Cross Over 4

アンジェリークは、暫時オスカーの言葉の意味を考えてから、おずおずと、尋ね返した。

「…あの…それって、今すぐこのランジェリーを着けてみるってことですか?オスカーさま…」

「もちろん。お嬢ちゃんは魅力的だ、俺は君に夢中だ、そのランジェリーだってすごく似合うさ、と、俺が言葉だけをどれほど重ねるよりも、お嬢ちゃんが実際に身につけてみて、自分の目で本当に似合うって事と…その姿に俺がどれだけくらくら来ちまうか、目の当たりにすれば、何も心配いらないことがわかるだろう?自分が子供っぽいなんてコンプレックスもなくなって、お嬢ちゃんも自信をもてるだろうし…」

ふっと笑って、オスカーはもう1度、アンジェリークに口付けた。

「でも、本音を言えば、お嬢ちゃんの艶姿が早く見たくて、俺が辛抱できないだけなんだ。お嬢ちゃんがどれほどかわいく魅力的に見えることかと気になっちまって、このままじゃ飯ものどに通らないからな?」

アンジェリークは瞬時、言葉を詰まらせ、弾かれたようにオスカーの胸にむしゃぶりついた。

「オスカーさま…お優しい…ほんとにお優しくて…」

私がコンプレックスがあるなんて言ったから、そのせいで、オスカー様の言葉を悪い方向に受け取ってしまったって言ったから、私が、もう、そんな気持ちに捕まらずにすむように、してくださろうとして…

「オスカー様があんまりお優しいから、私、もっと好きになっちゃう…こんなに好きで、もう、どうしよう…」

「それはよかった。何せ俺もお嬢ちゃんに夢中だから、お嬢ちゃんが俺に夢中でいてくれないと困るんだ」

「…もう、オスカーさまったら…」

アンジェリークは目を伏せた拍子に、自分の持っていた箱の中身を改めて見下ろした。

「あ、じゃあ、どれをつけてみましょう…」

「決まってるさ」

オスカーが迷わず黒のキャミソールを手に取った。

「俺が着せてやろうな」

「え?え?え?やーん、オスカー様、向こうで、自分で着替えてきます〜!」

「お嬢ちゃんがやるより、俺がやる方が早い、ほら…」

1度脱がすと決めてしまうと、オスカーの手練手管はまさに神の手とでもいうように冴えわたり、アンジェリークはあっと言う間にショーツ1枚にされていた。

「ノーブラだから手間が省けたな」

「やん…」

「さ…」

オスカーに促され、おとなしくキャミソールに腕を通した。

『こ、これって…やっぱりブラはつけないのよね…カタログでもそうだったから…』とわかってはいても、レースを通して乳首が透けてみえてしまうのかと思うと、自然と頬が赤らんでしまう。

「せっかくだからな…」

と、ショーツもさっと取られ、足を上げさせられて、Tバックも穿かされてしまった。これで、子供扱いされていないといえるのだろうか?と根本的な疑問がわきかけたが、その暇もなく、オスカーに声をかけられる。

「ほら、お嬢ちゃん、顔をあげてごらん?」

「は、はい…」

とは言ったものの、恥ずかしくて照れくさくて、どうしても、顔は斜めにうつむき加減になってしまう。つい、透けてみえているであろう胸元を手は隠そうとしてしまう。アンジェリークは無自覚であったが、その立ち姿は、まさしく美神誕生という趣だった。

「綺麗だ…お嬢ちゃん、よく似合ってる…すごく綺麗だぜ…」

「オスカーさま…」

「俺が言うより、自分の目で確かめてみるといい…」

肩を抱かれて、部屋の姿見の前に連れていかれた。

「あ…」

「ほら…自分の目からみてどうだ?」

オスカーがアンジェリークの肩を抱いたまま、自信ありげな表情で背後から鏡を覗き込んできた。己の審美眼を誇るかのように。

そして、当のアンジェリークは、鏡に映った己の姿を見て、気恥ずかしさと安堵の気持ちが同じほどに拮抗して渦巻いていた。

確かに、心配していたよりちぐはぐだったり、みっともなくはない、でも、でも、やっぱり恥ずかしい…

わかっていたことだがキャミソールは柔らかな総レースなので、胸の形は輪郭もその先端もしっかり透けて見えている。アンジェリークの胸はおわんを伏せたような美乳で、先端は綺麗につんと前に突き出しているので、乳房が透けて見えているといっても、本人が恥ずかしがっているほど淫蕩な印象はない。綺麗な胸の形がそのままきちんと出ているので、むしろ、端麗な彫像のように気品のある清冽な美しさがにじみ出ている。

裾のモチーフレースは僅かに斜めに切れ上がっているので、裾が揺れるたびに、Tバックの前面がちらちら見え隠れする。もちろん、こちらも総レースなので、金褐色の淡い茂みがほんのりと霞のように透けて見えている。

「お嬢ちゃんの髪と肌に、黒はことのほか映えるな…ほら、とてもよく似合ってるじゃないか…」

「…オスカー様、そう言ってくださって嬉しい…透けて見えちゃうから…やっぱりちょっと恥ずかしいけど…」

「ああ、本当に色っぽいな…レースを透かして見るお嬢ちゃんの乳房も、ヘアも、想像以上の色っぽさだ…たまらなくそそるぜ」

言いながらオスカーは背後から、アンジェリークの乳房をレース越しに掴んで、大きく回すようにもみ始めた。

「あんっ…」

「そして、俺はお嬢ちゃんの思惑通り、もう、骨の髄までめろめろだ。君の妖しく魅力的なランジェリー姿に、頭が変になりそうなくらい欲情してる…ほら…」

オスカーが、背後からぴたりと身体を押し付けるようにアンジェリークを抱きすくめた。硬く熱く張り詰めたものがレース越しの肌に触れた。

「や…恥ずかしい…」

「どうして?だって、お嬢ちゃんは、俺を誘惑したかったんだろう?」

「あ…」

アンジェリークは一瞬だけ戸惑いを見せたが、頬を染めて、こくんと頷いた。オスカーに少しでも魅力的だと思ってもらいたかった、いっぱい好きになってもらいたいと思った。それは、言葉を変えれば、そう、確かに誘惑なのだと得心したから。

「オスカーさま…好きです…だから、嬉しい…私のこと欲しいと思ってくださって…私、嬉しい…」

「俺も…君が好きでたまらない…だから…君に誘惑されると、こんなにも嬉しい…」

オスカーはアンジェリークを後背から抱いたまま乳首をつまみあげた。乳首は硬くそそり立って、レースをくっと持ち上げていた。まさぐらなくても、すぐに、そこと知れるほどに。レースごと指先で摘まんで、円を描くように転がした。ざらりとしたレース地を押しのけて、ぴんと立つ乳首の感触が指先に心地いい。

「あんっ…」

「ほら、ここもこんなに硬くして…俺に触れられるのを待っていたんだろう?」

オスカーは、レースの上から、乳首を指先でひねったり、先端を軽く引っかくようにこする。

「あっ…」

うなじに舌を這わせながら、指の腹を乳首の先端でくるくると回す。指を弾き返すような弾力がたまらない。

そして、ざらつくレース越しに触れられる感触が、アンジェリークのやるせなさを助長する。直に触れられるのとは、また違った感触が乳首から痺れるようにほとばしる。

「あっ…あんっ…」

オスカーは身体をずらして、アンジェリークの斜め前に回る。鏡を通して、アンジェリークが官能に溺れていく姿をつぶさに見続けたい気持ちもあった。だがこの美しい乳房を、その先端を間接的に眺めるのでは気がすまなくなった。小さな身体に覆いかぶさり、先端を際立たせるようにレースの上から乳房を揉む。黒いレースを押しのけるように、更に乳首がそそり立つ。いつもはかわいらしい印象の薄紅色の乳首なのに、黒のレースを通して見るそれはめまいがするほど妖しく、たまらなく淫靡に思えた。

そう思った瞬間、オスカーはレース越しに夢中で乳首を吸っていた。黒いレースの陰影に彩られた乳首は強烈な媚薬のようにオスカーの情感を沸騰させた。ざらつくレースごと、乳首に舌を這わせる。舌先で乳首の輪郭をなぞるように舐めあげては、歯先で軽く噛む。歯を立てながら、乳首の先端の上で舌を躍らせる。

「あっ…あんっ…あぁっ…」

唐突とも思えるオスカーの激しい愛撫にアンジェリークは大きく頭を打ち振った。その拍子に、鏡の中の自分たちの痴態が目に入ってしまった。オスカーが自分の胸に覆いかぶさり、下着ごと、文字通り食らいつくようにその先端を噛んだり、舌を差し出して小刻みに弾いている様が…その様子がとてつもなく淫らに思え、アンジェリークはたまらず、きゅっと瞳を閉じた。

しかし、その情感の昂ぶりにアンジェリークの身体は、如実に速やかに反応した。

オスカーが舌で弾き転がしていた乳首は、より硬くそそり立ち、しなやかな弾力を増した。オスカーはすぐに、唇でそれを悟った。アンジェリークがとても、昂ぶり乱れているのがわかる…俺が、昂ぶっているのと同じほどに?

それが喩えようもなく嬉しくて、その事実をはっきり確かめたくて、オスカーは乳首の先端をこそげるように歯を立てたまま、Tバックの細いストリングの脇からいささか強引に指を差し入れた。

「あぁっ…」

そこの濡れ方は予想以上だった。

秘唇の表をさっとなぞっただけで、そこがしとどに濡れそぼっていることが指に感じられた。オスカーが秘唇を指で掻き分けずとも、愛液が滾滾と溢れかえっているのがわかる。

アンジェリークの秘唇はふっくらと豊かで弾力に富んでいるので、オスカーが堰を切ってやるように、舌か指で秘唇を掻き分けてやるまで、愛液はそれほど表にはあふれ出てこないことが多い。だからこそ、かき回してやった時の肉の坩堝も、溢れかえる愛液も、この上なく熱く蕩けるようで、その感触にオスカーは酔う。

だが、指で割ってやる前からこんなに濡れているなんて…それだけ、今、アンジェリークは深く欲情していることの証左に他ならない。オスカーも、思わず息が荒くなる。

「っ…ふ…お嬢ちゃん…ものすごく濡れてる……」

「ああんっ…」

レースごと乳輪全体を口に含みながら、秘唇をそっと撫で、くちゅり…と入り口を浅くかきまぜただけで、アンジェリークが大きくのけぞった。

指をねじ入れる所作はいささか無理やりだったが、秘唇をなぞるオスカーの指の動きは、あくまでも柔らかく滑らかだ。力を入れる必要など全くないくらい、そこがすべらかだからだ。

豊かに溢れる、とろりとした愛液の感触を指先で慈しむように、オスカーは優しく、だが、ねっとりと絡みつくように指をうごめかす。

「すごいな、まるで洪水だ…」

「やんっ…あっ…あぁっ…」

確信をもって、指で唇を割っていく。すぐに指先が探し当てた。この世の何よりも貴重で愛らしい宝玉を…指をくっと曲げて、その珠の表面をそっと撫でた。

「あああっ…」

いつにもまして、硬く張り詰めた感触がいとおしかった。

「やっ…あっ…あん…」

指がその珠を撫でさするたびに、アンジェリークがぎゅっとオスカーの身体にしがみつく。小刻みに身体が震えている。オスカーが支えてやっていてももう立っていられないという余裕のなさが、ひしひしと伝わってくる。

アンジェリークの身体がバランスを失うまえに、そして、もっと愛撫に没頭するために、オスカーはアンジェリークの身体を抱きかかえて、口付けながら、もんどりうつようにベッドに倒れこんだ。

アンジェリークの唇をふさぎながら、己の着衣をすべて剥ぎ取った。

そして、徐々に下へ下へと口付けを下ろしていく。腰をぐっと抱え込んで少し持ち上げる。だが、アンジェリークのショーツは脱がさない。頼りないような細いストリングを少し持ち上げてやるだけで、ことは足りるし、今は、それをこそオスカーは望んでいた。

指にストリングを引っ掛けるようにして固定して、濡れてつやめく秘唇を己の目にあらわにした。間髪をいれず、溢れるかえる愛液を舐め取るように、秘裂に深々と舌を差し入れた。

「あっ…やっ……恥ずかし…」

ぬめぬめと熱い舌が己の襞をかきわけてうごめく感触の妖しさと羞恥と、それ以上に愛されている喜びにアンジェリークの意識は白熱する。オスカーが限りない熱意でもって、自分を慈しもうとしてくれているのがわかるから。自分を果てない高みに押し上げるのが、オスカーの自分への愛の現れだと知っているから。

アンジェリークの気持ちをわかっているかのように、オスカーの唇も舌も熱を帯びていく一方だ。柔襞の隅々までもが舌で掻き分けられ、秘唇全体を強く吸われた。その愛撫に応えるかのように自分の内部から熱く滾滾と湧き出してくるものを感じる。

「こんなに濡れて…太ももまで滴ってるぜ、お嬢ちゃん…」

秘唇の合わせ目を指先でほぐすようにくすぐることと、肉の珠に羽のように軽く触れる愛撫とを同時に行いながら、オスカーはアンジェリークの内腿に降るような口付けを落とし所々に軽く歯をたてさえする。

「あぁっ…」

「まだまだこれからだぜ、お嬢ちゃん…」

オスカーは先刻まで指で弄っていた珠を、ここで漸く口に含んだ。舌先で小刻みに休むことなく弾いては、ちゅくちゅくと音を立ててその珠を吸った。

「ああああっ…」

アンジェリークの身体が感電でもしているかのようにびくびくと跳ねた。いや、アンジェリークの主観では、似たようなものかもしれない。小さな肉の珠は飽くことなくしゃぶられ、ちぅ…と音を立てて吸われ、玩ぶように舌で転がされる。オスカーの舌にその部分を様々に弄われるたびに、全身に電気が走ったような鋭い快楽が駆け抜けていく。そして、その鋭い快楽が、アンジェリークの四肢からすべての力を奪っていく。もう、全身が溶けてしまったアイスクリームのように正体がない。

「も、もう…許して…もう、だめ…」

「欲しいか?」

「んっ…オスカー…さまっ…」

アンジェリークが泣き出しそうな顔で頷いた。

オスカーはアンジェリークの膝頭をぐっと押さえて、足をM字型に開かせるた。下着を穿かせたままでストリングを引っ張り、その中央で蜜を零している花芯に勢いく屹立した剛直をねじこんだ。

「ああああっ…」

悲鳴のような嬌声をアンジェリークがあげる。

オスカーはアンジェリークの足を力をこめて押さえ込んだまま、彼女の腹側の肉壁を意識してこするように突き上げた。

「あっ…ああっ…すご…っ…」

「ほら、下着の脇から俺の物が出入りしているのが丸見えだぜ…お嬢ちゃん」

「あぁっ…いやっ…」

「でも、すごく感じているだろう?食いちぎりそうに締め付けてくる…」

欲情しているのは、自分だって同じだ。自分のほうが激しいかもしれない。彼女のふっくらとした秘唇の中心を、ふてぶてしいほど逞しい肉柱が蜜にまみれて出入りしている。色濃く染まった肉襞がめくりかえって、もっと色濃い己の肉柱を包み込む眺めは、正気を失いそうなほどに、淫猥で扇情的だ。それを好んで眺めている自分、その眺めに限界まで張り詰めている自分を感じる。

いや、もうとっくに正気など失っている。今の俺は、いかに激しく、容赦なく彼女を攻めさいなむかということしか考えられない。限りなく愛しくて、この世のどんなものより大切なのに、俺は彼女に苦悶にも似た表情を浮かばせたくて、息も耐えそうなほどの啜り泣きをあげさせたくて、この凶悪な肉楔で彼女を攻め貫くのだ。息つく暇など寸分も与えずに。正気でどうしてこのような惨い真似ができよう。

俺の攻めが激しすぎるのだろうか、アンジェリークの秘裂は自分の進入を拒んでいるのかと思うほどきつく締め付けてくる。優しくしてやれなくてすまないと思う、だが、抑えられない。渾身の力で、貫かずにはいられない。

なのに、俺が引き抜く時は、まとわりつくように君の柔襞は俺のものに絡みついてくる。この剛直を惜しんで離すまいとするかのごとく。

俺はその感触に陶然とする。求められる喜びが胸に滾る。自分自身が熱く熔けていくような錯覚を覚える。

こうして求めてもらいたくて、離れまいと惜しんでもらいたくて、俺は一層欲深く、彼女をむさぼってしまうのかもしれない。

衝動的に噛み付くように口付けた。アンジェリークは、その口付けにもけなげに応えようとする。オスカーの背に腕を回し、拙いながらも懸命に舌を回して、唇を吸おうとする。

愛しくて愛しくて、もう、どうしていいかわからない…

「お嬢ちゃんの好きなのをしてやろうな…」

「はっ…ぁあっ…あんっ…」

オスカーは1度交合を解き、アンジェリークの腰を抱いてくるんと身体を回転させた。そのままがっしと腰を抱えこんで高々とあげさせる。キャミソールの裾がめくれて、黒のストリングに飾られた真っ白な臀部がむき出しになる。腰骨の中央あたりにモチーフの薔薇が咲いており、アンジェリークのかわいいお尻を、妖しく、あでやかに彩っている。そのすぐ下方には、蜜をしとどに零して、艶々と濡れた花弁がストリングの脇から見え隠れしていた。つい、今しがたまでオスカーの凶器を受け入れていた余韻に僅かに口を開けてひくついている。まるで、早く来てくれとオスカーを誘っているかのように…

アンジェリークをもっと乱れさせたくて身体を返した、なのに、俺の方が頭が変になりそうなほど、そそられちまう…

オスカーは衝動に突き動かされるままに、小さな布の脇から己の剛直を再びねじこんだ。

「あああっ…」

あっけないほどするりと、逞しすぎるほどの肉柱が姿を消し、そしてまた現れる。肉を打つ音とともに。最奥を肉柱の先端が突き上げると、豊かな弾力にその先端が小気味よく弾かれる、なのに、熱く濡れた肉壁はオスカーの肉柱を逃すまいとするようにきつく締めつけてくる。この調子で締め上げられたら、そう長くはもたない。

「お嬢ちゃんは後ろが好きだな…こんなにっ…俺を…締め…付けて…」

「あっ……だって…気持ちよくて…あぁっ…」

「あぁ…お嬢ちゃん…すごく、きつい…」

「やっ…だって…お、オスカーさまがっ…あ…んまりっ…すご…から…あぁっ…」

アンジェリークは切なげに眉をひそめ、何かに耐えるようにふるふると震えながら、小さく頭を振った。

声音に非難する色合いは欠片もない。むしろ、とてつもなく甘えている風情でアンジェリークの身体はシーツの上でのたくっている。オスカーの突き上げに身体がリズミカルに揺すられ、そのリズムにあわせて、キャミソールのレースがめくりあがる。真っ白な臀部の中央に艶やかな真紅の薔薇が咲き誇り、オスカーの目を射る。幻惑される。

アンジェリークの締め付けのきつさに、細かく震える身体に彼女にも絶頂が近いことが感じられる。

だが、オスカーは、それを知ってなお、1度故意に律動を緩めた。本当は、このまま走り抜けてしまいたい気持ちも強かったから、自分にとっても辛かった。が、このままでは、自分も、程なく爆ぜてしまうということもわかっていたから、少し熱を冷まさねばならないと思った。アンジェリークの感じている快楽を、自分が浸っている悦楽を、もっと引き伸ばしたかった。

だが、アンジェリークの渇望は、それに却って煽られた。恐ろしい程の、餓え渇いた思いに気が変になりそうになる。

「やっ…やめちゃ…いやっ…」

「もっと…欲しいのか?」

「んっ…好き、好きだから…もっと…もっとして…オスカーさまぁっ…」

苦しいのに、息もうまくできないのに、いつのまにかすすり泣きをもらしてしまう程なのに、それでも、求めてしまう。こんな切望を、こんな渇望を、アンジェリークはオスカーに出会うまで知らなかった。そして、これほどの渇望を私に感じさせるのも、それを満たしてくれるのも、1人オスカーだけだとアンジェリークは知っている。この人に出会えた運命の不思議に、この人を愛し愛される幸福に、アンジェリークはいつも深い敬虔の念と感謝の気持ちを忘れない。だからこそ、貪欲なまでに、率直にもなれるのだ。

いきなり、ぐいと顎をつかまれ、口付けられた。

「すまない、苛めるつもりじゃないんだ……」

なだめるような緩やかな律動と供に訴えた。だが、アンジェリークは悪戯に長引かせる快楽より、一点に凝縮する灼熱をこそ欲した。

「いいの、オスカーさま…来て…お願い!」

「わかった…一緒に…」

「んっ…あ…ああっ…」

アンジェリークは大きく背をのけぞらした。

オスカーが、アンジェリークの全身を貫かんばかりに重く力強く、腰を打つ付けた。迷いのないオスカーの突き上げは苛烈と言ってもいいほどの、早さ、深さ、力強さだった。

「はぁあっ…ぁっ…っ…」

アンジェリークはもう声もあげられず、シーツに突っ伏した。あまりに深い快楽に打ちのめされて身体を支えきれない。替りにオスカーがアンジェリークをしっかと抱いて、身体を支える。アンジェリークの求めに応えるために。全身全霊で求められ、その求めに渾身の力で応えてやれることほど、甲斐のあることなど、他にないのだから。そして、2人で白熱する光輝の1点を目指して疾るその喜びに打ち震えた。

「あっ…あ…ああぁっ…」

「くっ…」

アンジェリークの秘裂が痙攣するように収縮したのと、己が熱い精をほとばしらせたのと、どちらが先かはオスカーにはわからなかった。でも、それは瑣末なことだった。アンジェリークがスローモーションのようにシーツに沈み込み、自分の身体がそれを追うようにアンジェリークに覆いかぶさった。愛しさをたたえてアンジェリークに口付ける。アンジェリークの顔をみやれば、潤んだ瞳に浮かぶのは紛れもない満足と深い愛情の優しいきらめき。オスカーの胸もまた暖かく潤うものに欠けるところなく満たされた。

 

腕枕をして、金の髪にほお擦りしていたら、アンジェリークがオスカーの腕の中で居心地悪げにもそもそと動いた。

「どうした?」

「あ、あの…これ、もう、脱いでもいいですか?その…濡れちゃってて気持ちわるい…」

「ああ、すまん、すぐに気づかなくて…ほら、お嬢ちゃん、腕をあげて…」

オスカーは汗と唾液そのた諸々でぺたっとしてしまったキャミソールをアンジェリークから取ってやった。もちろん、水滴が滴るほど湿らせてしまったTバックも同様に。

アンジェリークは真っ赤になりながらも、素直にオスカーに身を預け、すべての布が取り去られると、ほっとしたように息をついて、オスカーの隣に横たわり、厚い胸板にすりすりっと顔をすりつけた。

オスカーはアンジェリークの肩を抱きなおして髪に口付けながらこういった。

「ほら、お嬢ちゃん、これでわかっただろう?お嬢ちゃんにはこういうランジェリーも似合うし、俺はそんなお嬢ちゃんにめろめろだっただろう?だから、コンプレックスを抱く必要なんて全くないってな」

「あ、はい、オスカーさま…あの、すごくよくわかりました…もう、十分すぎるほどに…ぅきゅぅ〜」

アンジェリークは自分の言葉に照れて、枕を抱いて顔をうずめてしまった。

「じゃ、これからは遠慮なく、こういうランジェリーを勧められるな、せっかくだから、あのカタログにあったものを全種色違いで揃えるか?もちろん、好みでない物は無理に注文する必要はないが…でも、あのランジェリーを日替わりで着替えてくれたら、嬉しいからな」

「え?え?そ、そんな贅沢ですよー」

「2人の愛がより深まるための投資は贅沢とは言わないんだぜ、お嬢ちゃん。何なら俺が全部プレゼントしてもいいしな」

長い長い在任期間中、自動的に投資信託されていた給与は利子が利子を呼んで並大抵の贅沢では使いきれないほど溜まっている。アンジェリークを着飾る物への投資は、散財などというレベルではないし、どちらにしろ自分には有意義な買い物だから、無駄遣いなどではありえない。

「どっちにしろ、2、3枚じゃ足りないだろう?お嬢ちゃんはサイズが変わっているわけだから、買い足しじゃなくて、全取替えしなくちゃならんわけだし…」

「そ、それはそうなんですけど…」

「それに、俺にはお嬢ちゃんに下着をプレゼントする義務があると思うんだ」

「?」

「だってなぁ、お嬢ちゃんの胸がこんなに急激に成熟したのは、やっぱり俺の責任だろう?お嬢ちゃんの胸をこれでもかって愛撫した…しているのは事実だからな。となると、やっぱりその責任は取らないとな」

「〜〜〜!もう、何いってるんですか!オスカー様ったらー!」

「というか、喜んで責任を取りたいんだが…どうだ?俺に責任を取らせてくれるか?」

オスカーはアンジェリークが遠慮しいしい、承諾するものと思い込んでいた。そして明日からのワンダホーランジェリーライフを思い胸をわくわくさせていた。普通、男が女性に服を贈るのは、それを脱がせるためだと尤もらしく言われるが、ランジェリーに限って言えばオスカーは逆である。セクシーなランジェリーを着けたまま…というのがまた一興なのだから。見るからに愛らしくコケティッシュなランジェリー姿のアンジェリークをこれからは思う存分抱けるかと思うと、果てなくにやつきそうになってしまう。

が、アンジェリークの答えは遠慮しいしいではあったが、オスカーの予想を外れていた。

「あの、でも、私の胸のサイズが変わったのは、オスカーさまが責任をとるようなことじゃなくて、私の心持のせいだと思うんです…あ、もちろん、オスカー様のおかげではあるんですけど、オスカー様があんまり私を気持ちよくしてくださるから…私の胸、もっともっと触れてほしくて、大きくなっちゃったみたい…だから…オスカー様に触れて欲しい、っていう私の気持ち?が原因だと思うから、オスカー様に責任を取っていいただくのは申し訳ないです…」

「………」

オスカーはなんと答えていいかわからず絶句した。まさか、こういう観点で切り返されるとは思ってもみなかった。

黙り込んでしまったオスカーに、アンジェリークが不安そうな顔をした。

「あ、あの、私、おかしなこと言いました?オスカー様が、昔、どうして胸が大きくなるのか教えてくださった時、確か、そんな風におっしゃっていたから…それを考えたら、オスカー様のせいとはいえないと思って…」

「ぷっ…くっくっく…」

「お、オスカーさま?」

「くくく…ま、まったくお嬢ちゃんと話していると退屈しないぜ…」

「?」

「いや、確かに俺はそう言った。で、それは1面の真実なんだが、お嬢ちゃんが触れてもらいたいって思ったのはやっぱり俺に原因があるだろう?胸が大きくなったのは、お嬢ちゃんが俺に触れてもらいたい気持ちがふくらんだからかもしれないが、触れてもらいたいという気持ちの大元の原因はやっぱり俺だろう?」

「あん…だから、余計に困っちゃうんです…いくら触れてもらってももっと触れてほしくて…オスカー様に触れていただくと、あんまり気持ちよくって、キリがなくて…私、本当に欲張りになっちゃったから…オスカーさま…だから、これ以上何かしていただくのは、申し訳ないような気がして…」

「それなら、尚更、喜んでその責任は取らせてもらおう。お嬢ちゃんが欲張りになったのは、本当に俺のせいだものな?」

ちゅっと触れるだけのキスをオスカーは落とす。

「おっと、今とるといった責任は、お嬢ちゃんに新しい下着を買うことに加え、お嬢ちゃんがどれほど欲張りになろうとも、それは責任を持って俺が満たすって意味でもあるからな?」

「オスカーさま…そんな…」

「誤解しないでくれよ?その責任を取ることは、俺にとっては喜びであり、役得だ。義務じゃないぜ?こんな美味しい責任を他の男に取られたら、俺の方がたまらん」

「そ、そんなことないです!…だって、オスカー様が好きだから、触れてもらいたいのは…触ってもらって気持ちいいのは、オスカー様だけだから…」

アンジェリークは自分の手を、オスカーの手の甲に重ねた。

「あ、でも、胸だけじゃないですよ、触れてもらって嬉しいのは…オスカー様に触れてもらうと、どこでも…嬉しいし、気持ちよくなっちゃうみたいなの…」

「お嬢ちゃん…」

「オス…んんっ…」

アンジェリークが呼ぼうとしたオスカーの名は、その当のオスカー本人に吐息ごと飲み込まれてしまった。

もう、どうしてこうかわいい事を言うのか、どこまでかわいいのか見当がつかない。1日1秒ごとに愛しさがましていくみたいだ。

オスカーは、アンジェリークの唇をひとしきり堪能してから、口付けの余韻にぽーっとしているアンジェリークの肩をしっかり抱いてこう告げた。

「お嬢ちゃん、本当は、責任云々とかじゃなく、俺は自分が君に触れたいから、触れるんだ。自分がプレゼントしたいから、するんだ。俺が、君に触れさせて欲しいし、プレゼントさせて欲しい。君に俺の選んだランジェリーを身につけてもらいたいんだ。だから、あのカタログは全種色違いで俺が注文するぜ、いいな?」

「は、はい…」

案の定、今度はアンジェリークは素直に頷いてくれた。もっとも、びっくりしたような顔はしていたが。

責任を取らせろなんていうから、アンジェリークは遠慮してしまうのだ。『責任を取る』なんて言い方は、本当は際限なく君を愛したい、かわいがりたい俺のエクスキューズにすぎない。こうでも理屈をつけないと、あまりに際限ない耽溺に落ち着かないだけなんだ、俺は。

でも、君を見ているとわかる。人を愛するのに、理屈や言い訳は本来必要ないんだ。好きだと、好きだから欲しいのだ、と率直に伝えて何が悪いことがあろう。そんなシンプルで美しい感情を俺は長い長い人生を生きているうちにいつのまにか忘れてしまっていた。それを君はまっすぐな愛情で俺に思いださせてくれる。本当に君にはかなわない。君は永遠に俺の愛の女神だぜ、アンジェリーク…

そして、オスカーは溢れる愛しい気持ちをそのまま示すべく、アンジェリークに頬擦りしながらこう言った。

「というわけだから、手始めに、夕食後は、早速俺の買った白のキャミソールを着けてくれるか?」

「は…え?あの…それ、今夜ってこと…です…か?」

アンジェリークは心のうちを冷や汗が流れた。まさか、もしかして、やっぱりオスカー様、大真面目?

「ああ、黒の下着は小悪魔ちっくで見るからに色っぽくてかわいかったが、白もまさしく天使!ってイメージでお嬢ちゃんにぴったりだと思うんだ!白のレースから透けて見える乳白色の肌、ピンクの乳首…金の叢…想像するだけで、甘い香りが匂い立つようで…あまりのかわいらしさに卒倒しそうだぜ、俺は!」

「お、オスカー様。な、何も今日じゃなくても、試すのは明日でも…」

「明日は明日で、また新しいランジェリーが届く。なにせ、俺がこれから注文するからな。それなら、今日届いたものは今日試した方がいいだろう?」

「だ…だめ!だめだめだめぇ〜!」

「何がダメなんだ?お嬢ちゃん」

アンジェリークは必死に訴えた。

「お、オスカー様、ごめんなさい、オスカー様に触れていただくのは大好きです、オスカー様に抱かれるのも大好きです…けど、今みたいに、は、激しくされたら、私、体力がもちません。嬉しいんですけど、明日も執務があるし、私、起きられなくなっちゃいます。だから、今夜の試着はごめんなさいっ!」

SEXなしで、本当に試着するだけならいいんですけど…と言いかけて、言うだけ無駄というか無意味というか、おそらく、それで済むわけがないと思ってそれ以上は口をつぐんだアンジェリークである。

昨日も今と同じ程度に激しく愛されたが、アンジェリークの体力事情が違う。その前日にアンジェリークは女王宮でロザリアとゆったりと寛ぎ睡眠もたっぷり取っていたので、体力に余裕があった。でも、昨晩はそれこそ、抱かれているうちに気絶したのか失神したのか眠ったのかわからないうちに意識を失ってしまった。出張明けのオスカーはいつもそんな感じだし、1日位なら、アンジェリークも多少の睡眠不足も負担ではないが、このペースを毎晩続けられたら、絶対、足腰に響きそう…どころか昼間起きてられないかも…と思うと、今夜、またも同じ位熱烈で激しく愛されまくり、愛し抜かれるのはとても困ってしまう。嬉しいんだけど、こまってしまう。嬉しいからこそ、仕掛けられたら、絶対オスカーを拒めない自分をアンジェリークは知っているから。だから、前もってお願いするしかないのだ。アンジェリークは祈るような気持ちでオスカーを見上げた。

「そういうことじゃ仕方ないか、じゃ、白は明日のお楽しみにとっておくことにするからな、期待してるぜ、お嬢ちゃん」

そういうと、オスカーはもう1度、おもむろにアンジェリークにちゅーっとキスをした。オスカーが物分りよく納得してくれたのでアンジェリークは安堵した。

でも、物分りよく納得してくれたということは、やっぱり、セクシーな下着を身につける=試着だけという意味ではなかったということでもある。だから、はっきりお願いしてよかったと、アンジェリークは尚更安堵した。

アンジェリークは率直にオスカーに告げた通り、オスカーに抱かれるのは大好きだ。その言葉に全く嘘もお世辞もごまかしもない。でも、それとは別に、とてもじゃないけど、オスカーの体力にはついていけないと思うのも事実なのだ。

あ、あんなに激しい絶頂を1日に何度も味合わされたら、それが気持ちよすぎるだけに、体力の消耗も並大抵ではないのだもの。1回だけでも、終わったあとは目を開けてられない位とろとろになっちゃうのに…わ、私、言葉の綾でなく、死んじゃいそう…

それを思うと、ロザリアに言った「これ以上、オスカーの出張が増えなければいい」という言葉は嘘ではないものの、もしかしたら自分は「今より出張が少なかったら、私の足腰、もう立たないかも…」という状況にいるののかもしれないと、ふと考えてしまった。

とにかく、今くらいの頻度で短期の出張にいらしてくださると、私も適度な間隔で休めるし、これくらいが万事につけ、ちょうどいいってことなのかも…

奇しくも、オスカーが、その理由は異なれど「このくらいの頻度の出張なら、あってよかったのかもしれないな」とアンジェリークと同じことを考えていたことは、当然アンジェリーク自身にはわからなかった。

そして、ロザリアが彼女自身のために行っている画策が、オスカーにとっても、アンジェリークにとっても、それぞれ2人を色々な意味で幸せにしていることをロザリア自身が知ることはもっとなかった。

聖地は今日も泰平であった。

おしまい

 リモちゃんの美麗なランジェリー姿は、私の拙い文章では、とてもあらわしきれませんが、それでも、幾許かはそのイメージが伝わりましたでしょうか? 
 キリ番で「アンジェに綺麗なランジェリーを着せるお話を…」というリクエストで書いたこの話は、実をいいますと、O・ヘンリーの「賢者の贈り物」をイメージしたといいますか、あんな雰囲気が出せたらいいなーと思って、書き上げたものです。スカっと外したような気もしますが(爆)ただ、オスカーとアンジェの2人が、お互いが好きで好きでたまらないので、いつも、お互いに相手の視点に立って物事を考えてしまう。その結果、より一層愛が深まる…という雰囲気だけでも表せているといいのですが…
 オスカーの贈ったものは純粋にプレゼントだけど、結果として自分も幸せになれるプレゼント(笑)
 アンジェの選んだものは、オスカーの好みでオスカーの喜びそうなものだけど、結果として愛が深まるから、アンジェも幸せになれます。
 愛しい相手のことを思った上での行為が、互いが互いを幸せにする。これは、色々な幸せの中でも、かなり充実感のある幸せなのではないかと思うのです。思いっきり私見ですが。
 そして、こういう小さなエピソードを積み重ねるごとに、幸せと互いへの愛が重なっていくのが、私の「オスアンあまあま」の基本だと思ってます。だから、うちのオスアンは「愛のミルフィーユ」OR「愛のミルクレープ」なんですねー(^^)
 この話での2人は、まだ新婚数ヶ月といったところです。そして、この話以降、アンジェのランジェリーチェストは、オスカーの好みを反映して美麗で華やかでセクシーだけど、かわいくてコケティッシュなアイテムが増えていくこととなるでしょう(笑)
 このお話では、描写してませんが、翌日の白の総レースキャミのアンジェは、まるでエンゼルフードケーキそのものみたいなイメージで、これはこれで、またオスカー様を幸せの絶頂に導いたことでしょうねー。何せ白と金とピンクで構成されてる、ふわふわの女の子ですよ?見た瞬間、もー「食っちまいたい!食っちゃうぜ!」になったことでしょうねー、ふふふ。
 いつ書いても楽しいオスアンあまあま。読んでくださった方も、いつ読んでも楽しいわーと思ってくだされば幸いです。


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