蜉蝣 4

一気に貫いてしまいたかった。だが、耐えに耐えて、ゆうるりと怒張したものを、アンジェリークの中に飲みこませて行く。

完全に天井を向かされたままのアンジェリークの花が、自分の猛りきったものにゆっくりと刺し貫かれ、押し開かれていく。

自分のものが秘裂の中に姿をけしていくにつれ、替りに透明な蜜が溢れかえり、また花弁に艶を沿える。

溢れ出る蜜は、花が零す歓喜の涙のようでもあり、無理やりこじ開けられたゆえの苦痛の涙のようにも見え、クラヴィスを幻惑する。

秘裂の入り口を彩る秘唇は、いま、張り詰めたクラヴィスのものに極限まで押し広げられつつあり、、グロテスクな肉棒が充血した秘裂を蹂躙していくそのさまは、紅く色づいた花弁が自分の凶器に踏みにじられ血を流しているようで、痛々しくさえあった。

だが、クラヴィスはその光景から目を離せない。

痛々しいが故に、より一層この眺めは淫靡なのだと、わかっている自分がいる。

これが望んだから与えているのだ、そう思おうとしたが、それが自分へのいい訳に過ぎないことをクラヴィス自身が何よりも知っている。

この花を思うさま蹂躙したい。自分という存在を思いきり刻み付けてやりたい。

もちろんアンジェリークが泣いている姿をみるまで、こんなことを思ったことはなかったし、実際しようとも思わなかっただろう。

だが、自分は気付いてしまった。

そこにあるのに、見ない振りをしていた、自分のどろどろとした感情の混沌に。

欲望、嫉妬、憐れみ、やるせなさ、そして…息もできないほどの愛しさ。

一言では言い表せない錯綜した感情が体中を渦巻き、沸騰し、出口を求めて咆哮していた。

その激情を、アンジェリークをことさら淫らな姿勢で犯すことで解消しようとしている自分に気付く。

だが、これを泣かせたくない。これの心に傷を残すような真似はしたくない。

そう思う心もまた真実なのだ。

たまらなく愛しい。だから自分を刻み付けたい、

何よりも愛しい。だから、なにも覚えていないようにさせてやりたい。

まったく相反する欲求に心が2つにちぎれそうだった。

が、自分の感情の在り処に気付いてしまった以上、もう止まれるものでもなかった。

行きつく先に何があろうと、突き進むしかなかった。

無理に止めたら、この行き場を失った激情に自分の精神は壊れてしまうと思った。

明確な意識を持たないアンジェリークはなされるがままに、クラヴィスを受け入れている。

クラヴィスが漸く自分のものを根元まで収めきった。

アンジェリークは切なげに眉を顰め、軽く閉じた瞼に睫が細かく震えている。

唇は微笑むようにうっすらと開き、満足げに、ゆるやかな吐息を漏らしていた。

「…美しいものだな…」

愛撫の手を止め、ジュリアスが吐息混じりに嘆声を漏らした。

女の満たされた表情に自分の心も満たされることが、実感としてわかる。

オスカーが飽くことなくアンジェリークを慈しむ気持ちが痛いほどよくわかった。

「ああ、女とはなぜこのように美しいのか…我等を惑わせて止まぬのか…」

「…不思議なものだな…」

二人がアンジェリークに見惚れていると、アンジェリークがうっすらと瞳を開いてクラヴィスを見上げ甘えたように「くふん」と鼻を鳴らした。

「ああ、すまない、おまえに見惚れてしまった…動いて欲しいのか?」

アンジェリークがこくんと頷いた。高まる快楽への期待に、貫かれた腰が焦れて蠢く。

「おまえを満足させてやれるかどうかわからぬが…」

こう言いながら、クラヴィスはゆっくりと律動を開始した。

「ふぁっ…あん…あぁん…」

猛り切ったクラヴィスのものがずりゅっずりゅっと湿った音をたててアンジェリークの秘裂に出入りを繰り返す。

クラヴィスの突き入れにあわせてアンジェリークの背が撓る。白い足がクラヴィスの胴に絡みつく。

引きぬかれるクラヴィスのものに、めくりかえった花弁が名残惜しげに纏わりつく。

白い肢体が律動に呼応するように、クラヴィスの体躯の下で妖しくくねり、のたうつ。

何かにすがろうとするように細いかいなが当てもなく宙を泳いだのを見て、ジュリアスはとっさにその腕を掴み、唇を押し当てた。

アンジェリークの乱れ高ぶるさまに一瞬魂を奪われていたのだが、自分もアンジェリークを愛したいという欲求が体の中で苦しいほどに煮えたぎっていた。

「気持ちいいのか?」

ジュリアスが優しく耳元で囁くと、アンジェリークは瞳を閉じたまま、こくこくと懸命に頷いた。

「いじらしいな、おまえは…私もおまえを気持ちよくしてやりたい…。」

ジュリアスは舐っていたアンジェリークの腕を彼女の頭上で固定しながら、律動にあわせて上下に激しくゆれている乳房をもう片方の手で掬うように揉みながら、先端を唇で捕らえ強く吸いたてた。

「ふぁあああっ!」

アンジェリークが激しくかぶりを振る。クラヴィスの胴に絡みついていた足が一瞬解け、指先がピンと反り返った。

「くぅっ…」

クラヴィスの眉が苦しげに顰められた。

ジュリアスの乳房への愛撫に秘裂がきゅっと収縮し、その締め付けにクラヴィスはあっけなく屈してしまった。

「…すまぬ、おまえを置いて…」

クラヴィスは少々息を荒げてアンジェリークに軽い口付けを落としてから一度退いた。

クラヴィスが無言でジュリアスに視線を送ると、ジュリアスは軽く頷きクラヴィスと体の位置を取って代わった。

アンジェリークの腰の下に入れられていたクッションをとりさって膝をたたせ、股間をその白皙の体で割った。

火のように熱く潤びた部分に痛いほど張り詰めたものをあてがう。

『…本当にいいのか?私が、これを抱いてしまって…』

このまま貫いてしまっていいのだろうか、この期に及んで生じた一瞬の逡巡を振り払ったのは、アンジェリークの率直に自分を求める仕草だった。

もどかしげに首を振りながら、秘唇に触れているジュリアスのものを自ら取りこもうと腰を持ち上げ、小さな白い手を伸ばして導き入れようとさえする。

求められている、その事実にジュリアスの頭は真っ白になり、気がついたときは自分のものを一気に秘裂に飲みこませていた。

「はぁっ…」

柔襞をかきわけ自分のものが奥に行きつくまでのほんの短い時間に、今まで味わったことのない強烈な快楽が脳天まで突き抜けた。

アンジェリークの内部は蕩けそうに熱く、きつく締めつけてくるのに、ジュリアスのすべてをすっぽりと包みこんで離さぬような豊かな柔らかさがあり、ジュリアスは自分がアンジェリークと言葉通りひとつになったという深い一体感に酔い痴れた。

思わず口からうめき声が出た。

「…っ…これほどとは…」

これが繋がる、ひとつになるということなのかと、その余りに甘美な感覚に我を失いそうになる。

自分が動かずとも、柔襞がいきもののように蠕動しているような気がして、クラヴィスが早々と自分を明け渡してしまった気持ちがよくわかった。

初めて味わう柔肉の坩堝の感触にジュリアスが酔い痴れて動けずにいると、アンジェリークがせがむように、腰をジュリアスに擦りつけてきた。

その動きにジュリアスは我に帰り、

「こう…か?」

とおずおずと探る様に動き始めた。

性交の知識は持っていても、実際に女性と交わったのは初めてのジュリアスにとって、その律動は文字通り手探りであった。

しかし、どう動いたらよいのかなどという恣意的な意識はすぐに霧散してしまった。

付き入れる、引きぬく、その単純な動きを繰り返すだけで、信じられないほどの快感が背中から脳髄までを一直線に駆け抜ける。

全身が痺れるほどの快楽をもたらすものが自分の体の一部であることがなにやら信じられぬ思いだった。

その快楽を追い求めて無我夢中で激しく腰を突きたてると、アンジェリークが自分のものが奥にあたる瞬間にあわせて、声をあげている事に気付いた。

「あっ…あぁっ…あんっ…あっ…」

「おまえも…気持ちいいのだな?私がよいように、おまえも…」

そう思ったとき、肉の摩擦から生まれる快楽より、深さと重さにおいて比べ様のないほど充実感がジュリアスの身を満たした。

この時ジュリアスは改めて、男女の交わりがもたらす悦びの本質が見えたような気がした。

自分だけでなく、相手だけが気持ちよいのでもなく、互いに慈しみあい、等分の悦びを与え合い、わけあうと思ってこそ、肉の交わりは貴く、その喜びも表層的な快楽だけではない、深みのあるものに変ずるのであろうと。

自分が相手に悦びを与えているのだという達成感や充実感がさらに自分自身にも深い悦びを感じさせ、自分の悦びが深まるほどに、相手の悦びもまた更に奥深いものになっていく。

そんなフィードバックするいたわりや思いやりの感情が、官能の快楽それ自体をよりいっそう激しく鮮烈にするのだろう。

性器を擦り合わせることによって生じる単純な肉の悦びなど、互いに慈しみあうという心の繋がりがなければ、さして深い喜びにはならぬだろうと、だからこそ、今までそんな感覚を知らずとも、惜しいとも思わず生きてこられたのだと、この一瞬で知った。

どんな饒舌な言葉を尽くしても語れぬものも、直接触れ、経験することで一瞬にしてその本質を悟れることもあるのだということもわかった。

アンジェリークのあげる悦びの声はサイレンの歌声のように、ジュリアスの心を捉え、思考を一色に染めていく。

アンジェリークしか見えなくなっていく。アンジェリークのことしか考えられなくなっていく。

その声に急かされ、追立てられる様に律動を速めたくなる。もっともっと声をあげさせたくなる。

気付かぬうちに、うわごとのようにアンジェリークの名を呼んでいた。

「アンジェリーク…アンジェリーク…」

ジュリアスの熱に浮かされたような律動を横目で見ながら、クラヴィスはクッションをアンジェリークの頭の下にあてがってやった。

自分が交接していたときは頭を下げるような姿勢を取らせてしまったので、苦しいだろうと思ったからだった。

ジュリアスがアンジェリークの腰の下のクッションを取り去ったのも、同じことを考えたからだろうと、クラヴィスは思った。

クラヴィスは切なげに眉根をよせているアンジェリークの顔をのぞきこみ、

「おまえの手で…私を愛してくれ。また、私がおまえを愛してやれるように…」

と言いながらアンジェリークの手をとり、幾分力のなくなった自分のものに導いた。

ジュリアスのあの様子では、そう長くは持つまいと思った。

ジュリアスが果てる前に自分のものを回復しておけば、アンジェリークにやるせない思いを味あわせずに済む。

上り詰めかけた途中ではしごを外されたら、体の熱をもてあまして身を捩ることになろう。

愛しい女にそんな思いはさせたくないし、第一それでは、自分たちがアンジェリークを抱いている意味がないと思った。

アンジェリークは、クラヴィスのものを握らされると、僅かに逡巡したかのような間をおいて、自分からそれを柔らかく握りなおし、しごくように、また、撫でさする様にゆるやかに手を上下させ始めた。

その微妙な指さばきに、クラヴィスのものは即座に力を取り戻し始めた。

決して強い力は加えず、握っては離し、離しては先端を撫でさする。

意識はジュリアスに与えられる快楽に染まっているであろうに、いや、快楽に染まっているからこそ、その快楽を返すように、紛らわすように指先の愛撫は熱を帯びて行く。

おそらくいつも、こうやって互いを高めあっているのだろう。

一瞬脳裏に浮かんだ思いにたまらなくなって、その考えを振り払うようにクラヴィスはアンジェリークの手を解くと、

「おまえの…ここでも愛してくれるか?…」

こう言いながらアンジェリークの唇を指ですっとなぞった。

アンジェリークはクラヴィスの指を両手でかかえるように捕らえると、自分からその指を吸った。

クラヴィスの意識が轟と音をたてて、燃えた。

弾かれたようにアンジェリークの顔を跨いで、怒張しつつある自分のものを可憐な唇に押し当てた。

一瞬怪訝そうに瞳を見開いたアンジェリークは、その押し当てられたものに手を添えると、迷わず口に含んだ。

先端に舌を這わせ、ちゅっと軽く吸い上げられただけで、クラヴィスのものは脈打って天をつき始めた。

上をむきつつあるものを、下から口に含むと言う姿勢にもともと無理があるので、力を取り戻したそれは、アンジェリークの小さな口からはずれてしまい、アンジェリークは口に含むのを諦めたように、今度はクラヴィスのものの裏側面に舌を這わせ始めた。

小さな桃色の舌を懸命に差し出して、根元から先端を丁寧になめあげようとする。

その懸命な奉仕の様子がいじらしく、また、ここまで淫靡な事を強要しているという思いにクラヴィスは思わず暴発しそうになったが、皮肉にもその暴発をとめたのはこれもオスカーに仕込まれたのだろう…という、苦々しい思いだった。

意識下でアンジェリークは、オスカーにするようにとおもって、懸命に舌をまわしているのだ。

決して自分、クラヴィスにしてやりたいとおもってしてくれているわけではない。

わかって始めたこととは言っても、やるせなさは消えはしない。

しかし、その一方でアンジェリークの舌遣いの巧みさに溺れ、今自分はアンジェリークに女として最高の奉仕をさせているのだと思うことで、どす黒い悦びに浸っている自分を我ながら度しがたいとも思う。

しかし、アンジェリークの舌がだんだんと上手く動かなくなってきている。

クラヴィスのものを、握ったり、離したり、舌をまわそうとして、突然かぶりを振って果たせなくなる。

自分には見えなかったが、ジュリアスがアンジェリークを追い込んでいる様子が感じられた。

『結構やる…』

自分の体がアンジェリークの声と顔の表情をおし隠してしまっている事が、ジュリアスが激しすぎるのを押さえる方向に作用したのだろう。

自分が比較的早く果ててしまった事は、それは残念だったが、もとより一回放ったくらいではこの熱情は収まりがつかないこともわかっていたし、まだまだ夜は長い。これからいくらでも、アンジェリークを貫く事はできよう。

結果としてアンジェリークが快楽に咽び泣いてくれれば、それでいいのだから。

アンジェリークが握る力もなくしたように、クラヴィスのものを手放した。

不規則で小刻みな呼吸が繰り返される。

絶頂が近い事を悟り、クラヴィスはアンジェリークの上から退く。

ジュリアスも、アンジェリークの達する様子を見たいだろうと思ったからだ。

ジュリアスはアンジェリークの膝を抱えて、力強く律動を繰り返していた。

クラヴィスのものを手放した事で、アンジェリークの喘ぎがはっきりと発せられるようになった。

「あっ…だめ…いや…ああっ!」

忙しない呼吸の合間に意味の無い言葉が連なる。

「アンジェリーク…ああ…アンジェリーク…」

ジュリアスが一層律動を早めたとき、

「あっ…ああああっ!」とアンジェリークが一際高い声で鳴き、小さな顔が大きくのけぞった。

「うっ…」

同時にジュリアスの低い呻き声が上がった。

アンジェリークの絶頂の痙攣に耐えるの生半のことでは難しいだろうとクラヴィスは思った。

高みに上り詰める前でさえ、その柔肉の感触に男の物は蕩けんばかりなのだから。

ジュリアスがアンジェリークに覆い被さり、口付けた。苦しがってアンジェリークはすぐ唇を離してしまう。

「できうる限りのことはしてやりたいのだが…おまえのここは余りに甘美すぎる…」

汗で額に張りついた髪を払ってやるジュリアス。

「おまえはよくやっている…。これの満足そうな顔を見ろ」

「ああ、それならよかったのだが…」

名残惜しげにジュリアスが自分のものを引きぬいた。

クラヴィスは、快楽の余韻に浸っているアンジェリークの体を反転させると、腰をたかだかと持ち上げさせた。

今ジュリアスを受けとめたばかりの花は入り口が綻び、白濁した液体が僅かに外に漏れ出していた。

「さ、おまえの熱が冷める前に、今度は私が連れて行ってやろう。私もおまえに喜びの声をあげさせてやりたいのでな…」

といいながら、今度はずんと音がしそうな勢いで一気に後背から貫いた。

「くはぁっ!」

アンジェリークがのけぞり白い首が露になる。

「もう遠慮はせぬ。思いきり打ちつけてやろう」

アンジェリークの豊かな白い臀部をしっかりと抱えこみ、壊さんばかりに激しく自分のものを打ちこむ。

「あああっ!や…だめ…また…いく…いっちゃう…」

「ふ、そんなにいいのか?おまえはこちらからされるのが好きだったのか?」

「ああっ…いい…いいのっ……もっと…もっときて…」

「ああ、欲しがるだけやろう。私もおまえが欲しい。だが…その前に…ジュリアス、これの口を塞いでくれ。」

クラヴィスが律動を緩め、ジュリアスに声をかけた。

「塞ぐとは…アンジェリークに私のものを含ませろということか」

ジュリアスの頬が若干赤らんだ。

「アンジェリークがいやがりはしないだろうか…」

「大丈夫だ…男を愛する行為にこれは躊躇いを持たぬ。むしろ、悦びをもって行っているようだ。これは優しいからな……限りないほどに…」

「それなら…よいのだが…」

それでも、躊躇いがちにジュリアスが前に回る。

クラヴィスが、ジュリアスに注意を促す。

「これは優しいから、相手を喜ばそうと懸命になるぞ。油断して口中に放ってしまわぬようにな?おまえも、まだこれを抱きたかろう?そのためにも愛撫してもらえ。それに、口を塞いで置かぬと…あのものの名を呼ばれたりしたら、やはり辛いのでな」

「…ああ、そうか、そうだな…」

ジュリアスはアンジェリークの頤を摘み上げ、自分は膝立ちになるとなかば勢いをなくした自分のものをアンジェリークの口元にあてがいこう言った。

「私のものも、愛してくれるか?このおまえのかわいい舌と唇で…」

「ああ…はい、だから、お願い…動いて、やめないで…」

アンジェリークが紗のかかったような焦点のあわない瞳でジュリアスをみあげる。

その瞳の妖しい色あいを見ているだけで、ジュリアスは腰のあたりにまた熱くざわつき出す物を感じた。

そのもやもやとした感情をぶつけるように思いきり腰を突き出すと、アンジェリークがむしゃぶりつくように、ジュリアスのものを含んだ。

同時にクラヴィスが激しい突き上げを再開した。

「ひぅっ…」

アンジェリークは一瞬ジュリアスのものを口から離してしまうが、慌てたようにそれを含みなおそうとする。

愛撫を怠れば、また律動を止められてしまうのを怖れているかのようだった。

ジュリアスのものに唇をおしあて、幹の部分の輪郭をなぞるように舌を這わせてから、先端をすっぽりとその口中に収めた。

先ほど味わった秘裂とはまた異なる熱い粘膜の感触にジュリアスは陶然とする。

口腔の肉壁は硬く、自分を包みこんではくれないが、肉壁より、より能動的に自分の意志をもってジュリアスのものを愛する舌と唇がある。

先端のあわせ目に舌先を差しこまれ、全体を吸い上げられて、ジュリアスはくぐもった呻き声をあげた。これもまた今まで知らなかった感覚だった。

吸われた自分自身がアンジェリークの中にとりこまれるかのような錯覚を覚えた。

アンジェリークの舌から火花の散るような鋭い快楽が紡ぎ出されて行く。

自分のものにすさまじい勢いで血流が流れこむのを感じる。

刻一刻とジュリアスのものが力を増して行く。アンジェリークの口内で力強い脈動が繰り返される。

アンジェリークの舌が自分のものにからみつき吸われるたびに、指先まで痺れるほどだった。

もう、いつでもアンジェリークを貫けるほどに、自分のものは回復していた。

むしろ、いつ口腔内で暴発してもおかしくないくらい情動はたかまりきっていた。一度放っていなければ、恐らくあっさり手放してしまっていただろう。

アンジェリークも、咥えはじめた頃より格段に大きく、硬度をましたそれを含みつづけるのは苦しそうだった。

ジュリアスは、アンジェリークの頤を摘んで上を向かせ優しく囁きかけた。

「そんなに懸命にならずともよい。ただ、おまえに触れられているだけでも、私はいいのだ。心配せずともおまえのことは力の限り愛してやる。私がそうしたいのだ。だから、もう少し、楽にしていい…」

アンジェリークはジュリアスの言葉が今ひとつ脳裏に染み入らなかったようだ。

もともと理性が眠らされているところに、間断無い快楽を与えられ、極簡単な事柄すら理解しがたくなっているのかもしれない。

「もうよいのだ。どうせなら、私はおまえの中で果てたい。おまえの体を感じ、感じさせ、おまえに包まれて、おまえに自分を注ぎこみたい…」

そう、これは紛れもない本心だった。アンジェリークが正気を失っているからこそ告げることのできる気持ちだった。

だからこそ、自分たちは安心してアンジェリークに自分を曝け出せる。自分の奥底に潜んでいた浅ましいほどの情欲をぶつけることができるのだ。

クラヴィスはリズミカルな律動を繰り返している。豊かな白い双球に、これでもかばかりに自分の欲望を打ちこんでいる。

律動にあわせ重たげに乳房が揺れている。思わず手を伸ばし、揺れる乳房を押しつぶすように揉み、先端を摘んだ。

「あぁんっ…」

アンジェリークが頭をふり、ジュリアスのものを離す。ジュリアスは頓着せず、逆にアンジェリークの両の乳首を指先で捏ね回す。

クラヴィスの刻むリズムの間隔が次第に間近になる。アンジェリークの呼吸は火のように荒く熱い。

「ああ…ああ…きて…きて…あああぁっ…」

アンジェリークが大きくのけぞり、背を反らせた。

ほぼ、同時にクラヴィスが苦しげな、しかし、どこか満たされたような表情で、アンジェリークの臀部を抱えこんだまま、動きを止めた。

「…だめ…だ…」

しかし、アンジェリークはもう動きをせがまなかった。そのままがっくりと、床に崩れ落ちた。

珠の汗が浮かんでいたがその顔は夢見るように安らかでさえあった。

「はぁ…はぁ…」

ジュリアスが力なく突っ伏しているアンジェリークの頤を摘み上げ、軽く口付けた。

「さ、今度は私だ。もう一度、おまえで私を包んでくれ。ひとつに溶け合えたような、あの思いを、今一度…」

ジュリアスはアンジェリークの体を抱き起こすと、自分は座したままアンジェリークの体をもちあげ、屹立した自分のものの上にゆっくりとアンジェリークの体を落としていった。

「ああ…」

ジュリアスのものに花を差し貫かれ、アンジェリークは小さな吐息をもらした。

ジュリアスは括れた腰をしっかり抱えこみ根元まで自分のものを収め切ると、改めてアンジェリークの体をきつく抱きしめた。

まやかしの愛だとわかっていてもなお、いや、だからこそ、今一時、できる限り肌を合わせていたいと思った。

アンジェリークが自分の肉体を通して他の男しか見ていずとも、今、自分が与え、与えられる温もりだけは確かな真実だったから。

「おまえの中は、まこと、なんと甘やかで、柔らかく暖かく、私を蕩かすのか…一度でも、おまえと溶け合うことができてよかった…例えおまえが私をオスカーの形代としかみておらずとも…」

「お…すかー?おすかーさま…」

霞のかかっていた瞳に、僅かな光が宿り、瞬く。

強制的に闇の安寧に包みこまれ沈殿させられていた意識が、その錘を振り払って浮かびあがろうと足掻いていた。


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