俺はお嬢ちゃんをソファの背もたれに押し付けたまま噛み付くように口付けながら、花芽を指の腹で縦横にすりあげはじめた。
お嬢ちゃんの腰が堪え性なくびくびく跳ねまわるのを無理やり身体全体で押さえつけ、花芽を指で転がし、摘み、捻った。
「んん…んふっ…んくぅっ…」
苦しそうに唇から漏れ出す吐息を取りこぼさないようすべて飲みこんでしまいたかった。
お嬢ちゃんが誘ったんだ、俺に火をつけたんだ、苦しくても離してはやらない。
花芽を弄っているだけでは、どうにももどかしい。俺はさらにお嬢ちゃんを追い詰めたくなり、潤びた花弁を指先で割ると根元まで一気に指を沈みこませた。
お嬢ちゃんの体がびくっと突っ張った。同時に差し入れた指はきゅっとしめつけられた。
柔肉の締め付けを振り払うかのように指を抜き差しして奥をつき、肉壁をすりあげる。あっというまに俺の手首までもが愛液に塗れる。
根元まで指を納めたまま、ぐりぐりと抉るように内部をかきまわしたら、お嬢ちゃんがこらえきれずに激しく首を振り、俺の口付けから逃れる。ひゅっと笛をふくような音をたててお嬢ちゃんは酸素を貪るように息をつく。
口付けを外すならそれでもいい。俺はもっとお嬢ちゃんを追いこむだけだ。
俺はソファから身体をずらして床に膝立ちし、お嬢ちゃんの股間に自分の身をわりこませ、脚を閉じられないようにした。その上で膝頭を掴んでさらに大きく足を開かせてから芳香を放つ花弁を舌先で割るように何度も舐め上げた。
「やぁっ…ん…オスカーさま…はずかし…」
お嬢ちゃんがやるせなげに身をよじるが、俺に膝をしっかり抱えられているので、当然逃げることはできない。お嬢ちゃんが逃げようとすればするほど俺はもっと追い詰めたくなる。それがわかっていて、お嬢ちゃんはわざと俺を誘っているんじゃないのか?もっとめちゃくちゃに嬲ってくれってお嬢ちゃんの体は俺に訴えてるみたいで、俺は頭がおかしくなりそうだ。
俺は花芽を舌先で剥いて中に隠れている宝珠を露出させた。ねっとりと舌を絡めるように舐ったり、舌先でちろちろと弾いたり、宝珠全体を口に含んで吸ったりもする。
「ひぃんっ…」
お嬢ちゃんが強すぎる刺激に悲鳴にも似た声をあげてのけぞる。
俺の髪の毛にお嬢ちゃんは指を埋めてきたが、力ははいっていない。俺の頭を引き離そうとしているのか、おしつけようとしているのか、よくわからない。きっと自分でも、どうしたいのかよくわかってないんだろう。
俺は続けざまお嬢ちゃんのかわいいあの部分に舌を差し入れ、音をたてて愛液をすする。この行為自体はさほど快感は強くない。どちらかといえば羞恥心を煽るための行為だ。だからわざと高い水音をたてる。お嬢ちゃんに少しは息つく暇をあたえる目的もある。強い愛撫のあとはインターバルをとって、また身体が快感を求めたくなるようにしてやるんだ。
「お嬢ちゃん…あとからあとからこんなに溢れさせて…舐めとってやらないと、ソファに沁みがついちまうと思ったんだが、俺が舐めとるくらいじゃ全然おいつかないぜ?」
「やっ…おすか…さま…そんな…そんな…」
お嬢ちゃんが両手で顔を覆っていやいやする。俺はもちろんとりあわず、肉襞に舌を差し入れながら、鼻の頭で濡れ光るかわいい紅石に微妙なタッチを加える。
お嬢ちゃんの愛液はまさに甘露だ、カティスの酒より俺を酔わす。しかも、際限なく溢れ出てきて俺を潤す…
「ああ、お嬢ちゃん、やっぱりいくらなめてもきりがないぜ…さすがの俺もこれ以上は飲めん…」
「もう…もう知らない…」
お嬢ちゃんが恥かしそうに俯くが、決して嫌そうでもない。さあ、そろそろ仕上げにかかってもいい頃合だ。お嬢ちゃんもこんなにとろとろでは、愛撫されるばかりじゃかえって辛かろう。
俺はかわいい花弁や小さな宝石を舌先で弄いながら、素早く自分の服を脱ぎ捨てた。さっきから俺の物は早く自由になりたくてズボンの下で悲鳴をあげていたからな。
全裸になると俺は一度舌を引き抜き、お嬢ちゃんにのしかかって俺の肌の温もりを染み込ませるようにその身体を抱きしめながら、耳元にこう囁いた。
「これ以上溢れ出さないように塞いでやらないとだめかな?これは…」
「え?あ…」
俺はソファに座らされたままのお嬢ちゃんの膝の裏に腕を差し入れて、大きく足を開かせる形でお嬢ちゃんを抱え上げると一気に貫いた。
「ああああっ!」
間髪いれずお嬢ちゃんをソファに押しつけるように体重をかけて激しい律動を繰り出す。
「ひぅんっ!」
お嬢ちゃんが大きくのけぞり、高い声をあげる。
俺は少しだけ律動を緩めると笑みを含ませてお嬢ちゃんの耳に囁きかけた。
「お嬢ちゃん、俺としてはここまで感じてくれて嬉しいが、そんなに大きな声を出したら隣人に聞こえちまうぜ?それとも聞かせたいのかな?」
「あっあっ…違う…違うの…」
俺のリズミカルな律動にあわせ、お嬢ちゃんの返事も弾んでいる。
「ふ…そうは思えないがな…。それに俺はむしろ聞かせてやりたい…って言ったらどうする?」
「え?きゃぅうんっ!」
俺は抱えていたお嬢ちゃんの足を自分の肩にかけなおし、さらに抉るような深い律動を与えた。休む間もなく最奥を自分のもので突き刺すことをイメージしながら、素早く、しかも力強い抜き差しをこれでもかと繰り返した。
「やっ…そんな強くしちゃ…だめぇっ…」
お嬢ちゃんが苦しげにやるせなげに首を横にふる。こみあげる快楽をこらえるように自分の小指を噛んでいる。
俺はそんなお嬢ちゃんを見るうち、お嬢ちゃんにも俺を求めさせたくてたまらなくなった。
だって、お嬢ちゃんはさっきからだめとか、いやとかしか言わない。身体はこんなに開いてるのに…俺もかなり強引だったという自覚はあるし、なんたってここは執務室だ。状況を考えたら仕方ないかもしれないが、こんなに欲しているのは自分だけかと思うと、お嬢ちゃんとのしばしの別れを惜しんでるのは俺だけかと思うと、無償に寂しくなっちまったんだ。
「じゃあ、もう欲しくないのか?これでやめちまってもいいのか?」
俺はわざとお嬢ちゃんから自分のものを引きぬいた。俺の物は硬度を保ったままお嬢ちゃんの愛液塗れでてらてら光っている。お嬢ちゃんの濡れ方が凄いから俺の陰毛から腹の部分までぐっしょりだ。
「あ…いや」
お嬢ちゃんが子猫みたいな目で俺をみあげる。どうして?って瞳で問うている。
俺はわざと意地悪をいう。
「お嬢ちゃん、いやなのか?本気で嫌ならもうしない…どっちだ?お嬢ちゃん、お嬢ちゃんも俺をほしいのか、それともこのままやめたほうがいいのか…」
「あぁ、違う、違うの、オスカー様…」
「違うのか?なら、こっちにおいで、お嬢ちゃん…」
俺がとびきり優しい声でお嬢ちゃんを呼ぶと、お嬢ちゃんは俺の声に引っ張られるように俺に身体を預けようとしてきた。
俺はそんなお嬢ちゃんを抱き起こすようにしてソファから1度床に降ろした。執務室の床は踝まで埋まるほど毛足の長い絨毯を引いてあるから、身体が痛いとか冷たいとかいう心配はない。
お嬢ちゃんは、俺が誘導するまま床にへたりこむように座りこむ。
「さ、かわいいお尻をこっちにむけてごらん?」
俺はお嬢ちゃんに自分の望む姿勢をとらせる言葉をかけながら、為すがままのお嬢ちゃんを床に這わせる形でかわいいお尻だけをたかだかともちあげた。
俺は昼間にお嬢ちゃんを抱くなら絶対後背位は欠かせないと思っている。
お嬢ちゃんの真っ白いお尻は明るい陽光のもとで鑑賞するに限る。もっちりと豊かで、吸い付くような肌触りでいくらでも撫でていたくなるほど、気持ちいい。光りを弾くほど白い2つのふくらみの真中に咲く蜜を溢れさせた濡れ光る紅い花弁の眺めは眩暈がするほど扇情的だ。このお尻の白さも、その対比で一層淫靡さを増す花弁の色合いも明るい光りのもとで見てこそ値千金の美しさがわかるんだ。
この誘惑に抗しきれる男はまずいないだろう。若僧ならまず確実に、見ただけでイッちまうな。お嬢ちゃんの花びらは、なぜ、これほど淫らに俺を誘うんだ?こんなに淫らな眺めを呈さなくても、俺はもう、お嬢ちゃんにまったく骨抜きだっていうのに。これ以上俺を夢中にさせようなんて、ほんとに悪いお嬢ちゃんだ…
俺はこれみよがしにいきり立ったままの物をお嬢ちゃんのかわいいお尻に押し付けた。
「お嬢ちゃんも俺が欲しいか?」
「あ…オスカー様…」
お嬢ちゃんの声も濡れている。ほら、正直になるんだ…
「欲しいなら欲しいといってごらん?」
「ん…オスカー様が…欲しいの…やめない…で…」
やっと言ってくれたな。だが、まだだ。まだあげない。
「なら、自分で俺のものを導いてごらん?できるだろう?」
「あぁ…」
お嬢ちゃんは悩ましげな吐息をつくと、少し身体を浮かして俺のものに手を伸ばしてきた。
お嬢ちゃんの白く細い指が愛液塗れの俺のものに絡みつく様をただ見ているのは苦痛以外のなにものでもなかった。早くお嬢ちゃんの火傷しそうに熱くて蕩けるように柔らかい肉襞に押し入りたくて俺は気が狂いそうだった。
それがわかってて俺を焦らすように、お嬢ちゃんは俺のものにゆっくりと手を沿え、しごくように指を上下させた。慈しむように、いとおしむように。
お嬢ちゃん、お嬢ちゃんも俺を煽っているのか?俺がお嬢ちゃんに包まれたくて焦れまくっているのを本当は知ってて、こうしているんだろう?
私のなかに早く入りたい?熱く溶けてる私のなかを思いきりかきまわしたくない?でも、急いじゃ、だめ…俺のものに絡みつく白い指はそう、俺に語りかけてくるようだった。
俺の頭はさっきから沸騰しっぱなしだ。責任はとってもらうぜ、お嬢ちゃん…
「ん…」
お嬢ちゃんが漸く俺のものの先端を花弁にあてがった。お嬢ちゃんの花弁は蜜を腿までしたたらせて妖しく濡れ光り、これ以上はないという淫靡な眺めで俺を誘っていた。それでも、俺はまだ動かなかった。
「オスカーさま…はや…」
お嬢ちゃんが焦れたように腰を揺らめかし、自分から俺の先端をのみこもうとしたその瞬間、俺はその時をまっていたといわんばかりのタイミングで深深とその花を思いきり刺し貫いた。
「くはぁっ…」
いきなり思いきりつきあげられ、お嬢ちゃんが絨毯をきゅっと握りしめた。お嬢ちゃんの柔肉も同じタイミングで俺のものを締めつけてくる。
「くっ…」
俺はお嬢ちゃんの締め付けに負けないよう、さらに律動を速める。
お嬢ちゃんのお尻を抱えこんで、壊さんばかりに腰をうちつける。抜き差しするたびに俺の内部に爆発するほどの快楽が積もっていく。
だが、俺は俺が受取る以上の快楽をお嬢ちゃんに与えてやりたいんだ。俺は…俺はお嬢ちゃんをこの上ない肉の喜びに酔わせることで愛を伝えたいんだ。
お嬢ちゃんが大事なことも、お嬢ちゃんに大事に思ってもらいたい気持ちも、愛してるという言葉だけじゃ頼りなくて、物足りなくて、そう…覚束ないんだ。
お嬢ちゃん、俺のお嬢ちゃんを思う気持ちはきちんと伝わっているのか?俺は確かめずにはいられない。
「お嬢ちゃん、気持ちいいか?」
「ああっ…オスカーさま…いい…すごく…いい…」
「俺のことが好きか?」
「好き!好きです!オスカーさまぁっ!」
「俺も、俺も愛してる…だから…お嬢ちゃんを気持ちよくしてやりたいんだ…もっと、もっと!」
俺はお嬢ちゃんのお尻を両手で二つに割るようにして密着度を高め、体重を掛けるように重く深い突き上げを続けざまに放った。
「ああああっ!」
お嬢ちゃんの身体がぷるぷると小刻みに震えたかと思うと、俺のものは見えない手で搾られるような襞の動きに翻弄された。
「っ…」
俺は素直にその快楽に身を委ねた。背筋から股間に快楽が凝縮し、信じられないような開放感とともにそれは弾けた。
お嬢ちゃんの白いなだらかな背中に汗の珠が光ってみえた。とても綺麗だと俺は思った。
互いの体液と汗でべとべとになっちまったので、俺は腰が砕けてるお嬢ちゃんを抱いて執務室備え付けのシャワールームに運びこみ…このシャワールームはブースとしかいえないような簡便なものでバスタブはついていない…軽く汗を流し、ついでにそのシャワールームでお嬢ちゃんを再度抱いた。
お嬢ちゃんを掌で優しく洗ってやってるうちに、お嬢ちゃんの乳首はまた固く尖ってくるわ、俺もお嬢ちゃんの滑らかな肌ざわりに辛抱たまらなくなっちまったんだ。
降りしきるシャワーの雨のなかで、俺はお嬢ちゃんに激しく口付けながらシャワーブースの壁にお嬢ちゃんをおしつけると、お尻を抱えるようにしてもちあげ、前から立ったまま思いきりよく貫いた。
「あああっ!」
お嬢ちゃんが俺に貫かれた拍子に俺にしっかり抱き付いてきた。首っ玉にしがみ付いてくるお嬢ちゃんの様子がまたかわいくて、シャワーを流しっぱなしにしながら、俺はお嬢ちゃんをブースの壁に押し付けて支えながら、俺の腰に足を絡みつかせるような形で何度も何度も突き上げた。
いくら体重を壁で支えても、立位だから結合はどうしたって深くなる。お嬢ちゃん自身の体重で嫌でも一番奥まで俺のものが入るので、俺は深い結合を保ったまま遠慮なく腰をグラインドさせ子宮口を存分に突いては擦りあげてやった。
二回目だったから、さっきより長持ちだったしな。お嬢ちゃんはしまいには声が涸れて、金魚みたいに口をぱくぱくさせちまってたな。
シャワールームの中は汗を気にしないですむのはいいんだが、声がよく響く。それでなくても容赦なくお嬢ちゃんに声をあげさせちまったから、完全にとなりのあいつに聞こえてたかもしれん。ま、どーでもいいが。
流石に三回戦は時間的に難しそうだった。何にせよ渾身の力で入魂のSEXが二回はできたし、SEXは回数じゃなくて中身が大事だからな。内容の濃いSEXだったことはお嬢ちゃんも異存はないと思うしな。もっとも俺は状況さえ許せば、内容も回数も超一級品という希有な男なんだが、お嬢ちゃんはその価値をわかってくれているのか、ちょっと心配な所だ。
とりあえず俺はくたくたになっちまったお嬢ちゃんの体の水滴を丁寧に拭き、着せ替え人形するようにお嬢ちゃんに補佐官服をきせてやった。
目許を染めたままのぽーっとしているお嬢ちゃんを椅子に座らせてから、俺はばしっと自分の正装を決めた。汗を流してすっきりしたので、いつにもましていい男だ。
ややあってウチの執事が出張支度を整えて執務室にやってきた。
我ながらなんていい時間の読みだ。未練がましく3回戦に突入しなくて正解だったな。
俺はまだ腰の座りがちょっと怪しいお嬢ちゃんを支えてやりながら転送の間に向かった。
俺は道すがら俺の出張中はくれぐれも身辺に気をつけるようにお嬢ちゃんに念を押した。
俺が心配しているのはもちろん不審者や犯罪者ではない。聖地にそういう輩が忍び込む確率は限りなく0に近い。俺が心配なのは俺の不在を狙って俺の同僚やら先輩やら後輩…これは大丈夫かもしれん…がお嬢ちゃんにちょっかいを出さないかというその一点につきる。
だが、お嬢ちゃんは俺の心配などどこふく風だ。ころころ笑ってこういなされてしまった。
「オスカー様、何がそんなに心配なんですか?大丈夫ですよ、お留守は執事さんがしっかり見てくれますし、聖地にはそうおいそれと変な人は来たりしませんよ。次元回廊を通らなくちゃ入れないんですもの。」
だから、俺が心配してるのは、そういう奴らじゃなくて…とは、お嬢ちゃんに言えたものじゃないし…俺は頭を抱えた。今から出張を断ったら俺はいったいどんな処罰を受けるだろう…俺にもっとも有効な処罰…職務怠慢の咎でお嬢ちゃんと引き離されてめったにあえなくなってしまうとか…どこかで、聞いたことあるな、これ…そうだ、ルヴァから聞いた、牽牛織女という星の神話だったか、伝説だ。恋をしたニ人は、恋に溺れたあまり、仕事をさぼりまくり、上司に引き離されて年に一回しか会わせてもらえなくなったとかいう怖い話だった。俺は身震いした。ありそうで笑えなかった。つまり、どんなにお嬢ちゃんが心配でも腹をくくるしかないということか。
その時俺の耳にまさに救いの一言がもたらされた。
「それに、今晩は、ロザ…陛下がオスカーがいなくて寂しいだろうからお泊まりにいらっしゃいって言ってくれてるんです。私も一人で夕ご飯食べるの嫌だったから、オスカー様が発たれた後宮殿にいくことになってるんです。」
「なんだって!お嬢ちゃん!」
俺はお嬢ちゃんの肩をぐわしと掴んだ。
「きゃ!オスカー様、何?あの、私陛下の所にお泊まりに行っちゃいけなかったですか?」
「違う、違う、お嬢ちゃん、その逆だ!俺がいなくても陛下の所にいるなら安心だ!俺もこれで安心して旅立てるってもんだ!」
陛下は、俺が残されるお嬢ちゃんのことが気懸かりでおちおち出立できないであろう心情を見ぬいていらっしゃったのではなかろうか。痒い所に手が届くような部下へ心配り、憎いほどです、陛下。陛下の人心掌握術は最早芸術です。俺は心の中で一人陛下に賞賛をささげていた。俺の陛下への忠誠心が前日比150%UPしたのは言うまでもない。
「よかった!オスカー様ったら、すごい迫力だから、びっくりしちゃいました。私、何かいけないことしちゃったのかと思っちゃったわ。」
「すまん、すまん。」
俺はお嬢ちゃんが少し尖らせたかわいい唇に詫びのキスをした。
「お詫びにおみやげ一杯買ってくるからな。楽しみにしててくれよ。それから、いけないことは俺とだけするに限ってOKだからな。」
「んもう…ばか…でも、お忙しいでしょうからお土産は無理しないでくださいね。オスカー様が早く帰ってきてくださるのが私には一番のおみやげなんですから…」
「お嬢ちゃん…」
俺は溢れる愛しさにもう一度キスを落した。キスしかできないのがもどかしい。3回目をしなかったことを一瞬後悔したくらいだ。
しかし、無情にも転送の間に俺たちはついてしまった。
すでに転送の間には陛下とジュリアス様がおいでになっていた。
「これは陛下…本日もご尊顔麗しく…お待たせしてしまったようで申しわけありませんでした。」
「ほほほ、時間ぴったりですから気にしなくていいのですよ。」
陛下はとてもにこやかで、今日は事の外機嫌がよさそうである。
俺は安心して、最敬礼の姿勢のまま陛下にお礼とお嬢ちゃんのことをくれぐれもよろしく頼む旨お願いもうしあげた。
「先ほど妻から伺ったのですが、私の不在中、妻がお世話になるそうで…陛下のお手を煩わせてしまい申しわけありませんが、陛下の許での起居をお許しいただけるのであれば私も安心して執務にはげめます。どうか妻をよろしくお願いいたします。」
「おーほほほ、いいのです。アンジェは私の大事な友人、あなたは大事な守護聖なのですから便宜を図るのは当然ですもの。では、アンジェ、次元回廊を開いてさしあげて。」
「はい、陛下。」
お嬢ちゃんが錫杖を振ると転送の間に虹色の光りが満ちた。
「じゃあ、行ってくるからな、陛下の所でいい子にしてるんだぞ。」
俺はお嬢ちゃんにだけ聞こえるようにそう告げると次元回廊をくぐった。次元を潜り抜ける時特有の酩酊感に襲われながら、俺はお嬢ちゃんと陛下の二人に女性の喜びそうな土産をぜひとも見繕わねば!と固く心に誓った。
「オスカーは行ったわね…」
心なしかロザリアの顔ににんまりとした笑みが浮かんでいた。
「行っちゃいました。ロザ…陛下の所でいい子にしてろよ、ですって。いつまでたっても子供扱いなんだから、もう…」
笑みを顔に張り付かせたまま、ロザリアは控えている首座の守護聖に向き直った。
「じゃ、ジュリアス、残りの守護聖に伝えて頂戴。今夜は宮殿で晩餐会よ。出席は自由だけどアンジェが出ることを忘れずに伝えてね。」
「御意」
「え?ロザリア、晩餐って何?私、あなたと二人でご飯食べるんじゃないの?それで一緒にお風呂入って、一緒に寝て…」
「げほごほがほん!」
「ほら、あなたが刺激的なこというから、ジュリアスが真っ赤になってるじゃないの。」
「え?私何かおかしなこと言った?」
「まったくあなたときたら、ほんとに自覚がないんだから…ま、いいわ。あなたとご飯を食べたいっていってる人が一杯いるのよ、アンジェ。いい機会だと思うのでお付き合いしてあげて?ね?」
「そうね、私も食事は大勢のほうが楽しいと思うし…でも、ロザリアの所でお泊まりはしていいんでしょ?」
「あら、もし、気のあう人がいたら、私のところじゃなくて、晩餐の後その方の所に泊まったっていいわよ?オスカーには内緒にしておいてあげるから。」
「やーだ、ロザリアったら冗談ばっかり!そんなこと私に言う人がいる訳ないじゃないの〜」
「あーら、そんなことわからなくてよ?ふふ…」
ばしばしと至高の存在の背中を叩く天下無敵の補佐官は女王と供に宮殿の奥の間に向かって行った。やれやれといった呈で首座の守護聖は肩をすくめる。これから晩餐の時刻まであーでもないこーでもないと小鳥のように囀りあうのだろう。
もともとオスカーに突然持ちかけた出張も実をいえば、女王の肝いりで命じられたものであった。
今を去ること数時間前、午後の予定を確認していたジュリアスに、ロザリアは唐突にこう言った。
「ジュリアス…この頃アンジェとゆっくり過ごしてないわ、わたくし…」
「それは彼女は家庭を預かる身ゆえ、執務終了後はそそくさと退出していますから…」
「私はアンジェとゆっくり話したり、ご飯が食べたいっていってるの。このわたくしがよ!」
「し、しかし、オスカーがいる限り彼女は家庭を優先…」
「オスカーがいなければあのこも早々と家に帰る必要もないってことね?ならば仕事を作りなさい。聖地を一、二日離れるくらいの出張要請なら吐いて捨てるほどあるはずよね?ジュリアス?大した用件じゃないから、それこそ、即シュレッダー行きの嘆願書が…」
「ぎょ、御意…」
「早速今日きた嘆願書から、適当な出張先を見繕いなさい。仕事はなければ作ればいいのよ。うまく行ったらアンジェと過ごす時間はあなた達にも参加させてあげてもよくってよ。私と同じ不満を抱いてる守護聖はたくさんいるのではなくて?」
「…御意」
「オスカーが出張を承諾したらその者たちに今夜はアンジェと晩餐だと通達を出しなさい。もちろんオスカーには内緒でね。アンジェのエスコートはしたい者が行っていいわ。アンジェさえ承諾すれば一晩中でもアンジェを独占してもOKよ。私が許します。」
「へ、陛下…それは道義的に少々…」
「なーに、何か問題でも?私はあくまでアンジェが承諾したらと言ったのよ。それぞれ誘いに腕を磨くことね。なにせあの子は宇宙一のプレイボーイの甘言に慣らされちゃっているんだから、そう簡単にぽーっとなったリはしてくれなくてよ?」
「は、はぁ…」
「あ、そうそう、オスカーには出立準備と言ってアンジェと名残を惜しむ時間も与えるように。これで私に感謝するはずよ、オスカーなら。きっと気持ちよく出張に行ってくれるわ。」
「御意」
「ふふふ。それから、きっちり働けば、私がまたオスカーを出張に出してやるとそれとなく、他の守護聖に伝えておきなさい、ジュリアス。今後アンジェを囲む会に出席する場合、執務をきちんとこなしてない者は参加不可だともね。」
「御意」
「それと…オスカーを派遣する惑星には必ず見返りを要求することも忘れずにね。特産品を安く売らせるとか、一定期間関税を0にするとか…言われるままに守護聖を派遣してたら、なめられますからね。もったいぶって恩を着せておくように。」
「ぎょ、御意…」
「出張前のオスカーにはアンジェ付きの自由時間を与えてありがたがらせ、他の守護聖には執務のご褒美にアンジェをエスコートする権利を与えてやる気を維持させ、オスカーを派遣する惑星には恩を売って実益を得られ…私ってやっぱり天才だわ。おーほほほほ!」
「陛下のご慧眼恐れ入ります…」
と、かようなやりとりを経て、オスカーの出張は決められたのであった。
辺境惑星の太守が駄々を捏ねているというのも、オスカーに出張を断らせない為のでっちあげである。アンジェリークがオスカーに伝えることを見越してわざと嘘をリークしたのだ。
実際は辺境惑星の太守はだめもとで出した嘆願を聞いてもらって感激し、自分から今後一年特産のエネルギー鉱物を他惑星の半額で女王府に納入することを約束してきたのだ。
そして、その夜の晩餐会。守護聖はもちろん全員出席であった。
裏を知っているジュリアスも、見事に女王に嵌められたかわいそうな直属の部下のため、アンジェの貞操をなんとか私が守らねば!という使命感もあったが、やはり、自分もアンジェを囲んで過ごすのは理屈抜きに楽しかったので、結構喜んで出席したのである。
実際、定期的にアンジェを囲む会を開き、しかも、アンジェ本人の承諾さえ得られれば、一晩中でも独占が可能という女王陛下のお墨付きの催しは否が応でも、守護聖たちの士気を多いに高めることだろう。
『おさすがでございます、陛下…』
そしてアンジェリークは、実際いろいろな守護聖から「食事の後は私の家で過ごさないか?」と多種多様の誘いを受けていた。
ある者は「一緒に星を眺めよう」といい、ある者は「あなたのために一晩中でも楽をかきならしましょう」といい、ある者は「私が徹底的に磨いてあげるよーん」といい、ある者は「こんなとこ抜け出して一晩中踊り明かそうぜ!」といい…
ジュリアスははらはらして成り行きを見守り、いざとなれば自分が出て多少強引でも陛下にアンジェを手渡そうかと思っていたのだが、その心配は杞憂におわった。
アンジェリーク本人はそれらの誘いをまったく本気にせず、
「皆さん、オスカー様がいないから私が寂しいと思って気をつかってくださって…ありがとうございます。でも、今夜は陛下の所でお世話になりますから、心配いらないんです〜」
とにこにこしてまったくとりあわなかった。
本気にしてもらえなかった守護聖がくやしまぎれにロザリアの所で何をするのか、それはそんなに楽しいのかと聞いたらアンジェリークはまたも女子高生ののりで
「ご飯はここで食べちゃったから、うーん、一緒にお風呂はいって、洗いっこして、おそろいのパジャマ着て寝るんですよ。すっごく楽しいんです〜」
と罪作りな発言で守護聖のうち数人に鼻血をふかせていた。
ジュリアスはアンジェリークの発言を勝ち誇った顔で聞いているロザリアを見て
『陛下は結局、彼女が自分の所で過ごすことに絶大な自信を持っているからこそ、彼女の承諾が得られれば好きなだけエスコート可などとおっしゃるのだ。彼女が他の守護聖になびく訳がないと知っているからこそ余裕で、我らにこんな餌をちらつかせるのだ。しかし、それが薄々わかっていても、つい、甘い期待を抱いてそれにのせられてしまう男というのは、なんと愚かで単純な生き物よ…そして、彼女とゆっくり過ごしたいというご自分の望みをきっちり叶えた上で、それを一石ニ鳥にも三鳥にも活用される陛下…誠に天晴れでございます…」
と、ほとほと感服したのであった。
その頃オスカーは一人出張土産を現地のデパートで漁っていた。
特産の宝石を使ったアクセサリーもいいが、現地の布地を買ってかえってドレスを仕立てるのもいいな。お嬢ちゃんの好きな菓子やぬいぐるみも欠かせないか…お嬢ちゃんの喜ぶ土産が買えるんだから、たまの出張もそう悪くないかもしれん…などと思いつつ。
もちろん、ロザリアの分も忘れずに土産を選んでいたのはいうまでもなかった。
ロザリアが、オスカーから自分も出張土産をもらってしまい、多少なりとも罪悪感を抱いたのか、さらに、してやったりと思ったのかは定かではない。
FIN