A・LA・CARTE《ア・ラ・カルト》2
駐車場からのったエレベーターがとまり、扉が開く。
すると、そこには、様様な内装の部屋のスチールが飾ってあるパネルが、晧晧と光っていた。
アンジェリークは、ものめずらしそうに、あたりをきょろきょろと見まわしてから、オスカーに訊ねてきた。
「オスカー様、フロントがありませんよ。従業員らしい人もいないし…私たちどうやって、チェックインすればいいんですか?」
オスカーは、アンジェリークのこの言葉に、少しだけ、ほんの少しだけだが、安堵の溜息をついた。
アンジェリークがここがホテルだと言う事だけは、認識していてくれて、ほんっとうによかったと、思った。
「お嬢ちゃん、こう言ったホテルはプライバシーを尊重する為に、従業員は極力顔を見せずに黒子に徹するんだ。こっちから呼ばない限り、まず出てこない。」
従業員と言えど、これからいたすとわかっているカップルが顔を見られるのは決まり悪いだろう、だから、出てこないんだ、なんてことは、思っていてもいわない。
「でも、それじゃ、お部屋があいてるかとか、だれにきけばいいんですか?」
「ほら、ここに部屋の写真が飾ってあるパネルがあるだろう?この中から好きな部屋を選んで、パネルにタッチすれば、キーが出てくる。パネルの明りが消えているのは、今使用中ってことだから、その部屋は選べないがな」
アンジェリークが目を丸くして感心していた。
平日の午後とあって、パネルのあかりはほとんどついていた。
「さ、お嬢ちゃん、好きな部屋を選んでいいぜ」
アンジェリークはいろいろなパネルを見比べていたが、途方にくれたように、オスカーに泣きついてきた。
「オスカー様ぁ。何がどうちがうのか、よくわかりませ〜ん。」
「じゃ、俺が選んじまっていいか?」
ま、たいした違いはないんだがな、することは一緒だし…そう思いながらオスカーは、パネルを見て、一番基本料金の高い数部屋の中から、内装が白とピンクを基調にしたかわいらしい雰囲気の部屋を選び出しパネルに触れた。
料金が部屋や浴室の広さに比例するのを知っていたし、僅かばかりの金を惜しんでせせこましい思いをする意味はない。
パネルの脇のスロットから、カードキーが現れた。
オスカーはそれを受け取りルームナンバーを確認した。
アンジェリークがオスカーの腕に自分の腕をからませ、また訊ねてきた。
「オスカー様、帰るときは、どうするんですか?誰かに言っていかなくていいんですか?」
「帰るときは、フロントみたいな場所に、内線電話で連絡するところもあるが、こういったホテルなら、キーをまたスロットに返して、続けて自分のIDカードをいれれば、滞在時間にあわせて、口座から料金が引き落されるはずだから、連絡はいらないだろう。」
「でも、だれもいなかったら、お金払わないでかえっちゃうお客さんなんていないのかしら?」
お嬢ちゃんがそんなことを心配する必要はないのにな、とほほえましい気分になったが、オスカーはそんな事は言わずに説明してやった。
「ほら、お嬢ちゃん、部屋に行くエレベーターと、駐車場のエレベーターが別々になっているだろう?駐車場行きののエレベーターのタッチボタンの上にスリットがあるのが見えるか?あそこに、精算後の領収証をいれないと、駐車場にいくエレベータのドアが開かないから、帰れない仕組みになっているんだ。だから、お嬢ちゃんがホテルの経営まで心配する必要はないんだぜ」
「はああ〜、うまくできてるんですねぇ。それに、オスカーさまって、ほんとになんでも良くご存知…」
からかうようなオスカーの言葉にも、アンジェリークは素直に感心している。
「いや、駐車場の入り口に精算の注意書きがあったからな」
「え?全然気がつきませんでした。」
嘘ではなかったが、実はオスカーはその注意は読んでいない。
勝手知ったるなんとやらで、読まなくてもわかるので、さっさと来てしまったから、アンジェリークが気付かなかったのは無理もなかったが、言う必要のないことは、あえて言おうとは思わないオスカーだった。
「さ、じゃ、部屋に行くか?お嬢ちゃん」
「は〜い」
あまりにいい返事に、またまたオスカーは不安になってきた。
ここがホテルなのがわかっていただけでも、まだましだったが、アンジェリークは、ここになぜきたか、本当にわかっているのだろうか。
アンジェリークはとても楽しそうにオスカーの腕を抱えこんでおり、アンジェリークの意図が文字通り、見てみたいだけ、社会見学のつもりだったら…という懸念がぬぐいされないオスカーは、それを純粋に楽しむ境地には程遠かった。
『この無邪気さと愛らしさがくせものなんだよな…まったく罪作りなおじょうちゃんだぜ…』
カードキーをさしこみ、部屋のロックを解除して部屋に入ると、すぐそのキーをオスカーはドアの脇のスロットにさしこんだ。
これで、部屋の電気系統がすべてオンになるからだ。
部屋はひろびろとしていて、きちん清掃がいきとどき、間接照明のやわらかな灯りが、淡いピンクの壁面を仄かに彩っていた。
『こういったホテルにしては、まあまあだな…』
素早く部屋の様子を値踏みしたオスカーにくらべ、なにもかも初めて目にするアンジェリークはぽかんと部屋全体を見回してから、興奮した様にオスカーの腕を引っ張って話しかけてきた。
「オスカー様っ!ベッドが丸いですっ!私、丸いベッドなんて初めてみましたっ!なんで、ベッドが丸いんですか?!」
「え?なんでベッドが丸いのかって?んむ…昔は…いや、今もあるのかしらんが、回転ベッドなんてものもあったから、その真似じゃないかな…雰囲気だけでもと思ったのか…」
こりゃあいよいよ、社会見学だ、いや、なに、部屋に入ってしまえばこっちのもんだから、後は、有無を言わさず…って、俺はれっきとした自分の妻を相手に何を考えているんだ、これじゃ、なにもしらないいたいけな女子学生をだまくらかして、ホテルにつれこんだおやぢみたいじゃないか、ああ〜我ながら情けない、などという、とほほな思考が頭の中を駆け巡っていたオスカーは、ぼーっとして、アンジェリークの疑問によく考えずに答えを返してしまった。
「えっ?回転ベッドってなんですか?ベッドが回るんですか?どうして?なんで?」
アンジェリークの素っ頓狂な声に、しまった!と思ったが、後の祭りだった。
あわてて弁解と弁明をする。
「いや、俺もよくはしらないんだが、昔モーターで回るベッドがあったらしいんだ。回るのに四角じゃ不便だから、丸いんじゃないか?今は多分どの方向にねても、落ち無いように丸くなっているのかもしれんな…」
よく知らないと言う言葉を強調しながらも、我ながらなんて間抜けな答えなんだと、さらに、とほほな気分が募るオスカーである。
「でも、ベッドがまわったりしたら気持ち悪くならないのかしら?それとも、ゆりかごみたいでよく眠れるのかしら?」
とりあえず、なぜ自分がそんな事を知っているのかという疑問は抱かないでくれたことに安堵しつつ、思案顔のアンジェリークの肩にそっと手を伸ばした。
「ま、今の俺達には関係ないことだしな…」
だから、もういいだろう?と肩を抱き寄せようとした、オスカーの腕がすかっと宙を切った。
アンジェリークがさっとそのベッドの側にはしりよって、布団をめくっていた。
「すごーい、お布団もコンフォータケースもシーツもちゃんと丸いわ〜、こんなの売ってるんですね〜あ、さすがに枕は普通みたい。」
心のそこから感心しているようである。
ここでめげてなるものかと、オスカーは『ベッドの側に自分から行くなんて、俺に押し倒してくれと言ってるのと同じだな…』となるべくさりげなくアンジェリークに近づき、
「お嬢ちゃん…」と、背後から抱きすくめようとした途端、
「あっ!あっちがお風呂ですねっ!お風呂はどんなかしら…」
と言ってアンジェリークはさっと身を翻してベッドから離れた。そして部屋のすみにある浴室をのぞきにいってしまった。
新しい住居に連れてこられた猫のように、アンジェリークは部屋のありとあらゆるところを、自分の目で見て確かめて納得するまで探検しないと気がすまないようだった。
再度アンジェリークを腕に閉じこめ損ねて、肩透かしをくっているオスカーにアンジェリークがまたも、無邪気な疑問をぶつけてきた。
「オスカー様っ!お風呂の壁もドアもガラスでできてますっ!なんで?お風呂に入ってるところが、これじゃ、お部屋から全部見えちゃいますよ。」
『お嬢ちゃん、わざとなのか、天然なのか…天然みたいなだけに、救いがないぜ…』
そりゃ、これからいたすカップルがいまさら体を隠してもしょうがないからだろう、なんて、身も蓋もないことが言える訳もなく、答える気力もないまま、とほほに、たははな気分も加わって、嘆息をついているオスカーにさらに興奮したようなアンジェリークの声が聞こえた。
「オスカー様っ!見てみて!湯船もおもしろいです〜。お料理用の透明なボウルみたい…こんなお風呂見るの初めて!」
請われてオスカーも浴室を覗きにいくと、浴槽はアンジェリークの言った通り、半球型の強化ガラスでできていた。
ガラスの表面にカッティングは施されていないので、つるりとした側面は確かにボウルのようだった。
広広とした浴室の洗い場には壁にそって大き目のエアマットが敷かれており、隣室とを隔てるその壁面には大きな鏡がかけられていた。
オスカーはこの風呂場なら一戦交えられるなと即時に判断を下していた。
あまり期待はできないが、とりあえず始めの一歩を踏み出さないと埒が開かんと思い、オスカーはアンジェリークにこう言った。
「じゃ、どうせ外からみえちまうなら、一緒に風呂にはいるか?お嬢ちゃん」
「あ、はーい。歩いて汗もかきましたしね。オスカー様。」
あっけないほど、あっさりとアンジェリークが承知して、湯船に湯を張り始めた。
オスカーは拍子抜けしつつも、よし、今度こそ!と気をとりなおし、
『お嬢ちゃん、いくらなんでも、服を脱いだら、もう逃さないぜ…』
と思いつつ、アンジェリークの気が変わったら、大変だといわんばかりに手早く自分の着衣を脱ぎ捨てていった。
湯が溜まるまで、とりあえずすることがないので、部屋に戻るとオスカーが着衣をぽいぽいと部屋のソファセットに無造作に脱ぎ捨てているところがアンジェリークの目に入った。
「もう、オスカー様。ここは家じゃないんですから、ちゃんと掛けておかないと、服がしわになっちゃいますよ。人を呼んでも着替えは出てこないんですよ?」
オスカーを嗜めながら、アンジェリークはハンガーを探し、シャツとスラックスを洋服掛けに掛けていると突然後ろからオスカーに羽交い締めにされた。
「やっと捕まえたぜ、お嬢ちゃん…」
そういいながら、オスカーが耳朶を唇で食んだ。
「あ…ん、急にどうなさったの?オスカーさ…」
後ろを振り向こうとしたアンジェリークの小さな顔にオスカーが覆い被さり、その唇を一瞬塞いで、すぐ離した。
「こうして捕まえておかないと、お嬢ちゃんは、いつ俺の腕の中から逃げ出そうとするかわからないからな。」
そういいながら、アンジェリークのワンピースのファスナーを下ろしていく。
布の下から現れた眩いほどの白い背中に幻惑されたように、オスカーが唇を寄せた。
アンジェリークがくすぐったそうに身を捩り、微かに熱い吐息を漏らす。
「は…、オスカー様…なんのこと?私、逃げたりしてませんよ…」
オスカーはそれには答えずアンジェリークの腕を服から抜き取り、一緒にブラのホックもはずしてしまう。
たわわな乳房が零れ落ちるところを、アンジェリークは手で覆い隠そうとするが、その直前にオスカーに手首を掴まれてしまい、果たせなかった。
「一緒に風呂にはいるんだから、隠すことはないだろう?」
「だって…」
オスカー様があんまり見るから、恥ずかしいんですと、言いたいけれど、その事自体が恥ずかしくて言い出せず、口篭もってしまう。
オスカーはワンピースを足下に落し、ショーツにも手を掛けて、あっという間に、アンジェリークを全裸にしてしまった。
「きれいだから、みたいんだ…隠さないで、見せてくれ…」
こんな事を言いながら、服を脱がされたら、恥ずかしいけれど、逆らえない。
それどころか、アンジェリークの心中には、確かに胸を震わせるような喜びがわきおこっている。
好きな人が、自分をきれいだと言ってくれる、見たいといって熱っぽい目で見つめてくれる。
それが女としてどれほど幸せなことかと思う。
オスカーが喜んでくれるなら、もっときれいになりたいと思う。いつまでも、きれいだと思って欲しいと、願ってしまう。
オスカーの言葉も、手も、唇も、そして、その瞳も、魔法が掛かっているかのようにアンジェリークからいつのまにか、羞恥というベールを取り去ってしまう。
オスカーに囁かれ、触れられ、その瞳で見つめられると、オスカーの望むままに、自分はすべてを預けてしまう。
その魔力から逃れられない。逃れたいとも思わない。
オスカーの視線をその身に感じ、熱を帯び始めたアンジェリークのからだがふわりと抱き上げらた。
自分も手早く全裸になったオスカーが
「お湯もたまったみたいだし、風呂に入ろう。汗をながしてやろうな、お嬢ちゃん」
といって、アンジェリークを抱いて浴室に入っていった。
アンジェリークは、なんと答えたらよいかわからずに、黙ってその厚い胸に顔をぽすんと埋めてしまった。オスカーの匂いがした。
オスカーの瞳に宿る青白い焔に、自分の体は火をつけられ、燃えあがる。
その期待に、間違えようのない予感にアンジェリークの身も心も甘い疼きに震えた。
オスカーは先にアンジェリークを湯船におろしてから、自分も入ってきた。
浴槽の中で胡座を組み、アンジェリークの体をひきよせて、自分の膝の上にのせて、後ろからだきすくめる。
アンジェリークもおとなしくされるままになっている。
浴槽のすぐ横の壁に電気のスイッチらしきものがあるのが、オスカーの目にとまった。
「ここにも、電源があるのか?」
何の気なしにオスカーがスイッチをいれると、浴槽の底面にぽぅっと灯りがつき、お湯の底からゆらゆらした光が立ち上ってきた。
ガラスの浴槽のそのまた底に照明が埋めこまれており、しかも、その照明が廻り灯篭のように七色に変化して、透明な浴槽とお湯を彩る仕掛けになっているようだった。
赤に黄色に青に緑にと、様様な色彩の光が水の動きによって、ゆうるりと、その波線をかえて、水中に拡散して行く。
アンジェリークはほぅと吐息をついて、お湯の中を見つめていた。
「…きれい…きれいですね、オスカー様…」
「確かにおもしろい仕掛けだな…でも、その光に照り映えているお嬢ちゃんの肌はもっときれいだぜ…」
そう言いながらアンジェリークのくびれた腰をきゅっとだきよせ、そのうなじに唇をおとした。
「あ…ん…」
うなじに舌を這わせながら、背後から乳房を包みこむように揉みしだくと、あっというまに乳頭が固くなる。
固くなった乳頭を両手の親指と中指でそれぞれつまみあげて、くりくりとこねまわす。
オスカーの指につままれて、乳首が引っ張られる様に細長くみえる様子が淫靡だった。
「あ…やぁ…ん」
オスカーの膝の上でアンジェリークがもじもじと腰をくねらせる。
張りのある、だがまろやかな臀部がオスカーの大腿部にこすりつけられるように蠢いて、オスカーのものを刺激する。
アンジェリークの無意識の動きに翻弄されそうなのが、なにか悔しくて、オスカーはアンジェリークを更に乱そうと、乳首をつまみ、こねくりまわしながら、人差し指の腹で敏感な先端を転がした。
同時に舌ををうなじから、側面の首筋へと何往復も滑らせながら、時折留まって痕を残さない程度に軽く吸い上げる。
「あふ…あぁん…」
アンジェリークが素直に快楽を享受して、反応を返す。
そのすがたがかわいくてならず、肩口まで舌を這わせたとき、その思いをぶつけるかのように薄い肩を軽く噛んだ。
「きゃぅ…ん」
びくりとアンジェリークの背が撓った。
「あん、そんな、噛んじゃ…だめ…」
「ふ、知ってるぜ…感じすぎちゃうから、だめなんだろう?こんなに乳首を尖らせて…」
すっかり固くはりつめた乳首を軽く引っ張る様に摘み上げる。
「あ…ん…」
「乳首がこんなじゃ、多分、こっちももう…」
オスカーはわずかに開いていたアンジェリークの股間に手を差しいれた。
湯の中でゆらゆらと揺れている春の下萌えのような繊毛をかきわけると、そこには水と異なる粘度の濃い液体の感触が指に感じられた。
そのぬめりのもとへと一気に指をすべりこませると、その部分は湯の中でもそれ以上に熱く指先に感じられた。
「ひぅ…ん」
アンジェリークがいやいやをするように弱弱しくかぶりを振った。
オスカーは長い中指で、ことさらゆっくりとその熱く潤びた部分をかきまわしながら、
「すごく熱くなってるぜ、お嬢ちゃん、どうした?いつもより感じ方が激しくないか?」
「や…だって…オスカーさまのが、おしりにあたって…なんだか、変な気分になっちゃって…やぁん…」
それだけいうと、アンジェリークは突然くるりと体をオスカーの方に反転させると、オスカーの首に腕を回して抱きついて、唇を求め、自らかわいい舌を差しだしてきた。
自分の言葉に恥ずかしくなったのを、押し隠す様に、わざと大胆に振舞っているようだ。
大胆に振舞うアンジェリークに異論のあるはずもなく、オスカーは自分も舌を差し出して、アンジェリークのそれに軽く触れ合わせてから、弾く様に激しくからめ、吸ってやった。
このまま、抱き上げて自分のものの上に降ろし貫いてしまおうかという誘惑に一瞬駆られたが、アンジェリークに他意はなくとも、散々焦らされたような気がしていたオスカーは、アンジェリークの口から自分を求める言葉を紡がせたいという思いもあって、ひとしきり吸った唇を離すと
「さ、のぼせちまうといけないから、いったん出よう。俺がお嬢ちゃんをきれいに洗ってやるからな。」
といって、アンジェリークの体を抱き上げた。
もはや、霞がかかったようになっている翠緑の瞳に、一瞬失望の色が走ったのを見てオスカーは心のなかでにやりと笑った。
まだぽやんとしているアンジェリークを洗い場の椅子に座らせると、オスカーは手にボディソープを泡立てて、アンジェリークの体を優しく撫でさするように洗い始めた。
エアマットの部分に片膝をついて、肩から腕を洗い、そのあとぷるぷるとした弾力を楽しみながら乳房を洗っていると、アンジェリークが
「オスカー様、こういったお風呂マットがあると、足が冷たくないし、転んでも危なくなくていいですね。うちも買いましょうか?」
といってきた。
『お嬢ちゃん、これの用途をしらないから、そんな大胆なことをいって…しかし、これがあれば、入浴タイムが更に楽しくなる事は請け合いだしな…あとで、俺がこれの正しい使用法をじっくり教えてやろう…』
と思ったが、オスカーはもちろん済ました顔で、
「お嬢ちゃんがいると思ったものは、なんでも買っていいんだぜ。俺の許可なんかとらなくていから、注文するといい」
とだけ言った。
「あ、はい。ね、オスカー様、ここのお風呂のいすもうちにあるのと違いますね?前に大きく切れ目みたいに穴がありますけど、このほうが水の切れがいいんでしょうか?うちのお風呂椅子もこういうほうがいんでしょうか?」
アンジェリークが、オスカーにとって、さらにおいしい話題を振ってくれたので、オスカーはマットの使い方を説明する前に、じゃ、まずこの椅子の正しい使用法を教えてやろうと、こみ上げる笑みがおさえきれなかった。
「それはな、お嬢ちゃん、すわったままでも、ここがきれいに洗えるようにさ!」
と、童話にでてくるの狼のような口調で、オスカーは浴用椅子の前面にあいた大きな切れ目から、さっと手を差しいれると、アンジェリークが斜めに揃えた足をこじあけることなく、ふっくらとゆたかな花弁の合わせ目を揃えた指先ですりあげはじめた。
「きゃぁっ!」
不意をつかれたアンジェリークが軽く悲鳴をあげた。
オスカーはかまわずに、椅子の切れ目から手を動かしつづけ、指で花弁の下の秘唇も押し開き、そのまま指を上方に滑らせて、秘唇の奥に隠れている鮮紅色の花芽を探り当てると、指の腹で転がし始めた。
先ほどからの愛撫でその部分は愛液を熱く湛えたままだったし、オスカーの手にはソープも付いたままだったので、すりあげるのに、まったく力を必要としないほどその部分は滑らかだった。
「あああっ!」
滑らかな指遣いで羽毛のようなやわらかな愛撫を花芽に与えられ、アンジェリークはたまらずに高い声で鳴いた。
「ほら、お嬢ちゃん、これだと椅子からたたなくても、ここがきれいにできるんだ、便利だろう?」
オスカーはにやにやと笑いながら、うそぶいた。
アンジェリークの体が崩れ落ちるのを予期して、アンジェリークの腕を自分の肩にかけて捕まらせながら花芽を擦りつづける。
「あん…あぁっ…やっ…」
アンジェリークはちからなくオスカーの肩にしがみついて、頬をオスカーの厚い肩に預けて、切なげな声をあげる事しかできないでいる。
「お嬢ちゃん、俺がきれいにあらってやってるのに、お嬢ちゃんのここは後から後から蜜を溢れさせて、ちっともきれいにならないな…」
「やっ…やぁん…そん…な、意地悪…」
息も絶え絶えにアンジェリークが抗議すると、
「意地悪じゃないさ、その証拠にほら…」
といって、オスカーはもう片方の手で花弁を押し開き、指を一気に最奥まで沈めると、その奥を突き上げる様に指を激しく抜き差し始めた。
もちろん花芽をすりあげる指の動きもとまることはない。
「ひぅんっ!あっ…ああっ!」
アンジェリークの体がびくんと跳ね、さらに甲高い声が途切れなく喉から迸る。
「ほら、ここの中まで、俺がきれいにしてやるからな…」
といいながら、アンジェリークの首筋を舐めようとして、石鹸の味に顔を顰めた。先にボディを濯いでおかなかったのは失敗だったなと、思いながら。
と、そのとき、オスカーの頭にあることが閃いた。
オスカーは片手をアンジェリークの花芽から離すと、すばやくシャワーのコックを捻り、湯温をぬるめに水流はあまり激しくない程度に設定すると、
「さ、もう十分きれいになったから、濯いでやろうな…」
といって、シャワーの湯をアンジェリークに掛け始めた。
アンジェリークは愛撫の嵐が少し弱まったことに安堵したように、荒い息を整えていた。
オスカーは全身のソープが洗い流されたのを見計らって、
「ここもきれいに流さないとな…」
といって、手で大きく秘唇を押し広げると、剥き出しになった花芽に直接シャワーの湯を掛けた。
シャワーのヘッドの角度を様様にかえて、花芽に湯のあたる角度も縦横にかえる。
「ひゃぅっ!やっ…やぁぁっ…」
オスカーの肩に捕まったまま、アンジェリークの背中が大きく反り返る。
湯温と水流の強さには気をつけたので、刺激は強くても、苦痛では無いはずだった。苦痛だとすれば、それは水流の愛撫ではなく…
「どうした、お嬢ちゃん、俺はお嬢ちゃんのここを濯いでやってるだけなのに…」
「ああっ…あっ…オスカーさ…ま…、も、許して…ああっ…」
「なんだ、やめてほしいのか?」
「や…オスカー様、わかってらっしゃるんでしょ…意地悪しな…いで…」
「ちゃんと言わないと、わからないぜ、お嬢ちゃん?」
アンジェリークにも、自分がわざと素知らぬ振りをしていることなどわかっている筈だ。
一瞬の泣きそうな顔になってから、オスカーの首にむしゃぶりついて、アンジェリークは堰を切ったように、訴え始めた。
「もう、もう、弄られるだけじゃ、いや…オスカー様、オスカー様が欲しいの。オスカー様を下さい」
ちょっと可哀想だったかと思う反面、オスカーはアンジェリークがなりふりかまわず自分を求める姿をみると、震えるほどの歓喜に満たされてしまう。
「ベッドにいくまで我慢できないのか?」
言わずもがななのに、さらに勿体つけるオスカー。
アンジェリークは必死にこくこくと頷いている。
オスカーはこれ以上はないというほど、優しい瞳でアンジェリークをみつめると、軽くキスをしてから、すぐ横にあるエアマットの上に自分の体を横たえた。
「おいで、お嬢ちゃん…」
といってアンジェリークの腕をとって、自分の体を跨がせると、アンジェリークはそれ以上オスカーに促されなくても、黙って自分でオスカーのものに手を添えると、秘唇を自分の手で押し広げ、ゆるゆるとオスカーのものの上に腰を落して行った。
アンジェリークが苦悶に耐えるような表情で、自分で鮮紅色の秘裂を押し広げ、オスカーのものを彼女の胎内に納めていく様子は、この上なく扇情的で、徐々に自分を押しつつんでいく柔襞の感触とともに、オスカーを目も眩むほどの陶酔に押しやる。
根元までおさめきると、アンジェリークは小さく吐息をつく。
全身が薔薇色に紅潮してその体は例え様もなく美しく、かなり強く意識していないと、すぐに暴発してしまいそうなほど、今日のアンジェリークは淫らに見えた。
オスカーはアンジェリークの手をとり、指を絡めた。何も言わなくても、ひとみで促すと、アンジェリークがゆっくりと腰を上下させ始めた。
自分の花芽の部分をオスカーに擦りつけるようにしながら、オスカーのもので自分の感じる部分を突こうと、懸命に腰を振りたてる。
腰の動きにリズムがのってくるにしたがい、その口から、押さえきれない喘ぎが零れ始める。
「ああっ…あっ…あん…あん…」
「こうしたかったのか?お嬢ちゃん…」
「あっ…オスカーさま、そうなの、オスカー様がほしくてたまらなかったの…」
「ふっ…ほんとに、きゅうきゅうとよく締めつけて…くる…」
「だって…だって…オスカーさまが好きなの、どうしようもなく好き…な…の」
「ああ、俺も…俺もお嬢ちゃんが堪らなく好きだ…気が狂いそうなほど、好きなんだ」
だから、自分もアンジェリークを狂わせたい。もっと、もっと乱してやれないか…
そう思い、オスカーはマットのすぐ側面にかけられている鏡の表面をさっと腕でぬぐった。
湯気で曇っていた鏡が拭った部分だけクリアーになる。
瞳を切なげに閉じて、快楽を貪るのに夢中のアンジェリークは、マットのすぐ側に鏡があることも、それをオスカーが利用しようとしていることにも、まだ気付いていない。
「お嬢ちゃん、目をあけて、横を見てみろ」
アンジェリークは、操られたようにうっすらと瞳をあけ、ゆっくりと首をまわした。
自分がオスカーの腹の上で盛んに腰を振りたてている淫らな姿がぼんやりと写っていた。
「やっ…」
慌てて目を瞑るアンジェリークだったが、オスカーは容赦しない。
「だめだ、ちゃんと目を開けて。開けないと、後で突いてやらないぜ?」
アンジェリークが恐る恐る瞳をあける。
「そのまま、自分を見ながら腰を使うんだ、そう、さっきみたいに…」
諦めた様にアンジェリークは、言われるがままに、腰を落としては、引きぬく。
愛液に塗れて黒光りしているオスカーのものが、自分の股間から現れてはまた飲み込まれていく様が、あまりに淫靡でアンジェリークは目が離せない。
恥ずかしくていたたまれないのに、淫靡な自分の姿に更に体が熱く、あの部分が潤び火照ってくるのが押さえられなかった。
「ほら、俺のものがお嬢ちゃんのいやらしい蜜に塗れて、てらてら光ってる。それをお嬢ちゃんのここが美味そうに咥え込んでいるのがわかるか?」
鏡があるのが側面なので、結合部が見えにくいのが残念だったが、贅沢はいっていられないと思いながら、オスカーはアンジェリークの羞恥を煽る。
わざといやらしい言葉を投げつける度に、アンジェリークの秘裂がオスカーのものを絞る様に蠢き、奥から更に熱い愛液が溢れてくるのが感じられアンジェリークがとても昂ぶっているのが、はっきりと感じられた。
「ほら、俺に突き刺されて、お嬢ちゃんのここが喜んでいるだろう?」
オスカーはアンジェリークの手を取り、結合部に手を導き、オスカーのものがアンジェリークの中心を貫いているところを確認させた。
素直にその部分を自分の手で確かめ、アンジェリークは魅入られた様に呆然と呟く。
「あ…私の中にオスカー様が入ってる…こんな大きくて熱いのが…私の中にいっぱい…」
「こんなに嬉しそうに俺のものを咥えて…離すまいと、きゅうきゅう締めつけて、ほんとうにお嬢ちゃんはこれが好きだな…」
「ああっ…そんな、そんなこと、言わないで…」
アンジェリークの眉が切なげに苦しげに顰められ、ちからなくかぶりが振られた。まるで快楽に耐える様に。
「本当のことだろう?でも、それでいいんだ…俺は、そういうお嬢ちゃんがたまらなく愛しい…俺を求めて乱れるお嬢ちゃんがな…さ、ご褒美だ」
と言うと同時に、オスカーが激しく下からずしんっと突き上げた。
「はぁああっ…」
いきなりの強い突き上げに、アンジェリークの背がぴんと反り返る。
オスカーはそのまま上体をおこすと、アンジェリークの細い腰を折れんばかりに抱きしめ、
「お嬢ちゃん、今度は俺が、よくしてやる…いっぱ気持ちよくしてやるからな…」
というや、アンジェリークの腰を抱えて、自分の下腹部に打ちつけるようにしながら、同時に激しく突き上げた。
唇は揺れる乳房の先端を捕らえ、音をたてて、吸い上げる。
「ふぁあああっ!」
アンジェリークがオスカーの肩に細い指を食いこませる。
「や…、だめ…そんな、そんな強く、奥まで…あっ、あああっ…」
「…気持ちいいか?お嬢ちゃん」
荒い息をおさえ、オスカーが問いかける。
「あっ、いい…いいです、オスカー様ぁっ」
「くっ…お嬢ちゃんの中も最高に具合がいい…ぜ…」
自らからみついてくるような柔襞の感触に、そう長くは持ちそうになかった。
だが、とことん焦らしてしまった以上、それに見合う快楽を与えてやりたくて、オスカーは更に速く、力強く、激しく、腰を突き上げた。
「ああっ、オスカーさまっ、だめ、もう、だめぇっ!」
アンジェリークが一際高い声を迸らせると、秘裂がびくびくと痙攣して、オスカーのものを絞り上げた。
「くっ…」
絞り上げられるままに、オスカーも引き絞っていたものを手放した。
アンジェリークがうっすらと唇をひらいたまま、夢見る様な表情を湛えていた。
『ああ、ほんとうに、お嬢ちゃんは、きれいだ…』
背筋から脳天に突きぬけるような息も忘れるほどの圧倒的な快楽に酔い痴れながら、オスカーはアンジェリークに見惚れていた。