スクリーン上では相変わらず、教師役と女生徒役の俳優の痴態が繰り広げられている。
恐らくカメラを意識してのものなのだろう。男優は乳房の先端を口に含むことなく、あくまでその周囲に舌を這わせるに留まっている。口に含んでしまっては先端が見えなくなるし、何をしているかも画面にははっきり映らないから、観客の劣情を煽る為わざと口には含まないのだろう。
アンジェリークは画面一杯に大写しになっている女優の乳房に頭が真っ白になってしまっている。羞恥にいたたまれないのに、魅入られたように画面から目を反らせない。
男優の舌が若干色素の濃い女優の乳輪をなぞる様子が否応なく目に飛び込んできて、それを見ていると自分がオスカーに同じようなことをされた時の感触がどうしても思い出されてしまう。
『自分じゃわからなかったけど、先生の舌もあんなふうに動いていたのかしら…』
思わずこんなことを考えてしまい、あわてて頭を振った。自分はいったい何を考えているのかと。
するとまたアンジェリークが怖れている瞬間がやってきた。
《先生、もっと舐めて…》
オスカーがビデオを止めて目でアンジェリークを促す。
アンジェリークはすがるような瞳でオスカーを見つめ返したが、オスカーの取りつく島もなさそうな態度に、あきらめたように目を瞑って小さな声でやっと絞り出すようにセリフを復唱した。
「せ、せんせい…も…っと…な…めて…」
恥かしくて死んでしまいそうだ。でも、こんなセリフはまだまだ序の口だった。
《こんなに舐めてやっているじゃないか。》
オスカーと男優の声が重なり、女優の声が続く。
《や…そんな周りじゃなくて、もっと先っちょを吸ったりなめたりして》
アンジェリークは更に泣きそうな顔でオスカーを見やったが、オスカーは涼しい顔で顎をしゃくる。
「そん…な周りじゃなくて…もっと…先っちょを…吸ったり…なめたり…し…て…」
声を震わせながらアンジェリークがようよう復唱を終えるとオスカーがすぐにセリフを引き取り先へと進める。
《仕方のない子だな。こうか?》
セリフと同時に男優が徐に乳首の先端をちろちろと舌で弾いたり、乳首にねっとりと舌を絡み付かせるように舐めあげたる。かと思うと、両の乳首を交互に口に含むこと繰り返し出した。口に含みっぱなしだと画面が単調になるからであろうか、乳首への口唇での愛撫は多岐にわたっている。
男の唾液に濡れて光る乳首の眺めはとことん淫靡だった。
『先生が私の胸の先を舐めたりつついたりしてるとき、先生に私のもあんな風にみえてるのかしら…いや…はずかしい…どうしよう…すごくはずかしい…』
オスカーの唇や舌先が乳房の先端に触れるだけで、アンジェリーク自身は甘い疼きと痺れにすぐ何も考えられなくなってしまうのだが、そんな時オスカーは、自分が今ヴィデオをみているように、自分の乳首が口唇での愛戯に濡れ光りながら固く尖っていくさまを観察していたのかと思うと、アンジェリークはさらに羞恥に身の縮む思いがする。
しかし、女優は大げさに体をくねらせながら
《気持ちいい!おっぱい気持ちいいの!先生、もっと!》
とわめいている。
それは自分だってオスカーに愛撫されたら確かに気持ちいいのだが、だからといって更に快楽を貪りたい気持ちをこんなあけすけに口に出してなんて絶対言えない、言える訳がないとアンジェリークは絶望的な思いに捕らわれる。
だがオスカーはビデオを止めて、アンジェリークがセリフを続けるのを待っている。
「き…きもちいい…」
それでもアンジェリークは口を開けなんとか声を出そうと努力はしてみたが、どうしてもこの後が続かず、顔を覆って下を向いてしまった。
「だめ!先生!言えません!」
オスカーの瞳が妖しく光る。しかし、その顔はなぜか嬉しそうだ。
「お嬢ちゃん、セリフが言えなければペナルティだと言っただろう?…そうだな…ヴィデオの女生徒にもっと感情移入しやすくしてやろう…同じようにセーラー服を脱げ。同じような格好になればもっとセリフもいいやすくなるだろうからな?」
「うそ…冗談ですよ…ね?」
「関係ないことをいうと、もっとペナルティが増えるぜ?それでもいいか?」
物騒なことをいうオスカーにアンジェリークは諦めた様に吐息をつく。そして顔を背けながら、セーラー服のスカーフを外した。それから鍵ホックを外そうとするのだが、自ら進んで行っている訳ではない上、動揺で指が震えてしまいなかなか前を開けることができなかった。そのゆっくりとした動きがオスカーの熱を更にあおっていることにアンジェリークは気付いていない。
漸く前を外しおわって顔を背けたまま手を下に下ろす。羽織っただけになったセーラー服の隙間から白地にピンクやパープルのレースの花で飾られた清楚だが愛らしいブラジャーがちらちらと見え隠れしている。しかし、オスカーはそれでは満足しなかった。
「ブラジャーがまだだろ?俺は『同じような格好になれ』と言ったんだぜ?目を瞑ってたらわからないだろう?しっかり目をあけて画面を見て、おなじようにするんだ。」
「そ、そんな…」
アンジェリークは目はあけたものの画面ではなくオスカーの方を見た。が、かえってオスカーの揺るぎ無い表情に諦念を深めただけだった。
「自分でできないのか…ああ、完全に外すんじゃない…こうだろう?」
オスカーはこう言うとアンジェリークの胸元に手を伸ばしてきた。思わずアンジェリークはびくっと体を竦めた。オスカーはブラジャーの中心に指をかけるとそれを上にたくし上げ、アンジェリークの乳房を露にした。
無理にたくし上げられたブラジャーが柔らかい乳房に食いこみ、その形を変える。乳房の上部が押さえつけられたので、つんと尖った先端は更に上向きになった。
「これでいい…しろといわれたことは、ちゃんと自分でするんだぜ。今後は俺が手伝ったらペナルティとしてカウントしないからな。」
アンジェリークは羞恥に唇をわなつかせる。オスカーの視線がはだけられた胸元に突き刺さる様に感じるのは考えすぎだろうか。するとオスカーが更に追い討ちを掛けるようなことを言った。
「おや、お嬢ちゃん、これはまさか…乳首を固くしてるんじゃないだろうな?俺はまだ指一本触れちゃいないぜ?」
くっくっと含み笑いを零すオスカーと対照にアンジェリークはもう泣きたい気持ちで一杯だ。自分では自覚がなかったのに、見下ろせば確かに自分の乳首は痛いほど張り詰めて乳房の中心で存在を顕示していた。
『ふぇ…もう…いや…なんで、こんなになっちゃってるの…』
アンジェリークも内心ではわかっている。画面の女優を自分の身に無意識に置き換えていたことを。そして、それをオスカーはしっかり知っていることを。アンジェリークは乳房を晒していることと同じ位、自分が女優と同じような気分になってしまっていたことをオスカーに悟られているのが恥かしくて仕方ない。しかも、オスカーがそれを面白がっているのは明白なのだから、多分自分はもっと追い詰められてしまうだろうということが、アンジェリークはわかりたくないのにわかってしまうのだった。
「さ、続けるぞ。」
オスカーがビデオを再生させると男優のセリフが流れ、またオスカーはほんの1、2秒のタイムラグでセリフをリピートする。
《そうか、そんなにおっぱいを舐められるのは気持ちいいか。》
《ああ!そう!そうなの!私、いつも先生にここを舐めてもらったらどんなに気持ちいいかと思って我慢できなくていつも自分で弄ってたの!でも、やっぱり自分で弄るのよりずっと気持ちいい!先生もっと強く吸って!噛んだりもして!》
セリフはどんどんエスカレートする一方である。そういうビデオなのだから当たり前なのだろうが、アンジェリークは目の前が真っ暗になった。『おっぱい気持ちいい』すら言えない自分が、どうしてこんなセリフを口に出すことができようか。
「先生…言えません…」
「おかしいな、ちょっと長いがそんなに難しいセンテンスじゃないだろう?」
オスカーがにやにやしながら答える。
アンジェリークは
『わかってるくせに!先生のいじわる!』
と思うものの、もちろんそれを口には出さない。そんなことを言ったらもっとまずいことになるのは明白だからだ。
「ペナルティは覚悟してるんだな?」
「…はい」
そう答える以外にアンジェリークには返事のしようがない。
「ふ…思ったより陥落が早いな、この次のシーンにシンクロさせようかと思ってたが…じゃ、次のお仕置きはそうだな…ショーツをぬいで脇に置け。」
「………」
アンジェリークは黙って椅子から立ちあがると、こそこそとショーツを下ろし始めた。スカートを先に脱げと言われなかっただけまだマシかも?と思いながら。少なくともスカートがあれば股間が露になることはない。
アンジェリークは自分でも嫌な予感はしていたのだが、案の定ショーツはじっとりと湿っており足から降ろす時透明な糸がかかるほどだった。
『ひーん、先生にこんなの見られたらなんて言われるかわからない〜。きっとまた虐められちゃう〜』
スカートで隠しながら、ショーツの湿りがわかりませんようにと祈りつつアンジェリークはショーツの中央が隠れるようにたたんで脇の机の上に追いた。
こんなことしても、きっとオスカーにはわかってしまっているんだろうなと思いながらも形だけでも隠さずにはいられないアンジェリークだ。
《そうか、いつも私の事を考えて自分で弄っていたのか。君がそんなに淫乱だったとは知らなかったぞ。悪い子だな、君は》
男優がこれ見よがしに乳首に歯を立てる。
オスカーの声がほぼ同時に聞こえてくるので、アンジェリークはだんだんと自分がオスカーにこのセリフを言われているような気がしてきてしまう。同時に女優がされている行為を自分がされているような気分も押さえようとしているのに強くなる一方でアンジェリークは困り切っていた。オスカーに自分自身が悪い子だと言われているような気がどうしてもしてしまって、居心地が悪くて仕方ない。
《ああ、先生、私悪い子なの。授業中もいっつも先生の指や唇しか見てなくて…先生の指で弄られたらどんなに気持ちいいかしらなんてことばかり考えてたの。こんな悪い子の私に一杯お仕置きして!》
だからこのセリフを聞いた時アンジェリークは復唱もせずに(考えてももうできるはずもなかったが)思わず本気で反論してしまった。
「せ、先生!私こんなこと授業中に考えてません!真面目に授業は受けてます!そりゃ、偶にお顔に見惚れちゃうことはあるけど…そ、それだけです!」
オスカーがやれやれと言った顔で、しかし、なんとなく嬉しそうな様子で肩を竦める。
「お嬢ちゃん、誰がお嬢ちゃんがそうだなんて言った?これはただのヴィデオじゃないか。それにセリフ以外の私語もペナルティだと言ったはずだぜ?」
「ふ…ふぇ〜〜」
「次はそうだな…俺の膝の上に座ってもらおうか。そのままで対話を続ける。」
もう抵抗する気力すらないアンジェリークは唯々諾々とオスカーの膝の上にちょこなんと腰掛けた。自分の股間が濡れそぼっていることに気付かれませんようにと祈ったが、その祈りが聞き届けられることはないだろうことも、アンジェリークは頭の片隅で覚悟していた。
オスカーはアンジェリークの背を片手で支え、空いている手でリモコンを操作する。
《私のことを思って弄っていたのはおっぱいだけか?そうじゃないだろう?》
男優が女優のスカートをまくりあげ、その中に手を突っ込んだ。
《ここも弄っていたんじゃないか?先生に正直にいいなさい。》
《いや!先生恥かしい!》
これなら言える。今のアンジェリークの気持ちそのままだからだ。
「いや、先生、恥かしい…」
アンジェリークがきちんと復唱したので今回はヴィデオがそのまま回る。
《正直に言いなさい。言わないと弄ってやらないぞ。それともここは弄らなくていいのか?》
《ごめんなさい、弄ってました。いつも先生に弄ってもらいたくて、想像しながら自分で触ってたの。ああ、先生に本当に触ってもらえるなんて夢みたい…お願い早く触って!》
『こんなこと考えてません!』と言いかけて、アンジェリークは慌てて口を閉ざした。どっちにしろこんなセリフは言えないからペナルティは避けられないだろうが、余計な事を言ったらそれが2倍になってしまうかもしれない。
「……ごめんなさい、言えません…」
アンジェリークはオスカーの顔が見られなくて俯く。
「仕方ないおじょうちゃんだな。ここまでペナルティを与えなくちゃならんとは思っていなかったぞ?ほら、お仕置きだ。」
オスカーはこういうと、アンジェリークの剥き出しの股間に手をのばし、いきなり秘裂に指を1本差し入れた。
「あああっ!」
アンジェリークの腰が思わず宙にうく。
「お嬢ちゃん、なにか俺の膝が湿っぽいとは思っていたが…とろとろじゃないか。これじゃお仕置きにならんなぁ。なんだか俺の指が入ってお嬢ちゃんのここは喜んでるみたいだぜ?」
オスカーがくちゅくちゅと故意に水音を響かせて指を内部でかきまわす。
「くふっ…」
体にどうしようもない甘い痺れが走り、アンジェリークは思わずオスカーの首にしがみ付く。
「さあ、続けるぞ。」
アンジェリークの胎内で指を蠢かしながらオスカーは平然とヴィデオを再生する。
画面では男優が女優を机の上に横たえるとスカートを完全に上までめくり上げてショーツに覆われた股間を露にした。演出なのか、本当に滲み出た物なのかアンジェリークにはわからないが白い下着は濡れて半ば透けており、花弁の形が布の上からわかるようになっていた。
《こんなに濡らして…いやらしい子だ…》
指で男優が花弁の合せ目のあたりをなぞる。
女優が声にならない声をあげる。
アンジェリークはますます自分がオスカーにこう言われているような気分になってしまう。自分の股間もオスカーに指摘された通り濡れそぼっていたものだから余計にいたたまれない。
《だが、正直に言ったから弄ってやろう》
男優は女優の下着を脱がせた。その部分にモザイクがかかる。男優の指がそのあたりをさまよっていることはわかるが、はっきり見えないのがアンジェリークには救いであった。
なにせ、今現在同時進行でアンジェリークの内部もオスカーの指にかきまわされているのだから、それを『おまえは、こんなことを今されているのだぞ』と言わんばかりに見せつけられたら、自分の頭がどうにかなってしまいそうだった。
いつのまにかヴィデオの女優と自分を混同して、同じようなセリフを演技でなく言ってしまいそうなのがアンジェリークは怖かった。
《こんなにはしたなく涎をたらして、恥かしくないのか?君は…》
《ごめんなさい、先生…》
『ああ…また…』
しばらく喘ぎ声だけだったので安心していたのに、やはりそれだけでは終わらなかった。
でも、このセリフだけならそんなに恥かしい単語は入っていない。アンジェリークは股間で蠢く指のほうに行きそうになる意識を必死に留めてなんとかこの短いセンテンスは復唱できた。
「ごめんなさい、先生」
《こんなに溢れさせたら机が汚れてしまうだろう?仕方ない、私がきれいにしてやろう》
男優はみせびらかすように舌を長く伸ばすと、モザイクのかかっている場所にその先端を触れさせたようだった。
女優の背が大きくのけぞり、セリフというより喘ぎ声と荒い吐息、そしてねこがミルクを飲むようなぴちゃぴちゃという水音だけが耳を打つ。
この恥かしいBGMも今のアンジェリークには救いの音である。しかし、
『このままセリフがありませんように、ありませんように…』
との願いも虚しく、また女優の声が聞こえ出す。
《せ、せんせい、私も先生にしてあげたい…》
股間で蠢く指戯に耐える様に無意識のうちにオスカーの首根っこにしがみついていたアンジェリークは、鸚鵡の様に感情を交えず言葉だけを繰り返した。
「せんせい、私も先生にしてあげたい」
何をしてあげたいのかは、わざと考えないようにした。意味さえ考えなければなんとかこれは言えると思った。これで終わる訳がないのは百も承知だったが、とにかく目前の危機は回避しなければという、その一心だった。
《そうか、じゃ、私のものをきれいにできたら、君にご褒美をあげてもいい。先生はなんでも一生懸命な子が好きだからな》
《ああ、嬉しい…》
女優と男優は体を互いに違いにして、互いの性器のあたりを口唇で愛撫し始めたようだ。双方にモザイクがかかっているのではっきりとは見えない。
「ああ、うれしい」
アンジェリークは何も考えない様にしてとりあえずこれもクリアした。このまま無難な単語が続けばなんとかいけそうだと思った瞬間
《私、先生の咥えてみたかったの…ああ、とっても大きくて固い…お口にはいりきらないくらい…でも、とってもおいしい…先生のおいしいの…》
このセリフにまたアンジェリークは奈落から突き落とされたような気分になった。もう考えるまでもない。
アンジェリークはオスカーのものを自分の口腔で愛撫したことがないわけではない。数えるほどだし決して巧みにできているとは思わないが、する時はオスカーに教えられた通り懸命にする。オスカーが嬉しそうだし、オスカーに喜んでもらいたいとおもうからだ。
そしてその度に、オスカーのは大きいし、固いし、口に入りきらないし、目のやりばに困るし、やっぱり変な形だなと思うし、どうしても恥かしいし、息をするのも苦しいわとは思うのだが、咥えてみたいとか、おいしいとか思ったことはなかった。それとも体がこなれて愛撫になれるとこういう気持ちになるものなのだろうか。
『わ、わたしもそのうち、先生に自分から『咥えさせて』とか『美味しい』とか口走るようになっちゃうのかしら、なっちゃったらどうしよう〜!どうしたらいいの〜!きゃーん、恥かしい〜!』
絶対ならないという自信がアンジェリークにはなかった。だから余計にこんなセリフ絶対言えないと思った。言ってしまったら自分の内部にある見えない砦がひとつ崩壊してしまいそうな気がした。
「先生…いえません……ひぅっ…」
内心の動揺を隠しつつ白旗を再度あげると、それを予期していたかのように、オスカーの指が2本に増やされた。
「あっ…あっ…あっ…」
しかも、指は互い違いに開閉を繰り返し肉壁を刺激する。自分の胎内を無秩序にかきまわすオスカーの指遣いにアンジェリークの頭は白熱する闇に徐々に染め上げられていく。オスカーの首にしがみ付く力は更に強くなり、押さえきれずにもれ出る喘ぎと湿った吐息がオスカーの耳朶をかすめ、オスカーの背筋にもあまやかな戦慄を走らせた。
《私のものを咥えることまで夢想していたとは、どこまでも君は淫乱なんだ?だが、私のものを咥えたかったのは上の口だけか?君のここもなんだか物欲しげにひくついているぞ?》
《あっ…先生の逞しいこれ、私のそこにいれてください!もう、もう、がまんできません!》
「だめ…いえない…こんなこと、いえない…」
意識が朦朧としだしたアンジェリークは、もうオスカーに丁寧語を使っている余裕もなくなっていた。うわごとのように同じ言葉を繰り返す。
「仕方ないお嬢ちゃんだ…」
耳元で甘い声が耳朶をくすぐるとともに指がもう一本増やされた。同時に親指が固くしこった花芽を捕らえゆっくりと転がし始めた。
「はぁあっ…や…くる…し…」
痛みはない。あるのは自分の内部を埋め尽くす息のつまるほどの量感と震えが走るほどの快楽だけ。オスカーの指先はあるものは花芽を転がす様に擦りたて、あるものは最奥に突き入れられる。そのたびに体を駆けぬける震えはとめようがない。
オスカーはアンジェリークの体がすんなり受け入れる限界をアンジェリーク自身より知っているようだ。無茶なことをされているようでいても、オスカーに不快や苦痛を味あわされたことなど、アンジェリークは一度もなかった。オスカーが自分に痛みを与えたのは後にも先にも破瓜の瞬間だけだった。それすらもその後の圧倒的な快楽に塗りかえられた。
今までも、おそらくこれからもオスカーは自分に毛一筋ほどの苦痛も与えることはないだろうという絶大な信頼がアンジェリークにはあった。だから、一見無茶な要求もアンジェリークは結局受け入れてしまうのだ。
「さ、お嬢ちゃん、後少しだからな、続けるぞ…」
オスカーが耳朶を軽く食み告げる。もちろんその間も指の動きは止まることはない。
男優が女優の腰を抱えて貫き、即座に律動に入っていた。女優の体が激しく揺さぶられる。もう、アンジェリークは画面を見ていてもその内容は頭にはいっていなかった。オスカーの指戯に飛び散っていきそうな意識を繋ぎとめているので精一杯だ。
女優があられもなく叫んでいる。
《先生!もっと、もっと突いて!わたしのはしたないあそこをいっぱいかきまわして!》
アンジェリークはこのセリフを聞くと、唇を噛み締め軽く頭をうちふりながら、答えるともなしにこう呟いていた。
「あぁ…や…だめ…そんなこと…思ってもいえない…言っちゃだめなの…こんなこと言ったら…いやらしい子だって先生にあきれられちゃう…きらわれちゃう…」
アンジェリークは思ったままのことを意識せずに口の端にのせてしまったようだ。それはそのまま今のアンジェリークの気持ちだったからだろうか。
そのアンジェリークの耳に呪文の様に低く響いてきた声。
「お嬢ちゃん、欲しいものは欲しいって言っていいんだ。俺はそんなことでお嬢ちゃんを嫌ったりしない…だから安心してもっと乱れてくれ…」
『え?なに?今の…セリフ…なの…?』
茫洋とした頭でそう思った時にオスカーのしっかりした声が耳にとどいた。
「お嬢ちゃん、今のが最後のセリフだったのに、また言えなかったか…最後だからお仕置きも特別に選ばせてあげよう。もう一本指を増やすのと、俺のもので貫かれるのとどっちがいい?」
アンジェリークはいやいやするように首を横に振った。
「や…そんな…もうこれ以上指なんて入りません…くるし…も、おなかいっぱいになっちゃう…」
「なら、俺のものでいいんだな?いいのか、指4本より太いかもしれないぜ?」
オスカーはにやりと笑って嘯く。こんなことを言いながらも片手は器用に自由にした自分のものに手早く避妊具をつけている。悠々と天を突いて屹立しているそれは、禍禍しいほどの圧倒的な量感を誇っていた。
「いい…の…せんせいのがいいの…指じゃ…なくて…」
苦しげな吐息の合間から漏れる切切とした声音を聞き、オスカーが今日初めてアンジェリークに口付けた。小鳥の囀りのような軽い口付けだった。
「お嬢ちゃん…補習、最後までよくがんばったな…本当はこれはお仕置きじゃない、ご褒美だ…」
言うや、灼熱の量感がアンジェリークを引き裂く様に貫いた。アンジェリークは一瞬息が止まった。
「かはっ…」
オスカーはそのまま勢いよくアンジェリークの臀部を抱えて、自分の腰に臀部ごと打ち付ける。
同時にアンジェリークの体が浮きあがるほどの力強い突き上げを繰り出す。
杭のように打ちつけられると同時に深深と刺し貫かれて、アンジェリークの脳裏に激しく眩しい官能の火花が散った。
「ああああっ!」
大きくのけぞった反動で突き出された乳房をオスカーの唇が捉え、そのまま強く吸う。
「はっ…ああっ…やぁあっ…」
突き上げられるたびに、オスカーのものに押し出されるようにアンジェリークの喉の奥から叫びにも似た声が迸る。
回ったままのビデオからも意味を為さない断続的な叫びと荒い呼吸音が流れていたが、アンジェリークはもとよりオスカーももう画面などまったく気にしていなかった。
今オスカーの思考を占めているのは、この愛しい少女を考えうる限り最高の快楽の高みに追いやることだけだ。そのため、ある種の求道者にも似てオスカーは余計なことはなにも考えず渾身の力でアンジェリークを貫き続けた。
込み上げ溢れ出す快楽に耐えきれず、アンジェリークが思わずオスカーの肩に歯をたてる。
「うっ…」
肩に瞬間走った疼痛に思わず放ちそうになってしまい、オスカーは慌てて気を引き締める。
我を失っているアンジェリークは時折思いも掛けないカウンターを出すことがあるので気が抜けない。以前律動の最中に突然耳朶を軽く噛まれて、その甘い衝撃にあっけなく果ててしまったこともあるくらいだった。
予期せぬ反撃を防ぐためオスカーはアンジェリークの体を教卓に押しつける様にして接合を保ったまま横たえると、自分は立ちあがって大きくアンジェリークの足をハの字に開いて、さらに腰を前にせり出した。
「やっ…ああああっ…」
ぐりぐりと奥を抉るような律動に、アンジェリークが泣き叫ぶように甲高い声をあげる。
「こんなに感じて…そんなに奥を突かれるのがいいのか?」
オスカーは深い結合を保ったまま、円を描く様に腰を使う。アンジェリークの腕がなにかにすがろうとするように前に伸ばされる。
「も…も…だめ!だめなのっ…」
オスカーは伸ばされたアンジェリークの手をとって彼女自身の膝頭をつかませ、その上に自分の掌を重ねた。
「まだだ…失神するんじゃないぜ?お嬢ちゃん…」
オスカーはアンジェリークと掌を重ねた形のまま膝を抱えこみ、自分の体重をかけた深く重い律動を立て続けに凄まじい勢いで与え、子宮口を思いきり突き上げ続けた。
アンジェリークの背中が固い机の上で美しい曲線を描いて反りかえった。同時に小刻みな震えが全身に走る。
「ああああっ!」
「くぅっ…」
その締め付けの甘美さに酔いしれ、オスカーも素直に欲望を手放した。
ビデオはとっくに回りきり、スクリーンにはざーざーという乾いたノイズと砂嵐が吹き荒れていた。
アンジェリークの中にそのまま留まっていたいのはやまやまだったが、避妊のことを考えたらそうもいってられない。オスカーは自分のものが萎えきらないうちに取り出してアンジェリークの股間もきれいに始末してやってから、もう一度アンジェリークを自分の膝の上に載せて口付けた。
アンジェリークがとろんとした目で、それでも幾分拗ねた様子でオスカーに抗議した。
「も…せんせ、ひどい…わたし、ふつうの補習だと…思ってたのに…こんな…」
オスカーはもう幾度か口付けを降らせながら、にやにやして答える。
「おや?お嬢ちゃんは俺に特別補習をしてもらいたくて、わざと授業でとちったんじゃなかったのか?俺はお嬢ちゃんの期待に応えなきゃいかんと思って、わざわざこの教材も特別に用意したんだぜ?セーラー服ものを探すのに苦労したぜ。」
言葉がおわると同時にまた降ってくるキスを一回だけ受けると、アンジェリークはその後のキスを避ける様にオスカーの胸に腕を突っ張らせた。
「ち、違います!わ、私、わざと失敗したんじゃありません!まして、そんな期待してたなんて…」
オスカーがちっちっちとたてた人差し指を横に振る。
「信じられんな。今日の補習が俺の研究室じゃないからって最初がっかりしてたじゃないか?ん?特別補習を期待してたんだろ?さあ、先生に正直に言いなさい。アンジェリーク・リモージュ。」
あきらかなからかい口調にアンジェリークが口を尖らせた。
「も!違うったら違うもん!先生のばかばかばか!意地悪!嫌い!」
自分の胸板を軽く叩くこぶしをオスカーはあっさり捕らえて、替りにもう何度目か数えきれないほどのキスをアンジェリークに与える。とびきり甘い声と優しい瞳とともに。
「本当か?本当に嫌いか?」
「う〜〜、うそです…好き…ほんとは大好き…すっごくすっごく好き…」
アンジェリークは即座に強がりをやめて降参してしまい、オスカーの胸のなかに自ら身を躍らせる。そしてオスカーの胸に頬を摺り寄せながらこう付け加えた。
「でも、昨日の授業、わざと失敗したんじゃないです、これは本当です、先生…」
「しかし、それじゃなんで昨日に限ってあんなにできが悪かったんだ?お嬢ちゃんはいっつもテストで失敗したことは、ちょっとしたケアレスミス以外なかったじゃないか?」
「それは、その…急に気になっちゃって…」
「何がだ?」
「その…男の子と遊園地に行くなんて先生がどう思うだろうって思ったら…私がこうしたいなんて先生が思っちゃたら困るなって思ったら、その、覚えてたことみんな忘れちゃって…」
朗らかに楽しそうにオスカーが破顔した。
「なんだ、俺がやきもちを焼いて怒ると思ったのか?だってあれが授業上でのロールプレイじゃないか。そんなこと考えてもいなかったが…なんだ、お嬢ちゃんは俺にやきもちを焼いてもらいたかったのか?ん?心配してたんじゃなくて、俺がやきもちを焼くことを期待でもしてたんじゃないか?」
アンジェリークもほっとしたように微笑んだ。
「ん…んと…少しそうかも…もしあれがほんとのことだったら先生、やきもち焼きました?」
オスカーがアンジェリークのかわいい鼻を軽く噛んだ。
「きゃ!」
「こら、そんなこと冗談でも言わないでくれ。俺は実際はめちゃくちゃ嫉妬深い男なんだからな。お嬢ちゃん、絶対他の男とデートなんかしちゃだめだぜ?例えグループでもだ。約束してくれるか?」
「はい、先生。」
こっくりと童女のようにアンジェリークが頷く。そのアンジェリークをオスカーはきゅっと抱きしめる。
「今はお嬢ちゃんを遊園地に連れていってやれないが…お嬢ちゃんが学部生になったら今まで行けなかった所に行ってデートをいっぱいしような。遊園地でも動物園でも海でも山でも好きな所につれていってやるからな…」
そこまで言ってオスカーははっとしたようにアンジェリークをもう一度見つめ返した。
「もしかして、それを心配したのか?俺は今お嬢ちゃんをおおっぴらに連れて歩いてやれない。俺たちは遊園地でデートなんてできないのに、お嬢ちゃんのグループはそれをロールプレイに選んじまった。まるで俺に当て付けてるみたいに…そう思われるのが…もしかして心配になったのか?」
アンジェリークが突然わたわたし始めた。
「いえ、あの、そんな、先生がなんとも思ってなかったから、それでいいんです。あの、ないもの強請りしてる気なんて全然ないのに、そう先生に思わせちゃったら申し訳ないと思って。あの、私、無神経だったかなってちょっと気になっちゃったんです。先生が私と外でデートしないのは、私のことを思ってくださってるからだってわかってますから。外で会えなくても、先生、2人の時間作ってくださるから、それだけで私しあわせですし…」
ぽっと頬を染めてから、アンジェリークはおずおずとこう尋ねた。
「先生、私があてつけたとか、無神経だとか思わないでくださいました?そんなつもりほんとになかったんです…」
「思うもなにも、今の今まで気付かなかったぜ。本気でお嬢ちゃんは俺と特別な補習がしたくてわざと授業でへまをやったんだと思ってたくらいだからな。」
「んもう!先生ったら!でも、よかった!」
「そうだろ?この補習も結構よかっただろ?お嬢ちゃんも満足そうだったもんな。」
オスカーはアンジェリークの頬に自分の頬を愛しげに摺り寄せる。
「そのよかったじゃありませんったら〜」
くすぐったそうに首を竦めるアンジェリークの抗議をオスカーはわざと取り合わない。
「わざと授業でとちらなくてもお嬢ちゃんにならいつでも補習は用意してやるからな。補習を受けたい時は予めそう言ってくれよ?また特別な教材を用意しておいてやるからな?」
「違うっていってるのにぃ。んもう、知らない!」
拗ねるアンジェリークにオスカーはくっくっと笑いながら耳元で囁いた。
「ほんとに補習は楽しくなかったか?もう2度としたくないか?正直に言ってごらん?」
「うう〜…そ、そんなことはない…です…」
「じゃ、またするか?ん?」
「あの、わざわざ補習じゃなくてもいいような気もするんですけど…」
「そういやそうだな、まだ夕飯までは間があるし…これから俺の部屋に来てもう2、3回するか?お嬢ちゃん。家の人がいいようなら夕飯も一緒に食おう。帰りはちゃんと家まで送っていくから。」
「そういうことを言ってるんじゃありません〜!」
というアンジェリークの声はまたも降ってきたオスカーの唇で塞がれた。
そして、真剣で真面目な交際を標榜しているオスカーは、この後きちんと自分で、お嬢さんを夕飯までお借りしますとアンジェリークの自宅に連絡し、夕食後常識的な時刻までにアンジェリークを車で自宅に送り届けた。
学校関係者には内緒にしていても、アンジェリークとの将来を真剣に考えているオスカーは交際しだしてすぐにアンジェリークの両親に自分から挨拶してあった。
学内選考が済むまで学校関係者にさえ隠しておけばいいのだし、両親には逆にオープンにして自分の誠意や真剣さをわかってもらうほうがかえって信頼されていいと判断してのことであった。
実際両親も将来有望な研究者であり目上には折り目正しい青年であるオスカーとの交際を喜んで認めてくれ(もちろんこんな補習をしていることなど思ってもいないが)オスカーが送ってくれると予め伝えれば帰りが多少遅くなってもアンジェリークが咎められることもなかった。
しかし自分の部屋まで行ったものの、オスカーは夕飯までの時間では結局アンジェリークとのリターンマッチは1回しかできなかった。視聴覚室ではあまりできなかった愛撫に時間をかけたせいもあるが、一回放っていたせいで、それでなくてもある持久力が更に増してしまい、体力の追い付かないアンジェリークがギブアップしてしまったのだった。
ぬいぐるみのようにくたくたになってしまったアンジェリークを抱きしめながらオスカーは、持久力がありすぎるのもよしあしだなぁと思う一方、こういうお嬢ちゃんもかわいいが、もう少し体力をつけてもらうともっと楽しいな、どうやって体力をつけてもらうとするかな、などとまた楽しい思いを巡らせるのであった。
FIN