守護聖の私邸は、どれほど豪奢であろうと、贅を尽くしたつくりになっていようと、官舎であることに変わりはない。
ゆえに、職を退く時には、当然、私物一切合財をきれいに片づけた上で、退去しなくてはならない。
ただ、居住年数はサクリア次第なので、守護聖により、その時々で千差万別、それこそ数十年から百年、下手すると千年単位にまで及ぶこともあるかもしれないという事情により、官舎ではあっても、改築・模様替えは個々の守護聖が、自分の好みで好きに行っていいことになっている。住まいに拘る者は、庭園などエクステリアも含めて徹底的な改築・改造を施すし、前任者から引き継いだ私邸に一切手を加えず、そのまま住み続けるこだわりのない者もいる、が、長年住み続けるうちに、自分に使い勝手よく、居心地良くなるよう、小規模なマイナーチェンジを私邸に加える者が大半である。
なかでも炎の守護聖宅は、オスカーの代でかなり大規模な改装が施された。
守護聖に就任してから相当時、私邸を「寝に帰る場所」としか認識しておらず、それもしばしば繰り返される外泊で、月の半分は私邸に帰らないなんてことも珍しくなかったオスカーは、元来は、聖地での住まいに大して思い入れがなかった。私邸とはいえ所詮官舎、否応なく押しつけられたあてがい扶持であり、仮住まいという意識が根底にあったせいかもしれない。趣味のビリヤードルームを作ったりもしたが、これはあくまで遊びの時間を充実させるためだったし、家なんてものは、悪趣味でない程度に品よく、居心地が良ければそれでいい、位の認識だった。
そんな自分が屋敷に大改築を施したのは、ひとえに、愛しい大切な妻アンジェリークのためである。オスカーは妻帯した稀有な守護聖となったため、そして「花嫁を迎え入れる家を整えるのは雄の役目」という古風な価値観の持ち主でもあったため、それまでは、大して関心もなかった自分の私邸を、夫婦2人で暮らしやすいよう、徹底して改築を施し、注いだ熱意に見合った快適な暮らしを今まで営んできた。
しかし、オスカーのサクリアが衰えを見せ、程なくの退任が明らかになったことで、オスカーは様々な改築を施したこの私邸を、新たな炎の守護聖に遠からず明け渡さねばならない。
夫婦2人に暮らしやすいよう改装してしまった私邸は、単身者の若者には使い勝手が悪いかもしれないー1人で入るには大きすぎる浴室及び浴槽とか、1人で寝むには広すぎる寝室とか。が、不便と思えば、彼が就任後に自分好みに直せばいいことだし、気にならないなら、そのまま住み続ければいい。とにかく、オスカーの目下の課題は、新守護聖の私邸の住み心地を案じてやることではない、器である家をきれいさっぱり整理して明け渡す算段である。つまりは、自身の正式の退任の日まで、長年の聖地暮らしでいつの間にか溜まったさまざまな私物を分別し、整理し、廃棄するもの、友人たちに引き取ってほしいもの、絶対手放したくないものと、よりわけせねばならない。
そして、これがまた結構な難事なのだ。
考えてみれば、オスカーにとって引っ越しらしい引っ越しといえば、これが初めてなのだった。守護聖に選ばれ聖地に赴いた時、携えた身の回りの品は必要最小限度の物だった。守護聖になるということは、現世・外界・地縁血縁との断絶を意味するがゆえに、未練になるような私物の持ち込みも厳しく制限される。オスカーが、聖地に持ち込んだのは、それこそ己が身一つと、言葉通りの伝家の宝刀である炎の剣だけだった。
そして、今思えば、持ち込み可の品物を一方的に否応なしに制限されるというのは、ある意味、なんと楽であったことかと、オスカーは身にしみて感じている。
というのも、私邸からの退去という事態に直面して初めて、オスカーは自分が「捨てられない男」であるという事実を知ったからだ。その上、日々、その認識を新たにする始末だったからである。
クロゼットを見渡せば「お嬢ちゃんが俺に見せてくれた様々なコスチュームプレイの衣装とその記念ホロ、俺が誂えお嬢ちゃんに着せては同じ回数だけ脱がせた無数のソワレ&ランジェリー&アクセサリー&靴にバッグにエトセトラ、婚礼衣裳はお嬢ちゃんが俺の花嫁になってくれた大切な記念の品だし、それに嫁いだ娘の成長記録ー娘が描いてくれた「パパ」の絵とか、娘がくれたプレゼントなんかは宝物筆頭だし、大事な娘の結婚写真も、当然生涯にわたるお宝だ、どれもこれも「どうしても手放せない、手放したくない」と思う物が、もう、比喩でなく山のようにあるのだ。
しかも聖地及び私邸を退去するにあたり、私物の持ち出しに、制限も規制も皆無だ。せめて総量制限でもあれば、無理やりにでも分別し、仕分けし、持ち出し品を厳選したかもしれないが、すべて持って帰ろうが、一切合財破棄しようが自由といわれると、オスカーは「処分する必要がないのなら…」とあれもこれも持ち出し、後生大事に保管しておきたいと思ってしまう。
といいつつも、オスカーは「自分自身の」持ち物に執着しているわけではない、むしろ、その逆で、自分の私物は、聖地に赴く時、親から譲り受けた炎の剣以外、特に思い入れや惜しいと思うものもなく、これさえ持ち帰れればそれでOK,後はこの身一つでいい、赴いた時と全く同じ出立ちでこの聖地を立ち去ればいい、くらいにオスカーは思っている。つまるところ、オスカーが手放しがたいのはアンジェリークと娘ディアンヌにまつわる、さまざまな思い出の詰まった品々なのである。
しかし、ここでさらなる問題が発生する。自分オスカーに持ち帰りたい、手放せない品があるのと同様に、妻アンジェリークにも、当然、大事に取っておきたい私物がある、ということだ。アンジェリークも娘の思い出の詰まった品を持ち帰るのは当然のこととして、1も2もなく賛成してくれているので、この点に関して夫婦間に齟齬はない。
問題は、アンジェリークが、オスカー自身は不要と思っているオスカーの私物もろもろー代々の執務服とかーも絶対持っていくと言い張っていることだった。
「だって、オスカー様の執務服姿ったら、それはもう、どのお衣装でも、いつまでもうっとり見惚れる程かっこいいんですもの、このお衣装を廃棄しちゃうなんてダメー、もったいなさすぎます」
と言って譲らない。
さらに、退任が明らかになったことで、守護聖たちから、あれこれと形見代わりの記念品を贈られるー主にアンジェリークが。気持のこもった贈り物は固辞するのも失礼で、遠慮するのも限界があり、勢い、引っ越し荷物は増える一方だ。
しかし、引っ越し先として予定している新居の容量という問題がある。
退任するに先立ち、主星で士官学校の教官職を得たオスカーは、さて、改めて主星での住まい探しをせにゃならんと考えるにあたり、学校側が教職員向けに用意している官舎があることを聞き及び、特に深い考えなく「住まいを用意してくれるというなら、そこでいいんじゃないか」と、本人的には渡りに船、という気持ちになった。
そこで、試しに妻アンジェリークに官舎住まいを打診してみると、元々が庶民のアンジェリークも異議を唱えるどころか
「新居探しに奔走しなくて済みますし、お家賃もお手頃でしょうし、これからは私とオスカー様、夫婦2人暮らしになるんですもの、部屋数はそんなにいりませんものね、2、3部屋のお家が、身の丈にあっていてちょうどいいと思います」
といって、2つ返事で官舎住まいを承諾してくれた。
その時オスカーはアンジェリークの言葉
「そうだな、お嬢ちゃん、これから主星で、俺達は夫婦2人で…2人っきりで暮らすんだものな!」
という新鮮なわくわくする響きに幻惑されて、2、3部屋の具体的な面積・容量を考慮していなかった。
退任に伴うもろもろの多事多忙にいささか閉口していた向きもあったので、楽できる所は楽しよう、と、いささか安直に部屋決めしてしまった感も否めなかった。
ところが、官舎という意味では同類ではあるが、主星の一般公務員用の宿舎というのは、守護聖の私邸とは比べようもないほどつましかった。
転居先として提示された物件は、主星の極一般的な夫婦2人用の公務員住宅であり、単身者用宿舎よりは広く、収納も多く、ゆとりある作りになっている、ということであったが、その居住面積を示す平方メートルの値を見た時、オスカーは真顔で「これ、誤植じゃないか、桁数が明らかに足りてないだろう?」と問い返してしまった。すべての居住空間を合わせても、今の私邸のクロゼットより狭かったからだ。
これが、真剣に、真実、収納も含めた主星の若夫婦2人の一般的な居住空間なのだと理解した時、オスカーは、長年の守護聖務めの間に、無意識に自然に染みついていたもろもろの価値観を、きれいさっぱりリセット再構築する必要がある、そして、これが「ただ人」になるということなのだなと、初めて肌身で感じた…気がしたものだった。
とまれ、新居にこれら膨大な私物の収納場所などあるはずもない。それは自明であり、動かしようがない事実である。
「どこかにトランクルームを借りないと、どうにもならんな、これは」
と、収納は住まいと別に設ける覚悟をするか
「…さもなきゃ、いっそ主星で一軒家を買うか、借りるか…」
今の私邸と同じ規模とはいわんが、せめて半分くらいの延べ床面積と収納がある物件を探すか、そのどちらかだよなぁ…とオスカーが宙を見上げて考え込んでいると
「そんな、オスカー様、主星で暮らすのは、最短で、私が学生の間だけかもしれませんでしょう?オスカー様が士官学校の教官を何年くらいお勤めになるかも、わかりませんし。なのに、収納のためにわざわざ家を買うなんてもったいないですよー、お家を買うのは、草原の惑星に落ち着いてからでいいんじゃないですか?」
と、アンジェリークが話しかけてきた。
「まぁなぁ。お嬢ちゃんの言うことも尤もか。暫くは主星暮らしになるとはいえ、まだ、ついの住処をどこにすると決めたわけではないからなぁ。お嬢ちゃんの気持ちに甘えて、数年後には草原惑星に転居するってことも大いにあり得るものなぁ」
そうだよなぁ、と、オスカーは、アンジェリークの言葉を聞いて、家購入はやはり早計か、と考えを改める。とはいえ、アンジェリークの言う「もったいない」からという理由でおよび腰になったわけではなくー家1軒購入する程度では、なんら痛痒を感じない位の資産は、長年の守護聖暮らしで蓄えられているのでー数年後、今度は主星から草原惑星に転居するとなったら、この煩わしい引っ越し作業をもう1度せにゃならんのか、しかも、次回はあくまで私的な移転になるから、今現在のように手伝いの人手があるとは思えん…と思うと、自分で言っておきながら、一軒家を購入する気が早くも萎えたオスカーである。
「となると、
暫くは仮住まいのつもりで、その間、私物は預けるのが最良か…」
そして最終的な落ち着き先を2人で決めた処で、大事な品々を引き取り、改めてきっちり収蔵するのが一番いいような気がする、そう、オスカーが考えていると
「そうですねー、けど、物を預けるにしても、やっぱり、少しは絞らないと、トランクルームをいくら借りてもきりがないってことになっちゃいそうですねー。うーんと、私は、自分のものでは、そんなに惜しいと思うものはないので、全部ディーにあげちゃってもいいかなーって思ってるんですけど。補佐官でなくなったら、ドレスとか、もう着る機会もないと思いますし」
と、アンジェリークがあっけらかんとこだわりのない表情でいう。が、これがまたオスカーには聞き捨てならない。
「何を言う!お嬢ちゃん!お嬢ちゃんの珠の肌を彩り、俺の目を楽しませてくれた思い出の品の数々を、俺がおろそかにできるはずなかろう!ドレスやアクセサリーの半分くらいは娘にお下がりしてもいいが、全部あげちゃったら、お嬢ちゃんのかっわいいードレス姿を俺が見られなくなっちまうじゃないか。そんなことになったら、俺はさびしいぞ。いくら、お嬢ちゃんは何もつけてない時が一番魅力的とはいっても、麗しいドレス姿のお嬢ちゃんを眺めるのも、ドレスやその下のランジェリーを1枚1枚順々に解きほどき、恥じらうお嬢ちゃんから取り去るのも俺の楽しみなんだからな!」
「も、いやーん、オスカー様ったらぁ…」
「ドレスを着る機会がないというなら、俺がそういう機会を作る、そういう場にエスコートして連れていく!着飾ったお嬢ちゃんを連れ歩き、見せびらかすのも、俺は楽しみにしてるんだからな!それでも、どうしても荷物の総量が気になるなら、俺の私物を廃棄しちまえばいいんだ。俺の方こそ、私物に思い入れはないからーこの剣とお嬢ちゃんが俺にくれたもの以外はなー全部捨てちまって全然かまわない」
「そ、そんな、オスカー様の持ち物の方が、ずっと大事じゃないですか、簡単に捨てたりしちゃダメですぅ〜」
と、2人は互いに互いの持ち物を捨てさせたがらないのでー一方で自分の私物にはあまり拘らない処も一緒であるー尚更荷物の整理が進まない。
「えっと、つまるところ、私たち2人とも、結婚してから後、入手したものは、いろいろ思い出が詰まってて、手放しがたいんですよね」
「そういうことだな、お嬢ちゃん。俺たちの結婚生活は当初から今に至るまで、とびきり暖かで明るい愛と幸せとに満ち満ちていた、それぞれの品々に、一つ一つ楽しい思い出が詰まってるから、どうにも処分する気になれないんだよな」
「じゃ、とりあえず少しでも荷物を減らすために、私、補佐官になる前の、女王候補だった頃の私物は、とにかく全部処分しますね、結婚後の思い出の品は減らせないとなったら、ここから手をつけるしかないですもの!」
というや、アンジェリークはオスカーと共棲を始めた当初、特別寮から運び込んだ荷物を、クロゼットの奥から引っぱり出してきた。
「しかし、お嬢ちゃんが女王候補だった頃の荷物というと更に手放しがたいんじゃないか、量も大してないだろうし、無理に処分せずともいいような…」
崇高な決意の表情で私物をより分け始めようとしていたアンジェリークに、オスカーは慌てて「待った」をかける。
するとアンジェリークが
「でも、オスカー様、オスカー様の物を処分する位なら、私は自分の私物を処分するほうが…」とためらいを示す。
なれば、オスカーはオスカーで
「いや、それは逆だろう、お嬢ちゃん、俺の物なんてどうでもいい、お嬢ちゃんの物こそ大事に取っておくべきだろう」
と、話は堂々巡りになってしまい、結局、なし崩しにどちらの私物を、また、どの時代のものを処分するか、という話は、いつのまにかうやむやに、煮え切らないものになるのが常、というか、最近の日常だった。来る日も来る日もこんな感じなので、引っ越し荷物の整理は全くはかどっていなかった。
引っ越し作業は全然進んでいない、昨日も全くと言っていいほど、荷物の整理ができなかった…と、アンジェリークは補佐官執務室で、軽いため息をついていた。
『オスカー様は、ああおっしゃっていたけど、聖地暮らし時代の私物すべてを保管し続けるっていうのは、やっぱり非現実的な気がするわー、管理費もばかにならないだろうし、これからは、守護聖と補佐官じゃなくて、普通の夫婦として暮らすんだもの、聖地を出たら…自分の学費は自分の蓄えで賄うにしても、日々の暮らしは退職後の2人の手当てとオスカー様がいただく教官のお給料でなんとかやりくりしていかなくちゃならないんだし…』
と、現実的かつ堅実な思考を巡らせるアンジェリークである。オスカーが一緒にいると、どうしても、気持ちが甘やかな方向に行ってしまって、冷静沈着で合理的な思考ができなくなるので、執務で1人の時間があるのが、アンジェリークにはちょっとありがたかったりもする。
というわけで、自分のクロゼットの中身を頭の中で要不要に分けんと試みると…アンジェリークには、やはり、多量の衣装類は大半が不要な気がする。
オスカーが自分の着飾る姿を愛でてくれる気持ちは嬉しいし、ありがたい、けど、女子大生になる自分がソワレを着る機会は、今後はほとんどないと思うのだ。幸か不幸か、地縁血縁と断絶した自分たちに、冠婚葬祭に参列する機会は、皆無とはいわないが、滅多にあるものでもなかろうし、その、いわゆる「正装」も極一般的なスーツやワンピースで事足りるようになるはずだ。ロングドレスが大半を占める今手持ちのソワレはまず、出番がないだろう。それどころか、もう「女王補佐官」という公人ではなくなるのだから
「この補佐官服とも、もうお別れなのよねぇ」
と一人ごち、アンジェリークは感慨深い思いを胸に、改めて己の姿をしげしげと見下ろした。
ぴったりとした見た目の補佐官服ではあるが、自分の体形に合わせ誂えられた衣装なので、無理なく動け、見た目ほどには窮屈でも動きにくくもない。執務時に動きやすいよう、随所にゆとりや隠しスリットなどもいれてもらってあるので、衣装を身につけての負担感や締め付け感はほとんどない。自分仕様にマイナーチェンジを施してきた分、おのずと愛着も培われていたようでー今まであまり自覚はしていなかったがーアンジェリークはこの衣装も、もう、着ることもなくなるのか、と思うと、妙にさびしいような惜しいような気になってくる。これは、学校を卒業して制服を着る機会が無くなると感じる、無意味な感傷なのだろう。自分もこうなのだから、オスカーのもろもろの感傷もわからないでもない、が、今はお付きの女官もいてくれて、見なりを整えるにあたっても、色々手助けしてくれる。髪も結ってもらっているし…でも、これからは、私、全部1人でやらなくちゃならないんだもの、身の回りは簡素簡便なほうが絶対いいわよね…
と考えた時、アンジェリークは、なんとはなしに、自分の髪をちらりと見やった。
補佐官になってから、髪にはめったに鋏を入れなかったので、金の巻き毛は結構な長さになっていた。補佐官として正装する時も多いアンジェリークには、結いあげるだけの長さがある方が勝手が良かったし、ふんわりとした金の巻き毛は、結い方次第で豪奢にも可憐にもアレンジしやすく、また、結いあげた髪を解くのが、オスカーもことのほか気に入っているいるようだった。
でも、これからは髪を結ってくれる女官はいなくなる、なにより、いつも手入れのアドバイスをしてくれる、ヘアスタイルの相談に乗ってくれるオリヴィエとも会えなくなるのだ…1人で、自分で身の回りのことは全部やらなくちゃ、できるようにならないといけないのだ…
「やだ…わかってるのに…わかってたのに…」
自分はこの上なく恵まれた状態で退任するのに、そも、オスカーと一緒に退任すること自体、自分のわがままを押し通したってことなのだから、めそめそぐずぐずしたらいけない、周りに申し訳ない。
『だめだめ、めそめそしないよう…もし、めそめそしそうになったら、すぐ、気持ちを切り替えられるよう、見たらすぐに気持ちがしゃきっとするようなアイコン?合図みたいなもの…何か、決めておかなくちゃ。何かないかしら…自分に自分で自分の始末をつけるんだって決意を…一目で自分に納得させられるようなものがいい…えっと、私は、この髪を結ってくれる人も、ヘアスタイルを助言くださる方も、もう、身近にいなくなるんだって思ったら、めそめそしそうになっちゃったんだから………そうだ!』
しょんぼりした顔でしばし考え込んでいたアンジェリークは、何かを振り切るように昂然と顔をあげると、髪の扱いに長けた女官を呼び、あることを頼んだ。
さて、オスカーはオスカーで、進捗はかばかしくない引っ越し荷物の整理を憂いていたか…というと、アンジェリークほど、真剣に悩んでいたかどうか、ちょっと怪しい。
オスカーとて、頭では守護聖退任の日までに私邸を明け渡さねばならないのだから、もっと、思い切って荷物を整理すべきとわかっていはいるのだ…ただ、この退任時期というのも曲者で、オスカーのサクリアの漸減ぶりは比較的緩やか目の方だったので(なので、当初、新・炎の守護聖を探索してほしいというオスカーの提言は、あまり真剣に聞いてもらえなかったのだが)新・炎の守護聖への教育と引き継ぎも、そう性急にせずとも良さ気な感じで、時間をかけてじっくりと行っても大丈夫そうだ、という見通しがたっていたので、正直、切羽詰まった締め切り日というものがない。
オスカーは、通常、今日できることは今日中に、どころか、明日の分も明後日の分も前倒しで処理してしまいたいワーカホリック気味な人間だが、私物をより分けーことに愛しい妻の思い出の詰まった物を処分するなんて、正直、あまり乗り気なく、モチベーション低いこと甚だしいので、退任するその日までは、通常通り執務もこなさねばならないことを言い訳に、なんとはなしに先延ばししてしまう。
そして、今日も今日とて「同じ職場で仕事ができるのも、あと、少しなんだよなぁ」という感傷ゆえ、特に差し迫った用件もないのだが、補佐官室に顔を出そうと赴いた。執務室前の回廊に差し掛かると、ちょうど、愛しい妻アンジェリークと、女官であろうか、誰やら女性の話声がオスカーの耳に入ってきた。
「お話を伺った時は、ええ、それはもう驚きましたし、もったいないと申しますか、本当によろしいのですか?と思いましたけど…これはこれであり、どころか、とってもお似合いですわ、補佐官様」
「ふふ、嬉しいわ、ありがとう、私も我ながら、想像してたより、いいかも?って思ったの。すっごく軽くなったし」
「はい、それに、こちらも無駄にはいたしませんわ、こんなにきれいで豊かなんですもの…私、加工してくれる所を存じ上げてますから、無駄のないよう仕上げてくれと、重々念押しいたしますわね」
「そんな使い道があったなんて、私、知らなかったわ、それならきっとオスカー様も…」
「俺がどうしたって?」
と、ノックしながら、執務官室の扉をオスカーは開けた。
「あ、オスカー様!」
アンジェリークが、オスカーの声を耳にして、ぱっと振り向いた。むろん、花のような笑顔とともに。
が、オスカーはアンジェリークの姿を認めた途端
「お、お嬢ちゃん…そ、その姿は…」
と、言ったきり、その場に固まってしまった。
俺の噂話をしてるのか?お嬢ちゃんのことだから、万に一つも悪口のはずはないが、何を話していたのか、聞かせてもらっても構わないか?と、言葉をつづけようとしていたことなど、念頭からすべて吹っ飛び、眼前のアンジェリークに視線は釘づけとなった。
「あらあら、私ったら、つい話し込んでしまって…では、あの件はお任せくださいね、補佐官様、では、炎の守護聖様、ご機嫌よろしゅう」
といって、女官が何かの大きな束を抱えて、自分の脇を通り抜けて立ち去っていったことも、オスカーは認識していたのか、いなかったのか(視界に入っていたのは、確かだが)。とにかく、オスカーは身じろぎもせず、その視線は、ひた、と、アンジェリークの姿にすえられたままだ。
「あ、あの…オスカー様…?その…これ…変?ですか…?」
石化したかのごとく、固まってしまっているオスカーに、アンジェリークがおずおずと、恐る恐る反応をうかがうように問いかけてきた。
問われてオスカーは、反射的に、思い切りぶんぶんと首を横に振った。けど、相変わらず言葉がうまく出てこない、それほどに眼前の光景がオスカーには衝撃的だったのだ。
「お嬢ちゃんの髪が…お嬢ちゃん、その髪は…」
ようやく「お嬢ちゃん」と「髪」という2単語だけ絞り出せたものの、後が続かない。というのも、アンジェリークの髪が…今朝は、腰のあたりまで豊かにふんわりと波打っていた、やわらかくてつややかできらきらの長い巻き毛が、あごのラインあたりでばっさりと切りそろえられていたからだった。
ために、いつもはふんわり巻き毛で彩られているすんなりとしたきれいな首から、ワインのボトルのようなまろやかな肩のラインまで、はっきり露わになっている。
むろん、アンジェリークが髪をアップにした時は首も肩もデコルテも露わになるし、オスカーとて、それら露わになった部位を何度となく目にはしている、けれど髪を上げている時のアンジェリークのイメージはというと、しとやかで、大人びていて、高雅で気品あり麗しく…総じて「格式高く」「オフィシャル」という印象になる。が、今、あごのラインで切りそろえられ、毛量もかなり調整されたらしくボリューム抑えめの軽やかな髪型とセットになっていると、見慣れたはずのアンジェリークの首からデコルテのラインが、もう、全く別物に見える。髪を上げた時見える首のラインと、今のそれとから受ける印象が、オスカーには全然異なって感じられるのだ。
「お嬢ちゃん、な、なんて…なんて…」
その印象があまりに鮮烈にすぎたために、こんな様子で、オスカーは先刻から一時的な失語症である。だが、言葉を失っているオスカーを見て、アンジェリークは、なんとなく不安そうな申し訳なさそうな顔になってしまった。
「お、オスカーさま?あの、やっぱり、おかしいですか?私もちょっと思い切りすぎかなーって思ったんですけど、中途半端よりはいっそって思って、えいやって…執務中はベールをつけますから、そんなに目立たないと思ったんですけど…」
「何をいうか、お嬢ちゃん!ベールをまとっても、お嬢ちゃんのその初々しさ、フレッシュな輝きは、到底、隠し通すことなんぞできん!」
「…は?」
「なんて…なんて、まぶしいんだ、お嬢ちゃん!きらきらと光輝いて、まばゆい程だ!今、俺は…君のかわいらしさ、愛らしさに目がくらみそうだ…君は、なんて、フレッシュでみずみずしくて初々しくて新鮮で…あーもう、俺の貧困なボキャブラリーでは、到底、追いつけん!それほど、髪を切ったお嬢ちゃんは魅力的だ!まぶしすぎる存在だー!」
と一気呵成に叫ぶや、間髪いれず、オスカーは「ぐわばぁっ!」と音がしそうな勢いで大きく両手を広げると、アンジェリークを「決して逃がさん」と言わんばかりに、がっしと体全体で覆いかぶさるように抱きしめた。いきなりのオスカーの言動についていけず、逆に固まってしまっていたアンジェリークは、たやすく、すっぽりとオスカーの胸の内にとらわれる。すかさずオスカーは、ぎゅうっとその身を思い切り抱きすくめるや、露わになっているアンジェリークの首から肩のラインに噛みつかんばかりの勢いで顔をうずめた。
「お、お、お、オスカー様、どうなさったのー?」
「どうもこうもないぜ、お嬢ちゃん、結婚数十年にして、こんなにもまぶしくフレッシュで新鮮で初々しい姿を夫の俺に見せてくれるなんて、俺は今、猛烈に感動してるんだ、なにせ、こんなに髪の短いお嬢ちゃんの姿を見るのは俺は初めてだからな、まるで、あどけなく愛らしい少女に初めて出会って一目で心を奪われた少年のように、今、俺の心は華やぎときめいているんだぜ!とにかく、新鮮なんだ、きらきら輝いて、まぶしくて、目を奪われる、一瞬たりとも君から目が離せないんだ、こんなにも俺を驚かせ、魅了し、なお一層俺を虜にする、お嬢ちゃんは、なんて罪つくりなんだ…」
と言いながら、オスカーはアンジェリークの首に唇を押しあてた。
「ひゃん…」
アンジェリークがくすぐったそうに首をすくめようとしたが、オスカーは構わず、少しづつ押し当てる唇の位置を変えていく。うなじに、首筋に、鎖骨にと、縦横に、自由に思うがままに唇がたやすく動く。いつもなら、彼女の髪をかきあげたり、顔にかからないよう押さえたりするのだが、そういうことに気を使わず、好きなように好きなだけキスできるのは、こんなにも楽なのかと、これまた新鮮な驚きを覚える。
「この、うなじも、首筋も、こんなにも無防備にさらけだして…キスしてほしいって、俺を誘っているんだろう?いけない…けど、本当にかわいいな、君は…」
「や、そんな…そんなつもりじゃ…」
アンジェリークが小さくいやいやをするように首を振る、軽やかにさやけく、しゃらしゃらと髪が小さな音をたてる。その響きがまた新鮮にオスカーの耳をうつ。
「なら、俺以外の男も、このかわいいうなじと麗しい首筋で虜にしようっていうのか?俺を夢中にさせるだけでは気が済まないなんて、ますますいけないお嬢ちゃんだな…」
笑みをふくんだ口調で冗談をいいながら、オスカーは、舌先でアンジェリークの鎖骨から耳下にかけての首筋を、ねっとりと味わいつくすようになめあげた。
「あぁん…オスカー様のいじわる…」
「何がだ?お嬢ちゃん」
「私はいつも、いつでもオスカー様に…オスカー様ただお一人に夢中ってご存知のくせに…」
「嬉しいぜ、お嬢ちゃん、なら、俺と君の気持はぴったり同じってことだな。俺も君に夢中だ、いつでも、いつまで経っても、君に心奪われている、俺の瞳は君に釘付けで、他には何も目に入らない。この耳に聞こえるのは、聞きたいのは、君の甘く愛らしい声音だけだ」
「オスカー様…」
「だから…わかるだろう?俺が、今、初めて出会った新鮮な君にすっかり魅了されていることが…今すぐ、フレッシュでまぶしい君が欲しい、君を俺のものにしたい、君は俺だけの君だと感じさせてほしい…」
そう耳元で囁きながら、オスカーはアンジェリークの背のファスナーをじゃっと勢いよく下ろす。髪をかきわけたり、ファスナーに噛んでしまう危険がなくなったので、その動きは大胆かつ迅速だ。彼女の身体と衣装との隙間に流れるように背中側から腕をさしいれる。アンジェリークの肩甲骨あたりを撫でさするように手を這わせ、器用に衣装を緩め、まずはアンジェリークの肩までを完全に露わにする。その露わになった肩のラインに、すかさず唇を押し当て、肩を軽く噛む。
「あ…はぁ…」
アンジェリークが悩ましげな吐息をついた。
ぽっ…と内側から灯がともるように、乳白色の肌がほんのり上気し始める。白くなだらかなラインを描くデコルテがほんのりと薄い茜色に染まる様は、処女雪が曙光を浴びてきらめく風情を思わる。
「お嬢ちゃんの肌は朝の雪原のようだ、陽光をうけて、まぶしく光り輝いて、たとえようもなく清らかに美しい…だからこそ、俺を…俺という存在を、刻みつけたくなる、君は俺のもの、俺だけのものだと…」
「オスカー…様…私は、オスカー様のもの…」
アンジェリークはオスカーに魅入られ、魂を奪われたかのように、オスカーの言葉を繰り返す。
「そうだ、お嬢ちゃん、君の髪ひと房、その白い指先ひとつひとつまで、俺はこの唇で触れたい、君の体中の隅々まで口づけ、その肌に余すところなく舌を這わせて、君のすべてを味わいつくしたい。まぶしく清らかな処女雪のような君を俺のものにしたい」
と、いいながら、アンジェリークのあごに手を添え、顔の輪郭を愛でるように指先を滑らせた。
「あ…あぁ…」
アンジェリークが、反射的にか、くっとあごを上げる。まるで、首からあごのラインを、もっと撫でさすってほしがっているかのように。一方で、アンジェリークの体は、オスカーの言葉に立っている力を奪われたかの如く、へなへなと、膝からがくんとくず折れそうになる。それを見こしていたように、オスカーはアンジェリークの体を自分の方に引き寄せるように抱き支える。
「そんな風に俺に全身を預けてくれて、かわいいぜ、お嬢ちゃん…君のすべてを、俺のものにしてほしいと、君もそう願ってるってことだろう?なら…まずは定番からというところかな?」
にやりと悪漢めいた、けど、心から嬉しく楽しそうな笑みを浮かべると、オスカーはアンジェリークの衣装からするりと腕をぬかせざま、ランジェリーも肩から滑らせておとし、アンジェリークの上半身を完全に露わにしてしまった。乳白色の肌が、穏やかな陽光を受けてより一層まぶしく映え、オスカーは思わず目を細める。ふるりと、たわわな乳房が恥じらうように揺れる様に目を奪われる。柔らかいのに張りがある真っ白なふくらみと、頂点を彩る薄紅色の乳首、そのコントラストは例えようもなく美しい、と、オスカーは心のうちで惜しみない賛美をささげる。そして、アンジェリークが迷ったり、ためらったりする隙を与えないよう、その、豊かでな乳房をすくい上げるような手つきで軽く持ち上げると、すかさず、薄紅色の先端を口に含む。
「あ…あぁんっ…」
口に含んだ途端…そこを舌で転がすより先に、唇で食むようにはさんだだけで、乳首が硬い弾力を増したのが、わかった。
アンジェリークが喜んでいる、俺の舌が、唇が触れるのを心地よく感じてくれている、そして、もっと気持ちよくしてくれと期待してくれている…それを肌身で感じさせてもらい、オスカーは奮い立つ。
口腔内に含んだまま、舌先で乳首の先端をつつく。その表に軽やかに舌先を躍らせる。
舌で乳首をすくい上げるように下から上へと、何度もなめあげる。
ひとしきり、舌先ではじくように乳首をねぶり、周囲に舌を回した末、歯先をあてがう程度の力で噛み、さらに硬さを増してとがった乳首を、ちゅくちゅくと音を立てて吸った。むろん、両の乳首を、交互に平等に、休みなしに、だ。乳首の輪郭と感触を先刻の宣言通りにとことん味わいつくすような愛撫を休みなしに繰り返す。
「ああ、うまいぜ、お嬢ちゃん、いつにもまして、瑞々しい味わいだ…」
手で大きく乳房をこねまわしながら乳首から唇は外さない。一方で、もう片方の手は、そろそろと豊かに張り出した腰のラインへと伸ばされ、いつくしむようにその輪郭を撫でさすりはじめた。
すると、アンジェリークがはっとしたように、オスカーの腕の中で身じろいだ。
「お、オスカー様…や…だめ…これ以上は…」
「何がダメなんだ?お嬢ちゃん…」
「だって、だって、まだ執務中だし、いつ、どなたがいらっしゃるかわからないし…」
少しだけオスカーから体を離そうとしながらアンジェリークが、しごく尤もな「駄目な理由」をオスカーに訴えたが、オスカーは、平然としたり顔で
「それに関しては、大丈夫だ、さっき、俺と入れ違いに出て行った女官を通じて、俺が君の部屋にいることは、もう知れ渡っているさ、そして、俺が君と2人きりとなれば、この補佐官執務室は、小一時間はキープアウトって扱いになるだろう、俺達の仲を邪魔しに来るような命知らずは、少なくとも職員連中の中にはいないだろうからな。みな、見て見ぬふりをしてくれるさ」
と、自信満々に断言した。
俺達の仲むつまじい様子を、こっそりのぞき見にくる連中はいるかもしれんが、まー邪魔されないなら俺はOKだ、見たいやつには見せつけてやるさ、なんてことをしゃあしゃあと考えながら、オスカーはアンジェリークを籠絡すべく、より一層の熱意をこめて彼女の乳房を口唇で愛撫しつつ、ゆたかな臀部をさわさわと撫でさすりながら、すんなりとした脚の間へとその手を伸ばしていく。
「そ、そんな、わかってて見て見ぬふりをされるなんて、恥ずかしすぎます、それに、これ以上は、ほんとに困ります、困っちゃいます…」
「どうしてだ?お嬢ちゃん。誰も邪魔にこないなら問題ないだろう?それ以上に何が困るのか…俺に教えてくれないか?」
「だって…だって、もう…これ以上は…」
「我慢できなくなるか?いいさ、我慢なんかしなくて…俺がさせない…」
アンジェリークの乳首をー己の唾液まみれで、これ以上はないほど硬く尖っているそれを、オスカーは指先できゅっとつまんで軽くひねりながら、とびきり低く甘い吐息混じりの声を、アンジェリークの耳朶に流し込んだ。すると、アンジェリークは、その身をようやく支えていた最後の糸がぷつりと切れた、とでもいうように、なよなよと力なく、オスカーの腕の中に倒れこむようにその身を預けた。オスカーの愛撫と声の魔力に、体の力も、最後の躊躇いの気持ちも、根こそぎ奪われたかのようだった。
そのアンジェリークの体をしっかと抱き支えながら、オスカーは、もう片方の手を、アンジェリークのドレスのすそから、大胆に差し入れる。絹の靴下越しにふくらはぎを撫であげながら、徐々にその手を奥へと伸ばし、むっちりと豊かな大腿部をいとおしげに撫でさする。阿吽の呼吸で、アンジェリークの体が控え目に緩やかに開く。
俺を…俺の手を誘っている、もっと奥に、深くに来てくれとねだっている、アンジェリークの自然に開かれた脚のラインは、そんな思いをオスカーに抱かせる。誘われるままに脚の付け根へと手を伸ばす。その指先が、とろりと温かな液体に触れた。小さな絹と繊細なレースは、すでに、アンジェリークの豊かな愛液はとどめておけなくなっていたようだ。蜜は、太ももの内側まで滴り溢れていた。
「もう、こんなに濡らして…」
布越しに花弁をすっと撫でると、しっとりと指先が吸いつくようだった。
「いわないで…オスカー様の意地悪…オスカー様がとってもやさしく、気持ちよくしてくださるから、私…」
「濡れすぎるから、困っちまうのか?」
オスカーが柔らかな声で問うと、アンジェリークが耳まで真っ赤になりながら小さくうなずく、その仕草がかわいらしくて、オスカーはアンジェリークの顔中に小さなキスを落としながら、なだめるように告げる。
「困ることなんてない、君が濡れるほど俺は嬉しいし、男として奮い立つ」
と、その言葉にアンジェリークの体のラインが、安堵したように柔らかくほぐれたのを、オスカーは抱いた腕に感じる。その機を逃さず
「…さ、君が、もっと濡れても気にせず済むようににしような?」
と囁きながら、オスカーは、しっとりとそぼぬれた小さな布に手をかけると、それをさっと足元まで下ろしてしまい、手で動きを促して彼女の脚をその小さな布から抜かせた。
途端にドレスのすそに忍ばせていたオスカーの手が、大胆かつ繊細にうごめきだす。緩やかに開かれた脚の間にいざなわれるようにオスカーは花弁に手を伸ばす。
「さぁ、お嬢ちゃんは、どんな風に俺に愛されたい?どこを、どう、いじってほしい?」
ふっくらとした花弁を、ほぐすように指先でくにくにと揉む。豊かに溢れ滴る愛液がオスカーの指先にまとわりつく。一層なめらかになったその指先で、花弁の表を幾度も撫でさする。
と、アンジェリークがむずかるように、かぶりを振る。動きに合わせてアンジェリークの軽くなった髪が、しゃらしゃらと小さく鳴る。まるで、風にそよぐ木の葉がたてるような、すがしい音色だ。その爽やかな音は、フレッシュで初々しい印象の今のアンジェリークにぴったりだとオスカーは思う。
「あん…もう…じらさないで、オスカーさまぁ…」
と、アンジェリークが少しだけ拗ねたスパイスを利かせて、大いに甘えた口調で、かわいく唇を尖らして、オスカーを見つめてきた。軽やかな髪と相まって、童女のようなあどけなさが、オスカーの目には一層、愛らしい。
「かわいいな、お嬢ちゃんは、本当にかわいい…こんな風に甘えられたら、なんでもしてやりたくなる…思いきり愛さずにはいられない」
オスカーは、そろえた指先を、つぷり、とアンジェリークの秘裂の合わせ目に差し入れた。合わせ目を指先で割るように、前後に思い切りよく動かしながら、肉珠を探る。乳首とはまた異なる弾力で硬くしこって尖った愛らしい突起が指先に触れた…その先端に軽く指の腹を添え、触れるか触れないかの加減で、小刻みに指を動かした。
「あ…あぁっ…」
びくん!と雷撃をくらったかのように、アンジェリークの体が、一瞬、跳ねる。
その動きを制するように、オスカーはしっかとアンジェリークの細身を抱き支える、支えた腕のその掌は、乳房にあてがわれる、乳房をこねるように揉みながら、乳首をつまみ、ひねり、先端をこする。
同時にもう片方の手は、縦横に股間でうごめく。硬く張りつめた肉珠を指先ではじくように撫で、その弾力を楽しむ。時折、秘裂の奥深くに思い切りよく指を差し入れ、肉襞をかきわけ、かきまわす。指に潤いが十分まとわりついたら、再度、尖った肉珠をその指先で転がし、先端をつつく。
「あ…あぁっ…あん…やっ…」
息つく間もないオスカーの愛撫に、アンジェリークは、またたく間に意味のある言葉を発せなくなってしまう、その軽く開かれた愛らしい口から洩れでるのは、せわしない吐息と、悩ましげな喘ぎばかりだ。
と、オスカーは、アンジェリークの乳房から離した手で、彼女の頤をつまみ、少々強引に自分の方を向かせると、噛みつくように口づける、むろん、その間も、花弁と秘裂と肉珠を愛撫する指の動きはとまらない、ために、オスカーが肉珠の先端をこするたび、秘裂の奥深くを指先で突くたび、口づけられたままのアンジェリークの体はびくりと震える、ふさがれた唇からは、熱く苦しげな喘ぎが漏れる。
オスカーがその口づけの角度を変えた拍子に、アンジェリークがまなじりに涙をにじませて、せつなげに、熱っぽく潤んだ瞳で、オスカーに訴えた。
「も、もう…お願い、オスカーさまぁ」
アンジェリークの請いに、オスカーは、ぐっと腰を前に突き出すようにして、自分の体をアンジェリークに密着させた。もう極限まで反り返っている己の怒張を故意にアンジェリークの身に押し当てる。
「そんなに…俺が欲しくてたまらないか?お嬢ちゃん」
衣装越しではあっても、オスカーの硬い屹立を押し当てられ、アンジェリークの腰が一層力なく、くだけた。
「や…聞かないで…恥ずかしい…」
「俺は、君の甘い蜜で溢れるここを、今スグにでもこの俺のもので貫きたい、君の中をかきまわして、こすりあげて、思い切り、突き上げてやりたい…」
「あ…あぁ…」
「お嬢ちゃんも、同じだろう?俺が欲しい、この俺のもので思い切り奥まで突いて、いやというほど乱してほしいと願ってないか?…さ、正直に言ってごらん?」
「オスカー様…あぁ…はい、お願いです、もう…ください…オスカー様の…」
「いい子だ、お嬢ちゃん、いい子にはたっぷりご褒美をあげなくちゃな…」
と言って、オスカーは手早く己の衣装を緩める。そして、アンジェリークの手をとって、解放された自身の怒張に導く。やんわりと握りこむように触れさせながら、一際低く、甘い声で、こうアンジェリークに囁く
「何より、俺自身が、お嬢ちゃんが欲しくて、もう、我慢できない…」
オスカーの熱すぎる思いをその手に感じ取り、アンジェリークが、くらり、とめまいをおこしたかのように、へたりこみかける。
そのアンジェリークの身を抱きとめ、オスカーは、アンジェリークに執務机に手をつかせて、後背からその身を支えなおす、と、同時に大胆にアンジェリークのドレスのすそをからげて、ドレスの余裕が許す限り上にまくりあげてしまう。相当な部分露わにされてしまった白く豊かな臀部を、オスカーはしっかと両手で抱え込むと
「いくぜ、お嬢ちゃん」
という声とともに、アンジェリークを一気につらぬいた。
「あぁああっ…」
アンジェリークがどこか甘さを含んだ悲鳴のような声を発した。
間髪いれずオスカーは、これでもかという勢いで、腰を回し、打ちつけ、突き上げ始めた。
力の限り腰を打ちつけるほどに、アンジェリークの豊かな臀部がそれをやさしく受け止め、心地よい弾力を返してくれる。その感触が心地よくて、オスカーの律動に一層の熱がこもる。
その熱に押されるように思い切りよく己を突きいれると、最奥を穿つたびに、アンジェリークのかわいい唇から甲高いさえずりが漏れ出る。
愛らしくも蠱惑的なアンジェリークの声音、湿った肉を打つ鈍い音、肉楔の抜き差しに合わせてあがる粘り気のある水音、それらすべてが、さらにオスカーをあおり、逸らせる。
そしてまた、己の逞しい剛直が、アンジェリークの可憐な花弁を押し広げ激しい勢いで出入りしている様が、たまらなく淫靡に思え、なお一層、オスカーを欲情させる。ことに、愛らしい花弁から己を引きぬく時、肉茎が彼女の豊かな愛液で濡れそぼっている様も、彼女の花弁がめくりかえり、名残惜しげに肉茎にからみつくようにみえる様も、たまらなくオスカーを刺激する。
その勢いに任せ、思い切り最奥を狙って己を突きたてる、根元まで納めて体を密着させたまま、ぐりぐりと腰を8の字や円を描くように回す。極限まで反り返った剛直で、彼女の肉襞をかきまわし、肉壁を思い切り擦りあげることをイメージしながら。
「や…あぁあっ…」
たまらぬといった風情で、アンジェリークの身が執務机の上で、悩ましげにのたうつ。
「気持ちいいか?お嬢ちゃん…」
「はっ…あぁ…すごい…すごいの…オスカー様の…奥まできて…擦れて…あぁっ」
「かわいいな、お嬢ちゃんはこんなに乱れて、喜んで……そのかわいい顔をもっとよく俺に見せてくれないか?」
オスカーは己を引きぬきざま、アンジェリークの体をくるりと表にひっくり返して、己と向き合わせる、そのままアンジェリークの体をひょいと持ち上げて上半身を執務机の上に載せる、そうしてから、彼女の細い足首をつかみ、大きくハの字に開かせた。
明るい陽光のもと、愛液に濡れそぼり、つやめく花弁が露わになる。その太ももまでもが濡れて、つやつやと光り輝いている様がはっきりみてとれた
「や…はずかしい…」
執務机の上で、アンジェリークがわずかに身をよじる。逃れようはないとわかっていても、オスカーの視線から、少しでもその身を隠したいようだ。
そのアンジェリークをなだめるように、オスカーは、彼女の頤をつまんで己の方をむかせ、やさしく口づける。
「恥ずかしがることはない、君があまりにきれいで、かわいらしいから、君を見たいんだ…君のかわいい顔を、愛らしい花を俺によく見せてくれ…」
と懇願しながら再度口づけを落とすと、アンジェリークはほほを染めながら、ほんのり微笑んで小さく頷いてくれた。
「そんな風に思っていただけて…私、幸せです、オスカー様、大好き…」
率直なアンジェリークの愛の言葉が嬉しくて、オスカーの瞳が柔らかく細められる。
「俺もだ、君が好きだ、好きでたまらない、だから…」
短くなった金の髪を掬い上げるように撫で、愛おしさに溢れる口づけを繰り返し落としながら、潤びた花弁に、己の剛直をあてがう。そして、比度は、じっくりじわじわと、埋めるように己を沈みこませていった。
「あぁ…」
満たされていくにつれ、アンジェリークが満足げな吐息をもらす。
「オスカー様が私の中に…オスカー様で、私、いっぱい…幸せ…」
と、アンジェリークがゆるゆると腕を伸ばしてき、オスカーの首に回す。わずかにオスカーを自分の方に抱き寄せようとする。
「オスカー様、好きです、オスカー様に触れて触れられて、抱いて抱きしめてもらえるのが、私の一番の幸せ…」
「俺もだ、お嬢ちゃん、俺も、君に包まれて、君のぬくもりが直に伝わってきて…温かい…幸せだ…こんなに愛らしい君を…大切で愛しくてたまらない君を抱けて、その君に同じように思われて、君の笑顔を一人占めできて…本当に俺は幸せだ」
そう告げた途端、オスカーは、自分で自分の言葉にはっとした。
そうだ、俺が愛しているのは…今、こうして俺の腕の中にいて、俺と分かちがたく結ばれて、それを幸せだと言ってくれるアンジェリーク、抱いて、触れて、愛を告げて、嬉しく幸せを感じるのは、思い出の中の君に対してじゃない、今、ここにこうしている君だ…
「お嬢ちゃん、俺は君が好きだ、心から愛している…今も、これからも、ずっと…ずっとだ」
「うれし…」
『私もです』と、続けようとしたアンジェリークの言葉は形にならなかった。
今まで、ただ繋がるだけで、でも、幸せだと言っていたオスカーが、いきなり己を引き抜きざま、渾身の力で、アンジェリークを貫きなおし、そして、立て続けに重く力強い律動を放ったからだ。
「っ…はぁっ…」
もう、オスカーは睦言もつぶやかない、アンジェリークの足首をしっかと握りしめ、一心不乱に、がむしゃらに、これでもかと、己を打ちつける。その姿は、アンジェリークを容赦なく貪っているようで、けど、どこか、不変の真理を追い求める求道者のような潔さ、清らかさも感じさせる。
「やっ…激し…だめ…もう…」
いきなりの激しい突き上げに、アンジェリークは息も絶え絶えという風情だ。オスカーのものの存在感があまりに圧倒的で、熱すぎて、激しすぎて、息もできない、突き上げられる度に、真っ白な雷光に全身が貫かれているようで、閉じた瞼の裏には、ひっきりなしに火花がはじけて散って。もう、意識がおいつかない、過ぎた快楽に体がついていかない。
と、オスカーはすべてわかっているとでいうように、にっ…とアンジェリークに笑いかけ、一瞬、素早く噛みつくように口づけた後、アンジェリークの足を折り曲げ、互いの体をより密着させた上で、より一層、腰のストライドを素早く、力強いものへと変えた。まさにラストスパートとという勢いで。
「あ……あぁあっ…」
アンジェリークの意識がスパークし、四散した、と同時に、秘裂がぐぅっとせりあがったようにオスカーのものを一際きつく絞り込む、肉襞が狂おしくからみついてくる、たまらなくなって、オスカーも己を解き放って、アンジェリークに思いのたけを注ぎこんだ。
そのままアンジェリークの上に倒れこむ、豊かな乳房に顔を預ける。アンジェリークが荒い呼気を押しながら、背に腕をまわして、やわらかく抱きしめてくれるのを感じる、オスカーは、なんともいえぬ充実と幸福感に突き動かされ、改めてアンジェリークをきつく抱きしめ、その顔中に小さな口づけを降らせた。
アンジェリークの呼気が整うのをまって、オスカーは、きれいに身なりを整えてやってから、執務室のソファにアンジェリークを抱いて運んで座らせた。そして、改めて、短い、ふわふわ巻き毛になったアンジェリークの髪を愛しそうに丁寧に撫でながら、こういった。
「かわいいな、本当にかわいいぜ、お嬢ちゃん、髪を切った君は、一層きれいにかわいく魅力的になった…君は思いがけず俺を驚かせ、新鮮な気持ちにさせてくれる…」
「よかった…オスカー様が気にいってくださって。私、髪をこんなに短くしたことなかったけど、自分では割と気に入って、だから、オスカー様にどう思われるか、余計に、ドキドキでした」
ふふっ…とアンジェリークが照れたように笑った。
「けど、どうして、いきなり?」
当然の疑問を、オスカーが投げると、アンジェリークは少しもじもじして
「その…積み重ねは大事ですけど、何かの節目の折には、えいやって、時には、それまでのものを脱ぎ捨てなくちゃいけない時もあるんじゃないかって、思ったんです。それで、その思い切りを自分にも示すには、積み重ねの象徴みたいな髪を切るのがいいかもって思って。実際、すごく軽くなったんです。逆にいえば、私の頭、今まで、すごく重かったんだなー、重いものを重いとも思わず抱えていたんだなーって、しみじみ実感しました」
「なるほど…その潔さと思い切りのよさ、俺は好きだぜ。身を捨ててこそ、じゃないが、そうして初めて見えたりわかったりすることもある、ものな。お嬢ちゃんは、いつも、俺に、さりげなく物事の本質を示してくれる。俺も、今、君を抱いて、改めて思ってた。俺が好きなのは、思い出の君じゃない、ましてやホログラムや衣装じゃない、今、俺の腕の中にいて、触れて触れられて幸せを感じる君なんだ。君が、君自身が俺の何よりの宝だ。そして、君は、日々、新鮮で、思いがけない姿を見せてくれたりして、目が離せない、俺を虜にして離さない、つまり、君が俺のそばにいてくれれば、一緒にいられれば、思い出はこれからいくらでも新たに作っていける、思い出は大切だが、執着しすぎることもない、何より一番大事なものを見誤っちゃいかんな、と俺も、思い直したところさ」
そう言って笑いながら、オスカーはアンジェリークを抱き寄せ、口づけた。
「ふふ、それは私も同じです、大事なのは、愛しいのは、オスカー様の衣装じゃなくて、オスカー様ご自身です、オスカー様が一緒にいてくださる、それだけで、いえ、それこそが最高の幸せだって、わかってましたのに…でも、それがわかったから、これで、思い切りよく荷物の整理ができそうです」
「そうだな…そういえば、それを知らしめてくれた君の髪は、どうしたんだ?部屋には全然残ってないようだったが…」
「えっと、それは、その…潔く切り捨ててって言ったのに、矛盾しちゃうんですけど、つけ毛にしてもらうことにしました、自分の髪で、ヘアピースが作れるんですって。そしたら服装に合わせてロングにしたり、気軽にイメージチェンジできるし、ただ、切って捨てちゃうのはもったいない、切った髪の長さも量も十分だから、再利用できますって、さっきの女官が教えてくださって…その手配をしてもらってます、だから、ショートヘアーが不評だったら、つけ毛をつけて、あまり見た目の印象が変わらないようにしようとも思ってたんです、えっと、だから、私、実は、あんまり潔くはないかも、です…せっかく、ほめてくださったのに、ごめんなさい」
「なるほど。いや、それはむしろ賢い選択じゃないか?ばっさり切り捨てようとするから、俺達も、後ろ髪引かれて、思いきれなかった、けど、違う形で、かさばらずに保存できるとわかっていれば、君が髪を切ったみたいに、あまり悲壮な気持ちにならずに処理処分できる。ただ、捨てるのではなく、合理的に再利用…君の衣装は持って行かないが、その姿はすべてホロに起こしてデータにするとかすれば、かさばらない思い出になるじゃないか」
「あ、そうですね。ディーのものも、データ化すれば無理なくかさばらずもっていけますよね、思い出の品物って、使うより、見るものだから」
「まったく、君は、すばらしい女性だな、お嬢ちゃん、あんなに悩んでいた荷物の整理なのに、君が髪を切って、あらたな気づきをもたらしてくれたおかげで、一気に解決だ。君となら、普通の一般庶民の生活でも、何か問題が起ころうとも、日々たのしく新鮮に過ごせるって気がするぜ」
「そんな…オスカー様ったら、ほめすぎですぅ〜。けど、私もです、オスカー様、オスカー様と一緒なら、どんな場所でも、どんな生活でも、幸せでたのしく過ごせるって思います」
「ただ…これから、職場が一緒じゃなくなるから、こうして、思い立って愛を交わすことはできなくなるがな?」
「んもう、オスカー様ったら…あ、もしかして、こういうシチュエーションも惜しんでらしたの?お昼間、執務中に、あ、あ、愛し合えるのも、あと、ちょっとだとか思って…もう、駄目ですよ、ほんとはいけないことって思うし、どなたがいらっしゃるかわからないし…」
『いや、それはむしろ、聖殿の連中にはサービスだから』といいかけて、オスカーはすんでのところで踏みとどまった。誰に見られても困らないし、むしろ、見た連中は喜ぶんじゃないかなんて口を滑らそうものなら、アンジェリークが本気で怒るか、困惑して恥ずかしがって泣いてしまうかもしれないから。それはオスカーの本意ではない
「ああ、けど、君にやさしく叱られ、たしなめられるのが俺は好きなのさ、「駄目です」って言いながらも、俺のわがままを許して、甘えさせてくれるのが嬉しくて、心地よくて…だから、こうして、君の顔をつい、見にきちまうんだろうな、けど、それもあと少しの間だから、そう、大目にみて、勘弁してくれ、お嬢ちゃん」
「ふふ、困った旦那様で、困った守護聖様ですね、オスカー様は。けど、そんなオスカー様が、私は大好き。会いたいと思ってくださる、その気持ちも嬉しいです、愛してるから…」
「俺もだ、お嬢ちゃん、愛してる…」
オスカーが軽く口づける。オスカーが1度唇を離すと、今度はアンジェリークから、オスカーに口づけた。そして、2人は、にっこりとほほえみを交わした。
この聖地から去り、多くの物との別れるからといって、感傷にとらわれることなど、なかったのだ、だって、一番大事な、大切な存在は、ずっと一緒にいてくれるのだから、と気づけたからだった。
FIN