幕間〜VINO ROUGE〜


使用人が、ワゴンに食べやすそうなものを数種見繕って、夫婦の部屋に運んできた。
先ほど、オスカーが命じてから、然程時間は経っていない。
おそらく今夜は主人夫妻が食堂にはやってこないのをシェフが見越して、予め食事をまとめておいたのだろう。
『うちの使用人たちもなかなかやる・・』
オスカーは、主人が命じる前に主人の意図を察知して動く使用人たちのクレヴァーさに気分がよくなる。
そのうち、特別休暇かボーナスでも振舞ってやらなければと思う。
使用人に、簡単にテーブルセッティングをさせて労をねぎらい、
今夜はもう用は無いので皆に休むよう、許可を与えて、使用人を解放した。

今日のメインはハーブとスパイスをふんだんに使用した羊のローストのようだ
赤ワインは既にコルクが抜かれて、そのコルクでボトルは軽くふさがれている。
オスカーはワインを二個のグラスに注ぐと、そのうちの一つを持ってベッドサイドに向かう。
ワインを口に一口含むと、屈みこんでアンジェリークに口付け、その口にワインを送りこんだ。
くっと、のどが鳴り、アンジェリークがワインを嚥下した。
「・・・ん・・」
アンジェリークがうっすらと、瞳をあけた。緑の瞳はまだ霞がかかったように焦点があっていない。
オスカーが氷青色の瞳を細めて、自分を見下ろしていた。
「目が覚めたか?お嬢ちゃん。」
「あれ、オスカー様・・私どうしてベッドに?」
「なんだ、覚えてないのか?」
オスカーが可笑しそうに訊ねた。
アンジェリークはベッドから上体を起こし、懸命に記憶を手繰り寄せた。
『えっと・・オスカー様とお風呂に入って・・オスカー様を洗って差し上げてるうちに・・・
 ・・・・だんだん変な気分になっちゃって・・・・・・・きゃっ!』
アンジェリークの顔がみるみる真っ赤になった。
自分からオスカーを求めた挙句、ものすごく恥ずかしい自分の姿を鏡で見せつけられ
あまつさえ、オスカーに愛してもらう為に更に恥ずかしい約束に唯々諾々と従ったことを
まざまざと思い出したのだ。
そのとき羞恥と引き換えに与えられた、激しくも甘い目のくらむような快楽の記憶とともに・・
そのことを思い出しただけで、また体の中心が熱くなる自分に気付き、更に頬に朱が差す。
「思い出したみたいだな、お嬢ちゃん。お嬢ちゃんが失神しちまったから、俺がこっちに運んだんだ。」
「・・やだ、すみません、オスカー様・・」
「なに、それくらいなんでもないさ。それにさっきのお嬢ちゃんはいつにも増してかわいかったぜ」
オスカーがにやりと笑った。
「・・ばか・・」
アンジェリークは耳まで真っ赤になってしまう。
「さ、食事にしよう、腹が減っただろう?ここに食事を運ばせて置いた」
オスカーに言われてアンジェリークは、そう言えば、今日は夕食もまだだったことを思い出した。
アンジェリークがベッドから降りようとすると、オスカーがそれより早くアンジェリークを抱きかかえ、ソファまで運んでやる。
「やん、オスカー様、私、歩けます」
アンジェリークが恥らう。
「いや、まだ、腰に来てるだろう。俺の前では無理しなくていい」
アンジェリークは不思議な思いに包まれる。
オスカーのこの限りない優しさと、情事の最中に時折見せる残酷なまでの容赦の無さが、
どうして何の破綻も無くひとつの人格に同居しているのだろうと。
もちろん、オスカーが自分に酷いことをしたことなど、一度としてない。
しかし、自分を快楽の地平に追い詰めていく様は、まるで、狩をしている肉食獣のようだと感じることが間々あった。
理性の崖淵ぎりぎりまで追い込まれ、ついに跪いて、激しくうねり渦を巻く快楽の海に放り込まれ、
揉みくちゃにされる自分は、肉食獣の牙に屈する草食獣のようだとも。
『でも・・・』
アンジェリークは思う。この激しい炎に触れて、その熱さに慣らされた自分は、もう、この人にしか感じないだろうと。
多分、やさしくされるだけでは、満足できず自分を持て余してしまうに違いないと。
囚われているのは、自分のほう。もうこの人がいないと、生きていけない・・
『放せない、離れられない・・』
溢れ出す思いのままにオスカーの首にぎゅっとしがみつく。
「オスカー様・・大好き・・」
オスカーは嬉しそうに微笑むと、
「俺もだ、お嬢ちゃん」
と答えて、軽いキスをおとすと、アンジェリークを優しくソファに座らせてやる。
自分も隣に座ると、手早く肉を切り分け、アンジェリ―クの口元に運ぶ。
「ほら、お嬢ちゃん、口を開けて」
「もう・・私、子供じゃないです、オスカーさ・・んん・・ぅぐ」
アンジェリークが口を開けた瞬間にオスカーが肉を口に放り込む。
アンジェリークが口を動かしている間に、オスカーは自分も食物を口にする。
アンジェリークがやっと肉をのみこむと、
「もう、オスカー様ったら、私、食事くらい一人でできます!」
「だが、お嬢ちゃんは骨つき肉を切り分けるのがへただろう?いつも食堂で四苦八苦してるじゃないか。だから今日は俺が食べさせてやるよ」
ぐっと詰まるアンジェリーク。なんで、この人はそんなことまで良く見てるのだろうと思いながら。
「そ、それはそうかも知れませんけど、だからって、オスカー様にしていただいてたら、私いつまでたってもへたくそのままじゃないですか〜」
「じゃ、練習は食堂で食事するときにすればいいさ。今日は食事が遅くなっちまったから、お嬢ちゃんも腹が減ってるだろう?
 お嬢ちゃんが肉を切るのを待ってたら、夜があけちゃうぜ?、だから、ほら?」
笑いながら、オスカーがもう一切れ、アンジェリークの口もとに肉を差し出す。
仕方なく、素直に口をあけ、むぐむぐと、肉を食む。ようやく飲みこみ、
「だって、こんなにオスカー様に甘やかされたら、私何もできない子になっちゃう・・
 それでなくても、オスカー様はなんでもできて、なんでも良くご存知なのに・・
 私、オスカー様にふさわしい女性になりたいのに・・・・」
と、少し不安そうに顔を曇らせアンジェリークが言った
オスカーがふっと、微笑む。瞳には柔らかい光が溢れている。
「お嬢ちゃんはいまでも、充分魅力的だけどな。だが、その前向きなところがお嬢ちゃんのいいところだしな。
 ただ、お嬢ちゃん、俺が君よりどれだけ長く生きてると思うんだ?
 これでお嬢ちゃんより、多少はものを知ってなくちゃ、俺はただ無為に時間を過ごして来たってことになっちゃうだろう?」
アンジェリークがはっとしたように、口を押さえた。
「あ、ごめんなさい、私、そんなつもりじゃ・・」
オスカーからはっきり聞いたわけではなかったが、
オスカーが守護聖としての自分の人生を手放しに喜んで生きてきたわけではないらしいことは、アンジェリークにも解っていた。
諦念と使命感で守護聖の任を果たしてはいたが、時間の流れに取り残される自分の運命に苛立ち、
いき場の無い感情のはけ口に、多数の女性と浮名を流していたらしいこともアンジェリークは知っていた。
しかし、オスカーは気にするなとでもいうように、軽く手をあげた。
「ああ、わかっている。俺はお嬢ちゃんに会えただけで、今まで自分が生きてきた甲斐があったと思っている。
 それに、お嬢ちゃん、幸い俺達にはたくさん時間がある。
 その気持ちがあれば、昨日できなかったことも、明日にはできるようになる。
 だから、多少俺が甘やかしても、お嬢ちゃんはだめな人間になったりしないさ、俺が保証する。」
オスカーはこういうとアンジェリークにウィンクをよこした。
「・・・オスカーさま・・」
『この人が好き・・どうしようもなく好き・・知れば知るほど、好きになって・・こんなに好きで、私どうにかなっちゃいそう・・。』
アンジェリークはオスカーへの思いで胸がいっぱいになって、息苦しささえ覚える。 
そんなアンジェリークの胸中を知ってかしらずか、オスカーが今度はパンをちぎってアンジェリークに差し出す。
「ほら、食べるものはちゃんと食べないとな?そうしないと、痩せて胸が小さくなっちゃうぜ?」
冗談めかした口調の中に、アンジェリークはオスカーの気遣いを感じて、さらに切なくなってしまう。
パンを口にいれる際にオスカーの長い指が、一瞬アンジェリークの唇に触れた。
アンジェリークはその瞬間、心臓がどくんと大きく脈打ち、胸が締付けられる。
ずっと、その指で触れていて欲しいと思ってしまう。自分の唇で、その指を捕らえてしまいたいという気持ちが沸き起こる。
アンジェリークに食べさせながら、オスカー自身も旺盛な食欲を示している。
野性的でいながら洗練されたそのカトラリーさばきは、やはり、優雅な肉食獣のようだと、アンジェリークは見惚れてしまう。
おとなしくなってしまったアンジェリークにオスカーが訊ねる。
「どうした?お嬢ちゃん、余り食べないな・・なにか飲むか?」
「あ、ええ、はい・・」
オスカーが食事をしているさまに見惚れていたとは言いづらくて、アンジェリークは反射的に答えた。
オスカーはワイングラスを取り上げ、ワインを口に含むと、アンジェリークを抱き寄せて口付け、口腔内にワインを送りこんだ。
「んんっ・・」
不意を突かれて、アンジェリークがこくんとワインを飲みこむ。
アンジェリークが素直にワインを嚥下した様を見て、オスカーが再度、アンジェリークに口移しでワインを飲ませる。
そんなことを二,三回繰り返すと、アンジェリークの目許がほんのりと、淡紅色に染まってきた。
白い花の蕾が綻ぶように色づいていくかんばせを、オスカーが楽しそうに見やる。
「・・こうして飲むとワインもうまいだろう?」
「・・・・」
アンジェリークが黙って俯いてしまう。その頬に朱が差しているのは、アルコールの所以ばかりではない。
ワインといえ、アルコール類は得手ではないのだが、オスカーの唇を味わいたくて、離れがたくて、ワインを拒まなかった・・
そんなことをオスカーには言えなかった。
さっきも激しく愛されたばかりで、しかもまだ食事中なのに、オスカーのことしか考えられない自分に気付かれるのは、嫌だった。
自分だけがこんなにオスカーに囚われていると、感づかれるのは気恥ずかしかった。
アンジェリークの様子に、オスカーの瞳に妖しい光が宿る。
「・・お嬢ちゃん、俺にもワインを飲ませてくれないか・・」
アンジェリークがはっとして、顔を上げる。
自分がオスカーを請い求める気持ちに気付かれてしまったのだろうかと、瞳が頼りなげに揺れる。
『私を誘ってる?・・いえ、私が自分の気持ちに素直になれるように、きっかけを与えてくださってるの?・・』
「さあ、お嬢ちゃん」
オスカーがアンジェリークにワイングラスをわたす。
アンジェリークはグラスに揺れる暗赤色の液体に目を落とし、覚悟したように口に含むとオスカーの首に腕を回し
その花びらのような唇でオスカーに口付けた。
オスカーの口腔に、その液体を送りこむ。
オスカーがワインを飲み干し、口を離すとアンジェリークに囁いた。
「もっとだ、お嬢ちゃん・・」
アンジェリークが再度ワインを口に含み、先ほどオスカーにされたように、口移しでワインを飲ませて行く。
グラスにワインがなくなると、オスカーがグラスに注ぎなおす。
そして、オスカー自身も
「お嬢ちゃん、お返しだ・・」
といって、ワインを口に含み、またアンジェリークにワインを飲みこませる。
飲み込みきれなったワインが、口の端から零れて、アンジェリークののどに伝わって行く。
のどに伝わるワインの雫を舌で舐めとりながら、オスカーは赤ワインの色が思いのほかアンジェリークの肌を美しく彩る事に気付く。
交互にワインを飲ませあううちに、いつしか、ワインのやり取りは忘れ去られ、二人はお互いの舌を貪りあっていた。
葡萄の香りのする舌を絡めあい、吸い上げる。
ひとしきり口腔内を味わってから、オスカーが唇を離した。アンジェリークもほぅと吐息をもらす。
濡れたように輝く緑の瞳をみて、オスカーの口の端が微かに上がり
「お嬢ちゃん、俺はワインよりお嬢ちゃんに酔いたい・・お嬢ちゃんも、そうじゃないか?」
と、アンジェリークの気持ちを見透かしたように尋ねた。
アンジェリークが無言のまま、オスカーの胸にことんと顔を埋める。
「沈黙は承諾の証だな・・」
オスカーはアンジェリークを抱き上げると、再度アンジェリークをベッドに運んで行った。

オスカーはアンジェリークをベッドに横たえると、バスローブの紐を緩め、白い胸元を露にして行く。
自分とアンジェリークの間を阻むようなタオル地の布を、アンジェリークのからだから取り去る。
バスローブしかまとっていなかったアンジェリークは、あっという間に輝くような裸身をオスカーに晒すことになる。
その間、アンジェリークはアンジェリークで、オスカーのバスローブの紐をほどこうと、躍起になっていた。
しかし、オスカーが自分で結んだ紐は、アンジェリークの小さな手には固すぎて、簡単にはほどけてくれず、
オスカーはそんなアンジェリークの様子に口元を綻ばせながら、アンジェリークの手を制し、自分でローブを脱ぎ去った。
アンジェリークと同じく全裸となったオスカーは、アンジェリークにそっと覆い被さった。
吐息が重なり合うほど、顔を近づけ、お互いの瞳を覗き込む。互いに相手を求め合う気持ちを確かめたくて。
オスカーは、アンジェリークに自分の重みがかからないよう、ひじとひざで体を支えていた。
自分の体重がかかったら、この華奢な体にどれほどの負担だろうと思うと、
オスカーはアンジェリークと隙間無く肌を合わせることに、ためらいを禁じえない。
すると、アンジェリークが焦れたように、オスカーの首に腕をまわして、甘えた声でこう言った。
「オスカー様、抱きしめて・・」
「だが、お嬢ちゃんをつぶしちまいそうだ・・」
オスカーが逡巡する。
「なら、私を上にしてください。オスカー様との間にこんなに隙間が開いてるのは嫌・・寂しい・・
 オスカー様をもっと感じたいの・・オスカー様とぴったり肌をあわせたいの・・」
「・・お嬢ちゃん・・」
自分と肌と肌をふれあわせたいと求めてくれるアンジェリークに、オスカーは愛しさが更にいや増す。
オスカーはアンジェリークの背中に腕を回して、一瞬抱き起こすと、自分の体をくるりと反転させ、自分がシーツに沈み込んだ。
アンジェリークはオスカーの腹の上で、オスカーに完全に体を預けきる形になった。
オスカーはアンジェリークの背にそっと腕を回し、自分の上からずり落ちないよう、体勢を整えてやる。
アンジェリークは自分が求めたとおり、オスカーの肌と自分の肌をできる限り密着させ、オスカーの厚い胸板に頬を摺り寄せた。
アンジェリークの豊かな乳房が、オスカーのみぞおちのあたりに押しつけられ、形を変えている。
「オスカー様の体、熱い・・」
アンジェリークがオスカーの胸板を撫でさすりながら、呟く。そのまま、胸に唇をあて、きつく吸い上げてみた。
だが、アンジェリークが吸った跡は、かすかにうっすらと肌に色味が増しただけで、自分の肌につけられるような跡にはならない。
「?・・どうして?」
オスカーが笑いながら訊ねる。
「なんだ、お嬢ちゃんは俺にキスマークがつけたかったのか?」
「そう言うわけじゃないんですけど・・私はすぐ跡がついちゃうのに、なんでオスカー様にはつかないの?・・ずるい・・」
「それは、お嬢ちゃんの肌が柔らかいからさ。ほら、こんなふうに」
「ひゃんっ」
オスカーが、アンジェリークの丸い臀部をさわさわとなで上げて、軽く抓った。アンジェリークの背がびくんとしなる。
「ほら、お嬢ちゃん、もう少し上においで、これじゃキスもできない・・」
オスカーがアンジェリークの腰を抱いて、自分の顔のところにアンジェリークの顔がくるように、体を上に持ち上げた。
「オスカー様、ぎゅっと抱きしめて・・お願い・・」
「ああ、じゃあ、お嬢ちゃんは俺にキスをくれ」
アンジェリークがオスカーと唇をあわせ薄く開いた口に自分の舌をそろそろと差し入れた。
たちまち、オスカーの舌がアンジェリークのそれを絡めとる。
オスカーはアンジェリークに苦痛を与えぬよう、力加減に気を付けながら、できる限り、力いっぱい抱きしめてやる。
「・・はふぅ・・」
長いキスにアンジェリークが息苦しくなったのか、オスカーから唇を離した。
その時すかさずオスカーはアンジェリークの体を抱いて、自分の目の前に乳房が来るようにアンジェリークを上方に引き上げた。
重たげに揺れる乳房の先端を口に含むと、そのまま、乳首を舌で転がすように嬲り、ちゅっと音をたてて、吸う。
たちまち乳首が固く立ちあがっていく。
「あぁ・・」
アンジェリークの眉が顰められ、切なげな吐息が口から零れる。
その反応に気を良くして、オスカーはもう片方の乳首も口に含み、輪郭に沿って舌を這わせ、何度も先端をはじく。
「あっ・・あん・・あ・・んっ・・」
アンジェリークがオスカーの腹の上で、情感を高めて行く。
オスカーはアンジェリークの様子に満足そうに笑み、乳首を軽く摘む。
「どうした、お嬢ちゃん、いつもより感じてるみたいだな・・」
「んっ・・下から舐められると・・なんか変なの・・いつもと、ちょっと違う感じ・・・」
「気持ちいいのか?・・じゃ、もっと舐めてやろうな。」
オスカーはもう一度乳首を口に含むと、執拗なまでに舐めあげ、時折軽く歯をたてた。
揺れる乳房のふるふるとした感触を楽しみながら、両の乳首を交互に味わう。
胸の先端から快感が体を掛けぬけ、アンジェリークの中心が熱く疼き出す。
オスカーの腹部に、自分のその部分を擦り付けそうになるのを、必死でこらえる。
しかし、オスカーの手が括れた腰のラインをなぞりながら股間に伸ばされ、アンジェリークの努力はすぐ無に帰してしまう。
ちょっと、触れられれば、自分の中心が熱い愛液を湛えて、オスカーの愛撫を待ちわびている事など、すぐにわかってしまうから・・
オスカーの手が叢をかきわけて、秘唇をかるくさすると、そこはやはり、とろとろに溶けたようになってオスカーを待っていた。
「もう、こんなになってるぜ・・」
オスカーが一瞬乳房から唇を離し、嬉しそうに呟く。
アンジェリークの愛液に濡れて光る指先をわざとアンジェリークに見せてから、ぺろりと舐める。
アンジェリークは羞恥にいやいやをするように首を振る。
その動きにつれて揺れる乳房を再度唇で捕らえ、舌で嬲る。
その間手は秘唇を押し広げ、滴る愛液を絡ませた指で、花芽を撫でさすり始めた。
「ああぁっ・・」
アンジェリークの背がびくんと反らされるが、オスカーが背に片腕を回し、乳房が自分の口元から離れないようにアンジェリークを固定する。
もう片手の人差し指と中指で花芽をこすりながら、薬指で秘裂の入り口あたりを掻きまわすように撫で上げた。
オスカーの指の動きが早まるにつれ、愛液がからだの奥から、滾々と湧き出してくる。
そのあふれ出る愛液を直接味わいたくなって、オスカーはまたアンジェリークの体を抱き上げてシーツに沈め直すと、
アンジェリークの股間に顔を埋めた。
秘唇を大きく指で広げて、花芽を露出させ、自分の舌で直接花芽の感触を楽しみはじめた。
尖らせた舌先でつついたかと思うと、何度も下から上へと舐めあげ、軽く甘噛みをくわえる。
充血して膨らんだ花芽の弾力を、思う存分味わう。
「ああぁっ・・やぁっ・・噛んだりしちゃ・・」
アンジェリークの腰がびくびく跳ねまわるのを、腕でおさえ、花芽が自分の舌から逃げられないようにする。
アンジェリークは花芽に与えられる鋭い刺激に、もう、すすり泣きをもらして、オスカーに懇願する。
「あっ・・オスカーさま・・わたし・・もう・・もう・・」
「まだだ、お嬢ちゃん。イってもいいが、まだやらないぜ。俺はまだ、お嬢ちゃんを味わい足りない・・」
オスカーはアンジェリークの言葉は聞き入れず、花芽を開放した替わりに、舌を秘裂に差し入れた。
あふれ出る愛液を舐めとり、音を立ててすすり上げる。
アンジェリークの愛液の香りにむせかえり、自分の情欲が更に刺激されていく。
「お嬢ちゃんの蜜は、酒よりも俺を酔わす・・」
こんなことを呟きながら、秘裂の内壁を隈なく味わおうと、深く舌でアンジェリークを犯していく。
幾重にも重なる襞の一枚一枚を余す所なく、舐めつくす。
「あぁっ・・はっ・・やぁっ・・も・・おかしくなっちゃ・・」
アンジェリークがオスカーの髪に指をうずめている。
オスカーの頭を押しやろうとしているのか、更に股間に押しつけようとしているのか、自分でもどうしたいのか、よくわからないようだ。
「あっ・・オスカーさま・・も・・・我慢できない・・欲しい・・の」
オスカーの舌が侵入してくる度に電流のような鋭い快感が走りぬけるが、その一方で体は舌よりももっと確かな量感を求めている。
満たしてもらいたくて、意識せずに揺らめく腰が、オスカーを誘う。
「ふ・・ん、頃合か・・」
アンジェリークのひくつく秘唇と愛液を心行くまで堪能したオスカーは、アンジェリークの股間から顔をあげ、
体を上方にずらして、アンジェリークに覆い被さると優しく囁いた。
「お嬢ちゃん、導いてごらん」
アンジェリークは熱に浮かされたような瞳で、そろそろとオスカーのものに手を伸ばす。
熱く脈打つそれを、そっと握ると、自分の潤びた秘裂の入り口にあてがう。緑の瞳に哀願の色が浮かぶ。
それでもオスカーは動かない。
「自分でいれてみるんだ、お嬢ちゃん」
冷たい光を放つ氷青色の瞳に射すくめられ、アンジェリークは操られたように、自分の指で秘唇を押し広げると、
オスカーのものの根元をそっと掴んで、自分の秘裂にそろそろと招き入れた
「ああぁ・・」
中心を熱い塊で満たされ、ようやく飢えた心が落ち着きを取り戻す。
しかし、それもオスカーが動き出すまでの一瞬のこと。
オスカーがひとたび律動を始めれば、高みに押し上げられるまで、いや、押し上げられてもなお、
アンジェリークの体は際限なく貪欲にオスカーを求めて止まなくなる。
オスカーは導かれるまま一度己を根元まで収めきると、アンジェリークの膝頭を手で押さえ、ゆっくりと円を描くように肉壁をこすり始めた。
アンジェリークが一際乱れる内壁を狙って、時に浅く、時に深くこすりあげる。
オスカーの狙い通り、すぐさまアンジェリークが、切ない声をあげ始めた。
「あっ・・あん・・んんっ・・んあっ・・」
「お嬢ちゃん、気持ちいいか?」
「んっ・・気持ちいい・・気持ちいいの・・オスカーさまぁ・・」
アンジェリークが甘えた声をあげ、無意識の媚態を示す。
オスカーにすがりつくように背に腕を回す。小さな手がオスカーの大きな背中の其処ここを流離う。
「もっと、欲しいか?」
「ん、欲しい・・いっぱいちょうだい。オスカーさまで、私をいっぱいにして・・」
素直に快楽に身を委ね、自分を率直に求めるアンジェリークがたまらなく愛しい。
オスカーは微かに微笑むと、アンジェリークの体を引き寄せて軽く持ち上げると、アンジェリークの腰の下に枕をあてがい、
秘裂の入り口がすこし上向くよう、角度をつける。
そして一度己を根元まで飲みこませてから、引きぬき、また少しずつ、張り出した先端部分で肉壁をこするように腰を動かしていく。
「ああぁ・・」
アンジェリークの背が大きくしなり、白いのどがのけぞる。オスカーの背に回された手にぎゅっと力がこめられる。
「どうだ?お嬢ちゃん。」
腹側の肉壁を意図的に強くこすりながら、少しづつ注挿の速度を早めて行く。
普段と違う角度からの挿入にもたらされる感覚に、アンジェリークは次第に溺れて行く。
「あっ・なんか変・・変なの・・んっ・・いつもと違うところにあたる・・みた・・いで・・んっくぅん」
「いいのか?」
速度だけでなく、オスカーは己を埋め込む深度も徐々に深めて、アンジェリークを追いつめて行く。
「あんっ・・いい・・いいの・・もっと・・オスカーさ・・はぁっ・・」
「ふっ、お嬢ちゃんは本当に欲張りだな。こんなにあげてるのに、もっと欲しいのか?」
アンジェリークが切なげな瞳でオスカーを見上げる。
浅いところで抜き差しを繰り返すオスカーにもどかしさが募り、もっと深くオスカーを感じたくて、腰が自然に前にせり出してしまう。
「やっ・・だって・・まだ・・もっと・・」
「もっと、どうして欲しいんだ?」
体の奥で燃え盛る情欲の焔に突き動かされ、アンジェリークはオスカーの望むとおりに言葉を紡ぐ。
「もっと・・もっと奥まできてぇ・・オスカーさまぁっ・・」
「ふ・・こうか?」
「くはあぁっ」
オスカーが、このときとばかりに、最奥をめがけて己を突きいれた。
先端が弾力のある子宮口にあたって撥ね返るような手応えを感じ、そのままその一点を狙って、オスカーは続けざまに腰を打ちつけた。
「あっ・・やあっ・・ああっ・・」
アンジェリークが腰を激しく振りたててオスカーに応える。
しなやかな足はオスカーの腰に絡められ、オスカーを離すまいとする。
オスカーに最奥を突き上げられることをどんなに待ち望んでいたか、どんな言葉より雄弁に、アンジェリークの体が物語る。
「ほんとにお嬢ちゃんは奥を突いてもらうのが好きだな・・」
「あっ・・あっ・・あぁっ・・んくぅっ・・」
もう言葉を返すこともできず、アンジェリークはオスカーにぎゅっとしがみつく。
秘裂が不規則に収縮し始め、絶頂が近いことが窺い知れる。
「イきたいか?お嬢ちゃん・・」
この上なく優しい声でオスカーが訊ねる。
「あ・・はあぁっ・・ふぁ・・」
アンジェリークは頷こうとするが、うまく果たすことができない。
突き上げられるたびに、秘裂の最奥から体の隅々に駆けぬけていく鋭い快感に満たされ、全身が快楽に染め上げられて行く。
その快楽に指の先まで支配され、オスカーの体にまわした手に力をこめるのが精一杯だ。
まして、もはや意味のある言葉など出ようはずもない。
一瞬オスカーの瞳に酷薄な光が浮かび、端正な唇の端がくっとあがる
「ちゃんと、口で言うんだ。お嬢ちゃん。イかせてくださいってな?言えないなら、やめちゃうぜ?」
こういうと、わざとオスカーは突き上げを緩めた。
この仕打ちにアンジェリークは半狂乱になって、オスカーにむしゃぶりつく。
「いやぁっ、やめないで!・・イかせて・・お願い・・」
アンジェリークの哀願の言葉はすすり泣きに飲みこまれて行く。
オスカーは満足そうに微笑む。
「わかった、ほら、ちゃんと言えたご褒美だ・・」
オスカーはアンジェリークの膝を抱えなおし、渾身の力で己を突き刺し、今まで以上に力強く、腰をうちつけた。
もう、律動を緩めるようなことはせず、ひたすら勢いを増して突き上げて行く。
「あ・・あぁっ・・ひぃあああぁっ・・」
あと一歩のところで、燃焼しきれず燻っていた体は、一気に高みに駆けあがり、臨界まで達した情感そのままに白いのどから声が迸った。
体は弓なりにそりかえり、オスカーの背に白い指が食い込む。
秘裂はびくびくと痙攣し、オスカーのものを締め上げるが、一度射精を済ませているオスカーは余裕でそれに耐える。
「まだだ。まだ、終わりじゃないぜ、お嬢ちゃん」
オスカーは、まだ、きゅうきゅうと収縮して、オスカーのものを離すまいとする秘裂から、一度己を引きぬいた。
快楽の余波にひたって、オスカーの為すがままのアンジェリークの体を裏返し、腰をたかだかと持ち上げると、
「お嬢ちゃんは、こっちからするのも好きだったな・・」
といいながら、背後からアンジェリークを一気に貫いた。
今度は焦らすような真似はせず、ひたすら最奥を狙って己をつきいれる。
アンジェリークの腰が浮き上がらんばかりの勢いで突き上げるが、腰が逃げて快感が減じるようなことがないよう、しっかり、腰を捕まえる。
「ふぁああっ・・」
今、達したばかりで欲望の熾火が燃え残っていた体は、この快楽を余す所なく受けとめ、反応を返す。
オスカーのものに与えられる快楽に比例して、秘裂もきつくオスカーを絞り上げようとする。
そのきつさに、オスカーの眉も苦しげに顰められていく。
「くっ・・いいぜ・・お嬢ちゃん・・」
アンジェリークは頬をベッドにおしつけ、掴むものを求めて指はきつくシーツを握り締めている。
腰だけが別の生き物のように、揺さぶり揺さぶられ、オスカーのものをより深く咥えこもうと、淫らにうごめく。
「ああっ、・・おすかーさまっ・・また・・また・・やぁっ・・いっちゃ・・くぅっ・・」
アンジェリークの身中に第二、第三の波がうねり、逆巻き、押し寄せる。波頭は今にも砕けちるための、最後の一押しを待っている。
「ああ、お嬢ちゃん、今度は一緒にいこう・・」
オスカーが荒い吐息混じりの言葉とともに、一際強く最奥を抉った。
アンジェリークを高みに押し上げたのは、その動きではなく、一緒にいこうと言ってくれた、オスカーのその一言だった。
「ああっ・・オスカーさまぁっ・・きてぇっ!」
「っ・・アンジェリーク・・」
秘裂が激しく痙攣するのと、オスカーが熱い欲望を最奥に叩きつけたのと、ほぼ同時の出来事だった。

オスカーは崩れ落ちるようにベッドに突っ伏してしまったアンジェリークから、まだ硬度を保っている己を引きぬくと、
アンジェリークを正面に向かせ、頬に、まぶたに、額にと、顔中にキスをおとしてから、唇にもう一度口付けた。
しかし、達したばかりで息の荒いアンジェリークは苦しがって、すぐ唇を離してしまう。
そんな様子もいとおしく、オスカーはアンジェリークの背に腕をまわし、きゅっと抱きしめてから、自分もベッドに沈みこんだ。
アンジェリークの肩を抱き寄せ、深い吐息をつく。
アンジェリークがオスカーの肩に金の髪をちらし、そのまま吸いこまれるように、眠りの淵に沈んで行く。
薄れ行く意識のなかで最後にひとこと、
「好き・・オスカーさま・・」
と、つぶやいて・・
オスカーは自分も『愛している・・』と答えようとして、もう穏やかな寝息をたてているアンジェリークに気付き
愛の言葉を口にする替わりに、その肩をより強く抱き寄せて、額に口付けた。
上掛けを掛けてやりながら、アンジェリークに贈るドレスのことを思いだし、どんな色やデザインがいいだろうかと考える。
シーツの海に漂うアンジェリークの姿を見て、
『白も清楚でいいんだが、お嬢ちゃんのイメージ通りで、意外性にかけるな・・』
などと考えるうちに、オスカーはふと、先ほどアンジェリークの肌を彩った赤ワインの色を思い出した。
少し暗いそれでいて透明感のあるワインの赤は、アンジェリークの乳白色の肌を殊更白く見せる、絶妙のコントラストだということに気付く
そうだ、アンジェリークにオーダーしてやるソワレはワインレッドにしよう、色に合わせて、デザインもおとなっぽいものがいい。
ジュエリーや、靴もドレスにあわせてオーダーしてやろう。
下界の時間の流れなら、今からオーダーしても充分、パーティーに間に合うはずだ。
アンジェリークの喜ぶ顔が目に浮かび、オスカーは知らず知らずのうちに口元が綻んでしまう。
ああ、どうせならとびっきりセクシーなドレスにするのも、悪くない、と、オスカーは更に考える。
どうせ、他のやつらにアンジェリークをエスコートさせる気などないのだ。
うんと、セクシーなデザインにして、他の守護聖に俺のお嬢ちゃんがいかに魅力的か、見せ付けてやるのもいい・・
そんな楽しい考えをめぐらせながら、オスカーは満たされた思いで、目を閉じた。


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