しゅるり…と絹が擦れる、練るような擦過音は、官能をひどく刺激する。
自らオスカーのネクタイを緩めてみて、アンジェリークは、それを感じた。いつも、オスカーに着衣を緩められている時は、自分が一杯一杯で、感じる余裕などなかった感覚だった。
ひとつひとつ、オスカーのシャツのボタンを外していく過程も、その結果、少しづつ、浅褐色の肌と厚い胸板が見えてくる過程もそうだ。否応なく、自身の内部で、官能が高まりいくのをアンジェリークは感じる。
シャツの袷に手をかけた時、図らずも、厚い胸板に掌が触れる。我知らず、頬が熱くなる。抱きすくめられている時は、無我夢中だから、かえって、胸板の滑らかさも、その厚さも、しみじみ感じ入る余裕がない気がする。そして、シャツの袖から腕を抜きやすいように、オスカーが身体を上手く捻ってくれると、その気遣いも嬉しいし、オスカー様も私と早く素肌を触れ合わせたいと思ってくれているんだということが、それこそ肌身で感じられて、胸が熱くなる。翻って、私も、オスカー様に脱がせていただくとき、ちゃんと、その気持を態度で表せているかしら?と考えてしまう。
オスカーが自分に「脱がせてくれ」って請うてくれなければ、己が身に引き寄せて考えられなかったかも、とアンジェリークは思う。そして、それこそ、意識してかせずにかはわからないけど、私に、さりげなく、こういう感覚を気づかせてくれるオスカー様ってすごい、改めて、そう思う。
『私も、オスカー様に触れたい、触れてほしい、触れてもらってうれしいって、ちゃんと態度に表せているかな…オスカー様に、その気持、伝わっているかしら…』
いつもなら…言い訳みたいだけど、オスカー様に触れられるとー手とは限らずだから、尚更ーあんまり心地よくて、私、すぐ、何も考えられなくなってしまうから、オスカー様に、きちんと『触れて幸せ、触れてもらって嬉しい』気持を、きちんと伝えられているかわからない、自信がない。
それなら、今は…考えてみたら、絶好の機会じゃないの。自分が、オスカー様を、ぬ、脱がしている今なら…気持が一杯一杯にならずに済むから…オスカー様への気持、自分から、きちんと伝えられるのではない?
アンジェリークは、オスカーの裸の胸を見上げる、眩しい、でも、見つめずにいられない。しっかりとした首筋、、厚い胸、太く逞しい腕、引き締まった腹部、まだ露になっているのは上半身だけなのに、それでも、オスカーは男性美の具現そのものに思え、アンジェリークは、その力強い美しさに圧倒されてしまう。
アンジェリークは、引き寄せられるように、オスカーの首に腕を回して、抱きついていた。
「オスカー様は、本当に…きれい…逞しくて、男性的で、力強くて…私、見惚れて、ぽーっとなってしまいます…。こんなに魅力的なオスカー様に触れることができて…オスカー様からも、いつも、たくさん触れていただいてて…私、本当に幸せです…」
「ふ…でも、お嬢ちゃんが目にしているのは、まだ、俺の一部でしかないだろう?それで満足しちまっていいのか?俺は爪先まで、お嬢ちゃんのものだぜ…魅力的といってもらえて、俺も嬉しいが…どうせなら、俺は、俺の全てを、君の目で確かめてくれてから、そう言ってもらいたいな、お嬢ちゃん」
「ええ…はい、オスカー様…」
男性美を体現しているようなオスカー様が、ご自身を「お嬢ちゃんのものだ」と…私のものだと言ってくださる、こんな…夢みたいな…これ以上は考えられないような幸せを、私は、どう、感謝すればいいのか、わからないくらい…
「オスカー様、好き…どうお伝えしたらいいか、わからないくらい、好き…愛しているの…」
珍しいことだが、その時、アンジェリークは、極自然な気持の発露として、自らオスカーに口づけた。幾度か、角度を変えて唇を触れ合わせてから、おずおずと舌を差し出し、オスカーの唇を割った。自分の大胆さを思うと、頬が熱くなる、が、その熱さすら心地よく、アンジェリークは、それこそ己の熱に酔ったように、大胆に舌を進め行き…アンジェリークの舌が、オスカーのそれに触れた、と、すぐさま、オスカーは熱烈に…待ち構えていたようにアンジェリークに応えてくれた。舌と舌とが複雑な動きで絡みあわさるうちに、アンジェリークのそれは、いつのまにか、オスカーに絡めとられ、唇は、きつく吸われていた。アンジェリークは、自らが仕掛けたキスの主導権を、あっという間にオスカーに奪い取られた形だったが、そんなことは、どうでもよかった、ただ、オスカーとの熱い貪るような口づけに、暫し没頭した。
銀糸がかかるほど存分に口づけを交わした後、切なげなため息のような呼気を一つ零すと、アンジェリークは、その紅い唇をオスカーの頬に、耳朶に、首筋へと、滑らせていった。オスカー様に、気持を、まだ、伝えきってない、その想いが、アンジェリークをして、唇への口づけを解かせたが、でも、オスカーに少しでも多く触れていたい気持も抑えがたく、その想いが、降るような口づけとなって現れた。
オスカーは、アンジェリークの髪を愛しげに撫でさすり、アンジェリークのくれるたくさんの口づけを、その心地よさを心行くまで堪能しているようだった。
オスカーは、アンジェリークがしたいように、させてくれるためにか、今日は、まだ、あまり自分からは触れてこない。髪や背中を大きな手で、慈しむように、ずっと、なでてくれているだけだ。だけど、それが、アンジェリークには、安心できて、とても心地よい。自らの大胆さや、拙いであろう愛撫、たどたどしい手つきでの脱衣も「大丈夫だ」と優しく、力強く、肯定されている気がして、心が落ち着くし、自信が持てる。
逞しい肩口から厚みのある胸元へと、唇を滑らせていく。褐色の乳首にちゅ…と口づけ、みようみまねで舌を回したら、オスカーが、やるせなげに熱い吐息を零してくれた。アンジェリークは、背筋がぞくぞくするような喜びを感じながら、オスカーのスーツのスラックスに手をかける。留具を外してファスナーを降ろそうとしたら、中心の固い塊に手が触れた。なんだか、申し訳ないような、いたたまれないような気がして、アンジェリークの手つきは、今までより一層ぎこちなく、たどたどしくなったが、それでも、オスカーのスラックスを、なんとか、取り去ろうとする。
その間もオスカーは相変わらず堂々としたものだった、アンジェリークが、着衣を脱がせやすいように、随所随所で、さりげなく身体を浮かせたり捻ったりしてくれるが、態度自体はまったく、落ち着いたもので、むしろ、誇らしげでさえある。
そのオスカーの落ち着いた態度に、アンジェリークも、心が鎮まる。考えてみれば、オスカー様のこの状態は、自分を女性として求めてくれていてくださるからで、それなら、私は、感謝して…むしろ、喜んでいいんだわ…でも…
そうは思っても、いざ、オスカーの身に残るは最後の下着1枚となったところを目の当たりにすると、アンジェリークは落ち着くどころではない。布の上からでも見事としかいいようのない男性器の様子に、自然と胸が騒ぎ、頬が熱くなる。無論、無反応より嬉しいに決まっているし、見るからに窮屈そうだから、早く解放してあげたい、なんて、反射的に考えてしまった自分に、アンジェリークは更に赤面する。
スラックスを脱がす時に、自分はベッドから降りた方がやりやすいと気づいたので、アンジェリークは、オスカーの前の床に膝立ちになって、オスカーの下着に手を伸ばした。
けど、実際、その場になってみると、やはり、恐る恐るといった手つきで、アンジェリークは、オスカーの身体に残った最後の布の、中でも端の方に手をかけた。既に硬く屹立しきっているオスカーの男根を下手に刺激しないよう…つまり、なるべく、そのものに触れないようにしながら下着を脱がそうと試みる。
が、現実には、中々、オスカーの下着を降ろせない。元々、臍まで届こうかという屹立に触れずに、下着を取り去ることなど不可能に近いのだから、無理もないのだが。それでも、なんとか苦労しぃしぃ、アンジェリークは最後の布をオスカーの身体から取り去った。
改めて威容を露にした、天を突く勢いのオスカーのものに、アンジェリークが息を飲む気配がした。
ずっと気を張り詰めていたせいか、もしかしたら、本当に息を詰めていたのか、アンジェリークの頬は紅潮し、些か呼気も荒い。
オスカーが、アンジェリークの髪をなでながら、こう話しかけてきた。
「どうした、お嬢ちゃん、妙にびくびくしてたようだったが…俺のものが恐いのか?…」
「え?あ、ごめんなさい、私ったら、たどたどしくて…あ、もちろん、恐いなんて思ってません、むしろ、愛しいっていうか、嬉しいことだっていうか…きゃ…私ったら…」
「嬉しいことをいってくれる。じゃ、なんで、そんなに恐る恐るだったんだ?ん?」
「そ、それは、あの、さ、さ、先の所とかに、不用意に、布を引っ掛けちゃったら、オスカー様が痛いんじゃないかと思って…す、すごく、感じやすいところなんでしょう?だから、気をつけなくちゃって意識してたから…」
「っ…お嬢ちゃんは、本当に優しいな…」
「だって、私の不手際で、オスカー様が、痛い思いをしたら大変だから…オスカー様は、いつも、私にすごく優しく触れてくださるのに…私、オスカー様に触れてもらった処は、どこも、溶けてしまいそうになるの…でも、それは、オスカー様が、すごく優しく気を遣ってくださってるからだって、私、知ってますもの。オスカー様、絶対、乾いた手や指で、私の、その感じやすいところには触れないでしょう?私が痛くないように…でも、私の手は、今、乾いてるし、オスカー様のも、今、見たら、あの、ぬ、ぬ、濡れてるのは、先端だけ、でしょう?だから、不用意に私の手が直に触れたら、オスカー様が痛いかもしれないって、注意しなくちゃって考えていたら、もたついてしまって…」
申し訳なさそうに言うアンジェリークは、オスカーの瞳が妖しく光ったことに気づかない。
と、オスカーは、徐に、アンジェリークの頤に手を添えて、顔を上向かせ
「…なら、少々手が触れても痛くないよう、お嬢ちゃんが俺のものを濡らしてくれ、先端だけでなく、全体を、な…」
と、言いながら、親指の腹で、すい…とアンジェリークの唇を撫でた。
「!……オスカー様…」
「できるな?」
「あぁ…はい、オスカー様…」
アンジェリークは、水鳥が舞い降りるような優雅な動きで、オスカーの脚の間にその身を滑らせた。
壊れ物を扱うように注意深く、張り詰めきった肉茎に手を添えると、恭しい様子でその先端に口づけた。
その仕草を合図とみなしたかのように、オスカーもまた、アンジェリークの背に手を伸ばし、ワンピースのファスナーを一気に下まで降ろした。
小さな白い手が、ふてぶてしいほど逞しい肉の幹に、そっと添えられている。細心に、大事そうに。
小さな手で支えてもらう必要など、本来なら、全くない。それほど、力強く、天を突く勢いで、肉の幹は屹立している。
なのに、彼女が、その小さな手を、肉茎に触れるか触れないかという加減で包み込むように添えているのは、口唇での愛撫を、存分に果たすために他ならない。
アンジェリークは、ベッドの端に腰掛けているオスカーの両脚の間にその身を置いて、一心にオスカーのものを愛撫していた。
アンジェリークは、まず、オスカーの肉茎全体に無数の口づけを落とし、その硬さに感嘆したような吐息をつくや、全体の輪郭を確かめるように、柔らかな唇を押し当ててきた。
アンジェリークが、オスカーのものに幾つも、愛しげにキスを落としているその間に、オスカーは、アンジェリークのワンピースを彼女の足元に落とし、ブラジャーのホックも外して、彼女の乳房を露にしていた。アンジェリークは、瞬間、恥らうようにうつむきかけたが、すぐ、気を取り直したように、オスカーのものへの愛撫に、再度没頭し始めていた。
そして、口づけからの流れで、閉じた唇を茎全体に横滑りに滑らそうとしたものの、そのままでは、なめらかに唇が動かないことに気づいたのだろう。
熱に浮かされたような瞳をして、ふっくらとした紅い唇から小さなピンクの舌を覗かせると、肉茎の根元の方から、丁寧に舌を這わせ始めた。
何度も舌を往復させて節くれだった幹をいとおしそうに舐めあげる。一つも余すところないように、という丹念さで、肉の茎に舌を押し当て、浮かんでいる筋を舌先でなぞり、大きく張り出した雁首の部分や、幹との境目の部分を弾くように、くすぐるように、小刻みに舌を躍らせる。
雁首の周囲を、ぐるりと舌先で掬うように舐めてから、漸く、滑らかな先端に唇を押し当てた。
先端は、先走りのにじみと、アンジェリークの唾液で、十分に潤っている。アンジェリークは、先端の滑らかな感触を慈しむように唇を滑らせてから、控えめに舌を差し出して、先端の合わせ目に差し入れると、先走りを舌先で掬い取った。
「う…」
愛らしい容姿のアンジェリークが、猛々しい男根に、かわいらしい舌をあてがい、舐めあげる、艶冶に頬を染めながら…その淫らな眺めにも眩暈がしそうなほどだのに、自身がアンジェリークの舌にこじ開けられ、侵入されるような淫靡な感覚にー軽い異物感を伴うが故に、犯されているような倒錯した快感を感じ、オスカーは、思わず、声をあげてしまう。
すると、アンジェリークの舌の動きが、更に力を得たように大胆になった。
先端にくるくると舌を回しては、雁首全体を美味そうにしゃぶる。
十分に濡れて滑らかになった茎の部分に、しなやかに指をまとわり付かせ、繊細な手つきでしごきあげる。
もう片方の手に、やわやわと、果実をくすぐるように撫でさすられて、オスカーは、熱く、荒い吐息をこぼした。
「今日のお嬢ちゃんは、いつも以上に大胆だな…こんなに美味そうに俺のものをしゃぶって…」
「んっ…だって…オスカー様に気持ちよくなっていただきたいの…少しでも多く…オスカー様、気持いい?」
「ああ、いつのまにこんなに上手になったんだと、びっくりしているくらいだ…」
「…ほんとに?…嬉しい…」
アンジェリークが顔を上げ、オスカーを見上げた。その目元はほんのりと染まり、瞳も微熱があるように潤んでいた。
「ああ、お嬢ちゃんが、とても丁寧に、一生懸命舐めてくれるから…我慢するのが、大変だ…みているだけでも、たまらなく、エロチックな眺めだったしな…」
そういいながら、オスカーは、揺れるアンジェリークの乳房に手を伸ばし、その先端を、軽く捻るようにつまんだ。
「きゃん…」
一瞬、アンジェリークの愛撫の手が止まる。
「ああ、やっぱり、こんなに硬くなって…」
オスカーは、両手で、一つづつ、こよりを撚るように、くりくりとアンジェリークの乳首を軽く捻った。
「あ…あんっ…」
「俺のものをしゃぶる拍子に、かわいいおっぱいが揺れて、俺の脚に当たるし、舐めているウチに、お嬢ちゃんも欲情してきてただろう?先端が、硬くなっていくのがわかるし…なにより、愛らしい唇とかわいい舌が俺のものを、丁寧に、美味そうにしゃぶってくれるその様子が…君が欲情に頬を染め、瞳を潤ませる様も、かわいくて、いやらしくて、俺をそそって、たまらないぜ…」
「だって…大好きな愛しいオスカー様だから…オスカー様のここも…大切で愛しくてたまらないの、私とオスカー様を繋いでくれる…そう思うと、自然に…大切に慈しみたくなるの…少しでも、気持ちよくなってもらいたくなるの…だから…」
アンジェリークは、改めて、オスカーの脚の間に屈みこむと、先端をゆっくりと口腔内に収めていった。
「う…」
ふっくらぽってりとした唇が、オスカーに見せ付けるように、滑らかな先端を包み込んでいく。
が、雁首と茎の中ほどまでが、アンジェリークの唇に覆われたところで、動きが止まる。
オスカーの怒張は、アンジェリークの小さな口には、到底根元までは収まりきらないからだ。
それがわかっているので、アンジェリークは、中ほどまでと割り切ったように、ゆるやかに顔を上下させ始めた。
オスカーは、愛しげにアンジェリークの髪をなでる。
「…そう、唇をすぼめて…とても上手だ、お嬢ちゃん…」
半ばほどまでではあるが、己の男根が、彼女の唾液にまみれて妖しく濡れ光り、アンジェリークの口腔を出入りする様を眺めていると、オスカーは、自分が愛撫されているのか、彼女の唇を犯しているのか、わからなくなる、そんな妖しい気分になってくる、それほど、欲望を刺激されてしまう。
「んんっ…」
オスカーの励ましに、アンジェリークの動きが熱意を増す。
暖かな口腔にオスカーのものを収め、包み込むように舌を回し、柔らかな唇をすぼめて、ぽっちゃりとした唇で茎の部分を愛撫する。根元までは口に納めきれないので、その部分と果実の部分に手をあてがって、柔らかく玩ぶように指を遊ばせる。
オスカーに与えられる愛撫をみようみまねしてみたり、オスカーに褒められたり、励まされたりするうちに、自然と体得していった。どうすれば、オスカーが熱い吐息を零してくれるか、オスカーのものが、更に硬さを増すのか。
「本当に美味そうにしゃぶってくれる…俺のものは、美味いか?お嬢ちゃん…」
淫らな問いかけに、アンジェリークは、オスカーのものを咥えたまま、思わず、無意識に頷いていた。
と、顔を上下させたとたん、口腔内のオスカーのものが、更に硬く、幹も太さを増したような気がして、アンジェリークは、思わず、苦しくなって口を外してしまう。
そのタイミングを見計らっていたかのように、アンジェリークは、オスカーに手をとられて、ひょいと立たされた。しかし、オスカーへの愛撫に気持が昂ぶっていたアンジェリークは、腰に力が入らず、すぐ、その場にへたりこみそうになってしまい…が、その寸前、オスカーの腕に掬われるように抱き上げられ、ふわりと身体が浮いたと思うや、次の瞬間、アンジェリークは、ベッドの上に横たえられていた。オスカーは、アンジェリークを立たせようとしたのではなく、己の腕をアンジェリークの脚の下に回して抱き上げる体制にするため、一瞬、手をとって身体を起こさせたのだった。
「あ…オスカー様…」
流れるように、ベッドに横たえられたアンジェリークには、オスカーのその意図がわかった。オスカーは、どこか、苦しいことに耐えているように瞳を切なげに細めて、アンジェリークを見下ろしていた。
「お嬢ちゃん、もう、俺の方が、我慢できない…君を…俺にも君を愛させてくれ…」
オスカーは答えを待たずに、アンジェリークに口付けると、すぐさま、口づけを解いて、乳房の先端を口に含んで吸った。
「あ…」
オスカーの手はアンジェリークの両の乳房を同時に、大きく捏ねるように揉みしだく。
オスカーの唇は、落ち着きないとすらいえる忙しなさで、アンジェリークの両の乳首を交互に含み、執拗なまでになめ回し、吸い、極軽く歯をたてては、乳首の根元から歯先でしごいた。歯をたてたまま、一番敏感な先端に、舌を小刻みに躍らせたりもする。
「あ…あぁっ…あんっ…」
「お嬢ちゃんのおっぱい、美味しいぜ…」
「や…やぁん…」
アンジェリークは、言葉とは裏腹に、オスカーの髪の間に指を埋めては、オスカーの顔を、己が胸乳に抱き寄せてしまう。しなやかな指先が、オスカーの髪をかき乱す、その動きさえもが、オスカーを煽っていることにも気づかず。
「だが、こっちも…同じか、それ以上に美味そうだ…悩みどころだな…」
オスカーは笑みをかみ殺したような声でアンジェリークに囁くと、改めてアンジェリークの乳首を口に含みながら、手は脚の方へと伸ばして、アンジェリークの太腿から腰のラインを何度も撫でさする。大きな手での愛撫の心地よさに、アンジェリークの身体全体が、とろんと緩む。その機を逃さず、オスカーは流れるような手つきで、アンジェリークの身体に残っていたレースのショーツを手早く取り去り、そのまま、極自然に、アンジェリークの股間へと、手を差し入れた。中心を探るまでもなく、大腿部までもが、既に、蜜を塗りたくったようにとろとろになっていた。
「すごいな、お嬢ちゃん、こんなに濡らして…俺のものを咥えて、こんなに感じてくれていたなんて…俺は嬉しいぜ…」
「や…そんな……言わないで…」
「恥ずかしがることはない、だって、今から、俺が、もっとお嬢ちゃんを濡らしてあげるんだからな…」
「え?あ…あぁっ…」
オスカーは、一度、アンジェリークに口付けるや、その細い足首をしっかと握って、持ち上げるように大きく脚を広げさせてから、その手を彼女の大腿部へと滑らせ、しっかりと内腿を押さえ込んで、アンジェリークの花弁を、余すところなく、眼前に晒させた。アンジェリークはいわば、身体を外向きに、中ほどまで二つ折りにされた状態で、そのまま、オスカーに身体ごと押さえ込まれているというような有様だ。恥じらいから花弁を隠したくても、身体を捻ることもよじることもできない。
「あ…やぁん…」
「ああ、お嬢ちゃんの花が、美しく淫らに、咲き誇っているのがよく見える…しとどに蜜を滴らせ、妖しく濡れ光って…何かを欲するように、待ち望んでいるかのように…控えめに花弁をほころばせているその様が…」
「や…そんなに見たら…恥ずかしい……」
「こんな美しい花を見るななんて、とてもできない相談だな、お嬢ちゃん。そして、俺を誘う美しい花弁に、俺は賞賛をこめて触れ、味合わずにはいられん…」
と、オスカーは、アンジェリークの花弁に、遮二無二むしゃぶりつくように口づけた。
舌を差し出し、花弁のあわせ目に差し入れて、何度も何度も、花弁を割るように舌を上下させる。
「あ…あぁんっ…」
「何度味わっても、たまらなく美味いぜ、お嬢ちゃんの蜜は…薫り高く、とろりと舌に絡みついてきて…俺は、もう、夢中だ…」
言うや、オスカーは、秘裂に深々と舌を差し入れると、それを激しく抜き差しし始めた。尖らせた舌で、肉襞をかき分け、かき回し、丸めた舌先で、愛液を掬いとる。果ては、花弁全体に口づけて、唇を鳴らすように愛液をすする。
「あっ…はぁ…あぁっ…」
アンジェリークは、火のように熱い吐息を間断なく零し始める。それを耳にしてオスカーは、押さえ込んでいたアンジェリークの足から手を離し、乳房に伸ばしては、硬く張り詰めっぱなしの乳首を、指の腹で転がす。
無理にアンジェリークの脚を押さえ込む必要は、もうないと見てのことだった。もう、俺の愛撫を受け入れ、酔いしれてくれているアンジェリークは、花弁を俺の視線から隠そうと、身をよじったりする心配はない、と。
案の定、手を離しても、アンジェリークは、身じろぎしなかった。オスカーの与えてくれる愛撫に、もう、身も心も委ね、それを喜びと感じていたから。
そこで、オスカーはアンジェリークの手をとり、一度、指と指を絡めて、手の甲にキスをしてから、その手を彼女自身の膝頭に導き、置かせた。
「さ、お嬢ちゃん、俺が、もっと、お嬢ちゃんを舐めやすいように、自分の脚を支えててごらん?できるな?」
媚薬を耳に流し込むかのように、甘く、低い声で囁くと、アンジェリークは荒い息を押して健気に頷く。
と、同時に、オスカーは、支えていた太腿にぐっと力を込めて、花弁を更に大きく開かせて、肉莢を露にする。
「かわいいぜ、お嬢ちゃん…お嬢ちゃんの真珠が、硬く張り詰めているのが莢の上からでもわかる…」
オスカーは、顔を左右に振って、形のいい鼻先で、莢を軽くなぶるように撫でた。
「あぁん…」
アンジェリークが焦れたような声をあげる。
オスカーは器用に鼻先で、莢を剥いて、肉珠を外気にさらす。
「ああ、やっぱり、こんなに懸命に、健気に、立ち上がって…お嬢ちゃんの真珠は、俺に弄ってもらいたくて、こんなに背伸びをしてるのかな…?」
ぴん、とそそり立つ肉珠に、息を吹きかけるように、呼気だけで囁くと、アンジェリークの身体が小さく身震いするのを、オスカーは感じた。
「や…オスカー様…はずかしい…」
「舐めて…っていえるか?言ってごらん、お嬢ちゃん…」
「ん…舐めて…オスカー様…一杯…オスカー様の唇で触れて…」
「ああ…なんて、かわいいんだ…かわいくてたまらないぜ、お嬢ちゃん…」
オスカーは、やにわに肉珠を根元から口に含むと、きつく吸った。
「あぁっ…」
突然の鋭い刺激に、アンジェリークの身体が、弓のようにしなる。
オスカーは肉珠を深く口に含んだまま、根元の周囲に舌を回した。小刻みに左右に舌で弾き、下から上へと舐めあげ、また、舌をあてがったまま顔ごと回したりもする。
「あぁああっ…やっ…は…ぁ…溶けちゃう…溶けちゃいそう…」
「まだだ…お嬢ちゃんが俺にくれた愛撫を思えば…まだ全然足りない…」
オスカーが、舌で肉珠を舐るたびに、アンジェリークの身体が、無秩序に震える。敏感な部分に不用意に歯があたったりしないよう、オスカーはアンジェリークの腰をしっかりと支えて、なおも、執拗に舌を回し、唇を鳴らすように口づけては、きつく吸いあげる。
「きゃぅっ…は…あぁっ…痺れて…も…だめ…わかんな…あぁっ…」
アンジェリークは闇雲に頭を振る。眦に涙が浮かぶ。
「ああ、そろそろ、俺も限界だ…愛らしいお嬢ちゃんが欲しくて、お嬢ちゃんと繋がりたくて…」
「は…はぁ…オスカー様……私も欲しい…オスカー様が…」
「ああ…俺は君のもの、君は俺のものだ、アンジェリーク…」
オスカーは身体を起こして、アンジェリークに一度口づけ、眦に浮かぶ雫も丁寧に舐めとった。
そして、改めて、もう一度、包み込むような抱擁と口づけ与えると同時に、一方で、アンジェリークを勢いよく一気に貫いた。
「んんーっ…」
唇をふさがれたまま、アンジェリークがくぐもった嬌声をあげた。
オスカーは、アンジェリークをきつく抱きしめたまま、勢いを削ぐことなく、突き上げを放つ。
「んんっ…ふぁっ…あっ…あっ…あぁっ…」
オスカーの身体の下で、アンジェリークが、もがくように口づけを解いてしまう。オスカーに最奥を叩かれると同時に、高い声が出てしまい、とてもではないが、口づけながらでは呼気が続かない。その一方で、意識せずとも、アンジェリークの手は、オスカーの背をあとでなく彷徨っては、緋色の髪に差し入れられて、髪をかき乱す。
「お嬢ちゃんの中…熱くて、柔らかくて…きゅうきゅう俺を締め付けてくるぜ…たまらない…」
「ああっ…だって…オスカー様の…すごい…大きくて…苦し…くらい…」
「それはお嬢ちゃんが…良すぎるからだぜ…っ…」
オスカーは、一度、抱擁を解いて上体を起すと、アンジェリークの手をとり、再度、彼女自身の膝頭に置かせた。
そのまま、彼女の手に、オスカーは自分の手を重ねる。そして、重ねるや、力をこめて、アンジェリークの身体を大きく開かせた状態で、脚を折り曲げるような形で、彼女自身の脚をその身に押し付けた。
押さえ込まれてアンジェリークの腰が少し浮き上がり、結合部分が、オスカーにはっきり見えるようになる。
猛々しい肉の幹が、紅色の濡れ光る花芯を貫き、襞をめくりかえらせている様は、まさに、淫靡以外の何物でもなかった。
「お嬢ちゃんの花に、俺のものが勢いよく出入りしてるぜ…ほら、触ってごらん」
オスカーは、重ねていたアンジェリークの手を、瞬間、とりあげて、自分たちの繋がっている部分に触れさせた。
恐ろしいほどに硬い…これが人の身体の一部とは思えないほど硬い棒状のものが、確かに自身の真ん中を貫いて、圧倒的な存在を誇示しているのを、アンジェリークは、はっきり感じた、感じ取らされた。しかし、その事実よりも、もたらされる狂おしい快楽に、どれほど乱れてしまうのかを考えるよりも、アンジェリークには、自身を貫くオスカーのものが根元までぐっしょりと濡れそぼり、つかみ所がないほど滑らかになっている、その事実が一番恥ずかしかった。オスカーのものを、滑らかにしているのは、明らかに自分がとめどなく溢れさせた愛液だったから。
「や…ぁあっ…恥ずかし……」
「恥ずかしがらなくていい、お嬢ちゃんの花も、こんなに喜んでる…俺のものにからみ付いて…嬉しそうに締め付けてきて…」
オスカーは、再びアンジェリークの脚を押さえ込み、腹側の肉壁を意識してカリで執拗に擦りあげる。
「あぁっ…すごい…そこ…擦れて…ぁあ……」
「っ…ほら…また、締まった…感じているんだろう?」
「あぁっ…だって……こんな……奥まで…奥まで来て…あぁあっ…」
「っ…お嬢ちゃん…気持いい…か…?」
「んんっ…いい…気持いいの…オスカーさまぁ…」
「かわいい…お嬢ちゃんは…かわいすぎる…」
「だって好き…好きなの…オスカーさまぁ…」
「俺も…愛してる…だから…」
もっともっと気持ちよくしてやりたい、何もわからなくなるほど、声も出せなくなるほど、何度でも、快楽の極みを味あわせてやりたい。
オスカーは、改めてアンジェリークの足首を己の肩に担ぎ上げると、そのまま身体を倒しながら、立て続けに突き上げた。自分のものを、根元まで突き入れんと目論むように。
「あぁっ…」
最奥を鋭く穿ったまま、腰をできるだけ密着させて、ぐりぐりと回す。
「ひぃんっ…んんんーっ…」
アンジェリークの嬌声は、もはや、悲鳴のようだった。
それでも、オスカーは律動を緩めない。
組み敷くアンジェリークの腕は、あてどなく己の肩や腕を撫で回しているが、突き入れるたびに、強く、触れている部分を握り締めてくる、時折、爪をたてもする。まるで、溺れる者が、必死にすがりついてくるかのように。
『そうだ、俺の与える快楽に溺れてくれ、とことん溺れて…我を見失ってくれ…』
オスカーは、祈りにもにた願いを胸に抱きながら、アンジェリークに惨いほどの律動を与え続ける。
柔襞を貫き、かきわけ、かき回し、擦りあげる。最奥の弾力に跳ね返され、貫いたと思った柔襞にみっしりと絡みつかれ、その包み込まれる感覚がたまらなく幸せで、名残惜しくも引き抜くときはカリをめくり返されて、思わず声が出そうな程狂おしい快楽をもらう。
君が、こんなにもめくるめく、蕩けるような幸福と快楽を俺に与えてくれているように、俺も、君を、思いきり深く酔わせたい。可能な限りの快楽を知らしめてやりたい。
ぐっ…と、一度、二つに折りたたまれたままのアンジェリークの身体を抱きしめてから、オスカーは、様々な角度での突き入れを意識して、律動を放つ。
「や…も…こんな…はげし…あぁっ…すごい…」
アンジェリークは、息も絶え絶えに、苦しげに頭を振る。オスカーは、瞬間、自分がアンジェリークに快楽を与えているのか、苦しめているのか、わからなくなる、が、だからこその、ほの暗い喜びをもオスカーは感じてしまう。
『俺が…君を壊すはずない…でも…君を壊したい…俺のもので壊れてしまえ…何もわからなくなって…そんなことを、どこかで、思ってしまう俺がいる…』
どちらもオスカーの真実だった。
「それほど…好きだ、好きなんだ、アンジェリークっ…」
腰をがっしと押さえ込み、決して身体が逃げないようにして、オスカーは、思い切り激しく、渾身の力で腰を打ちつけた。
「あぁっ…はっ…あぁあっ…」
アンジェリークの肉襞がうねるようにオスカーのものを包み込んで絞ってき、たまらず、オスカーも自身を解き放った。
肉の楔がどくどくと脈打って命の証を愛する女に注ぎ込む間、その幸せをかみ締めて、オスカーは、改めて無限の愛と感謝をこめて、アンジェリークに口づけた。
荒い呼気が収まってから、アンジェリークは、オスカーに話しかけた。
「オスカー様、お召し物を喜んでくださって、私も嬉しかったですけど、あの、また、結局、私の方が、幸せにしてもらってしまったみたいで…なんだか、申し訳ないような気がします…」
「そんなことはない、お嬢ちゃんは、自分をわかってないな」
オスカーは、アンジェリークをぐっと胸元に抱き寄せると、小さな口づけを顔中に降らしながら、こう続けた。
「今だって、お嬢ちゃんは、すごく丹念に丁寧に、俺を愛撫してくれてたじゃないか。それだけに留まらず、お嬢ちゃんは、自分では気づいていないようだが…俺が君にあげる喜びや幸せの何十倍ものものを、俺にくれているんだぜ。そういうところが、お嬢ちゃんらしいところともいえるんだが…とにかく、お嬢ちゃんが気に病んだり、負い目を感じる必要は、本当に、何一つないんだ。お嬢ちゃんが、服をくれたおかげで、今日も、俺はまた一つ、新たな幸せを味あわせてもらったしな」
オスカーのこの言葉は、紛れもなくオスカーの真っ正直な気持だった。リップサービスなど微塵もない。
ただ、オスカーは、誕生日の度に、アンジェリークが「自分の方が物をもらったり、いい気持にさせてもらっているみたい」と、恐縮していることも知っていた。そんなことは、ちっとも気にすることはないのだ、オスカーがやりたくて、していることなのだから…と、言ってはみても、アンジェリークはそれこそ、その言葉をオスカーの優しさからの気遣いとみなしているようで、どうも、本心だと思っていない節があった。
が、アンジェリークが、プレゼントに衣類をくれたとわかった、その時に、オスカーは、いいことを思いついたのだ。
この贈り物を口実にして、今年、俺は、極力受身になって、お嬢ちゃんに主導権を握ってもらおう、お嬢ちゃんに主体的に動いてもらうのなら、お嬢ちゃんも何も恐縮せずに済むだろう、と。そう思って、情事の最初は、アンジェリークからの愛撫を受けるに任せ、受身に徹していたオスカーだったのだが、思いのほか、巧みなアンジェリークの愛撫と、その眺めにー視覚からの刺激に、自分の方が辛抱たまらなくなってしまった。あのまま愛撫を受けていたら、絶対、俺は、お嬢ちゃんの口に放ってしまってた、お嬢ちゃんは気にしないだろうが、俺は、やっぱり、自分一人、先に達してしまうのは嫌だったし、第一、俺はお嬢ちゃんの中でいく!と決めているから、あの場でシフトチェンジしないわけにはいかなかったんだー結局、いつものように、思い切りアンジェリークを組み敷いてしまったのは…ある意味、嬉しい誤算だった。とにかく、オスカーは、ありとあらゆる意味で大満足だったのだ。
アンジェリークも、オスカーの言葉と、満足げな雰囲気を察して安心したようで、くすくすっと嬉しげに微笑んだ。
「も、オスカー様ったら…でも、本来のお誕生日プレゼントのワインをまだ、差し上げてないんですけど、いつ、差し上げましょう…あの…この後、お夕飯の時に、おあけになります?」
「それもいいな…」
「はい、今年は、オリジナルラベルのワインにしてみたんで、できれば、見ていただきたいなって思ってましたし」
「それは楽しみだ。けどな、お嬢ちゃん、俺は、やっぱり、赤ずきんなお嬢ちゃんが、俺にワインを届けてくれるってシチュエーションも捨てがたいんだがな?」
「あ、はい、ワインをお届けするだけなら、それは、もう、今すぐでも大丈夫なんですが…でも、あの、その場合、やっぱり、赤ずきんちゃんごっこも一緒?ですか?」
「あったりまえだろう!お嬢ちゃん!去年の赤ずきんなお嬢ちゃんの…狼に食べられる時の、恥じらい、戸惑いながらの乱れっぷりといったら、かわいいの、かわいくないのって…めちゃくちゃかわいかったからな!なんなら、俺は今すぐでもいいぜ。幸いマントもワインも、今、この部屋にあるだろう?ちょうどいい。俺は、今年は、素肌にマントのお嬢ちゃん、いや、赤ずきんにワインを届けてもらいたいと思ってたしな」
「す、す、素肌にマントだけ?ですか…なんか、も、ものすっごく、えっちっぽい感じがします〜」
「だからいいんじゃないか!お嬢ちゃん!それに、このスーツ一式は、いわば食前酒のような贈り物だと、そう言ったのは、お嬢ちゃんだよな!食前酒は、正餐のいわば前奏曲だ。となれば、俺は、やっぱりメインの贈り物もお嬢ちゃんから、もらいたいぜ。『ワインを届ける赤ずきん』という正餐をな?」
「くすくす…も、オスカー様ったら、子供みたい…でも、今日は、オスカー様のお誕生日ですものね、ワインは元々さしあげるものですし…」
「いいんだな、いいんだな!?お嬢ちゃん!じゃ、早速…」
「あん…でも、ごめんなさい、赤ずきんちゃんごっこをするには、私、今は、ちょっと…眠くなってきちゃって…少し、おやすみさせていただいてからでもいいですか?オスカー様」
「ああ、お嬢ちゃん、そうだな、すまなかった、きづかなくて…ゆっくり休むといい。イくと疲れるものだしな、お嬢ちゃんも一度といわずイッていたみたいだし、それは消耗したことだろう」
「も、やぁああん、何、おっしゃってるんですか、オスカー様ったらぁ…」
照れてぽかぽかと軽く胸板を叩くアンジェリークを、オスカーはしっかと抱きしめ、髪に口付ける。
「じゃ、元気な赤ずきんが訪ねてきてくれるのを、狼は待ってるぜ、少し休むといい、その間に、ワインに合うタパスでも用意させておこう、後で、一緒に食おうな、お嬢ちゃん」
「はい、オスカー様」
「おやすみ…」
もう一度キスをすると、アンジェリークは、スイッチが切れたように、ことんと寝いってしまい、オスカーは、自分が、どれほどアンジェリークの体力を消耗させていたか、彼女が限界まで頑張ってくれたのか、わかって、少々反省した。
それでも、今日は俺の誕生日だ、お嬢ちゃんが目覚めれば楽しい赤ずきんごっこだー!という高揚に、オスカーの反省はあまり長続きしたとはいえなかったが。
とりあえず、目が覚めたら、お嬢ちゃんも空腹だろう、お嬢ちゃんに片時なりともひもじい思いをさせるわけにはいかん、と考えたオスカーは、アンジェリークを起さないようにーこの熟睡ぶりなら、余り、その心配はなさそうだったがーインターホンで、ワインにあうツマミを適当に取り合わせて、後で再度連絡した時、部屋までもってきてくれと、家人に命じた。
さて、あとは、アンジェリークが目覚めるのを待つばかりだ。
そう思ったオスカーは、自分ももう一度ベッドにもぐりこみ、アンジェリークを横向きに己が懐に抱き抱えて、彼女の甘い香を胸いっぱいに吸い込みながら、自分も少々休んで体力を回復しようと、目を閉じた。
アンジェリークの規則正し寝息を聞いているうちに、程なく睡魔に襲われ、オスカーも夢の国へと誘われ、足を踏み入れていく。
『まったく、最高の誕生日だぜ。そして、誕生日が、毎年、こんなに楽しく、待ち遠しいものになったのも、全て、お嬢ちゃんのおかげだ…ありがとう、お嬢ちゃん。お嬢ちゃんがいてくれて、俺がどんなに幸せか…目が覚めたら、改めて、たっぷり教えてあげような…』
目覚めた後は、更に甘く暖かく芳しい夢が、待ち受けている、いや、俺は、もう、至上の夢をこの腕の中に抱いているじゃないか…そう思って就く眠りは、至福の喜びにオスカーをいざなってくれたのだった。
FIN