蜉蝣 3

ジュリアスは膝立ちのまま、足下にまだ夜着を頼りなく纏わりつかせているアンジェリークの唇をひたすら貪っていた。

自らの長衣を完全に脱ぎさり、白皙の裸身で、アンジェリークの体を骨をも折れよとばかりに力をいれて抱きしめながら。

豊かな胸の膨らみが自分の胸板に押しつけられ、ひしゃげて形を変えている様子がちらりと目に入ったが、頓着する余裕も無かった。

もう、アンジェリークが誰を思って自分の口付けを受けているかということすら、どうでも良かった。

思考を埋め尽しているのは、この唇の柔らかさ、舌の甘さ、吐息のかぐわしさだけだった。

できる限り舌を口腔の奥まで差しいれ、アンジェリークの舌を決して逃すまいとするように絡めとり、きつく吸い上げた。

ただ、口を吸う。それだけのことで、どうしてこんなに狂おしい気持ちになるのか。

唇と唇をあわせ、舌を絡めあうという単純とさえ言える行為が、なぜこれほど激しい陶酔をもたらすのか。

女を抱くということは、知識としては知っていた。

有体に言ってしまえば、皮膚と皮膚、粘膜と粘膜の接触と摩擦にすぎないと思っていた。

そんな単純な感覚に溺れるものの気が知れなかった。

だから、今までの自分の人生にはおいて、それを知らないことを格段の不幸と思ったことはなかった。

だが、知識で知っているのと、実際に触れてみることとは、まさに天と地の差があることを、今改めて噛み締めている。

文字で得た知識だけでは、愛しい者の唇がいかに甘く柔らかく、際限なく味わいたくなるかなど、決してわからなかった。

人の肌がこれほど温かいことも、肌と肌を直接触れ合わせることがこれほど心地よいことも知らなかった。

考えてみれば、幼い時に聖地に召されて以来、人の肌に直接触れたことなどなかったのではあるまいか。

自分の最も古い人肌の記憶は…そうだ、もう朧だが、聖地に来る直前に、息もできぬほどに抱きしめられたこと…あれは、最早その声も定かではない母の温もりか…

肖像画の微笑以外もう思い出せない面影、しかし、抱きしめられたとき、ふうわりと漂ってきた花の香り、頬を濡らした暖かい液体の感触、自分を包みこむ柔らかな肉体…同じだ…柔らかで、暖かく、えもいわれぬ芳しい香りがするアンジェリークの体の感触が、自分の奥底に沈殿していた原初的な感覚を伴った記憶を呼び覚まして行く。

その古い記憶をもっと鮮明に呼び覚ましてみたいような気になり、ジュリアスはアンジェリークの肌を確かめる様に手で体のラインをなぞりながら、唇を吸いつづける。

アンジェリークの肌を確かめることで、その快い感触に自分自身もまた肉をもった存在なのだということを強く意識した。

口付けている間もアンジェリークの様子をつぶさに見ていたくて、目をとじることなど思いもよらなかった。

震える瞼、悩ましげに顰められた眉、紅潮していく頬、アンジェリークのあらゆる所作がジュリアスの目を引きつけて離さない。

自分の視界にクラヴィスがいることも、大した問題ではなかった。

目の前のアンジェリークが自分の世界のすべてだった。

クラヴィスは、アンジェリークの背後から金の髪をかきあげて、耳朶を食んでから、その唇を首筋に移し、うなじから肩口へと舌を這わせていた。

クラヴィスの愛撫にアンジェリークが小さく吐息を漏らし、やるせない風情で身を捩った。

その様子に気付いたジュリアスは、クラヴィスの愛撫をアンジェリークが受けやすいように今までの固い抱擁を緩め、その薄い肩を両手で支えるようにして、口付けを続けた。

クラヴィスはその意を受け、片手をアンジェリークの腰にまわして、その体が崩れ落ちない様にしっかりとささえにまわる。

そして、肩から肩甲骨に唇を滑らせ、そのまま腋下のくぼみまで、舌で舐め上げてから、ふるふると揺れている乳房の裾野に舌を這わせていく。

クラヴィスは自分の体を徐々にアンジェリークの斜め前に移動させていき、揺れる乳房に指を食い込ませるように、揉みながら、その先端を自分のほうに際立たせてから、徐に口に含んだ。

クラヴィスが舌先を伸ばして、色づいた花の蕾のような乳房の先端を舐り、音をたてて吸っている。

クラヴィスの舌にアンジェリークの薄紅の先端がつつかれ、転がされ、舐め上げられている様が、ジュリアスの視界の端に入る。

クラヴィスの唾液に濡れて光る乳頭の眺めに、ジュリアスの頭も体もさらに熱さを増して行く。

クラヴィスは先端の感触を楽しむかのように、更に舌ではじき、軽く歯を立てたようだった。

「はぁっ…ん」

その刺激に、アンジェリークは一度くっと首を横にふって少し高い声で鳴き、ジュリアスから自らの唇を放した。

ジュリアスの唇との間に銀糸がかかる。

横をむいたアンジェリークのしなやかな白い首筋が誘うかのようにジュリアスの視界に飛びこんでくる。

ジュリアスは、引き寄せられる様に顔をアンジェリークの肩に埋め、首筋を舐めまわした。

鎖骨のくぼみに舌を這わせながら、手はクラヴィスが舐っているのとは反対側の豊かな膨らみにそっとあてがわれた。

だが、おずおずと確かめる様な手の動きはほんの一瞬のことだった。

触れた直後、ジュリアスの手は、狂った様に激しく乳房を揉みしだき始めた。

初めて味わうアンジェリークの肌は、どこもかしこも甘く柔らかく、ジュリアスは自分の手で、唇でアンジェリークのすべてを確かめたいという狂気のような欲望に押し流されていく。

アンジェリークの体はどこまでも柔らかく、華奢で折れそうなのに、全体はふっくらと丸身を帯びていて厚みがあり、抱きしめるとしなやかな弾力が心地よい。

肌は滑らかで、しっとりと瑞々しく、いくらでも触れていたいと思わせる。

特に今触れている乳房は…ふくよかに豊かで、やわらかく温かく、それでいて自分の手を弾き返すような張りがあって、こんなに心地よいものに触れたことは未だ嘗てないと思えるほどに、その感触はジュリアスを魅了した。

そのうえ、その造形の妙に惚れ惚れとするほどアンジェリークの乳房は美しかった。

肌の色は抜けるように白いが、決して冷たい印象の青白い肌色ではなく、温かみのある乳白色だった。

その豊かさと相俟って、見た目に温かみのある白い乳房はこんもりと盛りつけられたヴァニラアイスクリームの様だった。

椀を伏せたような見事なまでの半球形の乳房は、ジュリアスの手に余るほどの豊かさで、ジュリアスが力を加えるままに自在に形を変えながら、次の瞬間には、また元の美しい形に戻る。

男が加える荒荒しい力を抗わずに受けとめていながら、その力をさらりと流し、己を保ち続ける。

一見強い力に屈しているようでいて、その実、決して自分を失わない。力によってでは、その本質を犯され、変えられることは無い。

そのなよやかでたおやかな強さは、女性そのもののようだとジュリアスは思う。

乳房というものが、誠、女性を体現する象徴のように思えた。

乳房をもみしだくうちに、その先端が徐々に頭をもたげていくのを掌に感じた。

自分の指の間から見える頂きは、それこそ可憐に色づいて、食べられるのを待っている熟した果実の様だった。

その感触と自らを誘うようなその色味に促される様に、ジュリアスは唇を乳房に沿わせ、その吸いつくような肌の感触を唇で確かめながら、徐々に頂点を目指した。

その部分を愛すれば、アンジェリークが喜ぶとはっきりわかっていたわけではない。

ただ、なにかに突き動かされる様に、理屈ではなく、その部分を口に含んでみたかった。

突き出た紅色の先端の眺めはかわいらしいのに、どこか妖しくて、ジュリアスは引き寄せられるようにそれを口に含んでみた。

柔らかな乳房とは異なる、弾くような弾力。探る様に舌で転がしてみると、その部分が口中でどんどん固くたちあがっていく。

その感触に無我夢中になって、先端を吸い、舌ではじき、転がした。

「ああっ…あん…はぁ…ん…」

ジュリアスの舌の動きに合わせるように、アンジェリークの嬌声が艶を増して行く。

その声に更にジュリアスは昂ぶって行く。

自分が与えた愛撫によりあがる、愛しい者の声がどれほど人を熱くするのかも、今の今までジュリアスは知らなかった。

視界の端でクラヴィスが斜め横からやはり、アンジェリークの胸の先端を執拗に吸っているのがちらりと見えた。

クラヴィスも、自分と同じように思っているのかもしれない。

アンジェリークの声が聞きたい、自分が喜びの声をあげさせてやりたい。

それだけに思考を占められた2人の男にアンジェリークの華奢な体は、貪られていく。

黄金を束ねたような豪奢な金の髪と、漆黒の闇を束ねた絹糸のような髪に、その体は余す所なく覆い尽くされていく。

アンジェリークの体は自然に2人の体に押されるように、柔らかな絨毯の上に横たえられた。

両の乳房をそれぞれに舐られ、吸われ、弾かれながら、アンジェリークはただ与えられる感覚の受容体として、許容量以上に与えられた刺激を、甲高い嬌声で逃すだけの存在となっていた。

行動を律する超自我も、本来の意識である自我も闇に染められ、快感原則と自己保存を第一義とするエスの領域が意識の表層に浮かび出ている今のアンジェリークは、自分の心の根底が望む肌の温もりを何の葛藤もなく純粋に請い求め、与えられるそれに応えていく。

 

毛足の長い絨毯はシルクのようにつややかな感触で、直接素肌に触れても、刺すような不快感はまったくない。

余程よい素材でしかも密に織られているのだろう。誠、絹糸を幾重にも縒って織られているのやもしれぬと、クラヴィスは思う。

オスカーの私邸の調度は見た目にわかりやすい華美さはないが、徹底して居心地の良さを追求したようで、さりげない部分に驚くほど費用がかけられ、凝った作りとなっているようだった。

家具類は、シンプルだが丸みを帯びた優しげなラインのデザインで揃えられ、しかも材質のよさが、とても品良く、おちついた雰囲気を部屋全体に醸し出している。

おそらく、長い時間をアンジェリークと過ごすことを想定して、オスカーが考えうる限りの最上のものを手配したのだろう。

そうだ、皆がおまえには、自分の持てるもの、すべてを与えたくなる。どんなことでもしてやりたくなる。おまえが望み、喜ぶと思えばなおさらだ。

代償は笑顔だけでいい。おまえの笑顔をみるためなら、なにも惜しくないとさえ思える。

おまえには男にそうおもわせるなにかがある。

そんなことを思いながらクラヴィスは、アンジェリークの豊かな乳房を口全体で食むようにしながら、その柔らかでいながら張りのある感触を心行くまで味わっていた。

自ら吸いついてくるような肌理細かな肌を舌と唇で飽くことなく愛でる。

横たわっていても、こんもりと盛りあがった乳房は横に流れる事もなく、先端はつんと上を向いてその魅惑的な形を保っている。

自分のすぐ隣で、ジュリアスがやはり、魅入られたように、ひたすらアンジェリークの乳房を舌と唇で愛していた。

ジュリアスの乱入は予想外だったが、誰がこようと、何をいわれようと、クラヴィスはアンジェリークを抱く意思を翻すつもりは毛頭なかった。

あんな哀れな様子のアンジェリークをそのままにはして置けなかったし、一度その体を掌中に収めてしまったら、もう、どのようにしてでも思いを遂げたいということしか考えられなくなった。

ジュリアスがわめきたてる様なら、それこそ闇のサクリアを大量に放って、昏倒させてしまうくらいのつもりでいた。

だが、いつもなら、何事にも迷いを見せないジュリアスが、自分がアンジェリークを抱いている姿を見ても、大上段から正論で人を断ずることもせず、逡巡している様子に気付き、おや?と思った。

よいものはよい、悪いものは悪いと、自分の中の信じるところと照らし合わせて何事も明確に断ずるジュリアスの歯切れが今日に限って悪い。

人の感情というものを加味した場合、既存の価値基準や一般論では断じきれないものがあるということを目の当りにして、戸惑っている様子がありありとみてとれた。

そして、そういえば、なぜ、ジュリアスはここに来たのだ?と、いうことに思い至った。

もしや、自分と同じように沈んだアンジェリークの様子が気になって、来てしまったのではないかと気付いた。

アンジェリークの事が気に掛かり、わざわざ、夜半に訊ねてきたジュリアス…それがなにを意味するのか、脳裏に閃いた。

アンジェリークを愛することしかなかった頭に多少は冷静さが戻った。

もし、ジュリアスも自分と同じようにアンジェリークに心を捕らわれているとしたら?

それなら、いっそのこと、自分と同じ立場に引きこんでしまったほうが得策だと、クラヴィスは多少は冷静になった頭で考えた。

オスカーの与える愛撫に慣らされているアンジェリークが、真に自分の与える愛撫に酔い痴れてくれるかどうか、クラヴィスにはわからなかった。

自分はオスカーと同じほどに、アンジェリークの身も心もを熱くしてやれるのか。

ただ単に技術の巧拙だけでなく、アンジェリークと数えきれない夜を重ねているオスカーはアンジェリークの弱い点を熟知し、そこを責めている筈だ。

それを、今行為の最中に手探りで探すしかない自分が、オスカーと同じ深さの愉悦を与えらることは難いといわざるを得ないだろう。

だが、2人なら。稚拙な愛撫でも、2人で同時に与えることができれば、またアンジェリークの感じ方も深くなるだろうと思った。

実際、ジュリアスの性急ともいえる愛撫が加わってから、アンジェリークは、自分一人が愛していたときより、あからさまな乱れを見せている。

アンジェリークを、いかに快楽の淵に投げこみ、それに溺れさせられるかこそが肝要なのだ。

自分一人で、それを行うのが難しい様なら、他人の手を借りるのもやぶさかではない。例えそれがジュリアスだったとしても…。

だから、わざとアンジェリークの体を一度手放した。

無意識の内に、人の温もりを求めているアンジェリークが心細さにまた泣き出すことはわかっていたし、それを思うと胸が痛んだが、ジュリアスにアンジェリークの涙をみせるために、その行為が必要だった。

クラヴィスにとってそれは賭けだった。ただし、勝算のある…

もしジュリアスが、アンジェリークの事を愛しく思っていれば、アンジェリークの涙を見て、自分が狂わされた様に、冷静でいられるわけがない。

なんとかして、どんなことをしてでも、その涙をとめてやりたいと思うことは必至だろうと思った。

案の定だった。ジュリアスはアンジェリークの涙に度を失い、アンジェリークに求められるままにその体を抱きしめていた。

ジュリアスとて男だ。一度箍がはずれてしまえば、走り出した激情はもう止め様も、押さえようもなかった。

アンジェリークを愛撫する様子は、むしろ、自分よりもよほど激しく情熱的だと、クラヴィスはみていた。

乳房の愛撫をジュリアスにまかせ、クラヴィスは舌を乳房から、なだらかな稜線を描く腹部に滑らせて行った。

手を下腹部に伸ばし、いまだ、アンジェリークの股間を覆っていた申しわけ程度の小さな布地をそっと脱がせていき、細い足を軽く曲げさせて、その布を足から引きぬいた。

布を取り去る瞬間、とろりとした愛液が糸をひいた。

クラヴィスが来る前から、アンジェリークの自身を慰める行為故その部分は、しとどに蜜を溢れさせていた。

ジュリアスにみつかるまで、クラヴィスはそのぬめりを利用して、ショーツに手を差しいれ、指でアンジェリークの花芽を縦横に擦り上げていた。

だが、その部分を目の当りにしたのは、今が初めてだった。

もやがかかったような金褐色の繁みの中央に鮮紅色の裂け目がうっすらと、透けて見えた。

その眺めに、気は逸る。一刻も早く貫いてしまいたい、そのなかに己を埋めこみたいという気狂いじみた欲望がクラヴィスを苦しめる。

それでも、自分の欲望を満たすのが目的では無い、アンジェリークを愉悦の淵に沈めることを第一義とせねばと、その情欲を無理やり押さえこんで愛撫を与えることに、自虐的な倒錯した喜びすら覚える。

おまえのためなら、どんなことでもできる、そう思うことこそが喜びとなる。

アンジェリークに軽く膝をたたせてから、クラヴィスはそのぷっくりと豊かな秘唇をかきわけた。

襞を押し開いて、先刻指で弄っていた肉の芽を外気に晒した。

同時に愛液の香りが濃厚に立ち上り、その雌のにおいがクラヴィスを陶然とさせる。

その香りに誘われる様に、舌を尖らせて、襞の合わせ目から、花芽までをゆっくりと丁寧に舐め上げていった。

ジュリアスの愛撫が性急で情熱的なら、自分は丹念で繊細な愛撫を心掛けようと、きっと互いに足りないものを補えあえるはずだと思いながら。

「ふぁああっ…んんっ」

秘裂への口唇での愛撫にアンジェリークのからだ一瞬びくりとはね、背が反り返った。

その声に背をおされるように、何度も何度も丁寧に襞の合わせ目を舌でこじ開けるように舐めてやる。

花芽に舌がたどりつくと、焦らす様に舌先でちろちろと小刻みに舐る。

「ひぁっ…あん…あぁっ…」

歌うように声が響く。たかまる情感をそのままに、声も徐々に高くなっているのが、はっきりとわかる。

もっといい声で歌わせてやりたくて、クラヴィスは花芽を唇で軽く挟んで、ちゅっと吸い上げてみた。

「ああぁっ…」

一際高い声とともに、目に見えて透明な愛液がまたも溢れ出してきた。

今までの愛撫による愉悦の証に、太股までもがぐっしょりと濡れて光っている。

その溢れ出る愛液で喉をうるおしたい…クラヴィスは丸めた舌先で愛液を掬い取った。

まさしく、甘露だった。もっと、いくらでも味わいたい、そう思い舌を深深と秘裂に差しいれたときだ。

「あああっ…あっ…はああっ…」

「よい声で鳴く…。そんなにここがいいのか?」

両の乳房に飽くことなくむしゃぶりついていたジュリアスが、唇を離してアンジェリークの股間に手を伸ばしてきた。

「ちょうどいい、おまえも愛してやれ。これが喜ぶ…」

「いわれずとも…」

クラヴィスはアンジェリークの足を持ち上げると、手近にあったクッションをアンジェリークの腰の下におしこみ、その腰がたかく持ちあがるようにした。

そのうえで、クラヴィスはアンジェリークの足首を持って大きく股間を開かせたので、アンジェリークの秘部は、完全に上向きに余す所なく曝け出された。

アンジェリークが正気を保っていたら、羞恥に気が遠くなりそうな姿勢だった。

ジュリアスが繊細な指で花弁のような襞の合わせ目を押し広げ、秘められた花芽を優しく露出させる。

絶え間無い愛撫にはちきれんばかりの花芽は、赤々と染まり、自らの愛液に艶やかに輝いて、もっと愛されることを待っているかのようにひそやかに、息づいていた。

「まさに宝珠…」

感に堪えぬ風情でジュリアスが、指で大きく露出させた花芽をもう片手の指で小刻みに擦り始めた。

同時に、唇は、唾液に濡れて光る乳首をもう一度咥え、舌先で弾きながら吸い上げた。

「ふぁあああっ…」

もう、十分に快楽に染め上げられている体は、その強い刺激も、より強烈な快楽として十二分に受けとめた。

「ひぁっ…あぁん」

ジュリアスの愛撫にあわせて、きらきらと光りながら溢れ出す愛液。

それを味わいつくさんと、クラヴィスは股間の方から、止め処もなく蜜を零しつづける秘裂に舌を差しいれた。

舌で秘裂を犯すように、深深と、執拗なまでに何度も抜き差しを繰り返す。

舌をできる限り秘裂の奥へと差しいれ、肉壁のすべてを確かめるように舌を蠢かしながら、音をたてて愛液を啜る。

うねるように蠢く肉襞を、吸い出そうとでもするかのように、強く秘裂を吸い上げたりもした。

「はぁああっ…」

アンジェリークのからだが、びくびくとと跳ねまわる。

だが、クラヴィスに足首をしっかり握られ、臀部を高々と持ち上げられたアンジェリークは快楽を逃すどころか身じろぎひとつ許されない。

ジュリアスはジュリアスで、露出させて敏感になっている花芽を指の腹で転がし、挟みこんだり、小刻みに擦りあげたりする。

「やっ…ああああぁっ!」

秘裂と花芽を同時に、舌と指で愛され、舐め上げられては、吸い尽くされ、アンジェリークは、あまりの快楽にあっけなくのぼりつめた。

足の指先が反り返り、体全体が小刻みに震える。

だからといって、2人がそれでアンジェリークを解放する訳では無い。

むしろ、より一層の快楽をあたえんと、クラヴィスは舌の抜き差しをさらに早め、ジュリアスも花芽を嬲る指の動きをより一層激しくした。

秘裂がひくひくと痙攣をくりかえし、クラヴィスの舌をさらに奥に誘い込む様に蠕動した。

花芽は充血してもうはちきれんばかりに固くしこっていた。

「ああっ、ああっ、いやぁっ…」

アンジェリークは息もできないほどの快楽に立て続けに達した。

達しても達してもその快楽の奔流は途切れることなく、アンジェリークを高みに押しやったまま、降りてくることを許さない。

そのあまりに鋭角な快楽にアンジェリークは、泣いていた。

とぎれない鋭い快楽は与えられていても、確かな量感を与えられていないその不全感が、快楽を苦痛に変えつつあった。

「ひっ…ああ…も…ゆる…し…て…」

ジュリアスが、乳房から顔をあげた。この上なく優しい声で訊ねる。

「おまえはどうして欲しいのだ?」

「ああ…もう…もう…ください…おねが…い…満たして…」

無言で蒼と紫紺の瞳が向き合い、語り合うかのような一瞬があり、

その直後、クラヴィスは体を起こして舌のかわりに、猛々しく怒張したもので、アンジェリークの花をゆっくりと貫いていった。

「はあああっ…んんんっ…んむぅ…」

上がりかけた声を、ジュリアスの唇が塞いだ。

 

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