そして、もう一度始まりの日 3

「お嬢ちゃん、うちの娘はまたでかけちまったのか?」

オスカーは居間のソファでゆったりと寛いでお茶を飲みながら、愛する妻に今日も家を空けている娘の事を訊ねた。

「ええ、守護聖様がたが次ぎから次ぎへと誘いにいらしてくださって…ディアンヌのほうも皆さんにお会いしたいみたいで、自分から出かけることも多いし。」

「まったく、せっかく休暇で帰ってきてるっていうのに、ちっとも家にいつかないんだな、うちの娘は…今日こそ一緒に遠乗りにでも行こうと思ってたのにな。」

「ふふ、オスカー様、さびしいの?仕方ないですよ。ディアンヌももう18才、もうすぐ高等部も卒業なんですもの。いつまでも両親にべったりだったら、かえっておかしいわ。」

「とはいっても、あっというまにおおきくなっちまったからな。なんだかディーが大きくなったっていう実感がわかなくてな。俺の感覚だとディーはまだまだ子どもとしか思えないんだ。」

「ほんとに早かったですね、あのこが学校に入ってからは…毎週のように様子を見に行っていた私たちでもあのこの成長ぶりは魔法のようだったもの。」

12、3才になっていただろうか、ディアンヌが突然学校に行きたいと言い出した。

教育だけなら聖地にいても可能だった。そのように周囲が手配してくれていた。

しかし、物語などに出てくる学校と言うものを知って、ディアンヌが行ってみたいと言うなら、寂しくてもそれをとめだてするようなオスカーとアンジェリークではなかった。

聖地では得られない同じ年頃の友人との交流を得られることの楽しさを両親とも良く知っていたから。

当然のようにディアンヌの通う学校はスモルニィ女学園に定められた。

もともと女王候補の育成機関であるスモルニィは一般の生徒以外に守護聖や女王を輩出した血筋の息女には優先的に入学枠がとられていた。

一般の職員や生徒には秘密裏にされていたが学園は聖地と次元回廊で結ばれていたためオスカーとアンジェリークも行き来がしやすかった。

元来女王府の官立学校のような位置付けなのだから、当然と言えば当然であったが。

ディアンヌは学院の寮で暮すようになった。

どうせなら普通の学校生活を送らせてやりたいという両親の考えと(なにせ生育環境はこれ以上ないくらい特異であるからこそ、両親は普通の生活を経験させてやりたいと思っていた)ディアンヌ自身もそれを希望したので、有力な女王候補である特待生ではなく、表向きは一般の生徒としてディアンヌは入学した。

学校の環境にはなんら憂慮はなかったものの、やはり初めて親元を離れた娘のことが心配でオスカーとアンジェリークは聖地の休日ごとに寮住まいのディアンヌの様子を見に主星におりたった。

もっとも、聖地で一週間といっても下界ではその間に1ヶ月半から2ヶ月がすぎている。

会うたびごとにディアンヌは大きくなっていた。

学校の長期の休みにはもちろん、ディアンヌのほうが聖地に帰ってきた。

その間はロザリアが下界と主星の時間の流れを一緒にしてくれたので、ディアンヌは両親や久方ぶりに会う守護聖たちとゆっくりとすごすことができた。

守護聖たちにとってわずかな期間に、ディアンヌはみるみる美しい少女に成長していった。

ぐんぐん身長も伸び、子ども子どもした体型がすこしづつふっくらと丸みを帯びていく。

くるくるふわふわとした母譲りの金の髪は長ずるにつれ、母と同じたんぽぽ色から色味を増して若干赤味がかった艶やかな金褐色の巻き毛となり、豊かに背中の中ほどまで波打っていた。

父親譲りの薄青色の瞳は、こちらも色味が濃くなり、アイスブルーというよりは純粋な青の瞳に変わっていた。

その青の瞳は、ランディのような空の青とも、ジュリアスのような紺碧の海の青とも、もちろん凍れる焔のような父の青とも異なる温かみのある春の湖水のような澄んだ青色を呈していた。

そして、湖水の表面が、さざめく風や木漏れ日によってその輝きを自在に変えるように、ディアンヌの感情の揺らめきにあわせて、その青の双眸は温かい光が踊るがの如くきらきらと輝いていた。

守護聖たちは高速度撮影で花が開花するのを目の当りにしているようなディアンヌの成長ぶりに目を見張った。

聖地を出たときはほんの子どもだったのに、会うたびごとに艶やかな美しさをましていくディアンヌ。

聖地で一年足らずの間に、下界では中等部・高等部の6年間が飛ぶように過ぎていくのだ。

女性が一生のうちで心身ともにもっとも激しい変化を遂げる期間なのだから、周りで見ているものがその魔法のような変化に驚き戸惑いながらも賛嘆の思いを込めてディアンヌから目がはなせなくなったのも無理はなかった。

陳腐な言いぐさだが、さなぎが蝶になるというのは、こう言うことかと改めて守護聖の大半が思ったのだ。

「なあ、お嬢ちゃん、うちのディーが帰ってくると、若い連中が妙にそわそわして落ちつかなくなるのに気付いてたか?」

「ふふ、昨日はランディ様がディーを誘いに来て、そのちょっと後にゼフェル様がいらして、ランディ様と出かけたって聞いたときの悔しそうな顔ったらなかったんですよ。」

特に同じ年頃に成長していたマルセル・ランディ・ゼフェルの3人はディアンヌが聖地に戻ってくるたびに、恐ろしいほど浮き足立った。

学校に行き始めた当初こそ余裕をもって

「ちったぁ、女らしくなったみてーだな」とか

「なにか、困った事があったらなんでも相談してくれよ」とか

ゼフェルもランディもいい兄貴ぶりを示していたのだが、ディアンヌが芙蓉の花のようにたおやかにあでやかに花開いて行くに連れ、そんな余裕はどこかに置きさられてしまった。

ディアンヌは、父の激情とその表裏をなす傷つきやすい魂よりは、母の暖かな人を包みこむような性質を色濃く受継いでおり、そのふんわりと柔らかな笑顔は往年の母そのものだった。

かといって父に似ていないわけではなく、ちょっとした折りに見せる仕草や目線にオスカーから受継いだなんとも言えぬ艶のようなものが滲み出ており、もともとあまり同年代の女性と知り合う機会のないランディなどは、ディアンヌにすっかりのぼせあがってしまったようだった。

ゼフェルはよく下界に脱走して多少は夜遊びなども経験していたから、ランディのようにわき目もふらぬ熱中ぶりはみせなかったものの、だからこそディアンヌがかなりレベルの高い少女だと言うことをよく承知しており、やはり他のやつらには渡せねーぜと、密かな闘志を燃やしていた。

マルセルは守護聖の中ではディアンヌと兄弟のような立場だったから、それだからこそ自分は一番ディアンヌと仲良しだと自負しており、ずーっとディアンヌと一緒にいたいなぁ、いられたらいいなぁという幼い恋心と、幼いが故の遠慮のない独占欲をあからさまに示して臆する所がなかった。

若者が自分の愛娘を挟んで狂奔するさまは、これはこれで楽しい見物だとオスカーはことの成り行きをおもしろがっている節があった。

自分の数多くの恋の経験から言って、ディアンヌがこの3人のうちの誰かに本気で恋をしているようには見うけられなかったからだ。

スモルニィの女生徒は主星の男子高校生、大学生から粒揃いと評価が高く、合コンの誘いもひっきりなしだったが、オスカーがディアンヌの様子を見ている限りでは、こういったことにも余り興味がなさそうだった。

『父親のレベルが高すぎるから、並の男はかぼちゃくらいにしかみえないんだろうなぁ。無理もない。なにも慌てて恋する事もないし、別に俺たちのところにずっといてもいいんだしな』

なんてことを、心中密かに思っていたオスカーは、それゆえ若者たちがいかにディアンヌに粉をかけようと余裕の態度をくずさずにいられたのだ。

娘のほうに本気の男がいないという条件さえ満たしていれば、娘がモテるというのは親にとって純粋に喜ばしい、たのしいことであった。

これというのもディアンヌが愛しい妻にそっくりだからだと思うと自然に口元がにやついてしまうオスカーであった。

「なにせ、うちの娘は親の俺から見ても美少女に成長したものな。あいつらが夢中になるのも無理はない。これも、ディーがお嬢ちゃんに似たから、あんなにかわいくなったんだよな。」

「あら、違いますよ、ディーは瞳がオスカー様に似てるから、人目を惹きつけるんですよ。私が同じ年くらいの頃はあんなに色っぽくなかったですよ?」

「そんなことはない。俺は今のあいつらみたいに、あの頃のお嬢ちゃんに夢中だったぜ?他になにも見えないほどな?もちろん、今だって昔とかわらない、いや、それいじょうにお嬢ちゃんに夢中だぜ?」

「いやん、そんな、嘘でも嬉しいです…」

「嘘なものか…なんなら、今すぐ証明したっていい。」

オスカーがアンジェリークの手首をぐいと引いて、自分の腕の中に抱きよせる。

アンジェリークがオスカーの広い胸にぽすんと倒れこんだ。

娘が芳紀と言える年頃に成長しても、オスカーは精々20代半ば過ぎ、アンジェリークはまだ20代前半にしかみえず、二人の外見にほとんど変わりがないように、二人の間に流れる愛も熱病のような激しさこそ減じたものの、その真剣さと想いの深さは一層にいやましていくばかリであった。

「もう…いつディアンヌが帰ってくるかわかりませんよ?」

オスカーの唇を首筋で受けとめて、くすぐったさそうにアンジェリークは首を竦めた。

「夕方まで帰ってきやしないさ。このところ、毎日そうだろう?」

アンジェリークのブラウスのボタンを3つほど外して自分の手がはいるほどの隙間を作ると、オスカーは即座にアンジェリークの胸元に手を差しいれた。

ブラジャーのなかに強引に手を忍びこませて先端をつまみながら、やわらかな乳房の感触を掌一杯に味わった。

「はぁ…ん…もう、オスカーさまったら、強引…」

「でも、嫌じゃないだろう?ほら、もうこんなに固くして…」

にやにや笑いながら手の動きは休めずにオスカーはまたアンジェリークの首筋に燃え立つ髪を埋めた。

白いうなじに舌を這わせながらオスカーはアンジェリークに訊ねた。

「なあ、お嬢ちゃん、ところでうちの娘のほうが本気そうなやつはいるのかな?」

「んんっ…私は気付きませんけど…んふぅ…」

「ま、俺みたいな父親がいちゃあ、並大抵の男じゃ見劣りしちまうからな。ディアンヌにはかえってかわいそうかな?」

「ふふふ、オスカーさまったら…あんっ!」

半ば無理やりはだけた乳房の先端を音を立てて吸われて、アンジェリークが小さくのけぞった。

アンジェリークの口から意味のある言葉が出にくくなっていき、二人は娘のことはしばし忘れて互いに愛を確かめ合う行為に没頭していった。

 

『今日は遅れをとらねーぜ!』

鋼の守護聖ゼフェルは固い決意を胸に抱き、オスカー邸に足早に向かっていた。

ディアンヌが美しい少女に成長する間に、心の繊細さはそのままに、少年らしい線の細さが青年らしいものに変わって今やゼフェルは立派な若者になっていた。

照れ屋でぶっきらぼうなところは相変わらずだが、それをいい訳にする青さはもうゼフェルにとって過去の物だった。

それが災いしてアンジェリークをオスカーに攫われてしまったと言う苦い経験があったからだ。

アンジェリークとであった時、自分はどうしようもなく子供だった。自意識ばかりが突出していて、自分の気持ちに素直になれなかった。だからオスカーにアンジェリークを攫われた、攫われても仕方なかった。でも、今は違う。今度は欲しいものを欲しいと現せる率直さを身につけていた。守護聖としての責務をこなすうちに自分の気持ちを臆さず表せるだけの自信が培われていたからだ。

だから、今度は譲れない。特にあいつにだけは…

『昨日はタッチの差でランディ野郎にディアンヌをかっさらわれちまったが、今日はゆずらねーぞ!』

エアバイクでタンデムに誘うのはまだはえーか…スケボーで俺のかっこいいところをみせてやってもいい。ちょっと疲れたら森の湖に誘って雰囲気が盛りあがった所で一気にコクるか!ランディはあからさまにディアンヌを狙っている。一端自覚するとそれまでの照れをうっちゃってつっぱしりやがるから、あいつは始末におえねー。牽制してる余裕はもーねーぜ。

こんなことを考えていると自然に早くなってしまう歩調が、一瞬ぴたりと止まった。

ゼフェルにとってはとても意外な人物がオスカー邸の敷地に入っていったのを目にしたのだ。

『まさか…まさかとは思うが、あいつがディアンヌを誘いに行くなんてことはねーとは思うが…こーしちゃいられねーぜ!』

ゼフェルは一端とまった足を動かし始めた。もはや走っていると言ってよかった。

 

風の守護聖ランディは

『今日はもっとゆっくりディアンヌと過ごしたいんだよな〜』と思いながらやはりオスカー邸にむかって歩を進めていた。

昨日はゼフェルを出し抜いて誘えたと思ったのもつかの間、ディアンヌは一時間も一緒にいないうちにそそくさと帰ってしまったのだ。

どことなくそわそわしてたから、約束があったのかもしれない。

いったい、どいつと約束があったんだろう。やっぱりゼフェルか…うかうかしてられないな。ここらで決めなくちゃ!と考えていた矢先、走っていくゼフェルの姿が視界の端に入った。

「あっ!ゼフェルのやつ!やっぱり!俺もいそがなくっちゃ!」

永遠のライヴァルがなりふり構わず走って行く姿を目にして、ランディは自分も負けじと走り出した。

 

水の守護聖リュミエールは

『今日こそ、ディアンヌにモデルになっていただきましょう。あの愛らしさ、美しさをぜひとも私の手で残してみたいものです』と思いながらオスカー邸に向かっていた。

オスカーの家を訪ねてディアンヌに取次ぎを頼むことは本来リュミエールにとってどうにもこうにも気が重いことだった。

アンジェリークしかいないときはいいのだが、オスカーがいると勝ち誇ったように『ほれほれ、俺様の娘は美人だろう〜おまえも骨抜きにされたか、リュミエール、かっかっか』といわれているような気がして、とてつもなくいや〜な気分になるからだ。

しかし、ディアンヌをめぐって若者たちが熾烈な争奪戦を繰り広げており、ただ待っていてはディアンヌのおとないは到底望めないことも、リュミエールはよ〜くわかっていた。

たとえディアンヌが自分のもとに来てくれる気があっても、そこかしこで網を張って待っている若者たちにディアンヌは一本釣りされてしまって自分のもとにはきてくれない。

優しいディアンヌは守護聖たちの誘いを無碍に断ったりしないから、待っているだけではいつまでたっても会えないのだ。

昔、アンジェリークの気持ちを考えすぎて迷惑になったらいけないとか、アンジェリークにはアンジェリークの予定があるだろうからと、誘うのを控えているうちに遠慮も会釈もない傍若無人を絵に書いたようなオスカーにアンジェリークを横から掻っ攫われた(と、リュミエール的主観では思っていた)ことを思うと、いまでもはらわたが煮えくり返るリュミエールであった。

アンジェリークが女王試験を放棄してオスカーと結婚すると聞かされたときは

「ああ、私にオスカーの10分の1でもあの図々しさがあれば、アンジェリークをむざむざけだものの手に渡さずにすみましたものを…アンジェリークは優しいですから、オスカーの強引さにまけてしまったのですね、きっと…よもやとは思いますが、まさか手篭め同様に愛を受け入れさせられたなんてことは…」

なんてことを悶々と考えてしまったくらいで、聞かれてもいないのに

「アンジェリーク、なにか悩み事はありませんか?意に添わない結婚だったら無理にする必要はないのですよ。一度や二度深い関係になったからといって、そのことで責任を感じて結婚する必要などあなたにはないのですからね」

と悩み事の相談をアンジェリークに強要したり(しかも、わざとオスカーの目の前で)、暗に結婚を考え直せと仄めかしたりもしたのだ。

水面下でのリュミエールの暗闘にも拘わらず、やっぱりアンジェリークはオスカーと結婚してしまい、リュミエールは心底がっかりしたのだった。

だが、今は往年のアンジェリークの負けずとも劣らず魅力的なディアンヌがいた。

オスカーが父親であるということを除けば、ディアンヌは優しく、愛らしく、聡明でリュミエールの絵心を刺激してやまない存在だった。

誰もが愛さずにはいられないかわいらしい子どもから、愛らしい少女に、そしていまや十全の美しい女性となりつつある。

リュミエールはディアンヌが幼いときから、事あるごとに肖像画を描いていた。

ディアンヌが学校に通うようになってからは、学校の休暇にしか聖地に帰ってきてくれなくなったので、あまりきちんとした絵がかけていないのが、リュミエールにはとても心残りだった。

彼女が学校を卒業したら記念に自分の書いた絵を贈るのだ。そのためにも今モデルになってもらわねば…と思いながら歩いていたリュミエールを尻目に、一人の若者が砂塵をまきあげて走り去っていった。

「あれはランディ…そして、この道はオスカーの家に続く一本道…毎日毎日、よくもまあ…彼女はあなたたち若者だけのものではないのですよ。」

リュミエールは長いローブをおはしょりすると、無駄毛の一本もないすべすべした足も露に大股で走り出した。

 

『私は疲れているのだろうか…』

水の麗人がなまっちろい足を露にものすごい勢いで走って行く姿を見たような気がして、ジュリアスは自分の目を疑った。

先週少し働きすぎたのかもしれない。

これも、ディアンヌと一緒の時間をどうにか作りたかったからだった。

ジュリアスは、ディアンヌを遠乗りに誘うつもりだった。

幼いときから父の影響で馬に慣れ親しんでいた彼女は学校で馬術の手ほどきを受けたらしく、前回聖地に帰った来た時はもう、一人で馬を乗りこなしていた。

ジュリアスから見たらまだまだ危なっかしい乗りこなし方だったが、彼女の年齢を考えれば上出来だといえた。

だから、ジュリアスは今度ディアンヌが聖地に帰って来たときはぜひとも、遠乗りに誘おうと思っていた。

馬術をレクチャーするという意識ではなく、純粋にディアンヌと馬にのることを楽しみたかった。

ジュリアスはオスカーがアンジェリークと結婚してしまって以来、一緒に遠乗りに行く相手がいなかった。

ジュリアス自身は馬をこよなく愛していたから一人で馬を駆けることにさほど寂寥感は感じていなかったが、たまにはやはり同好の士がほしい時もある。

それが美しい少女ともなれば、その楽しさも一際である。

そう思って、愛馬をゆっくりと並足で歩かせていたジュリアスであった。

自分の見たものがどうにも信じられなかったジュリアスはそのまま馬をいそがせることもなく、かっぽかっぽとゆったりオスカー邸に向かっていた。

 

この日、ディアンヌはめずらしく自分からは出かけず、私邸に留まっていた。

それでいて、時折玄関のほうを気にするような素振りを見せ、顔には巣から飛び立つ前の小鳥のような期待と不安のない交ぜになったような表情を時折浮かべていた。

その様子を見ていたアンジェリークは

『あら、ディアンヌは誰かを待っているのかしら?なんだかそわそわしてるし…誰かと約束して迎えに来てもらうことになっているのかしら。』

と思いながら、自分もオスカーとデートの約束をして、その上オスカーが迎えに来てくれるとわかっていた日は朝から落ち着かなかったっけと、懐かしく思った。

まだ少女だったから、お化粧するでもなく髪やリボンに気をつけて、それでも鏡で何度も自分の姿を見なおして…

幼い恋だったと、今は思う。でも、真剣だった。どんな物にも負けない、譲れない思いだという自信はあった。

もしかして、この子は恋をしているの?相手はゼフェル様?ランディ様?…と思ったとき来客を告げるチャイムが鳴った。

「あ…は〜い」

アンジェリークが出ようとすると、玄関近くにたまたま通りがかっていたオスカーが一足先にドアを開けていた。

オスカーが一瞬絶句する気配が感じられた。

「…これは、これは、お珍しい。我が家になんのご用です?」

玄関に花を抱えて立っていたのは闇の守護聖クラヴィスその人であった。

 

「クラヴィスさま、家に来てくださるなんて!嬉しいですわ、お上がりになって!」

アンジェリークが珍しい客人の来訪を純粋に喜んでいる。

「まあ、きれいなお花!早速飾りますね!」

アンジェリークがクラヴィスが抱えていた花束をさっさと自分が受取ってしまうと、一瞬クラヴィスが困ったような顔をした。

「そ、その花は…いや、なんでもない。今日は、その、少々オスカーとアンジェリークに話があってな…」

「はぁ、ここではなんですから、では、客間に…」

「うむ、邪魔をする」

オスカーがクラヴィスを客間に案内する。

「じゃ、私はお茶の用意をしてきますね。ディアンヌ、お父様とクラヴィス様のお話の邪魔をしちゃだめよ。」

「いや、ディアンヌも同席してもらいたいのだが…」

「?…クラヴィス様がそうおっしゃるのなら…これも、もう小さな子どもではありませんし、おとなの話に首を突っ込むようなことはしないとは存じますが…ディアンヌに聞かせてもよい話なのですね?」

「ああ、その、いてもらわないと困るのだ…」

「は?」

「い、いや、こちらの話だ。客間はこちらだったか。」

「あ、ああ、どうも気が付きませんで…」

どうにもこうにもぎこちない二人のやり取りを聞きながら、これは場を和ませる役として、ディアンヌが必要なのだろうとアンジェリークは思った。

クラヴィスがなんの用でうちに来たのかわからなかったが、なにか言い出しにくそうな用件らしいし、話が途切れて気まずい時は、話題を子どもに振ればとりあえずの間がもつから、そのためにディアンヌに同席を依頼したのだろう。

クラヴィスへ出すお茶は使用人まかせにはできない、というよりしたくないと思ったアンジェリークが厨房に消える間際オスカーとクラヴィスから、二、三歩遅れてついていくディアンヌの表情がみたこともないほど固く、それでいて、どこか晴れがましい様子なのが目に入り、アンジェリークはそれを訝しく思った。

 

「あ〜っ!間に合わなかったか…クラヴィスがオスカーの家にはいっちまったぜ。だが、オスカーが出迎えたってことは、クラヴィスのやろーはオスカーに用があったんだな。なら、俺がディアンヌを誘うのに、なんの不都合もないな。よしっ!」

とゼフェルが呼び鈴をならして、ディアンヌへの取次ぎを頼もうと思ったその時、遥か彼方から砂塵を巻き上げ近づいてくる一陣の風があった。

「ゼフェル!待て!」

「げっ!ランディ!なにしに来やがった!」

「きまってるじゃないか、ディアンヌを誘いにさ。おまえ、昨日ディアンヌとあってたんだろう?今日は俺に譲れよ〜!」

「なに、たわけた事を抜かしてやがる!昨日ディアンヌを連れ出したのはてめーのほうじゃねえか!俺が誘いに行ったらおめーと出かけたって言われたぜ。おめーのほうこそ、俺に譲るのが筋ってもんだろーが!」

「なに言ってんだよ。ディアンヌは一時間もしないうちに帰っちゃったんだぜ。おまえと約束があったんじゃないのか?」

「俺はしらねー。もしかして、俺たち以外にもディアンヌを誘ってたやつがいるのか?」

「ディアンヌにきいてみればいいさ。今日のデートするついでに昨日は誰とあってたんだい?って」

「それは俺の役目だ!」

「俺だ!」

「埒あかねーから、ディアンヌに決めてもらおうぜ!俺たちのうちどっちとデートするかよぅ!」

「望む所だ!」

丁度その時執事がドアをあけてくれ、二人はもつれあい転げこむようにオスカー邸のドアをくぐった。

なんか、昔もこんなことあったよなーと思いながら、二人は押し合いへし合いしながら互いに一歩も引かずに無理やり同時にドアを通り抜け様としたので、ドア枠にはさまってしまいなかなか家のなかにはいれなかった。

プロなので顔には出さなかったが、執事は内心あきれていた。

なんというか、自分の主人も含めて守護聖という方たちは変なところで、子どもっぽさの抜けていない人が多いなと。

漸く同時に玄関ホールに入った二人は、これまた同時にディアンヌへの取次ぎを頼んだ。

すると、執事はただいまお嬢様は、お館さま、奥様とご一緒にクラヴィス様とご歓談なさってますので…と語尾を濁して言外に、お引取りをといったつもりだったのだが、ゼフェルはわざとそれに気付かない振りをし、ランディは心の底から気づかずに口々に言い募った。

「クラヴィスのやろーが用があるのはアンジェとオスカーになんだろ?ディアンヌはおまけで付き合ってるだけなら、俺が誘ったって問題ねーだろうが。おやぢたちのつまんねー話に付き合わされるより、若者は若者同士っていうだろう?」

「そうそう、執事さん、なにもディアンヌに用があって、クラヴィスさまはいらした訳じゃないなら、いいじゃないですか。で、ディアンヌはどこに…あ、クラヴィス様と一緒だから客間ですね。こっちだな」

あああ、ちょっとお待ちを…という執事の必死の引きとめも虚しく、若者二人はまたも押し合いへしあいしながら客間に乱入を図った。

ドアの外に三人の話声が聞こえた。

 

アンジェリークが手づからいれたアイリッシュコーヒーをワゴンにのせて運んでくると、オスカーとクラヴィスはテーブルを差し挟んで押し黙ったままだった。

所在なげに視線が宙を泳いでいる所を見ると、どうやらクラヴィスはまだ用件を切り出していないらしい。

もともと口の重いクラヴィスであるが、それほど言いにくいことなのだろうか。

わざわざ私邸に訪ねてくるからには執務がらみの用件ではなさそうだし、一体全体何のご用事でいらしたのかしら…と思いながら、コーヒーをまずクラヴィスに供し、そののちにオスカーとディアンヌの前にカップを置いた。

アンジェリークが戻ったのを見てクラヴィスが漸く口を開いた。

「アンジェリークにも、聞いてもらいたいので待っていたのだが…」

アンジェリークがオスカーの脇に立ち、ワゴンからテーブルに移す為にとシュガーポットを手にした。

「あら、私もですか?いったいなんのご用件かしら。ああ、ディアンヌ、あなたにこのコーヒーは早いかもね。お砂糖を上げましょうか?」

「実は…そなたたちの息女であるディアンヌ・フローラを私にいただきたい」

「は?」

オスカーとアンジェリークが二人同時に訊ね返した。クラヴィスの言葉の意味がわからなかった。

「つまり、私とディアンヌの結婚の許可を、両親であるそなたたちからもらいたいのだ」

ぶこっ!

「ぶぎゃ!」

オスカーが素っ頓狂な叫びをあげた。

驚きのあまりアンジェリークが手にしていたシュガーポットを落っことし、大ぶりの磁器製のそれがオスカーの頭を直撃、オスカーの燃えたつ髪の毛は真っ白なグラニュー糖まみれになってしまった。

「きゃー!オスカーさま!ごめんなさい!大丈夫ですか?!」

「つつつ…いや、ちょっと驚いただけだ…熱いコーヒーのポットを落っことさないでくれたことに俺はお嬢ちゃんの愛を感じたぜ。」

「ごめんなさ〜い、私も驚いちゃって…っていうことは、今の私の聞き間違いじゃないんですよねぇ?」

「ああ、俺も、自分の耳が信じられないんだが…確かに、その、クラヴィス様、クラヴィス様は、うちの娘と結婚したい、そうおっしゃったように、聞こえたんですが…」

クラヴィスが憮然とした表情で肯定した。

「さっきからそう言っている。できればディアンヌが学校を卒業したら、式を挙げたいと思っているのだが、どうだろうか…」

「ど、どうだろうかと、私にきかれましても…」

オスカーとアンジェリークがあまりに意表をついたクラヴィスの用件に頭が真っ白になってしまった。

一方の当事者であるディアンヌは、無言のまま両手を祈るように膝の上でくみ合わせてすがるような瞳でクラヴィスと両親に交互に視線を投げかけていた。

「私ではディアンヌの婿がねとして不足か?」

クラヴィスが身をずいと乗り出した。

その分オスカーの身体がたじたじとあとずさる。

「いいいいいいえ、滅相もない!そういうことではなくて余りに突然で、しかも、思いもかけなかったもので。それに、こういうことは本人どうしの意見がまず肝要かと…」

「それなら…」

とクラヴィスが話しかけたとき、

「ちょっとまったぁ!」

ゼフェルとランディがくんずほぐれつしながら、二人一塊になって客間に転がり込んできた。

「クラヴィス、おめーディアンヌを落とす前に、両親の許可をもらって外堀からうめてこーとは、いい度胸じゃねぇか!しれっとした顔して、そんな姑息な手段を画策してやがったとはよぅ!」

「く、クラヴィスさま、俺全然きがつきませんでしたよ〜。まずオスカー様とアンジェの許可をいただいちゃえば、ディアンヌとのお付き合いもスムーズにいきますもんね。大人の考える事はやっぱ違うな!はははっ!というわけでオスカーさま、俺もディアンヌとお付き合いさせてください!よろしくお願いします!」

「ばっきゃろ!感心してる場合かよ!」

ランディを張り倒そうとして、当面の敵はこいつじゃねぇ!ということを思い返しゼフェルはクラヴィスのほうに向き直った。

「クラヴィス、てめぇ、順序が逆だろうが!まず、ディアンヌにコクるってなら話もわかるが、それをすっとばして、こともあろーに、いきなりプロポーズたぁ、どういう了見だ!」

「コクるとは、どう言う意味だ?」

まったく動じる気配を見せずにクラヴィスが逆に訊ね返した。

「これだから、生きた化石はよー!コクるっていうのは、おめーが好きだ!って本人にいうことにきまってんだろーが!」

カブトガニのように泰然と、シーラカンスのように悠然と、クラヴィスは余裕の態度を崩さない。

「だから、結婚を申し込んでいるではないか。おまえがなにを憤っているのか私にはわからぬな。」

若者の突然の乱入にあっけにとられて言葉を失っていたオスカーが漸く二人の間に割って入った。

「ゼフェル、下がれ、おまえたちを呼んだ覚えはないぞ。第一クラヴィス様がうちの娘に求婚したからっておまえにはなんの関係もないだろうが。」

「んだとぉ!関係なら大有りだ!俺はなぁ、俺だってディアンヌが好きなんだよ!一挙に婚約しなくちゃつきあえねーってんなら、俺だってぷろぽーずすらぁ!ディアンヌ!好きだ!俺と結婚してくれ!」

ディアンヌはこのゼフェルの突然かつ行きがかり上の告白&プロポーズに心底驚愕してしまい、言葉を失った。

幼い時から兄のように思っていたゼフェルが自分をそんな目でみていたなんて、本当に想像だにしていなかったのだ。

そこに、さらにランディが追い討ちをかけた。

「あああ〜!ぬけがけするな!ゼフェル!俺だってディアンヌが好きなんだ。本気だよ、ディアンヌ!結婚しよう!俺、きっと君を幸せにするから」

「おめー幸せの意味わかっていってんのかぁ?」

「ゼフェル!おまえなぁ、言うに事欠いて、それはないだろ、それは!」

「上等だ!やるか?!」

「いいか…」

『いいかげんにしてください、お二人とも!』とアンジェリークが流石に強くたしなめようとした時

「私は争い事は嫌いです」

の言葉とともに登場したリュミエールが、その怪力無双でゼフェルとランディの首根っこを掴み上げて持ち上げブレイクに入った。

「なにしやがる!このばか力!」

中空で足をばたつかせながら、ゼフェルが毒づいたがリュミエールはまったく意に介さない。

「あななたちの醜い争いに怯え心痛めている美しい瞳が目にはいらないのですか。あんなに曇って、今にも涙の雨がふりそうではありませんか…」

言われて二人ははっとわれに帰り、ディアンヌのほうを見やった。

大きな蒼の双眸は極限まで見開かれ、今にも泣きそうな顔になっていた。

「あああっ!すまねぇ!ディアンヌ、おめーを哀しませるつもりじゃねえんだ!ただ、俺の真剣な思いを伝えたくてよー」

「ディアンヌ、恐がらせちゃってごめん!でも、君の事が好きだっていったのは本心だよ!どうか、考えてみてくれないか!」

「なんと、あなたたちは…ディアンヌに告白するにしても、もう少しスマートなやり方があったのではないですか?このような衆人環視の中で愛を告げられても、無垢な乙女は羞恥に戸惑うだけだということもあなたたちにはわからないのですか?」

リュミエールはやれやれといった風情でで暴走中の二人を諭す。

「しかたねーだろーが!おめーの相方が、こともあろーにオスカーにディアンヌとの結婚の許可なんてものを申しこみやがったんだからよー!黙って見ててそのまましゃんしゃんと婚約成立なんてさせるわけにはいかなかったんだからよー!」

「そ、そうですよ〜、ここで俺たちの気持ちいわなかかったら、ディアンヌがクラヴィス様のものになっちゃうかもしれなかったんですよ〜、もう、いい加減おろしてくださいよ〜」

「それは驚きました…」

リュミエールがパッと手を離したものだから、若者二人はどすんと床にお尻から落っこちた。

「てぇ〜…」

「クラヴィスさま、あなたもディアンヌを…ふむ、私は正直言ってそこまでは考えておりませんでしたが、そういうことでしたら、私も覚悟を決めねばなりませんね。ディアンヌ、私はこれからもあなたの姿を紙やキャンバスに写し取って行きたいのですよ、今も、そしてこれからもずっと。死が二人をわかつまで永遠に…」

「お、おめーなぁ、これ幸いとばかりに尻馬にのってコクってんじゃねーよ!」

「ここで、自分の気持ちをいわなかったら、ディアンヌ争奪戦に参加する資格がなくなると聞いては言わない訳にはまいりませんからね?」

にっこりと水の麗人は優雅な笑みをうかべた。

「よもや、ここでこんな争いが繰り広げられていたとは…ここにい合わせたことを僥倖とすべきか否か…」

「じゅ、ジュリアス様!」

敬愛する上司の登場に取りこみ中の様子をつぶさに見られて、オスカーは気が動転した。

秩序を重んじるジュリアスがこのような騒ぎを好ましく思うわけがない。

この場をしきるべきホスト(なにせここはオスカーの私邸であるから)としての力量のなさに、激烈な雷がおちるものと心に耳栓をしようと思ったのだが、雷が落ちるどころかジュリアスはなにやら思案がおである。

「ふむ…ディアンヌを細君にか…今の今まで考えた事はなかったが…ディアンヌ、おまえは聖地のなんたるか、守護聖のなんたるかを誰よりも良く知っている。貴婦人としても申し分なく成長した。このジュリアスの配偶者としてもこれ以上に相応しい女性はおまえしかおらぬかもしれぬ。ああ、もちろん、私もおまえを好ましく思っている。ただ、そんな結論を出すにはまだまだおまえは幼いと思っていただけだ。今、言わぬと資格がなくなるというのなら、私のことも考慮してみてはくれまいか?」

このジュリアスの言葉にオスカーのほうが恐れ入った。

「ははぁ〜、うちの娘に勿体無きお言葉。このオスカー感謝と感激に耐えかねます!」

「おまえと結婚するなどといっているわけではないぞ、オスカー。では、おまえの意見としては私こそディアンヌの配偶者として相応しいと、こう思ってよいのだな?」

「はっ!ジュリアス様の仰せとあらば…」

「パパ!ひどい!私の気持ちはどうなるの!」

今まで事の成り行きに言葉を失っていたディアンヌが涙をぽろぽろ流しながら、オスカーの言葉を遮った。

「なんでパパが勝手に私の結婚相手を決めちゃうの!最初にクラヴィス様が私に求婚してくださったのに、どうしてそれには答えてくださらないで、ジュリアス様に勝手にお返事しちゃうの!」

「いや、それは、そのあの…」

ジュリアスに命じられたことには条件反射で頷いてしまうのだ、とにかく逆らえないのだ、なんてことを父親の沽券として言う訳にはいかないオスカーは、ディアンヌに突っ込まれてだらだらと冷や汗を流した。

18才のディアンヌは、いきなりのプロポーズの嵐にどうしたらよいかわからず途方にくれていたのだが、オスカーが勝手に返事してしまいそうになったのを聞いて、今まで溜めていたものを一気に爆発させた。

「私はクラヴィス様が好きなの!お慕いしてるの!だから、クラヴィス様にきていただいたのに!パパとママにきちんと報告したかったのに。なのに私の気持ちも聞かずに勝手になんでもきめちゃうパパなんて大嫌い!」

顔を覆って泣きながらディアンヌが部屋から飛び出してしまった。

「ディアンヌ!待ちなさい!ディアンヌ!」

アンジェリークが引きとめようとしたが、遅かった。

大嫌い、大嫌い、大嫌い大嫌い…』

頭の中にエコーするディアンヌの言葉にうちのめされ、真っ白に燃え尽きたオスカーが呆然と立ち竦む。

同じく、

クラヴィス様が好き、クラヴィス様が好き、クラヴィス様が好きクラヴィス様が好き…

行きがけの駄賃でディアンヌに愛を告白した面々も、このディアンヌの言葉が頭の中をかけめぐり、その場に呆然と立ち尽くしていた。

一人クラヴィスが気遣わしげな、心配そうな視線をディアンヌの消えたドアになげかけていた。


戻る  次へ