堕としてみせるぜ、お嬢ちゃん

Presented by KAHO様



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俺は常に【いい男】でいようとする男だ。
そして必ずやそれをまっとうしていると思っている。
たくさんのレディを喜ばす事こそが、俺の使命。
代々炎の守護聖は、そう在った―――と聞く。
だから俺も先代からの言葉をいつも胸に抱いている。

『オスカーよ、お前の努めはサクリアを司る事だけではない。』
『・・・それはどういう事ですか?』

先代は誇らしげに笑った。

『女王陛下が満足する男でなければならない。炎の守護聖は宇宙において【色男】の象徴とされているのだ。』
『なんだ・・・、それなら問題はないですよ。俺はこのままでも陛下のお気持ちを満たす自信がありますから。』
『その自信は非常に頼もしいがオスカー、女王陛下をあなどってはいけない。あれほどの大きな存在だ。いつか来る新しき女王が、一筋縄ではいかないタイプもいるだろう。そんな場合でも陛下に溜息をつかせ、惚れ惚れさせる男でいる事に努めるんだぞ!』
『はい、わかりました。』

着任直後から俺は陛下に気に入られていたようだった。
そのお言葉は女王補佐官様の口からしか伺えなかったが、行事や式典に常に動くのはジュリアス様であっても、表立って外部の者に姿をさらすのは―――俺だった。陛下の勅命である――という補佐官様の言葉は、元々自信家の俺を更に喜ばせてくれたもんだぜ。


月日は過ぎて女王の交代の時期が来た。


ここでまた俺の腕の見せ所がやって来たのだ。
女王候補のお嬢ちゃん二人は、俺にとってとても楽しみなレディの予備軍だ。

常に女王然としたロザリア・デ・カタルヘナ。
彼女はとても女王に相応しいだろう。
俺はロザリアに徹底的にアタックを受けた。
もちろん―――それはとても満足の行く事であり、美しい少女に憧れられるのは俺の好きな状態だ。

そして―――彼女だ。

アンジェリーク・リモージュ。
残念だが、彼女には女王としての風格のかけらもない。
しかし、アンジェリークは可愛らしい。笑顔といい仕草といい、万人に好かれるタイプだ。
けなげで努力家でもあるという事は俺も知っている。

だから俺はロザリアと分け隔てなく、アンジェリークにも協力は惜しまなかった。

だが―――問題があった。

部屋に平日訪ねてデートをしようと言うと、ニコリと承諾するが―――日の曜日の誘いが来ない・・・・・・・・・

週の半ばになると女王候補からのお誘いの手紙を持った聖霊がやって来るのに・・・・・・・
それは必ずロザリアからのものであり、アンジェリークではない。

(もしや俺があまりにもいい男過ぎて、自分から誘う事に気後れしているのか・・・)
そんな風に心配もしてみた。

―――確かに俺は【いい男】だから(自信満々)、アンジェリークのような平凡な少女は一歩引いてしまうかも知れない。
ロザリアのように自信に満ちた子は、俺と並んでも気後れしないでデート出来るが、いかんせんアンジェリークは・・・

俺はかなり寂しかった・・・・
そこで―――彼女の事を調査してみた。
信頼出来るルートで主星においての彼女を調べさせた。

そしてそこで驚くべき事実に突き当たった。


<<アンジェリーク・リモージュ調査報告書>>には様々な事が書かれていたが、俺が驚愕したのはある部分だった。


◆好きなタイプ・・・小柄でチョコチョコ動く人。人を笑わす漫才師のような男
◆嫌いなタイプ・・・自信家・いい男⇒あまりに完璧に整った男性はパス。
◆初恋の人・・・すもうレスラー・舞の○
◆好きなタレント・・・コメディコンビ・ナインティー○イン・O村君


なんなんだ!!!!!
俺はそのコメディコンビを調べたさ。
すもうレスラーだって、もちろんだ。

俺との共通点はひとつも探せない男ばかりじゃないかっ!?
しかも【嫌いなタイプ】に俺はそっくりそのまま当てはまっている。
守護聖仲間にも聞いてみた。
彼らも―――まだ一度も日の曜日のお誘いは受けていないと言う。
―――当たり前だな。
守護聖はジュリアス様からマルセルまで、一応ハイレベルの容姿持ちだ。
アンジェリークの好みには引っかからないはずだ。

―――俺は―――発熱した。
3日3晩寝込んだ。

この世の中にいい男が嫌いなレディなど存在するという衝撃の事実に、俺はもう耐えられなかったんだ。
ベッドに寝込みながら、いろいろ考えたさ。
(きっと女王はロザリアだ。ロザリアさえ俺をいい男と認めてくれれば問題はないじゃないか)
(どっちにしてもアンジェリークはまだお子ちゃまなんだ。きっとそのうち美的感覚というものを養うだろう)

―――すると
アンジェリークが見舞いにやって来た。
病気の根源が・・・やって来てしまった。

俺は一応指導者であり、大人の男であるから、ショックを隠しながら彼女の見舞いを受け入れた。

「オスカー様、お熱があると伺いました。私冷たい果物を持ってきたんです。メイドさんにナイフをお借りしたんで、今すぐ剥きますから待っていてくださいね。」
「ああ・・・すまないな、お嬢ちゃん。」

俺は泣きたくなるのを我慢しながら答えた。
熱を出して【くたっ・・・】としている自分の姿を情けないと思うから、ロザリアの見舞いは断ったんだ。
けれど―――アンジェリークは―――どうせいい男嫌いなんだから、もうどうでもいいと思った。

それどころかアンジェリークに感謝しなくてはならないだろう。
嫌いなタイプの代表的な男で、ひとつも好みじゃない男である俺の見舞いに、手土産を持って来てくれた事を・・・

なんだか酷く・・・その時の俺は弱気になりかけていた。

「さあ、オスカー様?凄くおいしい林檎ですよ。あ〜んしてください。」
「なに?・・・あ〜ん・・・だって?・・・そんな事はいいっ(赤面)!じ、自分で食べれるから・・・」
「だめですぅ!!私はいつもママにこうして食べさせてもらうと、すぐに熱がさがったんですから!だから、あ〜んしてください!」

かなり強気なアンジェリークだった。
さしずめ【ひとつも好みじゃない男】に対しても、博愛の精神をもっている子なんだろう。
だから俺はありがたくその親切を受け入れるべきなのだと判断した。

ちょっと赤くなりながら、口を開けて・・・パクリ・・・と。

―――なかなかいい味の冷えた林檎だった。
だからポツリと声が出た。
「美味い・・・冷たくて・・・口の中が気持ちいい。」

そして―――俺はアンジェリークを見たんだ。

彼女は―――

天使みたいに笑った。天使の如く微笑んだ。
ちょっと八重歯が見え隠れして、子供のように純真に・・・

俺を覗き込むと、素早く手を出して俺の額に手を当てた。

「オスカー様の熱が飛んで行きますようにっ!」

彼女の手はひんやりしていて、とても気持ちが良かった。
俺は心底心が落ち着いた。

だから―――
恋してしまったらしい。完全に・・・
【ひとつも好みじゃない男】である俺が、無謀にも―――恋をしてしまった。
この笑顔を俺だけのものにしたいっ!!

アンジェリーク・リモージュが欲しくて・・・
欲しくて欲しくて欲しくて欲しくて欲しくて・・・・

俺はもうたまらなくなっていたんだ!!!








俺は決心した。
生まれて二十何年疑いもしなかった自分自身の容姿と性格。
それらがまったく利用できない相手を堕とす。
それは士官学校の剣術大会で宇宙一を決める大会前夜の緊張よりも、引き締まる思いだった。

少しばかりいろいろと考えた。
どうあっても長身は直せない。
整った顔を整形する事もはばかれる。
自信の無い男のフリなども断じて出来ない!!
俺は嘘は嫌いだからな。

こうなれば、お嬢ちゃんに変ってもらうしかない。

育成・・・?
女王試験・・・?

悪いが今の俺にはもう重要な事ではないんだ。
俺の頭の中は【アンジェリーク】でいっぱいなんだから。

ロザリアの誘いは全て丁寧に断り続けた。
彼女の方もとうとう諦めたらしい。いまやジュリアス様とラブラブ全快中だ。
申し訳ないが、俺は二人を心から祝福したぜ。
これでロザリアとのデートはなくなり、俺の日々はアンジェリークだけに捧げられるんだから。

ヘタな技巧は使いたくない。
ストレートで攻めなければ、それは一時期のものになってしまう。
俺が自分を偽ってお嬢ちゃんに接したって、長くは続かない。
きっとお嬢ちゃんは【小柄でチョコチョコ動く人。人を笑わす漫才師のような男】に心が動いてしまうに違いない。
そんな付け焼刃じゃダメなんだ。

(このまんまの俺を受け入れさせて見せる。必ず・・・堕としてみせるぜ、お嬢ちゃん)


朝―――
俺の一日は女王候補寮訪問から始まる。
彼女の朝食のデザートに、うちの達人パティシエが作った一品を持って行く。
(まずは<<腹>>から満たせて行く作戦だぜ)

食堂のマダム達は俺が行くと大喜びしてくれていた。心なしかメスのインコまでいい声で鳴いてくれている。
そうだ。俺は世の中の女性(及びメス)を喜ばせる為に、生まれて来た男なんだ。
きっと―――それをお嬢ちゃんにもわかって貰える日が来るはずだ。

「オスカー様・・・あの・・・いつもいつも・・・すみません。」
「何を言うんだ、お嬢ちゃん。俺はお嬢ちゃんが好物のお菓子や果物に満足して、忙しい試験の一日を始めてくれる事が望みなんだ。」
「はい、ありがとうございます。」

ああ・・・本当に可愛らしい笑顔だ。まるで俺が【ひとつも好みじゃない男】でなんかないと思わせてくれるように。
食べちまいたいくらいだな。

昼―――
さりげなく女王候補二人がランチを取る場に姿をあらわす。
彼女達は飛空都市で使えるチェックを持ってはいるが、実際お小遣いはいくらあったって助かるものだ。

「俺のおごりだ。お嬢ちゃん達は他のショッピングにお小遣いを使うといいさ。」

そう言って伝票を奪い取り、レジでチェックする。そのまましつこく居座らないのがコツだな。
しかもロザリアにも感謝されるので、アンジェリークにとっての俺の株は上昇する予定だ。
これも毎日ではイヤミなので、3日に一度というスパンで実行。

そして―――問題は夜だ。
これだけは本当に重要だ。

お嬢ちゃんの就寝時間は11時(だと、寮の職員に事前チェックしてある)。
部屋の明かりが消える頃、俺はお嬢ちゃんの部屋に電話を入れる。

「お嬢ちゃん・・・今夜もいい夢を見るんだぜ?・・・願わくば・・・その夢に俺が存在してくれれば嬉しい。」
「オスカー様・・・」

そしてお嬢ちゃんはいつものように、暗くなった部屋の窓を開ける。
寮の前に停車する俺の馬車を見つめるんだ。
俺は馬車の窓から、お嬢ちゃんに手を振り、お嬢ちゃんが窓から見つづける中、馬車を発車させて立ち去る。
これは毎晩実行した。

断じて言わせて貰うが、これは【ストーカー行為】なんかじゃない!
お嬢ちゃんが少しでもイヤな素振りを見せたら、俺は一切何もしないつもりだ(というか、他の作戦に切り替える予定)。

アンジェリークはいつも頬を染めて笑顔をくれる。
だから決してイヤがられてはいないはずなんだ。

【ひとつも好みじゃない男】の俺に対して、少しは興味も抱いてくれ始めているんだと思う(そうであって欲しい)。

―――そして、それを実行し続けて一ヶ月

ある日の曜日だった。
執務室にいた俺の前に奇跡が起こった。

お嬢ちゃんが・・・アンジェリークが訪ねて来たんだ。
試験始まって以来・・・初めて・・・だった。

俺は猛烈な感動に包まれていた。
彼女の言葉はこうだった。

「オスカー様、もしもお時間があったら・・・今日一緒にお出掛けしませんか?・・・本当にお忙しくないのだったら。」

ああ・・・アンジェリーク・・・
俺はもしも今――ジュリアス様に仕事を言い付かったら、あの方を気絶させて縛り付けてでも君を選ぶさ。
もしも―――女王陛下の命が下ったら、守護聖を返上してでも君を選ぶさ。

宇宙中から苦情が殺到したって―――俺には君しか見えないんだ。

「お嬢ちゃん、その言葉そっくり返すぜ。急に気が変ったなんて言葉はなしにしてくれよ。俺はきっと心臓麻痺で死んでしまうだろうからな。」
「やだっ!オスカー様ったら・・・そんな事ないです。私だって断られたらどうしようかって・・・ドキドキしてて・・・」
「断るだって?この俺がか?そんな事は天地がひっくり返ったって在りえない。安心しろよ、お嬢ちゃん。」

冷静に答えているつもりだが、俺の鼻の下はかなりだらしなく伸びきっていたかも知れない。

―――俺は
お嬢ちゃんの気が変らないうちにと、彼女の手を引っ張って外に連れ出した。
いつか来る日の曜日のデートを夢見て、綿密に練っていたデートコースに連れ出した。

午前中は庭園で質問デート。これは試験の一環でもあるからはずせない。なにやらお嬢ちゃんの質問は、俺のプライベートの事が多かった。もしかすると―――かなり俺という男に興味を持ってくれたのかも知れない。
【ひとつも好みじゃない男】としては、大成功だと言えよう。

昼食は丘の上のレストラン。
日の曜日のVIPルームは毎週押さえておいたから、二人だけの空間の確保は万全だった。
小楽団を用意させて、お嬢ちゃんにバイオリンとチェロを堪能してもらったりと・・・
無論これも毎週楽団を押さえていたから出来る技だ。

「私・・・こんなにして頂いて・・・感激です。でも・・・もっとエレガントなお洋服にすれば良かった。」
「そんな心配はいらないぜ。お嬢ちゃんのエレガントさは、そのキュートな瞳の中から湧き出ている。ファッションなんか問題じゃない。」

俺がそう言うと頬を染めて恥ずかしがったアンジェリーク。

そうだ―――エレガントな洋服を着られたら、俺の大好きな可愛い太ももが見られなくなっちまうじゃないか!
お嬢ちゃんの好みのミニスカは、俺の好みでもある。もっと贅沢を言えば、胸元なんかももう少し深めの襟ぐりで・・・(以下自粛)


俺は『はっ』となった。

今―――完全にお嬢ちゃんに欲情していた。
こんな明るい時間に―――上品なクラシック音楽と料理を前に・・・

俺はお嬢ちゃんの裸を想像して・・・!?

これでは紳士失格・・・騎士失格じゃないかっ!!

でも待て・・・
これは正統な男の欲求だ。
男を【その気】にさせる事はレディの証拠。
お嬢ちゃんはもう立派な女性だという事だ。

可愛くて食べてしまいたいと思った気持ちが、欲情に変るのは自然な事だぞ。別に俺がロリコンだとか、変態だとか言うわけじゃない。
―――しかし・・・俺は後悔した。

(私服でくれば良かったな。ぴっちりしたスパッツが非常にヤバイ状態だ)

本来ならそろそろランチタイムを終えて次のデートコースに行きたい時間だが、衣装と欲情の関係で俺は楽団に言った。

「もう一曲お嬢ちゃんにラブソングを捧げてくれ」と。

その一曲が流れる中、俺は身体を静める努力をした。

夜はロザリアと約束がある・・・というお嬢ちゃんを、寮まで馬車で送る。

「オスカー様、本当に本当に楽しかったです。こんなに飛空都市を楽しいと思った事はありません。オスカー様が一緒だから・・・なんですね、きっと。」
「お嬢ちゃん・・・」

そのいじらしい素振りと言葉に、俺の胸はキュンキュンと鳴る。【ひとつも好みじゃない男】の俺に対して、そんな言葉を投げかけるという事は、もしやお嬢ちゃんの美的センスが通常値に戻ったのかも知れない。それとも―――ルックスとは関係ないところで【俺】という男に惹かれてくれたのか・・・

どちらにしても、俺の心臓の鼓動は凄まじい爆音を奏でていた。

必ず―――時期を見て・・・と思っていた行動を起こしたい衝動に駆られた。
自制心はちょっとばかり効かなくなっていた。

俺はお嬢ちゃんの手を引いて・・・

唇を奪っていた。

想像した以上に柔らかな唇だった。マシュマロのようなそれは―――震えていた。
【ひとつも好みじゃない男】の俺とのキスを、お嬢ちゃんはどう受け止めるのか?
そいつはとても心配な事ではあったが、俺だってまだ―――若い男だ。
欲望の方が先立ってしまった。

びっくりして大きな瞳を更に大きくしていたお嬢ちゃんだったが、俺の不安をよそに・・・

お嬢ちゃんが―――目を閉じた。

(それは了解だと取ってかまわないのか?)

恐る恐る・・・だが確実に・・・俺はお嬢ちゃんの唇をこじ開けて、舌を滑り込ませた。
ファーストキスでいきなりこんなに濃厚にしてはマズイかも知れない。
けれど俺は思った。

もう少し大切に時間をかけて育みたいと思っていた関係だが、このキスでそれももう叶わない。
予定より早くキスにこぎ付けたからには、一気に押して行かなければならないのだ。
躊躇わせて考える時間など与えてはならない。

狭い馬車の中―――俺はお嬢ちゃんの身体を更に強く抱しめた。
呼吸困難になりそうなほど、唇を吸い尽くし舌を捕らえる。
俺の手はお嬢ちゃんの肩・腕・背中をさする。とどめは―――腰だ。

ぴくん・・・と跳ね上がったアンジェリーク。

感じて来てくれているのか?俺を欲しいと思いはじめてくれているか?
こんな【ひとつも好みじゃない男】のキスと愛撫を、受け止めてくれているのか?

アンジェリークがふと俺の首に両手を巻きつけてきた。
それは俺にとって【勝利】と取ってもいいのだろうか?

俺は唇を離した。そしてアンジェリークを見つめた。
トロリとした瞳。紅潮した頬。抜けきった力。
俺の知る限り―――これは夢中になっているレディの表情だ。

「アンジェリーク、俺は君の好みの男じゃないかも知れない。けれど・・・どうか俺を好きになってはくれないか?」
「オスカー様・・・あなたが好みじゃないなんて・・・私・・・」
「いいんだっ!わかっているんだ!それでも俺のキスに答えてくれるお嬢ちゃんを俺は尊敬しているんだ。」
「あの・・・オスカー様?」
「なるべく君のイヤがる態度は取らないよう努力する。自分を自負する事も今後一切止めるし、もしも気に召さないなら、いつか顔を変えたっていいとさえ今思っているんだ。」
「・・・・・・・・・?何のことですか?私さっぱり・・・」
「さあ、もう行った方がいい。ロザリアが待っているんだろ?―――だが忘れないでくれ。今度のデートの時は―――俺は歯止めが効かないかも知れない。あまりに悲惨な程お嬢ちゃんを好きなってしまったんだからな。覚悟をしてくれよ。」


きょとん・・・と圧倒されたように、アンジェリークが馬車を降りた。
俺は自分の寛大さに感心した。
普通なら御者がいようが何だろうが、ここで押し倒してたはずだ。狭いスペースだろうが関係ない。重なればひとり分なんだからな。
けれど彼女に考える時間を与える事も必要だ。愛の告白も済ませたし、あとはアンジェリークの気持ち次第だ。


女王試験だと言えども構うもんか。
次に二人だけで過ごす時は―――

(フィニッシュは俺のベッドだぜ、お嬢ちゃん)







絶好調の昇り調子だった俺のリズムが狂わされた。
お嬢ちゃんとの初めてのキスの翌日―――女王試験が終了してしまったのだ。

お嬢ちゃんをクドクのが忙しかった俺は、なんと育成の様子大陸の状態のチェックを怠っていた。
まさかこんなに早く試験が終わってしまうなんて・・・

しかも驚いた事に―――女王は俺のお嬢ちゃん―――アンジェリークだという。

(なんて事だ!!やっといい所までこぎ付けたのに―――彼女は高貴な位についてしまった!!)

俺はこうと決めたら相手が誰であろうと絶対にモノにする。
たが―――女王陛下となると―――話が別だ!!


一体どうすべきか・・・!!


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