クラヴィスはディアンヌの唇に軽く吸うだけの口付けを与えながら、自分の羽織っていたローブを無造作に脱ぎ捨てた。どんなに薄くても僅かでも自分とディアンヌの間にある障壁は一刻も早く完全に取り去ってしまいたかった。
肌のすべてで、五感のすみずみでディアンヌという存在を感じたかった。
だが、ディアンヌの夜着をもどかしげに剥ぎ取るようなことをするつもりはなかった。
早くその肌の色を確かめたい、直にこの手で唇でディアンヌの身体の隅々まで触れて確かめたいという欲望で体中は灼けつくようだったけれど。
しかし、求める気持ちがどんなに激しく燃え盛ろうと、相手もまた同じ熱さで自分を求めているのでなければそれをいきなり全開にして押しつけるのはただのわがままであり、愛する者への配慮に欠ける行いであることもクラヴィスは知っている。
愛している、好きだという事実はどんなことでも許してくれる免罪符ではないのだ。
愛するが故に生の感情を押し殺すこともできるのが大人の愛し方だろうし、逆に自分はそのようにしか愛を表現できない。
求める思いのままに情熱を迸らせ、ただがむしゃらにそれをぶつける事など最早できない自分の心のあり様を少し寂しく思うと同時に、かえってよかったとも思う。
おそらくは性の営みにまったく無垢であろうディアンヌに怖い思いや嫌な思いをさせるくらいなら、どんなにひりつくような欲望も押さえてみせる。
愛する故の帰結である肉体の交わりが悦びに満ちたものであると思わせてやれないくらいなら、抱かない方がいいとさえ思う。
だが、その一方でクラヴィスは固く心に決めていた。
ディアンヌが自分を求める気持ちを自分と同じ熱さまで高めてみせる。
自分と同じ熱を持つまで、灼けつく熱さに身をもてあますほどにディアンヌの身体も心も熱くしてみせると。
躊躇いも怯えも捨て情熱の奔流にディアンヌが自らを投じる気になるまで、際限なくいかようにも愛すると心に固く誓う。
だが、今クラヴィスの手はあくまで優雅に繊細にディアンヌの髪から背中を、丸い肩から二の腕を触れるか触れないかの微妙な指遣いでなでさする。
その手に性急さ、強引さは微塵もない。
軽く吸い上げる内にうっすらと綻んできた唇にそっと舌を差しいれると、今度は促さずともディアンヌも歯列を開いた。
舌をさし入れ、ディアンヌの舌先と自分の舌先を触れ合わせてから左右に軽くはじき、それから徐に舌を回すように絡めて今までより少し強く吸った。
ディアンヌの麗しい弧を描く眉が僅かにしかめられるのが見て取れた。
身体に小さな火を灯す口付け。クラヴィスは注意深く口付けを深めていく。さし入れる舌が深くなる、生き物のように舌を蠢かして絡みつける、吸い上げる強さも少しづつ強くしていく。
せっかく灯った火が消えぬ様に、その火が少しづつ燃え上がっていく様に。
徐々に官能を煽る口付けをしかけながらクラヴィスはディアンヌの肩から二の腕を掌を回す様に撫でさすりながら、その手の動きで自然と夜着をはだけていく。
ディアンヌはクラヴィスの手が少しづつ肌を露にしていくことにもさしたる抵抗をみせずにされるがままになっていた。
クラヴィスの手が優しく、しかし、臆することなくディアンヌの肌を夜気に晒していく。
クラヴィスの手の動きには荒荒しさも性急さもない。どこまでも穏やかでゆったりとさえしている。
でもなぜか、クラヴィスが自分を求める心の熱さのようなものが掌から伝わってくるようでディアンヌの心も熱くなる。
恥かしくないといえば嘘になる。
むしろ、吸い尽くされるような深い口付けに、大きいのに繊細なクラヴィスの手が自分の肌を慈しむ様にまさぐる感触に、羞恥で頭がどうにかなりそうだった。
だが、クラヴィスに手を離さないでほしい、その大きな掌で包みこむように触れていてもらいたいと思う心がふつふつと泉水のようにわきあがり、いつしかディアンヌはクラヴィスが着衣を脱がしやすい様に自分から身体を僅かに捩っていた。
口付けを続けながらクラヴィスは夜着の肩紐をはずし、肩を撫でている手を少しづつこんもりと盛りあがった胸元へと伸ばしていき自然な流れで乳房も露にしていった。
ディアンヌが無意識にか片手で胸元を隠そうとしたので、その手を取って軽く口付けてから指を絡ませシーツに押しつけて動きを封じる。
そして残った片手でクラヴィスはディアンヌの肌を更に露にしていく。
滑らかで吸いつくような肌から掌を放し難く、クラヴィスはディアンヌの肌をあます所なく愛でる様に撫でさすりながら少しづつ、だが着実に夜着をはだけていく。
たまさかディンアンヌが僅かに身じろぎをしたが、それは拒否でなく肌をすべるクラヴィスの指にこそばゆさを感じたゆえの反射的な反応のようだった。
クラヴィスはディアンヌが身を捩るその動きも利用して夜着から腕を抜かせ、ディアンヌの身体を覆っていたなよやかな布をするりと取り去ってしまった。
アイボリーのレースのショーツ一枚残すだけにされてしまったディアンヌが羞恥に身を縮め様とする前にすかさずクラヴィスは自分の体でディアンヌの肌をすべて覆い隠す様にきつくその身を抱きしめた。
自分の全身でディアンヌの肌を感じたかった。
なるべく肌のすべてを添いあわせたかったので膝頭でディアンヌの足を割り、ディアンヌの足に自分の足を絡めるように擦り合わせた。
ディアンヌは一瞬足に力を入れそうになったがすぐ緊張を解いて僅かに足を開いた。
クラヴィスの肌を感じたいと思っていたのはディアンヌも同様だったから。
クラヴィスが長い口付けを一度ほどき、ディアンヌを愛しさを湛えた瞳で見下ろした。
ディアンヌもゆっくりと瞳を見開き、クラヴィスを見つめ返した。
クラヴィスの絹糸のような髪がディアンヌの肩口に触れる。
厚く広い肩幅がディアンヌにクラヴィスの男を感じさせる。
クラヴィスの顔をこのまま見つめていたい気持ちと、羞恥に瞳をとじてしまいたい衝動と、相反した思いが心の中でせめぎあってディアンヌを息苦しくさせる。
「こんなにも心地よいとはな…」
「え?…」
「おまえの肌だ。いつまでも、どこまでも触れていたいと思わせる。暖かく吸い付く様に滑らかで…」
「や…クラヴィスさま…そんな…」
「おまえの肌をもっと感じさせてくれ、あます所なくおまえに触れたい…」
「ああ…クラヴィスさま…」
ディアンヌは思わずクラヴィスの背に手を回しその広い背中に思いきりだきついた。
同時にクラヴィスの手がもどかしげにディアンヌの肌をまさぐったかと思うと、すぐさま大きな掌はそっと乳房にあてがわれた。
初めて触れるディアンヌの乳房は掌に染みいるほど柔らかく、それでいてクラヴィスの指を弾くような瑞々しい弾力がある。
瞳でも確かめたくてそっとディアンヌの身体を見下ろした。
乳房はこんもりと豊かに優しげに盛りあがっており、その一方可憐な乳頭はクラヴィスを誘いかける様に挑戦的につんと上を向いてる。愛らしく蠱惑的な乳房の様子に誘われる様にクラヴィスはそのまま掌を回すように動かして乳房全体の輪郭を確かめるようにもみしだいた。
「ん…」
ディアンヌの口からくぐもった吐息が零れた。
椀を伏せたような美しい半球形の乳房はクラヴィスの手の動きにあわせてふるふると揺れ震え形を変えながらも美しい稜線は決して乱れない。
ぷるりと愛撫の手を弾きかえす張りのある乳房は、掌に自ら吸いついてくるような肌の感触とあいまっていつまでも揉みしだいていたいと思わせるほどだ。
クラヴィスの指の間から見え隠れする乳房の先端に咲く蕾は小さすぎず大きすぎず、まだ色づきも控え目で妖艶さよりはかわいらしさを感じさせるが、それゆえ思わず愛撫を加えたくなる可憐さに満ちている。
クラヴィスが掌を回すごとにその可憐な蕾も存在を主張し始めていた。
蕾の先端が少しづつ頭をもたげ硬度をましてくのが手にはっきりと感じられる。
その誘惑に抗し切れず、クラヴィスは立ちあがった乳首を繊細な指先でそっと摘んでみた。
「あんっ…」
一瞬胸の先端から走った痺れるような快美感にディアンヌは思わず声をあげてしまった。
クラヴィスに乳房をやわやわと撫でもまれているうちに、なにやらもやもやとした、息苦しいような感覚が徐々に胸の中に積もっていた矢先のことだった。
恥かしくて仕方ないのに、クラヴィスの手にとまらないでほしいと感じている自分の胸中が見ぬかれそれを摘み取られたような気がした。
胸の先端を触れられることで、こんな快感が生じる事もしらなかった。
そう…私、気持ちいいんだわ…クラヴィスさまの指で触れられると気持ちいい…恥かしいのに…どうして?
羞恥の気持ちがその快美感をより一層鮮烈にしていることなどディアンヌに知る由もない。
クラヴィスがディアンヌの声に後押しされるように、大胆に指先を動かし始めた。
指先をすり合わせるようにして乳首を摘みあげると更にそこが固くそそり立つ。
固く立ちあがったその先端を指の腹でくりくりと転がしてみれば、ディアンヌの唇から火のような吐息が途切れ途切れに零れ出す。
自分の意志とは裏腹に勝手に漏れ出す吐息にディアンヌは戸惑いを隠せぬようだった。
「あっ…あん…や、く、クラヴィスさま…そんな所弄られると私、なんだか変です、変な気持ちになって…う…ん…」
「ふ…だが、いやではないだろう?」
クラヴィスは再度乳首を摘み上げると一層指を擦り合わせるように乳首をこねはじめた。
同時に首筋から肩口に舌を縦横に這わせ所々で軽く歯をたてたり、肌を吸い上げた始めた。
ディアンヌは思わずクラヴィスの流れる黒髪に指を埋めてきつく抱き寄せた。
「あっ…あん…や…だめ…変な声でちゃう…やぁ…ん」
艶やかな声を零すうっすらと開いたままの唇は妖しく濡れてクラヴィスを誘いかけるかのようだ。
「それでいい…もっといい声で鳴いて見せてくれ…私の子猫…」
クラヴィスはこういうと舌をうなじから徐々に乳房の裾野に滑らせ、ディアンヌのデコルテにあます所なく舌を這わせて唾液のあとを付けたのちに、摘み上げている方とは反対の乳首を徐に口に含んだ。
「ああんっ!」
ディアンヌの身体がびくんと撓った。
クラヴィスの暖かい唇とぬめっとした舌の感触に指で弄られるよりもっと狂おしいほどの悦楽が胸の先端に走った。
ディアンヌの反応を見てクラヴィスが迷うことなく舌先で乳首を弄い始める。
乳首全体を丁寧に舐め上げたあと、乳首の先端を舌先でくすぐり、かと思うと舌全体でねっとりと舐る様に乳首を転がす。
舌で鋭い刺激を与える合間に柔らかく乳房をこねまわしながら先端をちゅくちゅくとしゃぶるように優しく吸い上げる。
その口戯を両の乳首に交互に加える。
口に含んでいないほうの乳首は摘み上げられ指の腹で転がされるのは先ほどと変わらないが、唾液で濡らされた乳首に指の動きもより滑らかになり、さらに先鋭な感覚がディアンヌを翻弄する。
「ああっクラヴィスさま…クラヴィスさまぁっ…」
自分でも訳がわからぬまま、ディアンヌはクラヴィスの名を呼びつづけた。
首をやるせなげに振り、眉をきゅっと寄せ、細い指に力をこめてクラヴィスの背にすがりつく。
「かわいいな、おまえは…気持ちいいか?」
「やぁ…そんな、よくわかりません…」
単純に気持ちいいと言いきれない。この息苦しさ、いたたまれないようなやるせなさはどうだろう。
このまま愛撫を続けられたら息も止まってしまいそうな気さえする。
でも、ディアンヌは今はっきりと感じている、止めてほしいか、続けてほしいかと問われれば、このまま続けてもらいたいと迷わず答えるだろうということを。
「ふ…では、はっきりとわかるまで愛してやろう…」
クラヴィスは再度ディアンヌの乳首を口中に含むと、先端でちろちろと小刻みに舌を蠢かしながら間断なく、しかし、どこまでも柔らかく乳首を吸いあげる。
決して痛みを覚えるほど強く吸ったり、激しく舌で弾いたりはしない。
わずかに物足りないと思わせるくらいの絶妙な力加減で、唇で乳首を挟みこむことを繰り返す。
「ああっ…やぁ…んくぅ…」
ディアンヌが切なげに頭を打ち振るのを満足げにみやりながら、クラヴィスは手をそろそろと鳩尾からなだらかな腹部へ伸ばして行った。
魅惑的に括れたウェストから豊かに張り出した腰のラインを撫でさすってから、クラヴィスは迷わず股間を覆う僅かな布に手をかけた。
総レースの小さな布はその部分を隠すというよりより、男の目をその部分に引きつけるために身につけられているとしか思えない。
レースから金褐色の柔らかそうな繊毛が透けて見える様によりその思いを強くする。
優しく、だが迷いのない指の動きでその小さな布を取りさっていく。
クラヴィスにすでに股間を割られ足を絡められていたディアンヌは、足を閉じる暇もなく最後の砦をやすやすと取り払われてしまった。
でも、もともと抵抗する気があったのかディアンヌにはもうわからない。
乳房を執拗なほどに愛されるうちに、無意識に自分からクラヴィスに股間をおしつけ、足を絡ませてしまいたくなるような衝動が耐えず自分を内部から突き上げていた。
取り去った布がしとどに濡れそぼっているのを手に感じクラヴィスの心は熱いもので充たされる。
はっきりと目にした繊毛は薄絹のように艶やかで柔しげに盛りあがり、思わずそっと撫でずにはいられなかった。
「あ…」
陶酔ではない声が一瞬零れ、ディアンヌの下腹部にさっと緊張が走った。
僅かに上体を起こし、クラヴィスにすがるような視線を投げ掛ける。
クラヴィスは軽くディアンヌに口付ける。
なにも心配はないのだというように泰然と、しかしこの上なく優しく微笑みかけてディアンヌの髪をなでる。
ディアンヌの身体から緊張が薄れ、再び静かにシーツに沈みこんでいく。
クラヴィスは唇でディアンヌの耳朶を食みながら、繊毛を撫でていた手をその奥にさらに進めた。
ふっくらと確かな量感をもって盛りあがる豊かな秘唇を手に感じた。
ぴたりと合わせ目はとじているにも拘わらず、秘唇全体はとろとろに溶けたように熱いぬめりに溢れかえっていた。
そのぬめりを塗り広げる様にそろえた二本の指を力を入れずにすっと上下させた。
「ふぁっ…」
反射的にディアンヌが足を閉じようとするがクラヴィスの膝に阻まれそれは果たせない。
ディアンヌも嫌悪に足を閉じようとしたのではない。
股間をすっとクラヴィスの指が滑ったとき、疼きを伴う痺れのようなものをそこに感じてその未知の感覚に戸惑っただけだった。
そして、指で擦られてみて初めて気付いたのだ。自分のその部分が何かの液体で溢れかえっていることに。
「かわいい、いじらしい私の子猫…このように熱く私を求めてくれるか…」
クラヴィスは低い声で囁きながら、探るようにくすぐるようにそのぬめりを利用して股間の合わせ目に指を滑らせる。
クラヴィスの指が動くたびに、ディアンヌの身体の奥底からなにかを求める渇望感がさらに狂おしく増して行く。
「ああ…クラヴィスさま…わたし、わたし、変です…なんでこんなにそこが熱いの…溢れてくるの…こわい…」
身体が、足りない何かを充たしてもらいたがっている。何を求めているのか、それを知るのが恐かった。
「なにも怖れる事はない、おまえが私を求めてくれるその気持ちが熱い滴りとなってその心のままに溢れているだけだ…」
クラヴィスがわざと水音を響かせる様に少し強めに指を上下させた。
ぬちゅぬちゅと粘り気のある湿った音が響く。ディアンヌはたまらずに手で顔を覆ってしまった。
「ああ、いや、クラヴィスさま…恥かしい…」
「恥じる事などなにもない。おまえは言ったな?私を慕う気持ちを形に表すのはどうすればいいかと…今、おまえがどれほど熱く強く私を求めてくれているのか、これがなにより雄弁に語ってくれている…」
クラヴィスはつぷりと僅かに指先を秘唇の合わせ目に差しいれると、そのまま指を上方に滑らせ小さな肉芽を探った。
合わせ目の奥に隠れた小さな芽にクラヴィスの指が探り当てるやいなや、クラヴィスのしなやかな指がその芽を軽くつまむように、すり合わすように動き出した。
その途端、今まで感じたことのない鮮烈な鋭さをもった感覚が電流のように身体を駆け抜け、ディアンヌは思わず悲鳴のような声をあげてしまった。
「あああああっ!」
しかし、その声にクラヴィスは臆するどころか、より一層の熱意を持って指先で花芽を柔らかくつついては指の腹で転がしたり、軽く摘んでは擦り上げたりし始めた。
「やぁっ…クラヴィスさま、なに?これ、こんなの知らない…あ、あああっ!」
「これが、おまえを愛しく思う私の心だ。男である私の愛しかただ。おまえをもっと熱くさせたい。なにもわからなくなるほど蕩かしてやりたい。おまえが私を求めて耐え切れなくなるほどに…」
「あ…んくぅっ…んんっ」
クラヴィスはびくびくと震えるディアンヌの腰を自分の体でしっかりと押さえこんで指を滑らせ続ける。
ディアンヌが慣れない感覚の奔流に翻弄されきっているのがよくわかる。
悩ましげに寄せられた眉、火のような吐息を零す濡れた唇、紅潮しきった頬、たまさかやるせなげにうちふられる顔にはうっすらと汗の珠が浮かび、その汗に後れ毛がはりついているさまに眩暈がするほどに情欲をかきたてられる。
もっと熱く激しく乱してやりたい、淫らといえるほどに乱れきるまで。
クラヴィス自身、ここまで自分が煽られるとは思っていなかった。
切れ上がった瞳は知的な印象を与え、いつも淑しやかな態度のディアンヌはその容貌から一見色っぽいと男に思わせる女性ではない。
だがだからこそ、このように乱れた風情はその落差でクラヴィスの雄をそそって止まない。
ディアンヌのような女性は男の想像力をいたく刺激するのだ。どのように乱れるのか、自分だけにそれを見せてほしいと男に思わせるなにかを持っている。だから多くの男は無意識に彼女に惹きつけられたのだろうとクラヴィスは思う。
そしてそれは自分も同じなのだ。もっともっと乱してやりたい、その様を自分だけにみせてほしい、そんな気持ちが押さえ切れずクラヴィスは身体をずらして、自分の身体でさらに股間を大きく割り広げると、愛の証を零しつづけているその部分にそっと唇で触れた。
甘酸っぱいような若々しい愛液の香に包まれ、クラヴィスは陶然とする。
誘われる様に舌を伸ばし、秘裂を舌先で割るように愛液を掬い取った。
ディアンヌが腰をずりあげにげようとする。
「やっ…そんなとこ、恥かしい!恥かしいのっ!」
「おまえのすべてを見たい、すべてがいとしい、なにもかもむしゃぶりつくしてしまいたいほどに…」
「ああ…ああ…そんな…そんな…はぁああっ」
ディアンヌが苦しげにかぶりをふる。
クラヴィスは舌先で何度か秘裂を割ってから、先ほどまで指で擦っていた花芽をそっと舌先でつついてみた。
そのまま舌先をそよがせるように花芽を左右に弾く。
かと思うと、ねっとりと全体に舌を絡ませるようにを花芽を舐め上げる。
「はああっ!きゃふっ!」
股間に口唇による愛戯を受けるという考えるだけで恥かしい行為ゆえか、それとも舌と唇という柔らかくかつ弾力に富む部分による愛撫のためか、ディアンヌは今まで以上の嬌態を見せ始めた。
自分の意志と拘わりなく、腰が、つま先がびくびくと小刻みに震えてしまう。
クラヴィスの舌が股間で蠢いているのを感じると、下半身が痺れたように動かなくなり、頭の中は真っ白に溶けて行くようだ。
クラヴィスの舌の触れる点の部分だけではない。
なにか身体の根幹の部分を熱い痺れが充たし、うねり、逆巻いて出口を求めている。
クラヴィスの指は決して無骨ではない。むしろ男性にしては細く繊細だ。
それでも、今熱くぬめらかな舌に与えられる快楽は、指で与えられていた今までの感覚を粗野で野卑な物とさえ思わせた。
クラヴィスの舌に自分という存在が舐め溶かされていくのかと思うほど、クラヴィスの愛戯は執拗なまでに熱く甘く細やかだった。
その悦楽はディアンヌの自我を蕩かしてしまうほどに圧倒的だった。
羞恥に逃げ出したいような気持ちは、頭の片隅に僅かに残っていた。
しかし、あまりに激しい悦楽に体中を染め上げられディアンヌは思うように身動きもとれず、どうしたいというところまで頭も働かず、ただ今の自分の状況を力なく訴えることしかできなかった。
「クラヴィスさまっ!だめ、もう…私、へん…溶けちゃう!溶けちゃいそう!」
「溶けてしまえ…」
クラヴィスは更なる熱意をもって花芽を舐りつづける。
あふれ出す唾液をのみ込む暇も惜しんで舌を蠢かし、唇で花芽を挟みこみ、ちゅっと吸う。
指で愛液を滴らせている秘裂の入り口を焦らす様にかきまぜる。
僅かに秘裂を指で押し開くと、最初淡い珊瑚の色だった花弁はすっかり充血して色鮮やかな紅色にそまり、全体がふっくりとふくらんだようになっている。
この柔らかで弾力に富む花弁に自分の怒張が優しく包みこまれるのかと思うと、それだけで達してしまいそうになる。
そう、クラヴィス自身はもう一刻の猶予もないほどにディアンヌを求めていた。
ここまできて貫かずに耐えて終わることはさすがにできない、というより、ディアンヌが思った以上にあでやかに花開き、誘惑の蜜をこぼすその様に我慢も限界まできていた。
自身はいたいほどに固くそそりたち、ディアンヌのこの熱い滴りに蕩けきっている坩堝で一刻も早く溶け合いたくて気が狂いそうだった。
だが、まだ早い。ディアンヌをどうせなら忘我の境に押しやりたいとクラヴィスは思っていた。
彼女の破瓜の苦痛を思うと、自分が与えてしまう苦痛の代償にというのはおこがましいが、せめて愛撫でできる限りのことをしてやりたいと思う。
まだ刺激が強すぎるかと控えていたが、花芽を舌先で割るように剥いて宝珠を露出させるとそれに触れるか触れないかくらいのそよ風のように微かな愛撫を舌先で加えた。
「きゃうんっ!」
ディアンヌの脳裏を今までにない鋭い閃光が走り、飛び散った。
一瞬何がおきたのかわからず、気持ちいいなどという言葉で現すのは躊躇うほどの、まさに電気か火花が弾けたような鋭い感覚だった。
しかも、光りの矢、いや、シャワーのように、その鋭い快楽はディアンヌにあとからあとから降り注ぎ、突き刺さり、ディアンヌは快楽だけに染めあげられて瞬間意識の輪郭を見失った。
ディアンヌの背中が大きく弓なりに反り返り、びくびくと内股の筋肉が痙攣するような動きを見せた。
クラヴィスはこの機を逃さず上体をおこすと、ディアンヌの秘裂に己のいきり立った怒張をあてがった。
だが、勢いにまかせて挿入するようなことはしなかった。
今更とまるものではない、しかし、本当にこの少女を自分のものにしてしまっていいのだろうかという逡巡がクラヴィスの動きを瞬時とめた。
「あ…」
ディアンヌは股間にあてがわれた火のように熱く固い感触に一瞬我に返った。
クラヴィスが苦痛に耐えるような顔でディアンヌを見下ろしていた。
「クラ…ヴィスさ…ま…」
ディアンヌが僅かに頷くような仕草を見せ、クラヴィスの肩に手を回した。
クラヴィスは導かれる様に静かにディアンヌに覆い被さると、背に手を回してそのたおやかな身体を思いきりだきしめた。
ディアンヌの肩口に顔を埋めると、さらさらと滑るような音を立てて、自身の黒髪がディアンヌの裸身を覆っていく。
濡れそぼり快楽の余韻に僅かに口を綻ばせていた秘裂をクラヴィスはゆっくりと静かに、だが躊躇うことなく己の猛りきった剛直で貫いて行った。
「くっ…あっ…うくぅっ…」
朧な靄をかけられたようだった意識をいきなり鋭い疼痛が切り裂いた。
無意識に腰を上に逃そうともがいたが、固く抱きすくめられていてそれも果たせない。
熱く固いものがディアンヌを押し開いていくにつれ、クラヴィスの背中に回した腕は指の先がその背に食いこむほどに力が込められていく。
激しい痛みに耐えるため無意識に手を握り締めようとしたからだった。
悲鳴をあげまいと唇を固く噛み締めた。
灼熱の棒塊をねじ込まれたような激しい異物感に、先刻とは別の意味で意識が飛びそうになる。
その意識を繋ぎとめたのは苦しげで、しかし、どこか夢見るようなクラヴィスの声だった。
「すまぬ…おまえにつらい思いをさせる…だがおまえとひとつになりたい…その気持ちがもう、押さえられなかった…だが、おまえの中はなんと熱く甘く私を蕩かすのか…わかるか?今私たちはひとつだ…」
「ああ…クラヴィスさま……あつい…」
ディアンヌはうっすらと瞳を見開いてクラヴィスをみあげた。
いつも端正な眉がわずかによせられ、何かに耐える様で、それでいて、どこかうっとりとしているようで…こんなクラヴィスを見たのは初めてだった。
クラヴィスさま…クラヴィスさまも嬉しいと思ってくださってるの?わたしたち、結ばれて、ひとつになれて…
なぜだか涙が零れそうになった。苦痛からではない。幸せなのに、なにか切なくて、嬉しいのにどこか寂しいような気がして…
一粒目尻から零れ落ちた涙をクラヴィスが唇で拭った。
「つらいのだな?すまぬ…」
クラヴィスが口付けを落としてきた。さしこまれる舌とともに、なにかが異質なものが自分の中に入ってくる違和感をディアンヌは感じた。
濃紫の帳が意識にたれこめていくような感覚…薄れて行く苦痛…なに…?
「だめ!」
ディアンヌは思いきりクラヴィスを押しのけて唇を振りほどいた。
クラヴィスが驚いたようにディアンヌを見下ろした。
「いや、いや…クラヴィスさま、サクリアを使わないで、私、つらくて泣いたんじゃないの。クラヴィス様と結ばれたんだって思ったら、なんだか胸が一杯になって…」
クラヴィスは突然ディアンヌの見せた激情に戸惑いが隠せない。
「だが、つらいのは事実なのだろう?勝手な言い草だがおまえの苦痛は見るに忍びないのだ、だから、少しでも苦痛を紛らわせてやれたらと思い…」
闇のサクリアを使うことのなにをそれほど厭うているのかクラヴィスには理解できなかった。
自分のもつ安らぎのサクリアを与えれば、今ディアンヌを苛んでいるはずの苦痛を和らげることができるのにと…
もどかしそうにディアンヌが首を振る。
「でも、でも、サクリアを使ったら、痛くはなくなるかもしれないけど、クラヴィスさまをちゃんと感じられなくなっちゃう…確かに痛かったけど…今も、あの痛いけど…でも、これ全部クラヴィス様なんですもの。全部感じたいの、うけとめたいの、確かにクラヴィス様とひとつになれたんだって…この熱さも、重さも、痛いのも全部結ばれた証なんだもの。何が何だかわからないうちに終わっちゃうなんて絶対いや!大丈夫ですから、私。だから、お願い、クラヴィスさま、このまま…どうか…」
クラヴィスは大きな吐息をついた。
子どもだとばかり思っていたのに、か細いほどの華奢な身体なのに、この少女のどこにこれほどの覚悟と強い心が潜んでいるのか…
いや、昔から彼女はそうだった。
いつも、自分の勝手な思いこみや小賢しい分別のようなものを鮮やかにいなし、しなやかな心の強さをみせてくれる。
だから、自分も抜け出せたのではなかったか。薄暮の常闇から。
彼女がその強くおおらかでとこまでも限りなく広い心で自身を受けとめようとしてくれたから。
「わかった…私の勝手な思いこみでおまえの真摯な心をうやむやにしてしまうところだった…ならば、もう遠慮はせぬぞ?よいな?」
「ああ、クラヴィスさま…」
ディアンヌが承諾の証にクラヴィスの背中をきつく抱き返した。
その意をうけて、クラヴィスはゆっくりと、しかし、確かなリズムを刻み始めた。
最初は浅く、徐々に深度を増してディアンヌの肉壁を擦り、突き上げる。
ディアンヌの柔襞は始めこそ破瓜の苦痛に強張ったように締まっていたが、もともとクラヴィスの愛撫で潤んでいたせいもあって、律動を深めるに従い、クラヴィスの怒張を自ら引き込む様に蠕動を始めた。
引き抜くたびにまつわりつくような媚肉の動きに、クラヴィスの口からも切なげな喘ぎがこぼれ出す。
「くっ…おまえの中はなんと熱く甘やかな…私のほうが溶けてしまいそうだ…」
「んくぅっ…ぅあ……ああっ…」
「感じるか?私を…」
「ああ…クラヴィスさま…」
蠢く柔襞を振りきるように、引きぬいては激しく突き刺す。
ディアンヌが苦痛に耐えているのはわかるのだが、もう、クラヴィスも注挿を緩める余裕がない。
せめて、ディアンヌが少しでも快楽を感じる点を突いてやりたい気持ちはあるのだが、どこを擦ってもディアンヌの表情は苦しげでみていてかわいそうになってしまう。
それでもいいと、ディアンヌは多分言うのだろう。
ひとつになれた、その精神的な一体感で満足だというのだろう。
それがわかっているから、余計にやるせない、なんとかしてやりたいのに、できないもどかしさばかりが募る。
そのもどかしさをぶつけるように、さらにディアンヌの深部を抉った。
腹側の肉壁を擦りたてる様に体重をかけて激しく力強い律動を繰り返す。
最奥を突き上げると、ディアンヌの秘裂がきゅぅっと締まった。
「くふっ…」
「少しはよいか?」
「あ…なんか、へん…へんなの…奥にあたったら…はぁっ…」
「少しでもいい、おまえを酔わせてやりたい…」
クラヴィスはディアンヌを抱く手を緩めると、自在に律動ができるよう僅かに上体を起こし、今まで以上に激しく力強く律動を早めた。
「うくぅっ…あ、あああっ!」
苦しい息の下、ディアンヌはクラヴィスを見上げた。
クラヴィスの髪が肌をくすぐる。
切なげな表情に胸が苦しくなる。
自分のもっとも奥深いところでクラヴィスの思いの丈を今すべて受け止めているのだと思うと、ふつふつとわきあがる愛しさに、幸せに身体がはちきれそうな気がした。
「クラヴィスさま、好き、好きです、クラヴィスさまぁっ!」
「くっ…」
ずしんと中心まで貫かれたような衝撃が走った。
そして身体を一杯に充たして行く熱いなにか、染み渡る…溶けあう…信じられないほどの幸福感…
クラヴィスがゆっくりと覆い被さってくる。
ディアンヌの髪をかきあげそっと口付けを落とす。
「愛している…」
深い吐息とともに囁かれる言葉が胸に染み入る。
ディアンヌはただ黙ってクラヴィスの背中を抱いた。
涙がまた一粒零れておちた。
クラヴィスはゆっくりと自分を引きぬいた。
破瓜の証がシーツに小さなしみをつけている。
それを見ると心が痛む、と同時に、クラヴィスはたとえようのない充実感も確かに感じていた。
「不思議なものだ…いま、私はおまえから新たな生をもらったような気がする…ありきたりだが、生まれ変わったような、そんな気持ちだ…」
ディアンヌの華奢な身体を抱きしめながらぽつり、ぽつりと聞かせるともなしに言葉を紡ぐ。
ディアンヌはしっかりとクラヴィスの背を抱き返している。
「こんな穏やかな、充たされた、暖かな気持ちは初めてだ。これからはおまえとこのように充たされた日々を重ねて行けるのか…今もなにやら夢の中にいるようだ…」
「クラヴィスさま…わたし、私も幸せです…信じられないくらい…本当に夢だったらどうしよう…」
急に不安そうになってしまったディアンヌにクラヴィスはふ…と微笑むともう一度軽く口付けた。
「この温もりは夢ではあるまい?私も今自分に言聞かせているのだがな。」
優しい笑みを浮かべながらディアンヌの髪を梳いていたクラヴィスがふと祈るような表情を見せた。
「ずっと、私の傍らに…いつまでもこうして側にいてくれるか?」
「クラヴィスさま…私、絶対、絶対にお側を離れません。放さないでくださいね。ずっと抱いていてくださいね…」
ディアンヌも祈りを捧げるような敬虔な面持ちでクラヴィスの愛を請う。
「ああ、夢のようなこの時が、夢ではないのだと今一度感じさせてくれ、私の子猫よ…」
クラヴィスは再びディアンヌの身体を抱きしめると、此度は深い口付けを与えた。
僅かでも腕の力を緩めれば、ディアンヌが自分の懐から消えてしまうとでも思っているかのように苦しいほどにきつく抱きすくめる。
ディアンヌもクラヴィスの流れる髪に指を埋め、寸分でも離れたらこの幸せが逃げてしまうとでもいうように懸命にクラヴィスを抱き返す。
もう放さない、放せない、心の奥底から突き上げてくる思いを互いに確かめ合うかのように二人は肌をまさぐりあう。
中天に差し掛かった月の光が銀の帳となって二人を包む。
月の加護と祝福を受けた恋人たちの夜は今始まったばかりだ。
FIN
50000HITキリ番創作クラ・ディーの初夜は堪能いただけたでしょうか?(笑)
クラ様のテクニシャンぶりに「いったいどこで覚えたんだぁ!」という声があがるかもしれませんが、私はクラ様ってなんとなく天性のテクニシャンって気がするんです。辛い過去をもつゆえの優しさとねちこそうな性格ゆえのむっつりスケベ(爆)ぶりがミックスしたら、意識せずともテクニシャンになってしまいそうな気がしませんか?(笑)オスカー様が経験を積んだテクニシャンなのと好対照ですね
で、なおかつ私自身はこの2人は(クラ&オス)どちらも本気で愛した相手になら、とことん相手本意に振舞い、自分の性急な欲望押し付けるとは思えないのですね。二人とも若さゆえの暴走をするとは思えないので、勢いHの展開が似てきてしまってオスアンの初夜との差別化に悩みました。そこでクラ様らしくするにはどうしたらいいかと考えまして、もうひたすらねちこく〜ねちこく〜というのをお経のように唱えながらHシーンをつづってみました(爆)さそり座の男ですから、クラ様は絶対ねちこいはずだと勝手に断定しまして(笑)処女相手にこれでもかの愛撫の嵐!ですね(笑)
キリ番リクが大方の予想通りきまった時点でしのちゃん様がディーとクラ様のイメージイラストをくださるとおっしゃってくださいまして、
由貴「え?嬉しい!どんなの?」
しのちゃん様「おっぱいくりくり!」ちゅどーん!(爆死)
そして、ファイル開けた瞬間
「クラ様、私もくりくりしてえ!」とつい叫んでしまったことをここに白状します(爆)でも、気持ちわかっていただけるでしょおっ!あれご覧になったら。
とにかくしのちゃん様のおかげでますます萌え萌え度がUPしました。ディーは青いつり目気味のアンジェのイメージです。しのちゃん様、ほんとにいっつもどうもありがとおおお!
オフィシャル設定ではクラ様不幸なので、ウチで幸せにしてあげられてよかったわ〜と思ってます。このあとこの二人はきっと休暇の間中、部屋からでてこなかったでしょうね〜クラ様が片時も手放さないから(笑)でもって、休暇後、クラ様はますます職務怠慢に磨きがかかること必定ですね。ジュリさまの苛苛ぶりが目に見えるようです(笑)
この話でクラ様の株があがるといいなと思っております。
壁紙は麻里様謹製です