珠、磨かざれば…3

挿絵イラスト しのちゃん様

足許に花びらのように広がるワンピースの真中に立つアンジェリークは、まるで花から生まれた仙界の住人のようにオスカーの目に映った。

クリームイエローのチュールレースにオレンジの小花の刺繍を散らしたスリップを纏ったアンジェリークは春の花そのもののように可憐だったが、だからこそ花というものが本来持つ匂い立つようなエロスをもオスカーに感じさせてやまなかった。

オスカーは黙ってアンジェリークを見つめ続ける。

アンジェリークの行為に肯定と賞賛の視線を送る。

その視線がさらに望むところを掬い取るようにアンジェリークは自分からゆっくりとスリップの肩紐を外した。

オスカーに見られている事を意識しているからなのか、それとも、あえて見せつけているのかとも思わせるようなゆったりとした動作だった。

両の肩紐が丸い肩をするりと滑り落ちると、ワンピースに引き続き花のように可憐なスリップも一まとめの単なる布となってアンジェリークの足元におちた。

アンジェリークの肌に滑らかに沿っているとき、そのなよやかな布はアンジェリークの愛らしさをこの上なく引きたて魅惑のオーラを放つが、ひとたびその肌を離れてしまえばそれはただの布へと戻ってしまう。

美しいランジェリーを美しいと感じさせるのは、あくまでその下の肉体あってこそであり、チャームの魔力を放っているのもその肉体なのだとオスカーは今痛切に感じている。

すりガラスのようなレース地にスリップと同じ小花刺繍を配したブラジャーとそろいのショーツ姿になったアンジェリークはそこで一度手をとめ、オスカーに甘えるような視線を投げた。

コケティッシュな仕草だった。でも、そこに作為的な媚態は感じられなかった。

艶かしいのに、少しも卑なるものは感じさせなかった。

オスカーは無意識のうちにつばを飲みこみ、促すように瞳で頷くと、アンジェリークは瞳をふせてブラジャーのホックに手をかけた。

胸を愛撫するような仕草でブラジャーが外されると肌理細かい白い乳房が零れおちるように現れた。

その瞬間熟しきった果実のような芳香が薫りたったような気がした。

乳白色の豊かな膨らみの中央に咲く薄紅色の先端が、殊のほか鮮やかに感じられオスカーの視線を縫いとめる。

オスカーは目をアンジェリークから決して離さず、ベッドに腰掛けたまま自分も着衣を外し始めた。

淡々とした様子で自身の着衣を剥ぎ取って行くオスカーのことを、アンジェリークも黙ってみていた。

オスカーが逞しい褐色の肌を晒していく様子から目を反らすどころか、魅入られたように見つめたまま、アンジェリークは自分の小さなショーツに手をかけた。

なにか、競い合うような気持ちにさせられていた。

アンジェリークが小さなレースのショーツを足から抜き去るのと、オスカーが全ての着衣をはずしおわるのとほぼ同時だった。

アンジェリークはショーツを静かに自分の脇に置くと、幾分上半身を傾げる様して身体を起こした。

真昼の陽光を弾いて絖のように妖しいまでの光沢を放つ真白い肉体がオスカーの眼前にあった。

アンジェリークは恥じらいを滲ませながら、自分の裸体に細い腕を蔓のように絡ませている。

身体の要所要所を隠そうとしているのかいないのかわからぬ微妙な腕の位置が、かえってそこはかとない媚態となってオスカーの心をくすぐる。

オスカーは思わず嘆息をついた。

「きれいだ、お嬢ちゃん。今までもお嬢ちゃんの身体をきれいだと思っていたが、今日は妖しいくらいに肌が輝いて…俺は眩暈がしそうだ…」

オスカーは本心からこの賛辞をささげていた。

恥じらいにうっすらと染まった乳白色の肌は、おそらく手入れされた名残の艶で真珠のような柔らかな光沢を放っていた。

君は真珠…そう君を喩えたことがあった…オスカーは恋の入り口にいた当時の自分を思い出していた。

あの時、君はいつか大粒の真珠のようになれる女のこだと思った。嘘じゃない。

そして、今、君はまさしく掌中の珠、俺の腕の中の真珠だ。俺だけにその輝きを見せてくれる大粒のピンクパールだ。

その真珠ようなアンジェリークが更に肌を磨いてきれいになってきたのは間違いないようだった。

珠磨かざれば光りなしというが、磨けば磨くほどに珠は更に光り輝くということかと、オスカーは改めて思う。

そして、逆に言えば一回磨いただけでこれだけ肌がつやめくということは、アンジェリークは確かに最近肌をくすませていたいうことで、その原因が自分だということも最早明かだった。

毎日見ているから気付かなかったが、自分が強いていた無理が確かに彼女の輝きを曇らせていたのだと認めざるを得なかった。

日常の中で澱や錆びのようなものは知らぬ間に少しづつ身体や心に積もっていくのかもしれない。

気付いた時点で磨きなおせればいいが、もっと曇りが明かになるまで気付かない怖れは十分にあった。

自分自身も、アンジェリークも。

そのことに気付き…気付かせてもらった本当によかったとオスカーは謙虚に思った。

「お嬢ちゃん、ほんとに肌がきれいになったな。張りと艶が増したように見える。あいつのお薦めは伊達じゃなかったみたいだな…」

「オスカーさま…あの…ほんとに?ほんとにそう思ってくださいます?」

アンジェリークがおずおずと、それでも、語尾に喜悦を滲ませてオスカーに尋ね返す。

「ああ、本当にきれいだ…お嬢ちゃんだって自分の姿を鏡で見たんだろう?自分でもわかっているはずだぜ?さあもっと、そばに…もっとよく君を見せてくれ。」

オスカーが声をかけるとアンジェリークがゆらりと流れるように近づいてきた。

オスカーの率直な賞賛の言葉がアンジェリークを常になく大胆にさせた。

オスカーの瞳を覗きこんで、わかりきった問いをなげかけた。

「オスカー様は私をごらんになりたかっただけなのでしょう?なのに、どうしてオスカー様も服をお脱ぎになったの…」

「きまってる…直に触れて確かめたいからだ、その肌を、俺の全身であます所なく…悪いお嬢ちゃんだ、わかっているくせに俺にこんなことをいわせて…」

オスカーは手の届かぬものを求めてやまぬような瞳でアンジェリークをみつめる。

アンジェリークがほんとうに微かな微笑みを唇の端に乗せた。

確かにアンジェリークはわかっていた。それでも、オスカーにはっきり言ってもらいたかった。

オスカーが自分を求めてくれるその熱さを思いきり見せて欲しいと思い、その熱さで自分の表面にでてこようとする羞恥を灼いてほしいと思った。

アンジェリークは自分をみつめ続けるオスカーの視線をとてつもなく熱く感じた。その熱視線に身体も心も火をつけられた。

その熱さに包まれたからこそ、アンジェリークは明るい陽光の許で自分から服を脱いでオスカーに裸身を晒すことができたのだと思っている。

オスカーの熱っぽい想いが、自分の思いこみや錯覚ではないとアンジェリークはオスカーに明言してほしかったのだ。

オスカーはベッドに腰掛けたまま、すぐ目の前に立つアンジェリークの身体に手を伸ばし、その輪郭を確かめるように二の腕から背中を撫でるように手を滑らせた。

オスカーに触れられた瞬間、アンジェリークの身体に微かな震えが走った。

手の触れたところから、オスカーが身中にふつふつと滾らせている熱さがじわりと沁み通ってくるような気がした。

「つやつやして、しっとりと吸い付くようだな…おいで、俺のところに…君を全身で感じたい…」

オスカーはアンジェリークの腕をとって導き、自分の膝の上に乗せた。

だがアンジェリークと向かいあう形ではなく、自分と同じ方向を向くようにアンジェリークを背中から抱きしめる形で自分の膝に座らせた。

アンジェリークがオスカーの意を確かめるように首を後ろにひねってオスカーを見上げた。

オスカーは柔らかく笑んで答えた。

「正面からお嬢ちゃんのその蠱惑的な瞳に見つめられると、俺はお嬢ちゃんの言いなりになっちまうからな。でも、今は俺が納得するまでお嬢ちゃんを離す気はないから、その瞳の魔力に捕まらないよう後ろから抱くんだ…」

オスカーは言葉を終えるとアンジェリークの身体全体を抱え込むように抱きしめながら、アンジェリークの顔を上向かせ背後から口付けた。

だがすぐ唇を離し、

「ああ、ほんとうに身体ごと吸い付いて離れないみたいだな…さ、もっと君を確かめさせてくれ」

と言って、髪をかきあげアンジェリークのうなじに唇を落とした。

髪をあげた瞬間首筋からふわりとグリーンノートの香りがした。オイルの残り香だろうか。

「いつもと違う香がする…これも新鮮でいいな…」

ぺろりとうなじを舐めあげる。

「あ…ん…」

アンジェリークが身体をわずかに捩る。

オスカーはアンジェリークの身体を抱きしめていた腕を緩めて両の乳房に掌をあてがった。

乳房の感触も心なしかいつもよりしっとりと感じられた。

「ここもマッサージされたのか?」

両手でゆっくりと乳房をこねるように揉みしだきながら、オスカーは耳元でたずねた。

「あん…はい…暖めたオイル?ジェルみたいなものを塗られて…」

「ふ…気持ちよかったか?」

「ん…なんだかほわんってからだの奥からあったかくなるんです…それでなんだか眠くなっちゃって…とろとろしちゃいました…」

「とろとろしたってことは…ここも弄られたか?」

胸をもんでいるうちに尖り始めた乳首をオスカーが指先でくりっと摘み上げた。

「あんっ!そ、そこは、触りません…触られてません…あっ…あん…」

オスカーは二本の指で乳首を撚りあわせるように摘んで転がし続ける。

「とろとろになったなんていうから、これと同じ気持ちいい感じかと思ったぜ?」

オスカーがにやにやしながら囁きかけていることにアンジェリークは気付かない。そんな余裕もない。

「あ…やん…とろとろの意味が違います…」

「そうだな、こんなに感じてちゃ、眠くなるどころじゃないだろうからな…」

オスカーは片手は乳首を摘み上げたまま、もう片方の手はそろそろと腹部のほうに伸ばしていった。

自分の胸に接しているアンジェリークの背中も肌と肌が吸い寄せられるように感じるし、今撫でているなだらかな腹部も掌がすべるように動いた。

「ほんとに全身どこもかしこもすべすべだな…背中も手入れしたんだろう?」

「ああ…はい…仰向けとうつ伏せと順番にされたから…」

オスカーは張りのある太腿に手を伸ばして、大きくなでさすり始めた。

「足もか?」

「はい、おなかからつま先までしてから、裏返しにされて今度は足の裏からお尻と背中までマッサージされて…」

「ふ…ここはどうした?」

オスカーは太腿から股間へと手を滑らせ、秘唇の合せ目をそっと撫で上げた。

「きゃ…そこも触りません…」

「だがマッサージは裸で受けるんだろう?」

オスカーは合せ目を指先で割るように指を上下させ始めた。途端に指先にぬるりと熱い滴りが絡み付いてきた。

「ふ…やっぱりとろとろになってるぜ、お嬢ちゃん…」

「あん、もう…そのとろとろじゃありませんってばぁ…確かに上半身は裸ですけど、お尻はTバックはいてたし…」

「ほう?じゃ、全裸じゃなかったのか?」

オスカーは指先についた愛液を秘唇全体にまぶすように指を動かしつづける。だが、その動きはあくまでまだ秘唇の表面に留まっている。

「んん…マッサージしてない…ところは、タオルかけてくれてますから、裸って感じじゃないです…」

「そういえばお嬢ちゃんのTバック姿はみたことがなかったな。一度みてみたいもんだ…お嬢ちゃんのお尻はかわいいからな…でも…」

オスカーは指を合わせ目の上方に滑らせて花芽を探りあてた。

熱く滴る愛液のなかで、ひっそりと、しかし、確かな弾力を持ってオスカーの指をはじき返すかのようにそれは硬くしこっていた。

「あんっ…あぁっ…」

オスカーが花芽を指の腹で転がし始めると、アンジェリークの吐息が切ないものになっていく。

「ここを弄られなくてよかったな。こんなに濡れるんじゃTバックじゃすぐ溢れてきちまっていくらなんでも恥かしいものな、お嬢ちゃん?」

「あっ…あん…そんな…だって、私の…そ、そこを弄るのはオスカー様だけですもの…」

「ここもだろう?」

オスカーは乳首を引っぱるようにしながら、少し強めに指を撚り合わせた。

「ああっ…」

更にオスカーは花芽の上で円を書くように指を動かしながら、時折指を下方に滑らせ秘裂の入り口もくちゅくちゅと掻き回し始めた。

「あ…あふ…ぅん…」

オスカーが指の動きを早めるとアンジェリークの口から漏れ出す吐息も指の動きにあわせるように忙しなくなっていく。

「ふ…マッサージと俺の指とどっちが気持ちいい?お嬢ちゃん」

「あ…オスカーさま…オスカー様の…ああっ…」

「かわいい事を言う…だから、もっとかわいがってやりたくなっちまうんじゃないか…いけないお嬢ちゃんだ…あんまりかわいすぎる…」

オスカーはアンジェリークの首筋に舌を這わせながら、乳首を摘み上げる指と、秘裂を掻き回し花芽を転がす指の動きを一層速めた。

「あっ…ああぁっ…やぁっ…」

アンジェリークが切なげに身体を反りかえらせる。

オスカーはその声に誘われたように指をぐっと秘裂の奥に差しいれ、そのまま激しく指の抜き差しを始めた。

上下に抜き差しするだけでなく、指を奥深く留めたまま大きく内部をかき回しもする。

「ひぃんっ…そ、そんなに…かきましちゃ…あっ…」

指に纏わりつく媚肉の感触に酔い痴れながら、オスカーはアンジェリークの官能をさらに煽ろうとする。

「どうなるんだ?もう、欲しくて我慢できなくなっちまうか?だが、まだ足りない。俺はまだ、お嬢ちゃんを味わい尽くしてない…」

オスカーはアンジェリークの身体を手放さぬまま、静かにベッドに横たわった。

オスカーの腹の上にアンジェリークの体が仰向けに横たわった形となる。

オスカーはしばらくその姿勢のままアンジェリークの乳房と秘裂への愛撫を続けながら、少しづつ身体の位置をずらしていった。

アンジェリークの下から自分の身体を抜き去るように側面に移動して後、徐に覆い被さり唇を重ねた。

強引に舌をねじ込み貪るように口を吸う。

アンジェリークもオスカーの正面からの抱擁を待ちかねていたようにオスカーをきつく抱き返して、舌を絡めてきた。

互いに競い合うように舌をからめ吸いあった後、まだ、口付けを強請るようにオスカーを見上げたアンジェリークからあえて唇を離し、オスカーはその唇を首筋から乳房の稜線に走らせ、寸分の間もおかずその頂を口に含んだ。

「あぁ…」

背中に回されたアンジェリークの腕に力がはいったのがわかった。

これ以上は固くなれないというほど張り詰めた乳首の弾力が唇に心地よかった。

掌に吸い付いて離れぬ乳房を思う存分揉み、心の赴くままに乳首を舐め転がしては、強弱をつけて吸い上げた。

「あっ…あん…あぁ…」

オスカーの舌が踊るリズムそのままにアンジェリークの吐息も呼応して跳ねる。

ひとしきり乳首を舐った後、オスカーはS字を描くウェストに舌を這わせ、かわいい臍にも舌を差し入れながら、太腿をぐっと掴んで足を大きく開かせた。

もうアンジェリークはオスカーの愛撫を待ちわびるようになされるがままになっている。

内股の張りを唇で食むように味わってから、オスカーは先刻指で弄っていた股間に舌を伸ばした。

「ああ、ほんとうにとろとろだな、お嬢ちゃん…」

しとどに濡れそぼったままの秘唇はオスカーを誘うように僅かに合せ目を綻ばせていた。

鮮紅色に濡れ光るそこをオスカーは舌先でこじ開けて、そのまま秘裂の奥まで深深と舌を差し入れた。

「あぁっ…」

できる限り奥まで舌を伸ばし、複雑に織りなされた襞の隅々までをくすぐるように舌を蠢かす。

大きく手で秘唇をこじ開けるようにして花芽も剥き出しにして舌で弾く。

そうして秘裂と花芽とを交互に舌で愛撫し続けた。

「今日のお嬢ちゃんはいつもと違う香がしたが…でも、ここはいつもと同じ香だ、いつでも俺をどうしようもなく狂おしくさせる…この甘酸っぱい香りが…」

丸めた舌先で愛液を転がすように味わいながらオスカーが呟く。

「俺はこの芳しい蜜を貪らずにはいられない…すべて食らいつくしてしまいたいほどだ…」

オスカーが秘唇全体を強く吸い上げた。

「ああっそんな、恥かしい…」

アンジェリークが激しく首をうちふった。

「恥かしがる事はない…お嬢ちゃんは俺を欲っする気持ちを蜜で表し、俺はお嬢ちゃんを欲しくてたまらないその気持ちを愛撫と、そして…」

オスカーはアンジェリークの手をとり、自分の剛直を握らせた。

アンジェリークはされるままに、極限まで固く熱く脈うっているそのものから手を離さなかった。

まるで自分の掌がそのものに吸い付いてしまったかのようで、恥かしいと思うのに手が離せないのだった。

「ほら、わかるだろう?お嬢ちゃんが欲しくて欲しくてたまらない俺の気持ちが…なによりはっきりと表れている…」

オスカーはアンジェリークに自分のものを握らせたまま、更に秘裂と花芽を舐ろうと股間に顔を埋めようとした。すると、

「オスカーさま…私も、もう、もう……」

アンジェリークが唇を噛み締めながら、切羽詰った声をあげた。

「どうしてほしいんだ?お嬢ちゃん…」

「きて…オスカーさま、もう、きて…私の中に…」

アンジェリークはオスカーの顔をやるせなげに見つめながら、熱に浮かされたように訴えた。

もちろん、オスカーの剛直は手放さず、やわやわと握り返すような素振りさえ見せた。

「ああ、お嬢ちゃんに見つめられてのおねだりは断れない…なんでもきいてやる…」

オスカーはアンジェリークの手を優しく自分のものから離させ、その掌に口付けた。

そして足を大きく抱えあげながら、上体を倒してアンジェリークを思いきり抱きしめながら一気にその剛直で貫いた。

「んくぅっ…」

声をあげかけたアンジェリークの唇をすかさずふさぎ、間を置かず激しい律動を繰り出した。

「ん…んんっ…」

アンジェリークが苦しそうに顔を横にふったが、オスカーはそれを逃さず口付けを続け、もちろん律動自体も緩めない。

思いきり強く腰を打ち付けると、アンジェリークが堪えきれずに唇を離して高い声で鳴いた。

「くぁあっ!」

オスカーは離された唇をアンジェリークの首筋に押し当てて舌を這わせた。するとアンジェリークも高まる官能をこらえきれないようにオスカーの首筋に口付けてそこを吸い上げてきた。

「くう…」

アンジェリークの押さえきれない熱情の発露に思わずオスカーも声をあげてしまう。

アンジェリークはオスカーにしがみ付く様に抱き付いてき、オスカーの首筋から唇も離そうとしない。

アンジェリークの情熱がオスカーの欲望の火に油を注ぐ。

勢いさらにたたき付けるように挿送は激しくなるばかりだった。

もう、技巧も忘れ、アンジェリークを貪り尽くしたい、その一心だけでアンジェリークを壊そうとでもするように押さえのきかない律動を繰りかえす。

アンジェリークの腰を持ちあげるように抱きかかえ、突き刺すように激しく突き上げては坩堝を捏ね回す。

「やっ…あぁっ…はぁあっ…」

アンジェリークがさすがにこらえきれずにオスカーの首筋から唇を離して声をあげた。

その嬌声は次第に悲鳴のように甲高くなっていく。

「やあああっ!くるし…も、もう、だめ…オスカー…さ…」

アンジェリークが眦に涙を滲ませ、大きく顔をのけぞらせて白い喉を晒した。

オスカーの頭の中も真っ白に染まっていく。

オスカーは彼女を喜ばせているのか、苦しめているのか自分でもわからなくなってくる。

だが、彼女を貪る様に欲する気持ちをどうしても押さえられない。

どこまでも求めてやまず、こんなに乱れた姿を見ても、それでもその思いに終わりも限りもない。

そんな思いをこめて、オスカーは体重をかけて渾身の重く深い一撃を与えた。

「あ…ああああっ!」

「くっ…」

アンジェリークの秘裂が生き物のように収縮し、オスカーも耐えきれずに爆ぜた。

脈打ちながら自分の命の証がアンジェリークの内部に染み渡って行く感触を感じながら、オスカーはもう一度力いっぱいアンジェリークを抱きしめて口付けた。

アンジェリークは官能の余韻に夢うつつで全身どこにも力がはいっていない。

その肌は全体がしっとりと汗ばんでいた。

一度唇を離してアンジェリークを見下ろすと、アンジェリークも瞳を開き、愛しさを湛えてオスカーを見つめ返してきた。

オスカーは今度は優しくその身体を抱きなおすと、触れるだけの口付けを与えてからアンジェリークの髪を撫でた。

「お嬢ちゃんの肌、ほんとうにいくら触っても触り足りないくらい気持ちよかったぜ。」

「や、恥かしい…」

オスカーは俯こうとするアンジェリークの頤をもちあげ、もう一度口付けた。

「お嬢ちゃん、すまなかったな…」

「え?」

アンジェリークはオスカーが何をいいだしたのかわからず、オスカーの顔をきょとんと見つめ返した。

オスカーはアンジェリークに頬を寄せながら、

「俺はお嬢ちゃんにかなり無理させちまってたんだな、すまなかったな。オリヴィエに俺のペースで引っ張り回したらお嬢ちゃんの身体がもたないって忠告されたよ。その、お嬢ちゃんがかわいいと思うと俺もなかなか押さえがきかなくてな…悪かった。」

「そ、そんなことないです…」

アンジェリークは慌てて否定しようとしたのを、オスカーは指を唇にあてて遮った。

「お嬢ちゃんはそう言うだろうってことも含めて言われたよ、悔しいがあいつの言う通りだったな」

オスカーはくしゃくしゃとアンジェリークの髪をかきまわすように撫でた。

「約束する、もう、お嬢ちゃんに無理はさせない。お嬢ちゃんを抱く時は思う存分抱くが、無理やり起こしてまでは抱かない。休みの日も疲れが取れるまでお嬢ちゃんをちゃんと休ませる。」

「オスカーさま…」

「俺の有り余った体力は、剣の稽古や乗馬で発散させるようにする。実際すべての力でお嬢ちゃんをかわいがってたもんだから、それ以外のことが俺はすっかりへたくそになっちまってたんでな。ジュリアス様に『新婚××』とまで言われちまっていくらなんでもこれじゃまずいって思ってたところなんだ。」

要はバランスなのだとオスカーは思っていた

本来いろいろなペースで配分するべき力をアンジェリークを愛するその一点のみに集中してしまったのだから、自分にもアンジェリークにも弊害がでて当たり前だった。

彼女には知らず知らずのうちに疲れがたまって本来の輝きがくすみ、自分は本来持っていた技量が振り出しに戻るところだった。

世にいう『新婚××』というのも、結婚当初はペース配分がうまく掴めない人間が多いからこそ生まれた言葉なんだろうなとオスカーは思った。

「お嬢ちゃんもそのほうが助かるだろう?おっと、俺を気遣うあまりの嘘はいいっこなしだぜ?」

「それは、その、あの、お休みの日は自然に目が覚めるまで寝かせていただけたら、やっぱり嬉しいです…」

ものすごく遠慮がちにアンジェリークが答えた。

「そんな申しわけなさそうな顔をしなくていい。悪いのは俺なんだから。」

「お、オスカー様は悪くなんかありませんっ!私のこと、いっぱい愛してくださっただけで、私もそれが嬉しかったし…」

「ああ、お嬢ちゃんは優しいからそういってくれるだろうな。でも、愛してるって事実が愛する相手に負担を与えちゃ意味がない。少なくとも俺はそんなのはいやだ。だから、お嬢ちゃん、嫌なことは嫌といって我慢しないでくれていいし、お互いしたいことがあるときはそれを遠慮しないでしてもいいんじゃないかと俺は思うんだ。それが気兼ねなくできるような夫婦になれたらいいと思わないか?」

「それは…そうかも…」

「もちろん今みたいに二人でなくちゃできないことは最優先にしたいところだが…こうでも言っておかないと、俺はいつも一方的にお嬢ちゃんに我慢を強いてしまいそうだからな。」

オスカーはまたアンジェリークに軽くキスをした。

「こうしてキスする、話す、一緒に食事する、抱きしめあう、セックスする…二人でなくちゃできないことはやっぱり大事にしたい、でも、それがどちらかの負担になったら悲しいものな。本来とても喜ばしいことばかりなんだから…」

「そう…そうですね、オスカーさま、私もオスカー様と二人ですごす時間が一番大切だし、でも、それを大事にするために一人の時間も時には必要ってことですよね?じゃ、オスカー様がなさりたいことがあるときはちゃんとおっしゃってくださいね!私、邪魔しないようにしますから!」

オスカーはアンジェリークの言葉に穏やかな微笑みを返しながらこう言った。

「それがな…したいことって考えると、やっぱりお嬢ちゃんと一緒にいたいが一番になっちまうんだよな…だが、そうするとまたお嬢ちゃんに無理させちまうし、俺だけがしたいことをすることになっちまう。だから、したいことというより、しておいたほうがいいことに時間を割くってのが俺の感覚でいったら一番近いかな?でも、そうすればお嬢ちゃんの体にも心にも余裕ができるだろうし、そのほうがいいと俺は思うんだ。」

「でも、それでいったら、私もオスカー様と一緒にいるのが一番したいことです、嘘じゃないですよ?」

オスカーは心底嬉しそうに瞳を細め、更に口元を綻ばせた。

「ふ…嬉しいぜ、お嬢ちゃん。だがそうやって甘やかされると俺は際限なくつけあがっちまいそうだから、これだけは今約束しておく。これからは絶対無理やり起こさない。明日の休みは好きなだけ寝ててくれ。」

アンジェリークはくすっと笑って悪戯っぽく答えた。

「うふふ、じゃ、それはお言葉に甘えますね、オスカーさま、でも、私がどんなに寝ぼすけかわかったらちょっとあきれちゃうかもしれませんよ?」

「じゃ、明日の朝食は何時になるかわからないな?」

「そうですね、うふふ」

ぽすんとアンジェリークは頭を羽枕に沈みこませると軽く体を丸めてくすくすと笑った。

つられてオスカーも微笑み返す。

冗談で言ったこの言葉が真実になろうとは、オスカーはこの時夢にも思っていなかった。

次の日の曜日、いつものように朝6時に起床したオスカーは約束通りアンジェリークをそのまま寝かせておいた。

アンジェリークの寝顔を見ていてムラムラきてはまずいと思ったオスカーは馬で遠乗りにでかけ、かなり遠くまで走らせてきたつもりだった。

戻ってきたときアンジェリークは起きていなかった。

まだ早い時間だしなと思ったオスカーは庭に出てサボっていた筋肉トレーニングもした。

それでもアンジェリークは起きてこない。

仕方ないから、シャドウフェンシングをやって崩れていたフォームを取り戻した。

やっぱり起きてこない。

諦めてオスカーは1人で食堂に行き、ここで簡単な朝食をとった。

もう空腹を我慢できなかったのだ。

食事がおわってもアンジェリークはまだ起きてこなかった。

オスカーは嘆息しつつジュリアスのもとに馬を走らせチェスをさしに行った。

ジュリアスは二日続けてのオスカーの来訪に驚いたようだったが喜んで迎えてくれた。

昨日よりは若干勘をとりもどせたので投了までに時間がかかり、ゲームが終わったときは昼食時になっていた。

ジュリアスに今日も食事を誘われたが、さすがにいくらなんでも昼食はアンジェリークと一緒にとりたかったので丁寧に誘いは辞した。

しかし、この時戻ってもまだアンジェリークは、この上なくしあわせそうな顔で夢の世界に漂っていた。

これはもしやオリヴィエのサクリアを思いきり側で浴びていた弊害じゃなかろーかなんて考えも一瞬頭をよぎったが、すぐに

『いや、それだけ俺がお嬢ちゃんに無理を強いていたということだ。お嬢ちゃんは疲れきっているのだ。反省せねば。』

と思いかえした。

しかし、反省猿のように壁に手をついて反省したわけではなく、オスカーは窓を大きく開けて外気と陽光をふんだん取り入れ、ついでに使用人たちのたてる生活音がアンジェリークによく聞こえる様ドアも開け放した。

いくらなんでもお昼まで寝かせたのだし、もういいだろうとは思っても、あからさまにアンジェリークを起こせないオスカーが考えた苦肉の策だった。

しかし、アンジェリークは若干身じろぎはしたものの、その目は開けなかった。

オスカーは考えた。

昨日ゆっくり寝かせてやるといったばかりなのに、あからさまに揺り起こすのはいくらなんでも気が引ける。

しかし、昼食はどうしてもアンジェリークととりたい。

オスカーは徐にヴィジフォンをとりあげ厨房を呼び出すと昼食は寝室にもってこさせるように命じた。

そして、急がなくていいから、できればメニューはアンジェリークの好物を用意するようにと付け加えた。

ほどなくして、使用人が昼食をワゴンにのせて運んできた。

オスカーは、ほかほかと湯気をたてている料理を眠っているアンジェリークの鼻先につきつけた。

アンジェリークの小鼻がかわいくぴくぴくと動き出した。

もぞもぞと身体も上掛けの下で蠢き、口元にはなにやら幸せそうな笑みが浮かんできている。

『頼む!なんとかこれで起きてくれぇ!』

オスカーは祈るような思いで、アンジェリークの鼻先で皿を掲げ続けた。

FIN


結婚当初の様子からすると、アンジェはおちおち眠る暇もないという印象をどうしても与えてしまうので、アンジェをゆっくり休ませてあげたいなと思い、こんな話をかいてみました。少なくともこの話以降アンジェは休日の朝寝を保証されることになります(笑)
 さて、ごらんいただいた方はもうおわかりと思いますが、しのちゃん様のイラストを挿絵風に使わせていただきました。しのちゃん様いっつもどうもありがとおお!UPが遅くてほんとにごめんね〜(汗)
 イラストつきなので共作の棚にいれるべきかとも思ったのですが、今回の話は補佐官シリーズを読んでいないとわかりにくい描写が多々ある、いわば劇中劇ならぬパロディ内パロディとでもいうような話になってしまったので、補佐官シリーズのなかに収めさせていただきました。
 このイラストは下絵の段階でしのちゃん様から「首筋とおっぱいと花園の3点攻め!」(笑)ということを事前に聞いてまして、
私「おっぱいはくりくり?」
しのちゃん「ううん、ぐわし!(笑)くりくりのほうがいい?」
私「そりゃ、くりくりのほうがやっぱり気持ちいいんじゃない?」
しのちゃん「じゃ、そうする!」
というようなやり取りを経て、オスカー様の手の部分を描き直してもらったりしちゃいました(笑)でも、皆さん、「ぐわし!」より「くりくり」のほうが燃えません?(笑)
 ちなみに、オスカー様がくちゅくちゅしているアンジェの花園はしのちゃん様がモザイクかけてますので、いくら目を凝らしてもみつめてもはっきりとは見えません、あしからず(爆)
 しのちゃん様の燃え燃えイラストと、情けないオスカー様と、子悪魔風アンジェをお楽しみいただけたら幸いです(笑)

戻る 創作の本棚へ TOPへ