会えない時間

挿絵・青空給仕様

 

旅程を急ぐ理由はいくらでもあった。

漸く全ての戦いが終わった今、戦いを伴にしてきた仲間たちは、皆それぞれに帰るべき場所に帰っていく。リンもまた、1日も早く領地キアランに戻らねばならない。

そのため、リンは港町バドンで自身の馬を調達した。

騎士のように馬に乗りながら戦闘するのは無理だが、移動するだけならリンも馬を操れる。旅の成員それぞれが馬を駆れると小回りも効くし、馬車を引かせるより馬の負担も少ないので、日々かなりの距離を稼げる。並足以上に馬を急がせれば、キアランまでの旅程をかなり短縮できる筈だとリンは考えた。お付の騎士たちには、元々、それぞれに戦いを伴にした愛馬がいる。

アトスの予見によると、ネルガルを倒した今も未来は予断を許さないらしいが、それでも当座の危機は回避された。となれば、ぐずぐずしている理由はなかった。

宿場ごとに馬を乗りつぶし取り替える程強硬な行程はとらなかったが、それでも、道中、馬にはかなりの早足を強いた。

だが、無理をすれば今日中にでもキアラン領に入れるという処まで来た時、リンは、敢えて手前の宿場町で宿を取ろうと言いだした。

ここまでかなり無理をして馬を急がせてきたから、少し休みたいと言って。

確かに馬たちには疲れがたまっているように見受けられたので、お付の騎士たちは素直に主君であるリンの言葉に従った。

公女の護衛として同行している傭兵・ラスも、黙って自分の愛馬を宿の厩に繋いだ。

 

夜半過ぎ、リンはそわそわと落ち着かない気持で、宿の自室にいた。

つい、息を殺し、耳を澄ましてドアの外の気配を探ってしまう。

来てくれるのはわかってる、それでも1分でも1秒でも早く来てほしい。特に今夜は…

「馬鹿…ラスの馬鹿…早く来て…早く来てくれないと、私…」

夜、皆が寝静まった頃を見計らい、ラスはリンの部屋を訪ねてくれる。戦いの最中に出会い、抗い難く惹かれあい、二人は互いに求め合って情を交わした。旅の途中も可能な限り褥を共にしてきた。それは野営の天幕内の時もあれば、公子のうちの誰かの居城の1室の時も、今のようにその土地土地の宿屋の時もあった。屋内の寝台の上で情を交わせるなら、恵まれた方といえた。

夜毎、心の欲するままに求め合い、求め合うほどに互いに想いは募っていった。血で血を洗う戦いの前の不安を鎮めるように、また、戦いの後は互いの無事を確かめ喜び合うため、二人は肌をあわせ温みを交わしあってきた。そして、ここ暫くは、まもなく訪れる暫しの別れを惜しむために肌を重ねている…少なくともリンの主観では、そうだった。

ラスは、自らリンの帰途の護衛を申し出てくれた。故郷に帰る日を遅らせてまで、リンの旅に同行してくれた。

リンの道中を守り無事領地に送り届けたいというのが第一義であることは間違いなく、それはとてもありがたいことだったが、リン自身は、ラスとの別れの刻限を少しでも引き伸ばせることが嬉しかった。

ラスも、そう思ってくれているのなら嬉しいのだけど…もし、そうなら、少しでもいい、早く来て…だって、今夜を最後に、暫く二人では会えなくなるんだもの…1分でも1秒でも長く一緒にいたいのに…

でも…リンの心に、ふと不安が差し込む…もしかしたら、ラスは、私がこんなにラスを好きだなんて、こんなにラスを待ち焦がれてるなんて、思いもよらないのかもしれない…だって…私、ここまで、ずいぶん急いで来てしまったから…

お祖父さまの容態も気がかりだったし、私のためにサカに帰る日を延ばしてくれたラスに申し訳なかったから…ラスも早くサカに帰りたいんじゃないかと思って、早く帰してあげなくちゃと思って旅程を急いだ。でも、そのせいで、ラスは、私がラスと少しでも長く一緒にいたいと思ってるなんて、思いもよらないのかもしれない…

旅を急いできたことに僅かに後悔の念が心をよぎった。その時、張り詰めていた神経に微かな、だが、よく知った気配が触れ、リンは、はっと顔をあげた。

控えめなノックの音が2つ鳴る前に、リンは扉を開けていた。次の瞬間、自分の頬は硬く滑らかな胸板に苦しいほどに押し付けられていた。

 

宿の部屋はランプの投げかける仄かな灯に彩られていた。ランプの油が爆ぜるジジっという音に重なって、時折、粘性のある水音が部屋に響く。

リンが、寝台の端に腰掛けるラスの前に跪いていた。ラスの脚の間に膝をついて身をおき、股間に顔を埋めていた。むしゃぶりつくようにラスの男根を咥え、嘗め回し、音を立てて先端を吸っていた。リンの手は、ラスの屹立した男根を恭しく捧げ持つように添えられている。時折、ふぐりをいとおしげにやんわりと揉みもする。唇は、一瞬たりともラスの男根から離れることはない。リンは一心にラスへの献身に没頭している。

ラスは、リンの望むがままに己を預け、慈しむようにリンの髪を撫でていた。リンの唇の熱さ、ぬめぬめと己の性器にまとわりつく悩ましい舌の感触に陶然としながらも、若干戸惑いも感じていた。

いつもなら…ラスは思う…リンの部屋を訪れるや否や、どちらともなく互いに引き寄せあうように固く抱きしめあう。競うように互いの着衣をむしりとり、全裸になる間も待たずに、寝台にもんどりうつように倒れこむ。幾度も幾度も角度を変えて唇を合わせ、舌を弾きあう。全身くまなく互いの肌を手でまさぐりあう内に、ラスの唇はリンの唇から離れ耳朶から首筋に押し当てられ、乳房の稜線へと降りていき、それに連れてリンの唇からは熱い吐息と甘い囀りが絶え間なく漏れ出すようになる。ラスは、リンに声を上げさせる行為に更に没頭していく…二人が心の欲するままに動くと、自然とこんな風になった。

今夜も、互いに着衣をもどかしげに解いたまでは同じだった。ラスが、抱きしめあい口付けあったまま寝台にリンを横たえようとすると、リンが抵抗するかのように身体に力をいれた。

不可解に思うラスに、リンの方から改めてラスに口付け、舌を絡めてきた。

一通り舌を絡ませた後、リンが、濡れた瞳と濡れた声音で「ラスはじっとしていて?」と訴えた。

リンの願いを聞くことはいつでもラスにとって喜びだから、不思議に思いながらも、言われるままにした。

すると、リンはラスの首に腕を回し、きゅーっと抱きついてから、いつもラスがリンにしている口唇での愛撫をラスの身体に再現し始めた。

耳朶の輪郭を食み、耳孔に舌を差し入れる。逞しすぎるほどの首筋にかぶりつくような口付けを落とし、鎖骨に歯を立てる。唇で胸板をなぞり、極自然にラスの乳首を口に含むと、少したどたどしく舌を回して吸い始めた。

同時に、リンは既に固く勃起していたラスの男根をやんわりと握りこんだ。濡らしてはいないので、リンは手でしごいたりはせず、男根の存在感を改めて確かめるように、じんわりと包むように握った。掌にラスのものの脈動や滾る熱さを染みいらせているかのようだった。

そして、一通り胸板への愛撫を終えると、リンは極自然に身体を滑らせて床のラグの上に膝をつき、大事そうに触れていたラスの男根を一度解放した。ほぼ垂直に近い角度で天を向いて屹立する男根を前に、やるせなげな吐息をつくと、その逞しさを讃えるような、敬虔で控えめな仕草でそっとその先端に口付けた。

「ラス…好き」

その口付けと言葉が合図であったかのように、リンの愛撫が勢いづいた。

ラスの男根のありとあらゆる処に口付けをくまなく落とす。幹の部分を下から上へと丁寧に舐めあげ、張り出したカリを尖らせた舌先でめくりあげる。そのまま、雁首全体に舌をくるくると回し、鈴口に舌を差し入れて、先走りをちゅっと吸った。ラスは思わず息を飲んだ。

滑らかな先端を舐め回しながら、流れるように自然に、リンは雁首から幹の中ほどまでを口腔に収めていった。

熱く湿った口腔内に収められ、ぬめぬめとした舌が幹にあてがわれる感覚が悩ましかった。と思う暇もなく、リンの唇が上下して幹をすべり、雁首の境目をリズミカルに刺激し始めた。

既にリンの唾液にまみれて滑らかになっている男根の上を、柔らかな唇が茎全体を包み込むように上下に滑っている。口腔内に収めたまま雁首に舌を回される。得もいわれぬ心地よさに、深い吐息をつく。鈴口に舌を差し入れられ、ちゅくちゅくと先走りを吸われる感覚に心がざわめく。深々と喉の奥まで咥え込まれて先端を口蓋で擦られた時は、思わず、呻き声が零れた。

リンがラスの声に気付いて上目遣いにみやった。

「ラス、気持いい?」

「ああ…だが、もう充分だ…」

ラスはリンの頤を指で摘んで、己の男根をリンの口元から外そうとした。

リンの責めはある意味容赦がなかった。もちろん商売女のような卓越した技巧ではない。が、今夜のリンの愛撫は、いつもより一途でがむしゃらに思えた。ひしひしと胸に迫ってくるようなリンの懸命さに、このままでは程なく口腔内で果ててしまいそうだと思った。そして、それはラスの本意ではなかった。

だが、男根を外されたリンは、一瞬、宝物を取り上げられた子供のような寂しそうな顔をし、心もとなげに視線を泳がせた。

「や…ラス、私、もっとラスにしてあげたい…ラスが好きなんだもの、ラスに私の気持、わかってもらいたいんだもの…」

「もう、充分すぎるほどだ…おまえの俺への想いは、痛いほど伝わってくる…」

「ほんと?ほんとに?」

リンの声に余裕の無さというか…切羽詰った必死さが伺われ、ラスは不可解な気持がより強くなった。

「どうした?何故、そんなに必死になる?」

「だって…明日になったら…キアランに戻ったら、わたしたち暫く会えなくなる…」

「ああ…」

「私、ラスと、お別れするのが辛い…一時のことだとわかっていても辛い…本当は、1日でも1時間でも多く一緒にいたいの…」

「ああ…」

「でも、私…旅を急いでしまったから…ラスと少しでも長く一緒にいたいと思っているのに、お祖父様の容態が気がかりで、気が急いていたし…ラスを、早くサカの地に返してあげなくちゃとも思ってたから…だから、ラスは、私がラスと少しでも長く一緒にいたいっていう気持を知らないんじゃないかと思って…私が、こんなにラスを好きで…毎晩、ラスが来てくれるまで、どれほどドキドキしてラスを待ち焦がれているか、ラスは知らないんじゃないかと思って…だから…お別れの前に、私がラスを好きな気持を精一杯伝えておかなくちゃと思って…」

「リン…」

ラスは、リンの手を取るや、ぐいと力任せに抱き寄せ、裸の胸に思い切り強くかき抱いた。

「大丈夫だ、わかっている…おまえの気持ちは…おまえが、旅を急いでいた訳も、おまえが今宵、宿を取った訳も…」

「ラス…」

「別れを惜しむ時間が欲しくても、俺から言い出すことはできない。だから嬉しかった…。おまえが共に過ごす時間を作ろうとしてくれたことが。おまえも俺と同じ想いなのだと知って…。そして、おまえがそれほどまでに俺を待ち焦がれていてくれたことも…とても嬉しい。俺もまた、おまえに焦がれてやまぬから…」

「ほんとに?ラスも同じ気持?ラスも嬉しいと思ってくれてたの…?…よかった…」

安堵したせいか、リンは、鼻の奥がつんとした。

「好きなんだから…私、ラスのことが本当に好きでたまらないんだから…」

『本当にわかってくれてる?』とでも言いたげに、リンは上目遣いにラスを見上げ、少し拗ねて甘えるように訴えた。

「わかっている…」

ラスは、この上なく優しげな笑みを口元に浮かべると、リンを抱きしめたまま身体を横に捻って寝台に倒れこみ、リンを敷布の上に押さえつけた。

「だが…きっと、俺の方がずっとおまえを好きだ…」

「ラス…」

「おまえに何でもしてやりたい。俺にできること、おまえの望むこと、全て。暫く会えなくなるなら、尚更…俺もおまえに、想いの全てを伝えておきたい…」

「ああ…ラス…」

「存分に受け取れ」

リンの返答は待たず、ラスは噛み付くように唇を塞いだ。

 

指を絡めあわせて敷布の上にリンの両手を押し付けた。リンの身体は自らの体躯で押さえ込んで自由を奪った上で、ラスは激しく執拗なまでにリンと口付けを交わす。生き物のように互いの舌が自在に絡み合う。飲み込みきれない唾液が溢れて喉を伝わる。

深い口付けを繰り返すうちに、ラスは自然と身体ごと唇を下方にずらしていく。リンの首筋から胸元まで満遍なく舌を這わせ、所々できつく吸う。

そのまま、形の良い乳房に顔を埋めた。乳房にほお擦りするようにたわわな感触を楽しみながら、ラスの唇は、尖りきったリンの乳首を捕らえる。すぐさま、舌で弾き転がす。

「あっ…」

ラスの唇が触れた途端、乳房の先端から、痺れにも似たやるせない快楽が走った。

ラスの舌が、自分の乳首を舐め転がし、舌先で弾いている処が目に入り、その淫らな眺めにリンは尚更昂ぶってしまう。

「あっ…ラス…ラス…」

うわ言のようにラスを呼ぶと、ラスは、瞬間、優しい口付けを落としてから、再びリンの乳首を口に含んだ。乳首の根元に極軽く歯を立てながら、舌で左右に弾く。

「あんっ…だめっ…噛んじゃ…あぁっ…」

角度を変えて甘噛みされるたびにぞくりと戦慄にも似た快感が走り、リンの身体が震える。

「なら、こちらの方がいいか…?」

ラスは、そういいながらも甘噛みはやめず、乳首を舌で転がすかわりに、歯を立てたまま緩急自在に吸い始めた。もちろん、両の乳首を交互に満遍なく。

「あっ…あん…ふぁっ…」

乳房の先端から途切れなく走る甘い痺れを、リンは夢中で貪る。手を縫いとめられているので、ラスに抱きつけないのがもどかしい。

「ラス…好き…好き…」

「俺も…好きだ…」

ラスは一際きつく乳首を吸い上げると、絡めていた手を解き、リンの引き締まった身体を一度ぎゅっと抱きしめた。リンも無我夢中でラスの体躯を抱きかえす。が、すぐさま、リンはくるりと身体を反転させられ、うつぶせにされた。すかさず、ラスが背中にのしかかってき、リンのうなじに口付けた。同時にラスの手はいささか強引にリンの股間に差し入れられた。

「あんっ…」

花弁をかきわけるまでもなかった。豊かに湧き出る愛液は、花弁から溢れて既に太腿まで濡らしており、リンの内股はとろとろに溶けたようになっていた。

「溢れている…」

感嘆したように呟きながら、ラスは源泉の豊かさを確かめるように、つぷりと指で花弁を割った。差し入れた指先を、熱い肉の坩堝が反射的に締め付けてきた。その締め付け具合を楽しむように、そして、愛液の熱さとぬめりを指に味あわせるように、ラスはゆっくりと花弁の合わせ目をかき回した。くちゅり、ちゅぷりと淫らな水音が響く。

「やぁっ…だって…ラスが好きだから…」

リンが、うつぶせのまま、いやいやをするように首を振った。

「ああ…俺も嬉しい…」

ラスは指で秘裂の浅い部分をくじりながら、リンのうなじから肩口へ、そして背筋へと口付けを落としては、舌をつーっと滑らせていく。

リンの身体中に口付けてやりたかった。唇の触れない処など無い程に。だから、うなじに唇を押し当て、徐々に背筋へと舌を這わせていく。その間も、ラスの指は休みなくリンの花弁を愛撫している。潤沢に溢れかえる愛液は、リンが自分を欲っしてくれる証だから、その熱さ豊かさを味わい確かめるように指で秘裂をじっくりとかき混ぜた。

この豊かさは、リンが俺を求める証、リンが俺に与えてくれる何よりも嬉しい恩賞。

そして、この証は全て俺のもの、俺だけのものだ。眩暈がするほど、それが嬉しい。

俺は、この喜びを心行くまで味わい尽くしたい…。痛切に思う。

ラスは、身体をずらしていき、先刻のリンと同じように床に跪いた。リンの腰を両手で支え僅かに持ち上げさせる。ラスの眼前に、ふっくらと豊かなリンの花弁がはっきりと晒された。愛液にまみれて濡れ濡れと光り、何かを待ちわびるように微かに入り口をほころばせてひくつく花弁がラスの目を惹きつけ、誘う。ラスは誘われるままに、花弁の合わせ目に舌を差し入れた。

「あぁっ…」

リンの背が綺麗な弧を描いて反った。ラスの舌に秘裂を犯されているのかと思うと、たまらなく恥ずかしい、なのに、同時に歓喜に心が震えた。

ラスの舌は複雑に重なるリンの媚肉を掻き分ける。花弁全体に唇を押し合て愛液をすする。同時に手指も休まず花弁の合わせ目を優しくなぞる。はちきれんばかりに充血し、ぷっくりと膨れたリンの肉芽が指に触れた。すぐさま、その肉芽を指先で軽く捻り、指の腹で転がした。

「あぁんっ…」

やるせない快楽が走り、リンが、くっ…と頭をあげた。が、すぐに力なく敷布に突っ伏してしまう。

その間に、ラスの指は器用に蠢いて肉芽の莢を剥いてしまう。敏感な肉珠が剥き出しになる。触れるか触れないかくらいの力加減で、肉珠に指先をあてがった。軽く触れただけなのにリンの身体がびくんと震えたのがわかった。

その期待に応えるように、ラスは極々軽い力で、ゆっくりと円を描いて肉珠の先端を指の腹で転がした。

「ひぅっ…」

途端に、リンの身体が雷撃に打たれたように無秩序に跳ねた。

実際、電撃にも似た痺れるような鋭い快楽が全身を走りぬけ、リンの頭の中を真っ白にした。

だが、当然その衝撃は1度で終わらない。ラスは、舌を秘裂に抜き挿ししながら、力加減に気をつけて尖った肉珠をくすぐるように指の腹で転がした。ラスの指の動きにあわせ、リンの身体は敷布の上で激しく乱れ踊った。

「ひぁっ…ああぁっ…やっ…溶けちゃう…痺れて…溶けちゃうのっ…」

ラスが指を回すたびに、リンの身体は痛々しいほどびくびくと跳ね回った。白い背中が妖しくのたうち、リンは何度も頭を振っては、敷布に突っ伏してしまう。だが、指先で肉珠を擦るたびに、その刺激に秘裂がきゅうきゅうと締まるのがラスにはわかる。舐めとっても舐めとっても、愛液はとめどなく溢れてきて、ラスの唇を潤す。

「やぁあっ…だめぇっ…もう…もう…」

「リン…まだだ…」

「いや、いや…もうダメ…許して…お願い…」

リンの声は震えていた。敏感すぎる先端に途切れなく与えられる快楽は鋭すぎて、息つく暇もなくて、苦しくさえあった。先鋭すぎる快楽より、もっと確かな充実が欲しくて、頭が変になりそうだ。

「欲しいの…ラスが欲しい…ラスがいいの…」

「わかった…」

ラスは立ち上がると、後背からリンの腰を支え、僅かに持ち上げた。固く張り詰めきった男根の先端を花弁の入り口にあてがう。すると、リンの腰がじれったげに揺れた。

「や…早く挿れ…あ…あぁ…」

強請る言葉を最後まで言わせず、ラスはリンの花弁にゆっくりと己を沈み込ませていった。

リンの望みには即座に応えてやりたい、だが、暫しの別れを惜しむ気持はラスもリンと同じほどに強い、だからこそ、一気に貫いてしまうことを惜しむ気持が働き、ラスは殊更に時間をかけて挿入を果たしていく。ゆっくりとリンの花弁を押し開いて、己の怒張を飲み込ませていく。自分自身が、熱く柔らかな媚肉に少しづつ包み込まれていく。きゅう…と自分を締め付けてくる感触にラスは陶然とする。

ラスの熱く硬い男根にじわじわと押し広げられ、胎内が埋め尽くされていく感触にリンの意識も灼ける。だが、ラスのじれったいほどにゆっくりとした動きに、リンの飢餓感はより煽られもする。苦しいほど一杯に満たして欲しい。早く、思い切り、ラスを感じさせて欲しい。リンの身体は、ラスがこれでもかとばかりに与えてくれる底なしの快楽を覚えているから、我慢が効かない。

「や…ラス…もっと…来て…」

もどかしげにリンの腰が動く。ラスの腰に、リンは自らの臀部を押し付け、ラスのものをより深く咥え込もうとするような動きさえみせた。

「意地悪しないで…」

リンが甘えるような、泣きだしそうな声でラスに懇願する。

「リン…」

ラスは深く心を打たれる。愛する女に、これほどまでに熱く切実に求められる。これ以上の喜びなどあろうか、これ以上の充実など知るべくもない。この求めに渾身の力で応えてこそ、男の本懐だと思う。

先端が奥に達する少し手前で、ラスは怒張を勢い良く引き抜くや否や、一転、全身の力を込めてリンの最奥を思い切り突き上げた。

「ひぁっ……あぁああっ…」

突然、自分の内部が掻き出されるような狂おしい感触と、続けざまのあまりに深く重い一撃に、リンは一瞬気が遠くなった。身体は激しく突き上げられた勢いで前にのめった。

ラスはリンの身体が逃げぬようにがっしと腰を抱えなおすと、リンの締まった臀部に勢い良く腰を打ちつけ始めた。抉りこむように突き上げる度に、パンパンと肉を叩く小気味良い音が響く。

「あぁっ…はっ…やぁあっ…」

ラスが意図したわけではなかったが、結果として焦れに焦らされた挙句、出し抜けに与えられた苛烈ともいえる突き上げにリンの意識はあっという間に沸騰した。急峻な角度で屹立するラスの男根は、長いストライドでリンの背側の膣壁を入り口から最奥まで激しく容赦なく擦りあげる。張り詰めた先端は、リンの子宮口を力強く打ち据えるように叩く。打ちつけられる度に、ずんっ…と身体の奥深くに重苦しいほどの快楽が響きわたる。膣壁をきつい角度で擦られるたびに、狂おしいほどの愉悦に心が灼ける。絶え間なく、激しく力強い快楽の波が次から次へと押し寄せ、リンを圧倒する。

「はっ…ああぁ…すごい…擦れて…奥まで当って…あっ…ああぁっ…」

リンの手は、虚しく寝台の敷布をかきむしる。

擦られて、かき回されて、たたきつけられる快楽の奔流に抗えない。自分が押し流される…苦しいほど、気持よすぎて…自分が破裂しそう…

「リン…いいか?…」

「いいっ……いいのっ…あっ…はぁああっ…」

全身を貫き圧倒する官能に意識は焼ききれる寸前だった。

いい…気持よすぎて…おかしくなる…弾け散りそう…でも…でも…だからこそ…

「ラス…ラス…」

リンは飛び散りそうな意識をぎりぎりで繋ぎとめ、必死に半身を捻ってラスの方に顔を向けた。

「…ラスの顔、見たい…ラスが見たいの……私も…ラスのこと、抱きしめたい…」

ラスを求めて、すがるように、しなやかなリンの腕が伸ばされ、ラスの頬に触れようとした。

「っ…リン…」

ラスは弾かれたようにリンの背に覆いかぶさり、夢中で口付けた。リンはその口付けを解くまいと、半身を捻ったままの姿勢でラスの頭を片手で抱きかかえようとする。その手は嬉しそうにラスの頬に添えられる。

リンには苦しい体勢だった筈だ。なのに、ひとしきり口付けを交し合うと、リンはとても幸せそうな笑みを浮かべ安堵したような吐息をついた。そして、力尽きたようにくたくたと寝台に沈み込んでしまった。

ラスは、そんなリンに後背から覆いかぶさり、ぴったりとその身を包み込むように、羽交い絞めに思い切り強く抱きしめた。

「リン……俺は、おまえの望みを吐き違えていたのかもしれない…すまない…」

リンの求めに応えたかった。思い切り乱れさせてやりたかった。リンは後背から貫かれると、激しく乱れる。だから尻を抱えて思い切り激しく突き上げた。可能な限り深い快楽で酔わせることが、俺の想いの証だと思った。

俺は男だから、ずっと傭兵だったから…結果が何よりも重要だ。だが、女は…リンは、それ以外の物も大事なのかもしれない。快楽さえ十全ならいいというものではないのかもしれない。苦しい姿勢でも、自分に口付けを望むリンに…俺の顔を見、自らも俺を抱きたいと言うリンを見て、そんな気がした。会えない時間を前にして、俺を見たいといったリンの想いに心が震えた。

そして、俺もまた、リンの姿を、リンの悦びに蕩ける顔を脳裡に焼き付けたいと、確かに思う…。

ラスは一度リンから己の怒張を引き抜いた。繋がりが解けるや、リンが糸の切れた人形のように敷布に突っ伏しかける。だが、ラスはリンをすかさず抱きとめて、その身体を仰向けに反転させた。

「どうしたの…?ラス…」

リンが欲情にけぶる瞳で不思議そうにラスを見上げた。ラスの言葉と行為を中断した意味がよくわからぬようだった。でも、ラスと目が合うと、リンは心の底から嬉しそうににっこりと微笑んだ。

「でも、ラスの顔が見えると嬉しい…」

そして、リンは、ぎゅっとラスの身体にしがみつく。

「こうして、ラスをぎゅっとできると、もっと嬉しいの…」

「リン…」

ラスは、リンに負けじとばかりに、リンの身体をきつく抱きしめた。

「俺も…おまえの悦びに咽ぶ顔を見ていたい、おまえと隙間なく抱きあい、繋がりたい…」

ラスはリンを抱く手に力をこめ、リンの身体を抱き起こした。そして、自分は寝台の端に腰掛けると、リンを己の太腿をまたがせる形で、リンを自分の上に乗せた。

「こうして抱き合えば…ずっと互いを見ていられる」

「ん…ラス、嬉しい…」

ラスは、リンに一度口付けてから、その身体を僅かに持ち上げた。リンも、ラスの男根の根元に手を沿え、己の秘裂に導きやすいよう誘導しようとした。

ラスの性器は自らの愛液でつかみ所が無いほどぬるぬるだった。でも、一刻も早くもう一度繋がりたい、そんな焼くつくような気持で頭が一杯で、リンは、豊かすぎるほど溢れかえる自分の愛液を恥らう余裕もなかった。それほど無我夢中でラスが欲しかった。花弁の入り口にラスの男根の先が触れた。思わず期待に息を飲んだその瞬間、ラスが、いきなり思い切り腰を突き上げた。

「はぁああっ…」

衝撃にリンの身体が一瞬のけぞりそうになったが、ラスは、リンの背をぎゅっと抱きとめ、二人の間に隙間ができることを許さなかった。そのまま、先刻と同じように、ラスは素早く力強いリズムでリンの胎を抉り始めた。

「ひぃんっ…」

リンがラスにより強く、ぎゅっとしがみついてきた。

「…ラス、ぎゅっとして…思い切り、ぎゅぅってして!」

「ああ…」

折れんばかりに力をこめて、ラスはリンの身体を抱く。リンが、苦しそうに息をついたのがわかったが、それでも腕の力は緩めない。

「ラス、好き…好き!」

「リン…俺も…愛している…」

言うや、ラスはリンの唇を捕らえ深い口付けを仕掛ける。リンとの口付けが解けないよう、リンの身体が突き上げに浮かび上がらないよう、ラスは、しっかとリンを抱きしめた上で渾身の突き上げをくりだす。力を逃がしようのないリンは、ラスに自分が脳天まで一直に貫かれているように感じ、一瞬、息が止る。

「んんふぅうーっ」

リンの綺麗な眉が、切なげに苦しげにひそめられる。ラスは、口付けながらリンのその表情を瞳に焼き付ける。

おまえに俺の想いの丈を伝えたい、おまえの想いに応えたい、おまえの悦びに蕩ける顔が見たい。

もっともっと、乱してやりたい、我を失わせてやりたい。こうして互いの温みを感じあったまま、互いを見つめあったまま。

ラスは、リンの腰をしっかと抱きなおすと、より深い密着を意図して、繋がったまま、ぐりぐりとえぐるように腰を回す。秘裂の最奥を男根の先端で小突かれ擦りまわされる狂おしさに、たまらず、リンは激しく頭を振って口付けを解いた。

「ひぁあっ…やっ…あっ…あぁああっ…」

甲高いさえずりが喉から迸った。

「ラス…私…もう、もう…ダメ…私……ぁあっ…」

「ああ…そのまま…行け…」

「や…一緒がいい…来て…ラスも一緒に…」

リンが、ラスの肩にきりりと爪を立てた。リンの全身が緊張して張り詰め、ふるふると小刻みに震える。リンの秘裂も同様に震え、今まで以上にきつい締め付けをラスにかけてくる。

「くっ…」

射精の衝動が急激に膨れ上がる。一瞬、まだ、手綱を引き絞るため、律動を緩めるかとも考えたが、すぐ翻意した。今は、同時に駆け上がり、登りつめることこそが、至福だと思えた。

「俺も…注ぎ込みたい。おまえの中に…俺のありったけを……」

「んっ…頂戴、一杯頂戴!欲しいの…ラスが欲しいのっ……」

ラスは、リンの腰をしっかり抱きかかえ、今まで以上に素早く容赦ない突き上げを放った。リンを高みに押しやることだけを考える。その集中はすさまじかった。

「やっ…はぁっ…イ…ク…もぅ…あぁっ…」

叩きつけられるように与えられる苦しいほどの快楽が、リンをはちきれんばかりに満たし、溢れ、そして破裂した。

「あぁああぁっ…」

リンの媚肉が細かく痙攣しながら、ラスの男根を隙間なく絞り込むように蠕動した。男根を奥に奥にと誘い込むように、柔襞がうねる。

その蠕動に無理矢理逆らうように、ラスは、止めと言わんばかりの一突きを渾身の力で打ち付けた。最奥に当った。自身が一瞬、膨れ上がるような錯覚の直後、リンの一番深いところでラスは思い切り爆ぜた。熱いものが、なだれ込むようにリンの中に迸った。

瞬間、リンと交じり合い溶け合うような錯覚に襲われ、酔いしれた。

リンはラスの精の奔流を受け止め、その勢い、その熱さを全身に染み入らせるように、軽く瞼を閉じ、小さく震えていた。そして、ゆっくりと倒れこむようにラスに身体を預けてきた。何かを語りかけるような、微かに笑んでいるような不思議に満たされた表情をしていた。

「リン…」

つい今しがたまで、惨い程容赦ない突き上げを放っていたとは思えない優しさで、ラスはリンの頤を摘んで口付けた。

 

「…はぁ…はぁ…」

リンは力なくラスの肩に頬と腕を預けていた。ラスの太腿に乗せられ、ラスの腰周りに自分の脚を巻きつけたまま、交合も解いていない。解く気もない。このままずっと繋がっていたいとさえ思う。ラスも、リンが身体を預けるままに、優しく抱きとめてくれている。繋がっている部分から、ラスの精とリンの愛液の混じったものが収まりきらず溢れかえって、ぐっしょりと敷布を湿らせている。

と、リンが快楽の余韻にぽーっとしながらも顔をあげた。ラスの頬を両手で包み込んで、じっとラスの顔を見つめた。荒い呼気に肩はまだ上下していた。

「リン…どうした?」

自分を見つめるリンにラスが問いかける。

「ラス…ラスの顔をずっと見ていたいと思ってたのに…ずっと見ていようと思ってたのに、何にもわからなくなっちゃったんだもの…せっかく向かい合って抱きしめてくれてたのに…」

リンは、再度、ぽすんとラスの胸に頬をもたせかけた。

ラスはほのかに微笑んでリンの髪を撫でる。

「そうか…俺は…おまえの顔をずっと見ていた…」

一呼吸おいてから、ラスが静かに付け加えた

「俺は…おまえが…おまえが悦びに蕩ける顔がとても綺麗だと思った…」

「や……恥ずかしい…」

リンがラスの胸に顔をすりつける。

「でも、嬉しい…」

小さく呟いてから、リンは顔をあげてラスの顔を真っ直ぐに見つめた。そして、切々と訴え始めた。

「ラス、お願い、忘れないで…私を綺麗だと思ってくれたのなら、どうか忘れないで…会えない間も、私のことを…私も忘れないから、あなたの顔、声、笑顔…ラスの温もりも、匂いも、肌も…全部焼き付けておく。だから、ラスも、私のこと忘れないで…」

「リン…」

ラスは改めてリンを優しく、だが、しっかりと抱きしめた。

「大丈夫だ。おまえの面影が薄れるほど、おまえが俺を思い出せなくなるほど、会えない時間を許す気など、俺にはない…」

「…?…だって、次は…今度はいつ会えるか…私、いつ、草原に帰れるかはわからない…」

頭でわかっていても、自分で選んだことでも、やはり改めて言葉にすると辛い。泣きそうになる。

肩を震わせるリンの気を鎮めるように、ラスはリンの髪を撫でる。

「ああ、だから、俺から会いにくる」

「…ラス?だって、あなたはサカに…クトラに帰る…」

「ああ、1度クトラに戻る。そして、族長の息子として務めを果たしたことと…おまえという伴侶を得たことを親父に…族長に報告しなければならない。だが、その後は…俺は自由だ」

「?」

「俺がすぐクトラの跡目を次ぐ必要はない筈だ。だから…一度報告に帰ったその後、俺は傭兵に戻る。リキアは諸侯が割拠している。ベルンの動きも侮れない。国境なら傭兵の口はいくらでもあるだろう…」

「ラス…ラス、それって…」

リンが零れそうな瞳を更に大きく見開いた。

嘘…ラスの言っている言葉の意味って…まさか、そんな、信じられない。私、自分に都合のいい夢を見ているんじゃないの?

「ラスは…しばらくしたら…リキアに戻ってくるの?戻ってきてくれるの?」

「ああ、リキア諸侯の領地からなら、どこからでもキアランまで大したことはあるまい。たとえ国境でも、サカとリキアを往復するよりよほど容易い」

ラスは、リンの瞳を真っ直ぐに見据え、安心させるように語り掛けた。

「だから案ずることはない。おまえが老侯爵の傍を離れられないのなら、俺がおまえに会いにいく。おまえは、ただ、笑って俺を迎えてくれればいい」

「ラス……私、夢見ているみたい……ラスがそんなこと、考えてくれてるなんて、ちっとも知らなかった…何にも言ってくれないんだもん、ラスったら…いつも私を驚かせて、こんなに喜ばせて…」

くすんと、リンが鼻を鳴らす。顔は泣き笑いだ。

「ラス、ありがとう…私のわがままで、ラスに大変な思いばかりさせてるのに…なのに、ラスは、こんなに私を幸せにしてくれて…こんなに一杯、私を喜ばせてくれて……」

「大変なことなど何もない」

ラスが静かにリンに口付けた。

「俺が、おまえの喜ぶ顔がみたい、それだけだ。それこそが俺の喜びだから…」

「ラス、そんな…私こそ、私の方こそあなたから幸せを…喜びをもらっているばかり…私も、ラスに喜んでほしい、幸せだと思って欲しいの、ほんとよ?なのに、私ったら、ラスに幸せにしてもらうばかりで…」

「俺は、十二分におまえから幸せをもらっている。俺を好きだと言ってくれる。俺の顔を見たいと言い、俺との別れに心震わせ、俺との再会の約束をこんなに喜んでくれる。その度に、俺はこの身が暖かいもので一杯になる。おまえに会うまで…俺はこんな喜びを知らなかった…」

「ラス…」

「そして何よりも、おまえの嬉しそうな笑顔が、俺には無上の幸せとなる。だから…リン、おまえには笑っていてほしい…」

そして、ラスは、少しだけ躊躇ってからこう付け加えた。

「…明日も…おまえが侯爵の館に入る時、俺がおまえの許を辞する時…できれば、俺を笑って送り出してほしい。おまえの笑顔を胸に、俺はサカへと旅立ちたい」

「ラス…」

リンがラスにぎゅーっとしがみついた。

「ん…約束する、約束するわ、私、ラスに泣き顔は見せない」

リンは、この時心を決めた。

明日だけじゃない、私、できる限り、ラスに暗い顔、辛い顔は見せないようにしよう。私の笑顔を好きだとラスが言ってくれるなら、私の笑顔でラスが幸せになってくれるなら…

もしかしたら、我慢できなくて少し泣いちゃうかもしれないけど…ラスの前だと、私、不思議なほど、真っ直ぐな気持が表に出てしまうから…でも、できる限り笑ってみせる。泣きながらでも笑ってみせる。それが、ラスへの、私の精一杯の感謝と情愛だと信じて…。

「無理は…しなくていい」

「無理じゃない、だって、私、とても幸せだもの。ラスが…大好きな人が、こんなに私を想ってくれてるんだもの…そして、私も大好きなラスを、幸せな気持にしてあげられるんだもの…」

そう、きっと、ラスも同じ気持なんだわ。私が喜ぶから、ラスは戻ってきてくれる。ラスが喜ぶから、私は笑む。ほら、同じことなの、これは苦労や無理じゃないの。

「私、待ってる。ラスが訪ねてきてくれるのを待ってる…そして、いつか…一緒にサカに…草原に一緒に帰れる日を、ラスも待っていてね…」

「ああ」

ラスは掌中の珠を慈しむように、リンの髪に、額に、頬にとそっと口付けた。

一時とわかっていても別れは辛い、それは理屈ではない。

明日がくれば…俺も、自らの半身を引きちぎられるように辛いだろう。だが、だからこそリンには笑んで欲しいのだ。そして、リンは自分のために無理にでも笑むだろう。たとえ、泣きながらでも、笑むだろう。

そんなリンだから…俺は惹かれてやまないのだ。きりのないほどに、リンが欲しいと思うのだ。

リンを愛しいと思う気持は、そのまま、ラスの身体に直結して、反映する。

リンの中で、ラスのものが、また力強く脈動を始める。

「リン…」

ラスが、リンの身体を静かに横たえた。

「俺は、まだ、おまえを愛し足りない…」

「ラス…私も…私も、もっとラスのことを見たい…もっとラスを抱きしめたい…」

リンは、はにかみながら嬉しそうに微笑んだ。

そして、耳まで真っ赤になりながら、こう付け加えた。

「また…何にもわからなくなっちゃうかもしれないけど…それでも…」

「そうか…」

ラスもこの上なく嬉しそう微笑みを返す。

「なら、おまえが…もう充分だと思うまで、俺は何度でもおまえを抱こう。朝までかかっても…」

そして、ラスは再びリンの上に倒れこんでいった。己の言葉の証を立てるために。

FIN


今回のお話は「Tremolo」から直で続いている続編です。物語的にはあまり意外性はない話で予定調和といいますか、単にラスとリンがいちゃこらしてるだけといいますか…(汗)
でも、一応、ラスとリンが、いかにお互いの幸福を考えて行動してるかというのを、描きたかったんです。
リンとしては、旅程をわざと遅らせのんびりする方が、ラスと一緒にいられる時間を少しでも長く引き伸ばせます。でも、私は、リンは敢えて、旅程を急ぐ子だと思うんだな。リンなら『私は本当は草原に帰りたくてたまらない、ラスは自分よりもっと長い間草原に帰ってない。なら、ラスは私より望郷の念はもっと強いはず。なのに帰郷を遅らせて私を領地まで送ってくれる。ならば、私はそれに甘えて旅の日程を引き伸ばすようなことをしてはだめだ。むしろ、なるべく急いで領地に帰って、1日でも早くラスを故郷に返してあげなくちゃ』と考えると思うんです。でも、その一方で『…でも、でも、やっぱり、ラスと別れたくない…』という気持がいよいよ別れが近くなってくると、どうしようもなく強くなって、泊まる必要がなくても宿を取ってしまう。つまり、彼に喜んでもらうために自分のわがままは我慢しよう、でも、本当はわがまま言っても傍にいたいよぅ、みたいな恋するが故のアンビバレンツな心の動きを描いてみたかったんです。
で、ラスは、そんなリンの心の揺れをわかっています。リンが自分のために旅を急いでいたことも、でも、募る恋情に一晩多く宿を取ってくれたことも、どっちの気持も嬉しい。だから、自分も多少身体に無理をしたって、自分からリンに会いに来ると約束するんです。で、リンが喜んでくれるので、自分ももっと嬉しく幸せになるという、愛の相乗効果ですね。好きな人から必要とされることって、私は人生最大の喜びだと思ってますから。で、ラスは、そういう喜びに、今まで縁のなかった人だから、尚更(ほろり…)
そして、ご覧の通り!今までの作品と同じく、青空さんが、またもや、めっちゃラブ&スイート&セクシーな挿絵を描いてくださったのですよー!(ばんばんばん)
一応、今回はH描写にも力をいれたつもりなんですが(でも、がんばってもこの程度…自爆)この中で、イラストにしてもらえるなら、私は、リンが体を一生懸命ラスの方に向けて、キスを強請るシーンがいいなぁ、あんまりH度高くないけどラブいから…なんて思っていたら、青空さんも同じ場面を描きたいと思っててくれたとおっしゃっていただけて、またもや、私たちのラブエロシンクロ率は400%だったんですのよ!ユキ・カンゲキー!(馬鹿)
というわけで、描いていただいたイラストが↑の作品です。
そして、私は「青空さんのラスの顔が見たい〜!青空さんの涼しい瞳のラスが見たいんだよぉ〜!」と描いていただけるなら、前アングルから、できれば開眼キスしかけがいいなーと(ラスの顔をはっきり描いてもらえるからv)詳細かつ、とことん図々しいわがままを言ってしまったのですが…青空さんは、この私のわがままをオールオブかなえてくださったのですよ!
あああ、自分の欲望に忠実でよかった…この、青空さんの手になる超絶かっこいいラスが見たかったのよおお!とことん優しくリンをみつめる切れ長の涼しい瞳はセクシーの極み!すっと通った端正な鼻梁といい、やはり、きりりとしていながら優しげな口元といい、まさにこれぞ端麗辛口・大吟醸の男前!これほど、私の好みのツボ直撃の男性はいません!ラスの顔をずっと見たいのは、私自身なのだと、もうばれてもいい!(いや、最初からモロバレかもしらんけど)ラスの顔なら飽かずに何時間でも見つめたいよ、その間、ずっと桃源郷な心持であること請け合いですよ!はぁあぁ。
そして、キスを強請るリンの表情が、まためちゃ一途で健気でかわいくてねぇ(うっとり)瞳を潤ませて、頬染めてラスを欲する姿は、まさに私の理想の女の子!ラスへの愛が、その表情から、仕草から、全身から溢れてますよー!ああ、こんなにリンをかわいく色っぽく描いてもらえて、大感激だー!
青空さん、本当に本当にありがとう!私は青空さんのラスリンを見たくて、SS書いているといっても過言ではありません、それくらい青空さんのラスリンにメロリンらぶです〜!
そして、青空さんの「骨董甲子園」には、↑のラスリンの色違いバージョンがありますので、是非、そちらもご覧になってみてくださいーv
でもって、このお話しの続きとしてラスがリンを訪ねるエピソードを、そのうち、書きたいな、なんて思ってます。で、実はそっちのエピソードの方が、より書きたかったからこそ、順番としてこの「会えない時間」を書いたという内情があったりします。なので、この話は、一応、1話完結で読める形にはしてありますが、自分では、ちょっとハンパな気がしてしまっているのですが(上下セットで完成と思っているので)うう、客観的に見て、どうでしょうか、どきどき。
時代は烈火から聖魔に移っているので、需要があるかどうかわからんのですが(苦笑)でも、書きたいな。ラス×リンはFEにおけるマイ・モスト・フェイバリットカップルなので。

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