの今の仕事と関係してるの?…と考えたその時だった。階下で扉をあける音が聞こえた。アンジェリークは本を机に置くと、反射的に部屋を飛び出した。
「お帰りなさいませ、ご主人さま…」
「ああ、自分でやるからいい。おまえも、もう休め」
玄関先では、オスカーが上着を受取ろうとする使用人を手で制していたところだった。
「お帰りなさい、オスカー!」
アンジェリークは階下に降りるより先に、階段の欄干の上からオスカーを迎える言葉を投げた。
オスカーが弾む毬のような愛らしい声に上を見上げ、嬉しそうに微笑んだ。
「お嬢ちゃん、先に休んでいてよかったのに…」
「だって…」
アンジェリークははにかむように笑んで、少しもじもじした。
オスカーは手で合図して使用人を下がらせると、二段抜かしで階段を駆け上がってきた。
アンジェリークは両手を広げてオスカーに飛び付くように抱き付き、背伸びして頬にキスをした。
「お帰りなさい、オスカー、お疲れ様」
「ただいま、お嬢ちゃん」
オスカーもアンジェリークの頬にキスを返すと、アンジェリークの肩を抱いて夫婦の部屋に入っていく。
「遅くまでお疲れ様です、オスカー。お風呂でもはいる?」
「ああ、でも、俺が遅い時は、本当に無理に起きてなくていいからな?」
ネクタイを無造作に緩めていたオスカーは、向直って、掌中の珠を慈しむようにアンジェリークの頬を大きな手でそっと包んだ。
「…大事な身体なんだからな…」
「ええ、無理をしたりはしないわ……だって…オスカーとの赤ちゃんだもの…大事にします…」
「俺とお嬢ちゃん2人の…な」
オスカーは背後からアンジェリークの腰に腕を回し、まだなだらかな腹部を撫でさするようにして抱きよせた。アンジェリークは振り向きざま、晴れがましいような、照れているような、まぶしいほどの笑みをオスカーに返す。その笑みにオスカーが口付けで応えようとした時、アンジェリークが何かを思い出したように話を始めた。
「あ、そうそう、それで、オリヴィエ先輩にも今日、事情を話してきたんです…」
「今日は、オリヴィエのところに行っていたのか?仮縫いの予定でもあったのか?」
オスカーが旧友であり悪友であり、現在でも最も親しい友人の名前に顔をほころばせた。
「ええ、それで急で申し訳ないんですけどって来期のドレスはキャンセルしてきたんです…これからしばらく社交には出られないだろうし…身体の線が戻る頃には、もう次のシーズンになってしまっているからどちらにしろ今注文するドレスは着られませんし…もしかしたらずっと?イメージモデルはもう無理になっちゃうかもしれませんって…」
「あいつ、惜しがっていただろう?お嬢ちゃんはすっかり《オリヴィエ・デュカーティ》の歩く広告塔だったからな。ちょっと古いがディオールにおけるグレース・ケリーみたいなイメージモデルとして、お嬢ちゃんの宣伝効果はバツグンだったみたいだからな。お嬢ちゃんのソワレはいつも雑誌の注目の的だったし、しかも美しく愛らしいクラウゼウィッツ夫人のおかげで我がクラウゼウィッツの株も随分あがったんだぜ?」
アンジェリークは、ほっとして話を続ける。オリヴィエの近況を話すことで、オスカーの眼差しが柔らかくなる。オスカーの切れ長の目の下に濃い陰影が見えるのは、部屋の照明のせいだけではないとわかるから、尚更アンジェリークは楽しい話題を供したかった。
「そ、そんな…あ、いえ、そしたら、オリヴィエ先輩ったらすごく喜んでくださって、おめでとうって言ってくれた後に『よし!じゃ、これを機会にデュカーティもマタニティファッションにまずは進出しようかな、その後、あんたたちのベイビーが産まれたら、子供服ブランドを立ち上げさせてもらうよ!せっかくイメージを喚起させてくれるこーんなにいい素材がいるんだもん、営業多角化のいい切っ掛けになるわ!』なんておっしゃって、私のイメージでとりあえず、マタニティブランドの企画を立てるそうなんです…」
「抜け目がないというか、ちゃっかりしてるというか…まあ、それくらい目端が効かないと変遷の早いファッション業界でトップは張れないんだろうな」
オスカーが軽く苦笑する。その目端の利く友人を高く評価していることが口調と表情からはっきりとわかる。
「ただ、オリヴィエに協力するのはいいが、十分身体は労ってくれよ?あいつになんて気を使う必要ないからな。イメージを無限に喚起させてやってるだけでも、十分すぎるほど貢献してるんだから、仕事としてのモデル業はしばらく控えた方がいいんじゃないか?」
「あ、はい、私も前みたいにスタジオまで行って写真を撮るようなことは勘弁してもらいますし。それに今から企画だと、実際には赤ちゃんが産まれるまでに製品化するのは間に合いませんもの、私がマタニティモデルになるってことはありません。あくまでオリヴィエ先輩がデザインを考える上でのイメージってことみたいですよ?」
「それを聞いて安心したぜ。俺たちの子供にしたって、ベビーモデルに向くとは限らないしな」
「ええ、モデルじゃなくてもいいそうです。ただ、具体的なイメージ対象がないと、男の方は婦人服や子供服のデザインがしにくいんですって。『だから、赤ちゃんが産まれたらすぐ知らせなさいよー!お祝いもって駆けつけるから!』っておっしゃってくださった後に『ついでに、男の子と女の子の双子でも産んでくれるとすっごく嬉しいんだけどなー、どっちもデザインできて…で、まだ、どっちかわからないの?』って聞かれちゃいました」
くすくす笑いながらアンジェリークが報告する。
「まったく呆れたやつだな。こんなに早くにわかるわけないだろう…って以前に、図々しいにも程があるな…あいつの都合で双子がそう上手く産まれる訳ないだろうが…だが…」
オスカーはアンジェリークのお腹をそっと撫でた。
「男の子と女の子の双子か…それはそれで楽しいな。俺はお嬢ちゃんそっくりの女の子がいいが…」
「私はオスカーそっくりの男の子がいいです」
「それならやっぱり双子が効率よくていいんじゃないか?ん?」
「こればっかりは、わかりませんよ、オスカー…望んだからってそうなるものでもないし…」
くすくす微笑むアンジェリークにオスカーも柔らかな瞳で笑みを返す。
「ああ、無事に産まれてくれればどっちでもいいんだ、本当は…」
「ええ、私も…」
オスカーはアンジェリークを改めて抱き寄せ、軽く口付けた。
「ふ…こうしてお嬢ちゃんの笑顔を見ると、実際、疲れが吹っ飛ぶな…」
「オスカー…」
「いや、起きて俺を待っていろなんてつもりで言ったんじゃないぜ?もちろん眠い時は寝てくれよ?お嬢ちゃんの体が何より大事だし、それにお嬢ちゃんの寝顔も笑顔と同じ位かわいいからな…いくら見ても見飽きないほどかわいいぜ?いや、それで言ったらどんな顔だってかわいいんだが…」
「オスカーったら…」
「うん、そうだな…でも、特にあの時、感極まって俺の名を呼ぶ時の顔が一番かわいいな…」
「も…やん…」
「嘘じゃないぜ?さ、今夜も俺に一番かわいい顔を見せてくれるか…?」
そういってアンジェリークの頤をオスカーが摘み上げたその時だった。オスカーの懐中で携帯電話がやかましい呼び出し音を響かせた。
「ちっ…」
オスカーは苛立たしげに電話を取り出して通話ボタンを押した。
「ああ、俺だ。…どうした?…………何?価格が漏れていたかもしれない?故意にリークしたものでなくか?…わかった。5分だけ待て、追って指示を出す」
オスカーは一度通話をきると、改めてボタンをプッシュする。
「夜分恐れ入る、ジュリ…オーディーン先生はご在宅だろうか?クラウゼウィッツというものだが………ああ、ジュリアス先輩、夜分恐れ入ります、オスカーです。申し訳ありませんが……対P国の入札で…ええ、価格の件で…そうです…当初の予定価格よりあと三割は…はい、ダンピングや独禁法に抵触する怖れは?…二割なら確実ですか?…はい…ええ、これだけは譲る訳にはいかないので…だが、法に触れる訳にも…ええ、はい…わかりました…」
オスカーは指先で通話を切ると改めて、別のボタンをプッシュした
「俺だ。例の件だが、当初予定価格よりまず一割下げてみろ。他社が対抗して下げてきたら、様子を見つつ更に一割追加だ。そう、向こうの出方次第だが二割までならOKだ、ダンピングにはあたらないと顧問弁護士が言っている。採算は考えなくていい。これで稼ごうとは思ってないからな。利益は別で出せばいい。少なくとも品質では絶対負けないから自信を持って売りこめ。この価格で、この品質の物は絶対余所では出せない、ということも強調しろ。後日処理費用がかからないから、結果的には絶対に得になる…国際関係における対外的なイメージアップにも効果的だし、財政的な面でも有利だと。そこを強調して売りこむんだ。この市場は余所にやるわけにはいかん。ただしだ!絶対法に抵触する行為は行うな!シェアは失えん、だが、目先のシェアを追って違法行為を働けば、逆に全てを失う、それだけは担当者に徹底周知させろ、いいな!」
オスカーが苛立たしげに通話をきった。背中に先ほどはなかった疲労感が濃く滲んでいる。
「オスカー…」
アンジェリークはオスカーの背中を包みこむようにきゅっと抱き付いた。
「ああ、お嬢ちゃん、大丈夫だ、何も心配はいらない…すまないな、家にまで仕事を持ちこんじまって…」
「そんな…そんなのいいの…あの、ジュリアス先輩とお話なさってたの?」
「ああ、今、どうしても取りたい仕事があってな。価格面をぎりぎりまで絞るのはいいんだ。だが、それが独禁法やダンピング防止法に引っかかっては…許も子もない。だから、どこまでの値下げなら目をつけられないか、ジュリアス先輩に確認をとった…」
「そう…」
「これで明日、また、CFO(最高財務責任者)にどやされるな…あなたのしていることは経営ですか?それとも慈善事業なのですか?慈善事業を施すおつもりなら、即刻CEOの椅子を返上なさいってな…」
「それだけ言ってくださるのはリュミエール先輩だからですよ…」
「ああ、そうなんだ。あいつほど歯に衣着せずものを言うヤツはいないからな。俺も気が抜けないから、自ずと経営が締る。そのおかげで、ある程度の採算度外視事業にかかずらうわがままが通るようなものだからな。他の部門での採算とあいつの厳しい経費管理あってこそだ…」
ふ…とオスカーが皮肉気に笑んだ。
「お嬢ちゃん、俺がCEOになってジュリアス先輩を顧問弁護士に、リュミエールのヤツをCFOに招聘した時な、俺は側近を学閥で固めて、自分の言うことを何でもきく取り巻き連中で経営を進めようしてるどうしようもない二代目だと見なされて、社内からも社外からも随分侮られたらしい。思い出すと可笑しいぜ」
「でも、ジュリアス先輩もリュミエール先輩もそんな方じゃ…」
「ああ、だが、確かに同窓なんていうと、一般的には仲良しこよしを連想するし、リュミエールの内実を知らなければ…というか、あの外見からじゃあの鉄壁ぶりはまず窺い知れないからな。俺が取り巻きをイエスマンで固めたと思われたのも当然だ。だが、おかげで逆にやり易かった。俺やリュミエールの経営手腕を舐めてかかって侮ってくれたおかげで、社内で不正を働いていたり、不採算なのに業者と癒着していたような部門も簡単に尻尾を掴ませてくれて、綺麗に整理させてもらえたからな…学閥とは言ってもお互い気を使って言いたいことも言えないような関係ばかりではないし、人脈ってのは確かに侮れないってことも今や周知の事実として定着した。何せあの二人ほど、俺の機嫌を取らない…いや、敢えて苦言ばかり呈す人間は他にいないからな。会社のためによかれと思って、悪い事は報告してこない愛社精神溢れる部下より、よっぽど助かる。おかげでアルテマ・ツーレは採算度外視事業にかかりきりの無能な二代目がTOPでも安泰だ…」
「オスカー…オスカー、わざとそんな言い方はしないで…自分をそんな風に言わないで…」
「すまん…俺は…最近余裕がないな…」
「オスカー、あなたが今、どうしても取りたい仕事って…採算を考えてない仕事って…もしかしてこれと関係してる…?」
アンジェリークは机に置きっぱなしにしていた本を手にとり、そっと差し出した。
オスカーは諦めたような安堵したような吐息をついた。
「お嬢ちゃんは、察しがいいな…そう、俺がどうしても他社に譲れない…採算なんてどうでもいいとさえ思っている…CEOとしてあるまじき姿勢だ…それでも、余所にはやれんと思っている最大の分野がこれ…地雷だ…お嬢ちゃん、軽蔑するか?非人道的な兵器でも、最たるものである地雷をどうしても売りこみたい俺を…」
「オスカー…わざとそんな風に言わないで?…本当は売りたくない、作りたくない…でも、アルテマ・ツーレが作らなければどうしようもない…そういうことなんでしょう?」
あからさまではなかったが、厳しくひそめられていたオスカーの眉間が僅かに緩んだ。
「…ああ、だが、自分でもわかっているから余計に自虐的になっちまうんだ、この件に関してだけは…俺は経営者としてあるまじき事をしていると…しかし、人間として、男として、そして…産まれてくる俺たちの子の父親としてはどうしても譲れないことがあるんだ…わがままだとわかっていても…何がどうあってもこの仕事を余所に渡す訳にはいかないんだ…一ドル入札だって俺はいいくらいなんだ…だが、それをやると…結局はきりのないダンピングに陥り、最終的には粗悪品が市場を席巻しちまう…ダンピングが国際法や商法に抵触しても終わりだ。アルテマ・ツーレが入札から弾き出されては…それじゃ意味がないんだ…」
「この本にあるような子供を絶対に出さないために…でしょう?」
「そうだ…対人地雷…禁止している国の方が多い…だが、まだ世界の3分の1の国は積極的に使っている…仮想敵の侵入を警戒して海岸線などに設置しているんだ…そして需要があれば必ず供給がある。ということはアルテマ・ツーレが売らなければ、他社が売る…金属探知センサーも、重量センサーも、自己破壊装置すらつけていない…それこそ子供が乗っても爆発してしまうような粗悪品が出まわる、そんなものに市場を席巻させる訳にはいかない!俺は…俺にできることは限りなく少ないが…せめて、せめてそんな子供を1人でも減らしたい…そのためには、自分で作るしかない…見たくもない対人地雷を…せめて軍事活動にだけ反応するように、重武装した兵士にだけ反応するように、金属探知機と、重量センサーと…そして設置後一定時間放置されたら、自己破壊するようプログラムされた製品を…」
「ええ…」
「だが、そんな機能をつければ当然コストは跳ねあがる。それこそ、子供が乗っても爆発するような地雷の方がずっと安く作れる…他社はそれにつけこんでくる…軍事は金食い虫だからな。軍備増強はその国家の実態のない恐怖心に由来するから余計に際限がない。だから単純な兵器の購入は安いものに流れがちだ…特に、こういう大規模でもハイテク兵器でないものは、真っ先に予算を節約される。誤爆があろうと、非戦闘員を吹き飛ばそうと、軍上層部は痛くも痒くもないからだ。それならコストが優先するのはあたりまえだ…だが、俺は…これだけは譲れない、これから人の子の親になろうという俺が…どうして子供の手足を、命を奪うことをよしとするものなど作れる?それが大手を振って流通することを横目で見ていられる?だから…せめて、非戦闘員には反応しない地雷、放置されても自己破壊する地雷なら…せめて…」
「オスカー…」
「わかってる。こんなことは欺瞞だ、自己満足だ、忌まわしいものを作っている事実には変わりない、子供が大きくなって俺の仕事を十全に理解した時どう思うだろう。お父さんの作ってるものは、結局人殺しの道具じゃないか、そんなの屁理屈だ…ってな…」
オスカーは苛立たしげに小さく頭をふって重苦しい吐息をついた。秀麗な眉は、また悲しげにきつく顰められてしまった。
アンジェリークは大きく首を横にふりながら、オスカーに抱き付き、思いきり抱きしめた。
「それは違う…違うわ、オスカー…オスカーがしていることは、犠牲を少しでも減らそうとする努力じゃないの!それは欺瞞じゃない!自己満足なんかじゃないわ!あなたの行いで非戦闘員や子供の犠牲は絶対に減るのだもの!」
「アンジェリーク…」
「そして…それができるのは、あなただけ、アルテマ・ツーレだけなのだから…それに、確かに兵器で本当の平和は購えないけど…安全は…一時の安全は購えることもあるのよ、オスカー。私も…あなたのお父様の作ったもので生命を守られていたのかもしれないの…今、私がここにいられるのは、それこそ武器のおかげかもしれないの…だから、わざと自分が苦しくなるようなことは言わないで…」
「それはいったい…?」
「私の父は外交官だったから、私も色々な国に連れていかれたのだけど、私が子供の頃住んでいたある国ではね、外国人は皆決った居住区に住まわされていたの。鉄条網で囲まれて、いつもその国の兵隊が銃を持って周囲を警備していたわ。学校も外国人居住区の中にあって…そうしないと、外国人の子供の安全が保てないような国だったの。後から聞いたのだけどその国は当時、よその国とかなり緊張状態にあって、外からの侵攻に備えて、やっぱり海岸線に地雷をたくさん配備していたらしいの。その国に住んでいた時、夏に海に行きたいっていったら、決して海には近づいちゃいけないんだって父に言われたことがあって…その時はなぜなのかわからなかったけど…地雷がどこにあるかわからなかったからだったの…」
「その地雷も…アルテマ・ツーレが…親父が経営していた頃のアルテマ・ツーレが作ったものかもしれないな…」
「オスカー、オスカー、誤解しないで。もし、その地雷がアルテマ・ツーレのものだったにしても、そうでないにしても…地雷という抑止力が他国の侵略を水際で踏みとどまらせる一助にはなっていたのかもしれない。さもなければ他国の侵略があって戦争が起きていたかもしれない…そして、もし、あの国に住んでいた時、戦争になっていたら、外国人の子供だった私だって殺されていたかもしれない。人質か人間の盾として軍の施設に収用された挙句、そのまま爆撃されて死んでたかもしれない。でも、その時はその国が重武装していたからだったのか、実際に戦争は起きずにすんで、私も死なずにすんだ…もちろん重武装が抑止力になるとは限らないけど、その時は戦争はおきずにすんで…私も両親も無事帰ってこれた。それに、戦争がなくても、私は日々銃をもった兵士に実際に守られていたのよ。だからこそ、今、ここに生きているし…だから、オスカー、あなたにも会えたのかもしれないの。私の生命を守っていたのも武器だったことも確かなの…」
「アンジェリーク…」
「だから、オスカー、自分のしていることを卑下しないで?自分のお仕事をわざと悪く言わないで?それに、せめて子供や、非戦闘員の被害を少しでも減らしたいと思うオスカーの考えはとても立派なものよ。そして、オスカーは自分では満足できてないかもしれないけど…確かに他の人ではできないことをできる力も能力もあるのだもの、アルテマ・ツーレのCEOのオスカーだからできることがあるのだもの。だから…自分を貶めるような哀しいことを言わないで…」
「俺の…俺の仕事で…アルテマ・ツーレの作るもので…破壊されるのではなく…守れる物もあるのだろうか…どこかの国にいる幼い頃のお嬢ちゃんのような子供たちを…」
「ええ、ええ、オスカー。私たちにできることは、限りなく小さいことでしかないかもしれない。でも、一歩でも進むことができれば、自分の願うところに一歩でも近づくことができるのなら、それは無駄ではないし…できることがあるのは…むしろ幸せなことだと、私は思うわ…それに、オスカーのしている事、しようとしている事を、私はこの子に誇りをもって話せるわ。あなたのパパは、不幸な子供を一人でも少なくしようと、それはそれはがんばってお仕事しているのよって…それはあなたのパパにしかできないお仕事なのよって…」
「ああ、アンジェリーク…」
オスカーはアンジェリークの小さな身体を思いきり抱きしめようとして、すぐ思いとどまり、壊れやすいガラス細工を抱くようにアンジェリークの身体を両腕で包みこんだ。
「そうだな…俺は…幸せだ。君に出会う前、観念的に、否応なしにしなくてはならないと思っていた仕事が、今は守るべきもの、守りたい物を自分の力で守るための手段と感じさせてもらえるようになったのだから…。君が俺のすべきことに…しなくてはならないことに意味とやりがいを与えてくれているのだから…昔、俺にとってそれは義務でしかなかった。義務としか思えなかった頃は…果さなければならないとわかっているからこそ、精神的にきつかった…。俺には逃げ場がなかったから。逃げたら自分が許せなくなることがわかっていたから…」
「オスカー…」
「君が見つけたその本な…それは俺に…子供だった頃の俺に、その義務を知らしめる切っ掛けとなった本なんだ…」
「………」
「俺だって、ガキの頃から、親父の会社が武器を作っていることは知っていた。子供は親の仕事に興味を持つものだからな…そして男の子にとって、武器ってものは単純に『悪者をやっつけるかっこいいもの』でしかなかった。俺は小さかった頃、親父の会社を継ぐことを誇りにすら思っていた…あれは何才頃だっただろうな、この本を手にとった訳もはっきりは覚えていないんだが…だが、この本で俺は初めて知ったんだ……悪者をやっつけるための道具と信じていた物が、罪もない子供の手足や生命を奪っていると。…それを親父の会社が…延いては俺が作っていくのかと思い知るまでは…俺は自分の将来に何の疑問も抱いたことがなかったんだ…」
「オスカー、オスカー!だめ!そんな言い方をしてはだめ!」
「すまない…でも、俺は知ってよかったと思っている。それは確かなんだ。何も疑問を持たずに過ごしていたら…と思う方がぞっとする。俺は…色々考えて、自分の置かれた環境から逃げる訳にはいかないと心に決めた後も…それは結局のところ義務でしかなかった。いやいやだが、しなくてはならないこと。だから、将来の仕事を考えると気持ちが荒んだ…。その頃だ、君と出会ったのは…そして、君に惹かれ、愛し、愛してもらえ…君が、俺に教えてくれた。あのナイフを俺にくれて、俺の目指す所が単なる義務ではないと。それは高邁な理想にもなれるのだと、君が俺の人生に意味を与えてくれた…この本と、あのナイフは…言わば俺のターニングポイントの象徴なんだ。この本は俺に向き合うべき義務を教え、君のくれたナイフはその義務に意味を与えてくれた…だから、俺は今でも…今みたいなときは、己を叱咤するためにこれを出すんだ。今回は特に…俺にとっては元々感情的に譲れない仕事だった上に、俺たちに子供ができたとわかって…尚更、余裕がなくなった。絶対他社に譲れないと思った。手足を吹き飛ばされるのが、俺とお嬢ちゃんの子供でなければいいのか?そんなことはない!どの子供だって、どの親だって、こんな目に合いたい訳がない、合っていい人間などいない!対人地雷は今は根絶できない。その力は俺にはない…それなら、いっそ全てのシェアはアルテマ・ツーレで握ってみせる!せめて、非戦闘員は傷つけないものだけにしてみせる!…そう決めた…だが、それでも人殺しの道具を作って売ることには変わりない。俺たちの子供がこの事実をどう感じるか…子供に親として誇りある生きかたを見せたい、でも、それが理解されるとは限らない、それでもこの仕事は逃せない…そんなことを堂々巡りで考えてしまう時があって…考えても仕方ないことなんだがな…すまん、俺はずっとぴりぴりしていただろう?お嬢ちゃんもとげとげしい気持ちにさせてしまっていたか?」
「そんな!そんなことない!私、何も役にたてなくて、それがもどかしかったけど…」
「それは違う。お嬢ちゃんこそが、俺の仕事に動機付けをしてくれたんだ。俺の不承不承の義務を、理想の追求だと思わせてくれたのは…俺の進む道が間違っていないと俺の背を押してくれたのは元々君なのだから…さもなくば、俺はもっと荒んだ人間になっていただろう…なのに、俺は、つい、弱気になって、今もいじけたようなことを言っちまって…情けないな」
「いいえ、オスカーはとても立派だわ!オスカーはいつも優しくて、いつも一生懸命で…今度のお仕事も、私や生まれてくる赤ちゃんを思って…前よりもっと強く深く思ってくれたから、気を張り詰めぱなしになってしまったんでしょう?傷つく子供が他人事とは思えなくて…そんなオスカーは立派だわ。私はオスカーを誇りに思うわ…だから、オスカーは自分の信じるところ、自分の行くべきだと思うところにどこまでも進んでいって?私も考えるから。あまり役には立たないかもしれないけど、一生懸命考えるから…考えて、そして、一緒に歩いていくから…」
「ああ、アンジェリーク。俺は君と…生まれてくる子供のために、胸を張って自分の通ってきた道、これから進む道を指し示したい。君と子供が笑っていられるように…理不尽な暴力で笑顔を奪われることが決してないように、俺にできることがあるのなら、それをひとつひとつこなしていく…それで…いいんだろうか…?」
「ええ、ええ、オスカー…できることを、少しづつでも、していきましょう、2人で…皆さんにも協力していただいて…」
「ああ…そう、そうだな…」
オスカーは先刻まで自分を苛んでいた、追いたてられるような焦燥が今は薄れつつあるのを感じていた。心の内に溜めていたものをアンジェリークが察してくれ、察してくれたから素直に吐き出せた。吐き出した露悪的な鬱屈をアンジェリークに理解し受けとめてもらえ、それ以上に力強く肯定してもらえ、焦燥から解放させてもらえた。そして焦燥のくびきから自由になった今になって初めて、自分が如何に余裕のない状態だったかが、今更ながらに実感された。
俺は、俺たちの子供ができたと知って…喜びの影に焦りを感じていたんだ…俺に父親の資格があるのか、アンジェリークと子供を守っていけるのか…考えるほどに余裕がなかった。俺は、自分が父親になる資格があるかどうかを自らに示したくて、躍起になっていたんだ…
産まれてくる子供に、俺は父親として胸を張れる人間であることを証明したかったのだろうか…いや、父親になる自分自身に己の生き様を納得させたかったのかもしれない。だから…いつにもまして対人地雷の入札とシェアに拘泥した。この仕事を他社に取られたら、俺は産まれてくる子の親になる資格がないと思いつめた。しかし、何を言おうと人殺しの道具を作っているのは事実だから、それを将来子供にどう思われるのかも怖かったのかもしれない…だから、何度も自分のしていることは間違っていないのだと、それを自分に納得させたくて、己の行動律を決する契機となったものを見つめなおしていた…見なおさずにはいられなかった…だが、自分で自分に言聞かせることにはきりがないから、俺はずっと気が張りっぱなしで…
だが、俺は何を頑なになっていたのだろう、一人で何を恐れていたのだろう。
アンジェリークが…何よりも大事で、何よりも守りたい君が、俺を…俺の生き方を認めてくれているというのに。
「そうだ、俺は一人じゃなかった…一人で自分に納得させなくてもよかったんだな…周囲には協力してくれる人間がいて、何よりも誰よりも、君がいる。君がわかってくれている…」
「オスカー…」
「俺は一介の武器屋だ、できることは多寡が知れている、それでも、俺にもできることがある…ベストではなくても、僅かづつでも、できることがあれば…それは無駄ではない、虚しくもない…それは幸せなことなんだな…」
「ええ、オスカー、ええ…」
まっすぐにオスカーを見つめ頷くアンジェリークをオスカーはまぶしいものを見るような気持ちで抱きしめた。アンジェリークもオスカーの背に手を回し、頬をオスカーの胸板にすりよせながら抱きしめ返してくれる。
そう、俺は武器屋でしかない、この世から戦争をなくすことも、武器をなくすこともできない。今の俺にはそんな力はない。だが、武器屋だからこそできることもある。シェアを握ることで使われる武器をある程度のコントロールならできる。それなら、俺は武器の番人に徹しよう。ビジネスの世界では、俺も、俺の友人たちも、まだまだ若造だ。今、一足飛びに理想に到達できずとも仕方ない。焦ることもない。俺たちは今、できることを全力でやっているのだから。自分の願う場所に近づこうと努力することだけでも意味はあるのだから。
俺は不完全な人間だ。迷いもする、躊躇いもすれば、足ぶみもする。だが、この温もりがあれば…小さな身体で精一杯俺を包もうとしてくれるこの温もりがあれば、俺は、正しい道を見失うことはないだろう…
そして、子供が…俺たちの子供が生まれたら、いつか、話して聞かせたい。お父さんは、おまえとおまえのお母さんの笑顔を守るためにできる限りのことをしたいと思って生きていると。そして、それはきっとどの親も一緒なのだと。そう信じてお父さんはこの仕事をしているのだと…
そんな俺を、おまえのお母さんが信じて、一緒に歩いてくれているから、お父さんは迷わず進んでけるのだと。
俺は何より大事な宝を持っている。大事に、大切に思えるものがあるからこそ、俺は強く生きていける。その宝にこそ俺は生かされているのだと、オスカーは謙虚に思う。
そして、その宝の掛替えのなさを知っているからこそ、俺は、俺に限らず人にはそれぞれ大事に思うものがあるだろうことに思いを馳せることもできるようになったのだ。だから、誰のものであれ、それが一方的に理不尽に奪われることのない場所を目指す努力は決して無駄ではないんだ…
アンジェリークがいてくれるからこそ、俺は、そう思えるのだ。アンジェリークが俺に改めて気付かせてくれたのだ…
「アンジェリーク、愛している…今までも…これからもずっと…」
「オスカー…私も…私も愛してるわ…誰よりも、何よりも…」
オスカーはアンジェリークにそっと口付けた。アンジェリークもオスカーの首にうでを回して応える。アンジェリークも、同じほどの強い気持ちで自分を支えよう、供に歩もうと思ってくれているであろうことが心から感じらる。
君がいてくれれば、俺はどんな世界にも立ち向かっていける。君と、俺たちの子供を守るための力を君が俺に与えてくれてるんだ…
オスカーの胸中から今や焦慮は完全に姿を消していた。代ってオスカーの身体中隅々まで、暖かく柔らかな何かが満ち溢れていた。ひび割れた岩肌に甘露がしみわたり潤っていく…そんな気がした。
FIN
すみません、すみません、On−Sideの後日談といいながら、大半の方には予想というか、期待とは違うものになってしまったのではないかと思います(滝汗)
一応、On−Sideメンバーのその後…みたいなものは簡単に語られておりますし、オスアン的には「甘い」と言えないこともないですが、とにかく全体に、あまりに硬い!硬すぎる!(内容もセリフ回しも話の背景も…)
これのどこが王道少女マンガなんだー!スイートなロマンスなんだー!はい、書いてる本人が一番そう思ってます(自爆)
言い訳ですが、この後日談はこんなに早く発表する気はなかったんです。On−Sideを書いているときから、このエピソードは頭にはあって、でも、これを書く前にもっと書くべきエピソードがありますから(結婚までも、多分平坦じゃないです、この二人は)それを書いてからっていうのが、順当だと思って途中まで書いた状態で寝かせておいたんです。
でも「非戦闘員が、特に子供が理不尽に唐突に一方的に殺されるような世の中はおかしい」ってことは、どうしても「今」(2003年4月現在)言わないと、自分の気がすまなかったんです。
そして、私の内部でこれを言えるのは、On−Sideのオスカー先輩(ここではもう先輩じゃないけど)だけだったんです。
単に私の皮膚感覚が「今書け!」と言うので、それに任せて書いた話です。
未消化な部分もあるとは思いますが、「今」発表することに私は意味をもたせたかったんです。そういう事情なので、もしかしたら…この話は期間限定公開にするかもしれません…
と、思っていたのですが、思いのほか、支持をいただけまして、反面苦情は一切なかったので(4月末現在・単に思っていても、苦情を言わないでくだっさっているだけかもしれませんが・爆)常設展示にさせていただきます。
On−Sideのもっと甘いエピソードを期待して読んでくださった方には、本当に申し訳ありません。でも、On−Sideのオスカーが抱えているのは、こういうジレンマであるということ、それをどうにかしようとオスカーは足掻いていること、アンジェリークはそんなオスカーを精一杯支えようとしていることで、この話は私の「On−Side」の根幹というかスタンダードな世界観でもあるのです。
ちなみにオスカーが幼少時に衝撃を受けた本は実在してます(放置された未処理の地雷が多数の多数の子供を苦しめているという内容です)あたりまえですが、オスカーみたいなの立場の人間がこの本を知ったら、普通の人とは全く違った意味で衝撃を受けるのは必至だと思ったのが、このエピソードを考えた切っ掛けでした。
あんまり楽しい内容の話ではなくて申し訳ないのですが、それでも、一生懸命前に進もうとしているオスカーとアンジェを応援してくださったら嬉しいです。
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