甘い策略 1

ジュリアス様から、ご自分の執務室にくるようにとの通達があったのは、午後もなかば、ちょうど執務を離れてちょっと一服したくなる頃合のいい時刻だった。

ティーブレイクに相応しい時刻だったし、これはきっとチェスのご相伴のお誘いだろうと思った俺は、気楽な気持ちでジュリアス様の執務室にむかった。

今日の自分の執務はとっくのとうに終わらせていたから、足取りも軽いってもんだ。

守護聖の仕事なんていうのは、対外的な公的行事への出席や、定例会議を除けば、独立採算性というか、ほぼ個人裁量なので、時間の融通がつけやすい。

なにせ、他人にはとりかえのきかない仕事なので、仕事を休んだり、さぼったりすれば、それはたまる一方で自分にはねかえってくるだけだが、その反面、やるべきことをちゃっちゃとすませてしまえば、残り時間は好き勝手していても特に問題はないし、周囲も何もいわない。

いわばコアタイムのない、究極のフレックス勤務といったところか。

例えば既定量のサクリアを放出するとか、サクリアの流れを調節するとかの、その日の自分の仕事さえ済ませてしまえば、後は寝ていようが、暇そうにハープをかきならしていようが、機械いじりをしていようが、何時間もかけて爪を磨いていようが、土いじりをしていようが、犬とフリスビーをしていようが、カフェテラスでだべっていようが、さっさと私邸に帰ってしまおうが、文句を言うやつはいない。

クラヴィス様がいっつも寝ているようでいても宇宙に支障がないのは、あの方のサクリアはジュリアス様に匹敵するかそれ以上に強力なので、サクリアの放出も調整もあっというまに終わってしまうからだ。で、執務時間に膨大な空きがでるのだが、クラヴィス様は昼寝が趣味(なのか?)なので、残り時間を寝てすごしているというだけで、きちんと守護聖としての義務は果たしていらっしゃる。

にも拘わらずジュリアス様がクラヴィス様にぶーぶー文句をたれるのは、この空き時間をクラヴィス様がすべて昼寝に費やしているようなのが気に食わないからだ。本来の義務を果たしてないからではなく、こんなに時間を捻出できるのだから、どうせなら、自分のように女王府の執政に携わるとか、もっと生産的なことに使わないのが気に食わないらしい。

もっとも、俺から見ればジュリアス様は仕事が趣味で、クラヴィス様は昼寝が趣味というだけことのような気がする。仕事の残りの空き時間は何に使おうが、個人の自由でいいのではないだろうか。

ただ、ジュリアス様はなんだかんだいって、クラヴィス様のことが気に掛かって仕方ないので、いろいろお節介をやきたいだけなのかもしれないがな。

そして、そのかわり、各人のもつサクリアはその個人しか調整はできないから、長期にわたってある守護聖が仕事ができないような事態になっても、周囲の守護聖には対処療法的にサクリアの流れを調節することしかできないので大変困ったこととなる。

聖地に病気と言うものが存在しないのも、実は守護聖を病欠させないための宇宙の深遠謀慮じゃないかと俺は疑っている。守護聖の仕事は他人が肩代わりできないから、休まれては困るっていう宇宙の陰謀じゃないかとこっそり思っているんだ。これはつまり休まず働け!ってことだよなと。

ちなみに二日酔いは病気ではないので、聖地でもしっかりなるときはなるし、二日酔いで病欠は多分認められない…だろう。なにせ、病欠ってもの自体が建前上ないことになってるからな。

で、俺はというと、俺も仕事は結構速いほうだ。

それこそ、サクリアの調整というルーティンワークだけなら、大体午前中で終わってしまう。

今までは仕事もないのに聖殿にいてもつまらないので、さっさと私邸にひきあげることが多かった(で、私邸から別の場所に遊びに出かけていた。)が、今は、基本的には公的な執務終了時刻まで聖殿にいることが多い。

なぜかって?きまってるじゃないか。

お嬢ちゃんの執務が終わるのを待って一緒に帰る為さ。

お嬢ちゃんの仕事は、いわば守護聖全体の秘書みたいなものだ。補佐官というくらいで、補佐業務が主だから、守護聖たちの執務時間は基本的にずっと聖殿につめていなくてはならない。

ぽっかり、ぽっかりと短時間の空き、というか待ち時間が生じることがあるので、そういう時間はやはり仕事を一段落つけた守護聖とお茶を飲んでたりすることはあるが、仕事をきりあげて家に帰るということはまずない。

だから、俺も結婚してからは仕事はなくても終業時刻まで聖殿にいるようになった。お嬢ちゃんがいないのに一人で家にかえったって、仕方ないからな。

ただ、さっさと仕事を終わらせてしまうと、聖殿で何をして時間をつぶすか困るときもある。

ランディを痛め付ける…じゃなかった、鍛えてやってもいいんだが、あいつの執務が終わってなければそれもできないし、1人で庭園なぞに散策にでた日には、聖地中のレディを惑わせてしまうから、それも今はおいそれとできない。

何せ、俺の心も体も今はお嬢ちゃん1人のものだから、応えてやれないのに期待を持たせることは罪だからな。

そして今はまさしく『さーて、終業まで何をして時間をつぶそうかな』という状態だった。

たまたまお嬢ちゃんの体も空いていれば、もちろんお嬢ちゃんとすごすんだが、さっき部屋を訪ねていったらお嬢ちゃんは留守でがっかりした直後だったんだ。

だから、ジュリアス様の呼び出しは、俺にとって渡りに船だった。

ジュリアス様と終業時刻までチェスをしてれば、お嬢ちゃんの仕事が終わるのを待っているのも苦にならないからな。

 

「失礼します、ジュリアス様。」

俺はジュリアス様の執務室に参上した。さあ、きっとチェスの相手を申しつけられるぞ、との期待は、しかし、次の瞬間、あっさり覆された。

「ああ、オスカー、来たか。急で悪いのだが、これから早急に出向いてもらいたい惑星がある。」

「は?」

俺は最初ジュリアス様のお言葉がよく理解できなかった。

「辺境の惑星の軍事式典に、どうしても炎の守護聖の臨席を賜りたいとの要求が参っているのだ。そなたは王立宇宙軍の大元帥でもあるからな。そなたが臨席することで、その星の太守としては多いに軍の士気を高めたいらしい。しかし、辺境になればなるほど建前や肩書きを重視するのはなぜなのだろうな。」

「ちょ、ちょっと待ってください、ジュリアス様、俺は、今、これから出張ですか?」

「そう言っているではないか。通常の業務に支障がでるようなら断ったのだが、炎のサクリアは安定著しいし、一両日くらいの不在なら、執務に支障はあるまい。そなたも今日の仕事は早々と終わっているようではないか、問題はなかろう?」

「はぁ。いや、それはそうなんですが…」

「もちろん、準備が必要なのはわかっているので、たった今すぐ行けと言っているのではないぞ。今日の終業時刻間際に次元回廊を開かせるので、それまでに準備をすませて転送の間にくるように、よいな。あとで出立準備に補佐官をそなたの執務室にむかわせる。用件は以上だ。さがって良いぞ。」

「はっ。」

俺は、つい条件反射で敬礼して退出してしまってから、臍を噛んだ。

しまった!つい、いつものように返事しちまった。これじゃ出張を承知したことになっちまうじゃないか。あの話では、その辺境惑星では単なる箔付けに俺を呼びたいだけっていうのがみえみえだ。行きたくないといえば、行かなくても済んだような気がするぞ。

俺は人寄せの珍獣じゃないぞ!もっとも、守護聖がそういう扱いをされがちなのはよーくわかっているが。何せ守護聖なんていうのは、それぞれ各時代に一人しかいない生きた化石だからな。

ジュリアス様もおっしゃっていたが、特に辺境の領主ほど、なにかと理屈をつけて守護聖を呼びたがる。ジュリアス様やクラヴィス様は扱う力の関係でもっともらしい式典を思いつけないのか、あまり呼び出されないが、俺なんか軍務を司っているから、そこら中の駐屯軍から、引きもきらず呼びたてがある。次いで多いのが祭礼を担当するオリヴィエ。それから芸術関係の催しというと必ず呼ばれるリュミエールだ。

もっとも呼ばれた式典全部に出席していたら、執務を行う時間すら危ういので女王府の公式行事以外は各人の判断で断ってもいい。リュミエールなぞ、かなり大規模な式典でも、すぐに気分が悪いとか体調が優れないとかいって逃げている。ほんとは俺よりよっぽど丈夫なくせに、皆あいつの外見にだまされてるんだぜ、まったく。

俺は結婚してからというもの、はっきり言って出張なんぞに行きたくはない。聖地では一泊二日の出張でも外界では最低その3倍の日数がかかる。その間お嬢ちゃんの肌も温もりも香りも感じられないんだから、出張が楽しい訳がない。

昔は家に帰る積極的な理由がなかったので、結構出張を断らずにほいほい出かけていたのだが(何せ行く先々で、それぞれ趣の異なる花を手折るという楽しみが付随してたものでな、お嬢ちゃんには絶対口外無用だぜ?)今になってそれが徒になってしまった。俺は絶対出張を断らないと既定の事実化されてしまっているので、ジュリアス様も俺に行く意志があるかどうかも確かめず、行くと断定して話を進めて出立準備せよと言ったのだ。

で、ばかな俺は、訳もわからぬまま、ついジュリアス様の言を否定しないどころか、元気よくいい返事をして執務室からでてきちまった。うー、今からでも断りにいくか…

と悶々している所に、俺の愛しい愛しいお嬢ちゃんが、執務室に顔を出してくれた。

「オスカー様、ジュリアス様から伺いました。これから急な出張なんですって?大変ですねぇ。ジュリアス様がオスカーのところに行って準備を手伝ってやれっておっしゃってくださって、業務から外してくださったんです。」

「お嬢ちゃん、それがな…」

行っても行かなくてもいいような出張らしいから、断りに行こうかと思ってると言おうとした俺は続くお嬢ちゃんの言葉に口を噤んでしまった。

「ジュリアス様、ほっとしてらっしゃいましたよ。その惑星の太守ってかなり強引で、ずっと前から何かにつけ守護聖をよこせって言ってたんですって。で、いつも大した用向きじゃないのはわかっていたのでジュリアス様が断っていたら、ごうをにやしたのか守護聖をよこさないなら、惑星連盟から脱退するとか、特産のエネルギー鉱物の値段を3倍にするとか無理を言ってきたらしいんです。で、ジュリアス様も仕方なく今回だけって念押しして承知したみたいですよ。でも、オスカー様が快くひきうけてくださってよかったっておっしゃってましたよ。」

俺はぐっと詰まった。

俺は快く引き受けたわけじゃなくて、有無をいわさず、最初から行くものと決められていたんだ!とはお嬢ちゃんにはいえなかった。こんなことを聞いたら、断りにもいけないじゃないか、くそ!

「でも、向こうの時間で1日式典にでたら帰ってこれられるなら、明日の夜には、聖地に戻ってこれますね?あんまり長い出張じゃなくてよかったわ!じゃ、私、オスカー様のお荷物まとめに一度家に戻ってますね。オスカー様もその間にご自分の準備なさってて?」

「ちょっと待った、お嬢ちゃん、なにもお嬢ちゃんが自分ですることはない。」

お嬢ちゃんはさっさと部屋から出て行こうとしたので、俺はそれを上回るスピードでお嬢ちゃんの前に回りこんで行く手を阻んだ。ついでに執務室の扉の鍵もさりげなく、しかし、きっちりと閉めた。

「出張の仕度なんか、お嬢ちゃんがわざわざやらなくても、家のものにやらせて届けさせればいい。お嬢ちゃんはそこにかけて待っていてくれ。」

俺はお嬢ちゃんを身体全体で圧力をかけるようにしてソファに座らせてから、徐に卓上のヴィジフォンをとった。そして執事を呼び出して三日前後の出張支度を命じ、終業時刻頃にその荷物を俺の執務室に届けさせさせるよう命じた。

せっかくジュリアス様が合法的にくださった準備時間だ。しかも外地時間でお嬢ちゃんに2日は会えないときたら、もっと重要かつ楽しいことに準備時間を費やさなくてはもったいないじゃないか。

電話を切ってからお嬢ちゃんにむきなおり、俺は心のなかで舌なめずりをしながら、こう言った。あくまで優しい、落ち付いた口調でな。

「そして、お嬢ちゃんには、お嬢ちゃんにしかできないことを俺はしてもらいたいんだが…」

「え?なんですか?オスカー様?」

お嬢ちゃんはきょんとした顔でソファに座って俺をみあげている。

俺はお嬢ちゃんを警戒させないよう、わざとゆっくりとお嬢ちゃんに近づき、お嬢ちゃんのとなりにそっと腰掛けた。

どうやっても出張は避けられないようだし、その間はお嬢ちゃんと愛情の交歓はできないのが明らかだ。

しかし、今、ジュリアス様から俺たち二人そろって準備のために数時間の猶予を与えられたときたら、これを有効活用しない手があろうか(いや、ない)

「それはな、つまりこういうことさ!」

俺はお嬢ちゃんに覆い被さるようにぐわばっ!と抱きしめると、「あ」の形に小さく開いた愛らしい唇の間を縫って強引に自分の舌をねじ込ませた。

「んんんんむぅ〜」

不意をつかれたお嬢ちゃんが俺の腕のなかでじたばたしてるが、俺は一向に気にしないで、口腔を犯すように深深と激しく舌をさらにねじ込んでは、お嬢ちゃんの舌をからめとって抜けるほどきつく吸い上げた。

縦横無尽に弾くように激しく舌を絡めたり、時には優しく撫でるように口腔内の隅々まで舌で舐り、お嬢ちゃんの唾液ごと飲み尽くすような口付けをしているうちに、お嬢ちゃんの体からだんだん力が抜けて、おとなしくなっていく。

「ん…んふ…んぁ…」

おとなしくなった体の替りに、塞がれた唇の端からこぼれる吐息がせわしなくなってくる。

さっきまで出鱈目に闇雲に動き回っていた腕はすっかり力を失っている。

かといって力なくだらんと垂れているわけではなく、まず、おずおずと俺の腰の当たりにその腕は伸ばされ、そこからにじにじと俺の背中のほうにまわされようとしている。

お嬢ちゃんも俺とのキスに酔い始めているのが、その手の動きからわかる。

嬉しいぜ、お嬢ちゃん、俺はお嬢ちゃんにキスするのが大好きだが、俺のキスをお嬢ちゃんも楽しんでくれればさらに励みになる。俺とのキスが好きだから、キスをもっととせがむように俺のことを抱きしめようとしてくれているんだろう?

俺はお嬢ちゃんから許諾の意を得たとばかりに、抱きしめていた腕の力をわずかに緩め、その手でお嬢ちゃんの補佐官服のファスナーをちちちちぃっと降ろしはじめた。

本当は、『即行でキメる!』場合なら、着衣のまま事に及んだ方が機先を制するに易いし、ある意味非常に燃えていいんだが。

しかし、この体にぴったりとしたマーメイドラインの補佐官服はきちんと脱がせないとお嬢ちゃんの脚も開けないし、まくりあげることも難しくて、さすがの俺も挿入自体が難しいんだ。

昔、かなり切羽詰ってて無理やり着衣のまま事に及んだことがあったんだが、その時裾を破いちまうわ、しみはつけるわで、お嬢ちゃんにかなりこっぴどく叱られたんで、俺としても慎重にならざるを得ない。

この衣装はそれでなくとも歩きにくそうだから、やっぱり変えたほうがいいと俺は思うな。着衣のまま、ことに及びやすいような服のほうがいい…ってのももちろんあるが、何せお嬢ちゃんがよく転ぶからだ。

お嬢ちゃんは候補生時代から何もないところで転ぶので有名だったのに、なんで、こんなに歩きにくそうな衣装をそのままにしておくんだろう?

はっ!もしや、転んでもお嬢ちゃんの魅惑的な素足を無闇に晒さないためか?お嬢ちゃんの愛らしい脹脛は思わずかぷかぷと甘噛みしたくなるくらいかわいいから、これはこれでいいのかもしれん。他のやつらに目の毒だからな。

なーんてことを考えているうちに、俺はお嬢ちゃんの衣装のファスナーを全部下までさげた。

お嬢ちゃんの腕に力があまり入っていないことを確認して、するすると服から腕も抜いていく。この辺の手際のよさなら俺は絶対人後に落ちない自信がある。腕さえ抜いてしまえば、衣装を脱がせるのは容易い。俺がお嬢ちゃんの腰を僅かに持ち上げるように抱いて衣装の裾を引っ張ると、それはすとんと勝手に下に落ちてくれた。

お嬢ちゃんのまろやかな肌と、魅惑的な膨らみが目に入ると同時に、甘やかな香りに鼻腔をくすぐられた。

今日のお嬢ちゃんのランジェリーは淡いパープル地にミントグリーンの小花をちらしたかわいらしいセットだった。ミルク色の素肌によく映えている。

おそろいのパープルのショーツのレース地から金の繊毛が透けて見えこちらも色のコントラストが美しい。とりあえずショーツだけ先に脱がせるかな、いや、あえて脱がさず脇からするのもいいな、と俺は考える。もっともこれからの展開次第でプログラムの順序は臨機応変に変えていくつもりだ。

全部剥くのは、お嬢ちゃんがまったく抵抗する気をなくしてからのほうがいい。抵抗が続くようならまずは専制攻撃で出鼻をくじいてからゆっくりいただく。お嬢ちゃんの降参が意外と早かったら、最初からゆっくり時間をかけてお嬢ちゃんを賞味する。どっちにしろ、ゆっくりじっくりこってりお嬢ちゃんを味わうことに変わりはないんだが。

しかし、お嬢ちゃんもさすがにいつのまにやら下着姿にされたことに気付いて、再度じたばたし始めた。

俺の腕のなかでいくらじたばたしたって無駄、いや、むしろ、俺の情熱の炎に油を注ぐだけってことがお嬢ちゃんは未だにわかってないらしい。それとも、わざと俺を煽ってくれているのかな?

どちらにしろ、そろそろキスよりもう少し強めの攻撃を加える頃合だな、これは。

俺はお嬢ちゃんの唇から敢えて自分の唇を離すと、お嬢ちゃんの耳に舌をさしいれてから、耳朶をかぷりと軽く噛んだ。

「きゃふっ」

案の定、お嬢ちゃんは一瞬びくんと電気が走ったように硬直して、そのすぐ後へにゃっと力が抜けた。お嬢ちゃんの弱点なら俺はすべて知り尽くしている。そして、なおかつ日々新たな弱点を開拓中なんだが、実を言えばお嬢ちゃんの体はこれすべて弱点だらけなんだ。場所によって強弱があるだけなので、俺は時と場合によって攻略ポイントを変えるようにするだけだ。

こんなに感じやすい体をしてるのも、俺を愛してくれているからだよな〜と俺は勝手に自惚れることにしている。

で、今はお嬢ちゃんを焦らしている余裕はないから、効き目の強いところを重点的かつ息つく暇をあたえずアタックあるのみだ。

俺はいきなりお嬢ちゃんのブラジャーをたくしあげて乳房を露出させると、かわいい乳首をすかさず指先でつまんでくりくりと捻って転がした。

「やあんっ!」

お嬢ちゃんが俺から逃げるように顔を背けようとしたこともすかさず利用し、俺は唇を耳朶からしなやかな首筋につつつ…と唾液の筋をつけながら下らせていった。

俺に水鳥のように魅惑的な首筋を無防備にわざわざ晒してくれて、ありがとう、お嬢ちゃん。しなやかにのびるこんな美しい首筋に愛撫しなかったら、かえってばちがあたるってもんだよな。

首筋に所々甘噛みと吸い上げと舌での舐めあげを、交互に繰り返しながら鎖骨のくぼみにも舌を這わせていく。

指で軽く引っ張ったり、逆に指先でつぶすようにしてみたり、指の腹で全体を転がすうちに乳首もすっかりかたくなっている。

それなのに、お嬢ちゃんは、まだ弱々しいながらも抵抗を諦めていないらしく、隙あらば俺から逃れようとして体を右に左に翻そうとしている。往生際が悪いぜ、お嬢ちゃん。

「オ、オスカーさま、だめだめだめぇ〜こんな、こんなこと…」

俺はしれっと逆に尋ねかえす。

「何がだめなんだ?」

「こ、こんなこと、こんなところで、こんな時間にしちゃだめですぅ〜!」

こんなこと=SEX、こんなところで=執務室、こんな時間に=執務時間中に、指示代名詞ばかりのお嬢ちゃんの曖昧な言葉を翻訳するとこういうことだろう。愛があるからお嬢ちゃんの言いたいことはなんでもわかる、うむ、やはり愛の力は偉大だ。

お嬢ちゃんがこういう考えなら、逆にお嬢ちゃんを理詰めで論破してしまえばお嬢ちゃんの抵抗の牙城も崩れるということだから、俺はお嬢ちゃんの説得にはいる。もちろん、その間も舌も指も休ませない。

「だってなぁ、お嬢ちゃん、俺はこれから出張だから、今夜はお嬢ちゃんと愛の確認ができないだろう?となったら、今、ここでするしかないじゃないか。ん?」

「だって、だって、まだお仕事の時間です〜」

「だが、お嬢ちゃんは今、俺の出張準備をするのが仕事だろ?そして、出張の荷物をまとめることなんて誰にでもできるが、俺との名残を惜しむことはお嬢ちゃんにしかできない最も大事な仕事なんだぜ?しかも、ジュリアス様がわざわざお嬢ちゃんを俺の手伝いによこしてくれたんだから、お嬢ちゃんはお嬢ちゃんにしかできない、最も大事な仕事をしなくちゃ逆に職務怠慢になるってもんだ。俺との愛の行為はお嬢ちゃんの最も大切な仕事なんだからな。そうだろ?」

俺は屁理屈を捏ねながら、お嬢ちゃんの乳房も捏ねまわす。

「そそそそんな〜!それにオスカー様のお仕事もあるでしょう〜!」

「俺も準備に数時間いただいているから大丈夫だ。つまり準備をすることが仕事なんだ。そして、このこと以上に大切かつ必要な準備などない!」

俺はきっぱり言いきった。当然だ、旅の荷物なんぞ、足りなきゃ現地で調達すればいいだけだ。どんな辺境とはいえ、人のいない未開の地にいくわけじゃなし、多少気に入るいらないはあっても、手に入らないと生きていけないものなどありはしない。しかし、お嬢ちゃんは違う。お嬢ちゃんは現地調達できない上(当たり前だ)お嬢ちゃんがいなければ俺は絶対生きていけない。となったら、今のうちになるべくお嬢ちゃんを愛しだめするしかないじゃないか。

今日の執務は滞りなく済んでいたから、引継ぎなどもいらないし、にも拘わらずジュリアス様が俺に準備時間をくれたのは、真剣にこれを見越してのことかもしれない。

ジュリアス様、貴方はなんて部下思いのいい上司なんでしょう、俺はますますジュリアス様への敬意が高まった。

「だって、だって、他の方は執務時間中なんですよ、誰か来たらどうするんですか〜!」

それでも、まだお嬢ちゃんは諦めずに逃げをうつ。

「鍵をかけたから大丈夫だ。誰かきても準備に私邸に帰ったと思うだろうさ。後は、お嬢ちゃんがあんまり大きな声をださなきゃいいだけだ。難しいかもしれないがな?」

にやりと笑って俺はお嬢ちゃんの乳首をぺろんと舐めあげた。

「あんっ!」

お嬢ちゃんがいきなり乳首を舐められて軽くのけぞった。指で十分刺激しておいたから、感度は申しぶんなく高まっている。

実はさっきから固く尖った乳首を口に含んで吸ってやりたくて仕方なかったんだが、お嬢ちゃんを説得するのに口が忙しかったから舐めてやる暇がなかった。

しかし、こんなかわいい声を出されちゃますます我慢がきかなくなる。俺は徐にお嬢ちゃんの胸に顔を埋めると、かわいく立ちあがって俺を誘う乳首を口に含んで舌で弾くように転がし始めた。

「ああっ!だめ、だめぇ…」

お嬢ちゃんは俺を乳房から引き離そうと腕を突っ張る。俺はなんの痛痒も感じなかったが、あえて乳首から一度口を離した。紅色の先端は俺の唾液に濡れて妖しく光っていた。

俺は唾液に塗れてさらに滑りのよくなった乳首を再度指先でより合わせるように摘みながら、息を吹きかけるように殊更低めの甘い声でとっておきのセリフを耳に流しこんだ。

「もう、だめな理由なんてないだろ?それに俺はお嬢ちゃんと2、3日とはいえ、あえなくなるのは寂しくて仕方ないんだ…だから、せめてお嬢ちゃんの温もりをこの腕に覚えて旅立ちたいんだ…それでもだめか?」

「お、オスカーさま…」

ふ…完璧だぜ。俺のこのセリフは本心だ、だが、こうはっきり言えば優しいお嬢ちゃんが抵抗をあきらめ、むしろ積極的に俺を慰めようとするだろうことも俺は知っている、知っていてわざと言うんだから、やっぱり俺はずるい男かもしれない。

だが、俺はあくまで実利的な男だ。ずるかろうとお嬢ちゃんを抱くことと、ずるはしないがお嬢ちゃんを抱かないですますなら、俺はずるい男で全然かまわない。

そして俺の思惑通りお嬢ちゃんは観念したように抵抗を止めた。これでお嬢ちゃんの感度はさらに高まるはずだ。俺を受け入れる気持ちがあるのとないのでは、やっぱり体の受け止め方も違う。俺はどうせならお嬢ちゃんに最高に気持ちよくなってほしいから、無論その努力は怠らないが、男の努力だけでは女性の体の感じ方はどうやっても及び付かない部分がある。それは心の部分だ。

最高の快楽を得るには、やはり、精神状態もそれを受け入れる、いや、むしろ積極的に求めるくらいの気持ちがどうしても必要だからだ。そして、それはお嬢ちゃんの気持ち次第だから、俺はお嬢ちゃんの気持ちが積極的になれるようほぐして、自分から求める気持ちになるよう誘導してやるんだ。これも立派な前戯なんだぜ。

俺は改めてお嬢ちゃんの乳首をゆっくりと舐め上げ始めた。

お嬢ちゃんの乳首は性急に忙しなく愛撫するにはあまりにもったいない。とにかく、できる限り丁寧に時間をかけてたっぷりと愛してやりたくなる、かわいい蕾なんだ。そして、お嬢ちゃんが俺を受け入れる気分になってくれた今なら、性急な力技の愛撫はもう無用だから、なおさらじっくり愛したい。

乳首はもう固く立ちあがっているので、乳輪部分は逆に小さく縮まっている。その乳輪部分を舌先でなぞって乳首の周りに唾液で円を描く。

「んんっ…」

お嬢ちゃんの眉が悩ましげに顰められる。俺は今度は乳首を下から上へと何度も舐め上げる。こりこりと固く舌先を弾き返す乳首の感触が唇に心地良い。心が求めるまま唇で鋏んで軽く引っ張った。

「はふ…」

もう片方の乳首も絶えず指で転がしながら刺激している。

俺はさらに本格的に乳房を愛するため背中に腕をまわしてブラジャーのホックをはずして、腕からそれを抜き去った。たわわというに相応しい乳房がぷるんと揺れて俺の眼前に現れたが、お嬢ちゃんはもう抵抗しない。ちょっと恥かしそうに僅かに身を捩っただけだ。

恥かしいけど、もっと愛してもらいたい、そんな気持ちになってきたんだろう?わかるぜ、お嬢ちゃん。もっともっと気持ちよくしてやるからな。

俺は乳首全体を口に含むと、乳首の表面を歯の先端で軽くこそげるように刺激した。舐めるよりは強く、噛むよりは穏やかな刺激だ。

「あっ!ああんっ!」

お嬢ちゃんがあからさまに乱れる。俺はお嬢ちゃんの身動きを封じるように、ソファにお嬢ちゃんの体を押しつけるようにして覆い被さる。

そうか、これが気持ちいいんだな。俺は乳首を歯先で掠めるような愛撫を両の乳首に交互に加えてやる。

「あんっ…あっ…あぁん…」

こらこらお嬢ちゃん、そんなにかわいい声をあげると、となりの住人に聞こえちまうぜ?でも、声を我慢できないほど気持ちいいなんて、かわいいったらないぜ。

俺はもう矢も盾もたまらず、今度は乳房を両手で中央に寄せるように激しくもみながら乳首をちゅくちゅくと音をたてて吸い始めた。

「くぅ…ん」

お嬢ちゃんの細い指が俺の頭髪の間にさしこまれ俺をひきよせる。俺はさらに顔をお嬢ちゃんの乳房に埋める。

お嬢ちゃんの乳房はほんとうに芸術品だ。すべすべで、柔らかくて、張りがあって、つんと挑発的で、そのくせとてつもなく愛らしくて…俺はお嬢ちゃんの乳房を愛して飽きるということを知らない。

顔を埋めて、乳房の谷間から漂うお嬢ちゃんの甘い香りに酔いながらも俺はそろそろと手を下腹部に伸ばしていってショーツのなかに差し入れた。

奥まで探らずともすぐに知れた。その部分は火傷するほど熱く潤っており俺の指を焼いた。

ショーツは溢れ出る愛液にすっかり用をなさなくなっている。こんなになる前に脱がしてあげれば良かったな、お嬢ちゃん。

いつも、お嬢ちゃんの愛液は豊かだが、乳房の愛撫だけでこれほど濡れるのはやはり珍しいことだった。お嬢ちゃんもだめだめ言っていた割には、執務室でのSEXにかなり興奮しているみたいだ。

俺はお嬢ちゃんのショーツを片手で降ろして足から抜き去った。邪魔なものがなくなったので俺は指先で花弁の合せ目をこすって水音をたてながら、わざとお嬢ちゃんの羞恥を煽る。

「お嬢ちゃん、こんなにぐっしょり濡らして…すごく感じてるじゃないか。執務室で仕事時間中にしてると思うと感じちまうんだろう?」

「や…オスカーさま、やぁ…」

「ふ…隠さなくてもいいさ。感じちゃいけないと思えば思うほど感じちまうんだろう?」

俺は言葉と同時に花弁の奥に隠れている花芽を指先で探った。もう、ぷっくりと固くしこっていたそれの所在は容易に知れた。俺は指の腹を添えただけで、わざとそのまま動きを止めた。

「ほら、ここも俺に触ってほしそうに息づいてる…お嬢ちゃん、いじってほしいか?いじってほしかったら、そう言ってごらん?」

促すように俺は乳首をちゅっと吸った。

お嬢ちゃんは、一瞬だけ躊躇って俺を見上げた。ほんのり花の色に染まった目許も、情欲の焔に炙られた翡翠の瞳も、お嬢ちゃんの抵抗が長くは持たないことをなにより雄弁に物語っている。

果たして、お嬢ちゃんは唇をうっすらと開いて、擦れた声で

「さわって…」

と熱い吐息混じりに囁いた。めくれあがったような唇がまるで濡れた花弁のように淫靡だった。その唇からかわいいピンクの舌先を覗かせ口付けまで強請ってくれた。

しかけた俺の方の理性がふっとんだ。もう、焦らす余裕なんて一瞬にして蒸発した。

俺は弾かれたようにお嬢ちゃんに覆い被さった。同時に一心不乱に手を動かし、息づく宝玉に荒々しいまでの愛撫を与えはじめた。

次へ