Don’t stand so close to… 1

アンジェリークが試験を辞退したことで女王試験は決した。が、大陸の育成の完了と、それに伴い旧宇宙の星々全てを新たな沃野である新宇宙へ移乗した後、守護聖及び新女王と新補佐官は飛空都市を引き払って聖地に赴くこととなった。その際、新補佐官は本来なら聖殿内の補佐官私邸にて起居・生活するようになるのが常であるが、アンジェリークに限っては、試験辞退と同時に、炎の守護聖オスカーが彼女との婚約を宣言していたため、オスカーは当然のように新補佐官を自身の私邸へ直接転居させるよう手配した。

そして飛空都市を引き払うにあたり、オスカーは自身の私邸から幾人もの助っ人を連れて、アンジェリークの引っ越しの手伝いに行ったのだが、普通の女学生から次代の補佐官となるアンジェリークの私物は、驚くほどつましく、引っ越し荷物も僅かな箱数に収まってしまい、多数の男手はあっというまに手持無沙汰になってしまった。なおかつ、いざ荷が聖地の炎の守護聖邸に転送されてくるや「できることはなんでも自分で」が身についている新補佐官は、自ら「よいしょ、よいしょ」と届いた引っ越し荷物を部屋まで運びいれようとしていたので、慌てたオスカーが「その華奢な体で運送やのまねごとをすることもあるまい?こういうことは男手に任せてほしいな」と言って、いささか強引に荷物を奪って、自分たちの寝室に運びこもうとし、その様子を目にした複数の使用人が、さらに慌てふためいて、3度オスカーの手から荷を奪い取って、近い将来の炎の守護聖夫人の荷を主人の部屋に急ぎ運びいれるという顛末があったりしたが、そんなこんなで、アンジェリークの私物は、あっけないほど簡単にオスカーの居室のクロゼットの中に納められた。

オスカー邸の主寝室のクロゼットはたっぷりと贅沢に空間がとられており、アンジェリークのつつましい私物全部を収納しても半分どころか、3分の1も埋まらないほど、広々としていた。が、そんなにも空き空間があるにも拘わらず、オスカーは

「寝室のクロゼットは半分以上空だったから、お嬢ちゃんの荷物は、全部いれてもまだ余裕だが…近いうちに収納を増やす手配をしよう、女性は身支度に男とは比べ物にならないくらいアイテム数を必要とするからな…」

とアンジェリークに告げた。男の装いなど単純なものだが、女性はランジェリーの種類も多彩なら、1度ドレスを誂えれば、それに合わせて靴・バッグ・アクセサリーと細々としたアイテムが多数必要であること、また、そういったものが結構嵩をとることも、女性との交際にかけては歴戦の勇者であるオスカーはよーく知っていたからだ。そして、補佐官であり、炎の守護聖の令夫人でもあるアンジェリークが、公式の場で着用するソワレがこれからは多数必要になるであろうことも。

しかし、一般的な女学生から補佐官になることが決まったばかりのアンジェリークには、その辺があまりぴんとこない。自身はフォーマルな装いが学生服から補佐官服に変わるだけという認識しかなかったので、このクロゼットが服や小物で埋まるとか、ましてやこれでも収納が足りないかも、なんて想像がつかない。この収納庫だけで、特別寮の自分の部屋と同じくらいの広さがありそうな気がして、それだけでも守護聖の暮らしぶりというものに、改めて目を見張る思いであったし。根っから庶民のアンジェリークは、守護聖にとっては「当然のレベル」とみなされる生活水準を目の当たりにして圧倒されるのは、この日が初めてではなかったが。

それでも、いつも何事も前向きに、率先してはりきってやらなくちゃが、無意識にしみついているアンジェリークは、感嘆のため息は暫く封印することにして『運び入れてもらった荷物をとにかく整理しなくちゃ』と、自身で荷ほどきして、クロゼット内に整理収納しようと、手近な荷物をあけた。その箱は、ちょうど、アンジェリークの机周りを飾っていた細々とした小物ー女王候補時代は毎日のように使っていた文具や化粧品の箱で、明日にも始まる補佐官任命前研修を受ける間も日常的に使うと思われる品々だった。

「オスカーさまぁ、あの、私が使ってもいいようなライティングビューローかチェストってありますか?小型のでいいんですけど…ステーショナリーとか、ちょっとした化粧品とか、すぐ使いたい日用品を置かせていただきたくて…」

「その鏡付きのチェストを使うといい、確か、何にも使ってないから」

と、家具を指差しつつ、オスカーは

『飛空都市を引き払うと同時にお嬢ちゃんを俺の屋敷につれてきちまったが、とりあえずのお嬢ちゃんの部屋か、せめて、専用家具のいくつかでも、前もって手配しておくべきだったな。いや、お嬢ちゃんを即効屋敷に連れてきたことに後悔はない、むしろ、お嬢ちゃんを俺の手元、俺の目の届くすぐそばにおいておけなかったら、俺はお嬢ちゃんの身が心配で不安で何も手につかなくなっちまうから、これはこれでよかったんだが。数日位と油断して補佐官私邸にお嬢ちゃんを住まわせた揚句、その間に不逞の輩がお嬢ちゃんの寝込みを襲ったり、自分の私邸に拉致ったりしたら、取り返しがつかないからな。何せ、新女王陛下の即位式が済むまでは、俺たちも立場上結婚式を挙げることはできない、ってことは、正式に式を挙げるまでは、俺たちの間柄は事実婚、というか婚約者として同棲してるにすぎないわけで、まだまだ、決して強固な社会的絆が形成されてるとはいえん、と、そこに付け込んで、いつ、誰が、どういう理由で俺たちの仲を邪魔したり、婚約解消を狙って暗躍しないとも限らないからな、一時でもお嬢ちゃんから目を離すのは危険極まりないぜ。だが、女性に必要なインテリアやらなんやら、些か準備不足だったことは否めんな…お嬢ちゃんに不便な生活を暫時とはいえ、強いることになるなど、このオスカー一生の不覚だぜ。ドレッサーとかランジェリー用チェストとか、お嬢ちゃん専用の机とか本棚とか、即効で、いろいろ買いそろえてあげねば…』

と内省すると同時に、凄まじい早さで思考を展開し、アンジェリークのために揃えるべきインテリアの胸算用をする。

一方、空き家具を指し示されたアンジェリークは、それこそ、コマネズミのように、すぐさまくるくると立ち働き始めた。自ら荷物をチェストの中に手際よく整理していく。するとオスカーが、今、気づいたというように

「あぁ、お嬢ちゃん、荷物の整理も、屋敷のものに命じてやらせればいい、君はもう、この屋敷のミレディなんだから遠慮はいらない。今、人を呼ぼう」

と、室内用のインタフォンを手に取った。

「大丈夫です、オスカー様、お屋敷の方の手を煩わせるには及びません。そんなに荷物も多くないし、その、私物をお屋敷の方に見られるのは、私、ちょっと恥ずかしいから…」

が、アンジェリークは手を休めずにオスカーの提案を辞退する旨を返した。その時、手作業に気を取られていたので「恥ずかしい」という本音が、つい、口をついて出てしまった。

というのも、荷物の整理を進める程に、アンジェリークはちょっとした気遅れを感じていたのだ。

アンジェリークは、飛空都市でオスカーと知りあったので、試験が決してこの聖地に赴くまでは、オスカーの私邸も、飛空都市にしつらえた仮宅しか知らない。そして、アンジェリークは、その飛空都市の私邸に招待された時も『なんて立派なお住まい』と感心したものだったが、この聖地の炎の守護聖邸を初めて訪れ、中に通されて、守護聖様って、本当に雲上の方なんだわ…という事実を改めて思い知らされた気がした。

聖地の私邸は、いわば本宅だけあって、飛空都市の私邸だって十分豪奢だと思ったのに、それと比してもより豪奢で広々ゆったりしていた。外観も重々しく、歴史を感じさせ、全体にそこはかとなく格調高い雰囲気が漂っていて、まさに圧巻という言葉が相応しい邸宅だ。クロゼットが特別寮のアンジェリークの私室位の広さがあることだけでも驚きだったのに、チェストを間近で見てわかったが、部屋のインテリアも、総じていかにも高価そうで、落ち着いて趣味も品もいいもので統一されている。飛空都市の仮邸のオスカーの私室には、正直「一流のホテルみたいで、上質のいい調度類が揃ってるけど、生活感があまりない」という、少々寒々しい印象を受けたアンジェリークだったが、ここ聖地の私邸は、代々受け継がれてきている歴史の重みゆえか、オスカー自身が、仮邸よりはずっと長年起居しているせいか、カーテンや壁紙の質感、調度類のデザイン、手入れの行き届き具合から何から、飛空都市の私邸とは風格が桁違いに思えた。

そして、これが守護聖様には、極あたりまえの生活レベルなのだと思うと、ただの物見遊山なら「すっごーい、すてき、どこもかしこも豪華でうっとり…」で済んでも、自分が、この屋敷の住人になるのかという視点に立つと、アンジェリークは、未だ、夢を見ているみたいな気がすることがあって、どうも実感に乏しい。当然、人を使うという発想自体がまだまだ出てこないし、反射的に遠慮の気持ちが先立つ。しかも、このオスカー様の居室にしっくり馴染んでいる重厚なチェストに、自分の私物ーいかにも高校生の持ち物であるファンシーな文具類やかわいいけどチープな感も否めない化粧品とかアクセサリーを仕舞っていると、なんだかとっても場違いな気がしてしまう。だから、オスカー様の私物を…良品を見なれて目が肥えているだろうお屋敷の方々に、自分の私物を見られるのは、ちょっと恥ずかしいな…私の持ち物は、いかにも子供っぽいものばかりだから…と、いうのが、アンジェリークの感じていた気おくれの正体だった。

尤も、アンジェリークは、だからといって卑屈にはなっていない。自分が、つい先日まで1女子高生であったことは事実でー女王候補時代も、学生の身分で試験を受けていたのだから、持ち物が女子高生ぽい物ばかりなのは、当然なのだから。そして「女王候補」に選定された時から、与えられた「名称」に相応しい人間になるには、そして、人からそれ相応に尊重されるには、自身の努力とかがんばり次第とわかっているから、これから、名実ともに補佐官として、そして、オスカー様の伴侶として認められるよう、自然とそうみなしてもらえるよう、色々努力して頑張ろうと思うだけだ。だから、とりあえずは、急いで身の回りの物を整理して、お屋敷内のことを色々教えてもらわなくちゃ、と気持ちを意識して切り換え、一層手作業に精を出そうとしていた。

が、一方で、オスカーは、些細なことではあろうがと思いつつも「私物を見られるのは恥ずかしい」とういうアンジェリークの言葉に引っかかりを覚えた。

何が恥ずかしいんだ、お嬢ちゃん。何か、俺に見られては困る、恥ずかしいと思うようなものがあるのだろうか、お嬢ちゃんには。なにせお嬢ちゃんは多くの守護聖にモテていた。本人の自覚のないところでモテモテだった。特にねちっこく懸想してたのは、闇&水の守護聖だと思うが、小僧どもも油断ならない。もしかして、他の守護聖からもらった恋文とかプレゼントとか一緒に撮ったホロとか、俺以外の男との思い出の品でも、後生大事に取ってあって、今、大切にしまっている最中だから、私物を見られるのが恥ずかしいのだろうか、いやいやいや、まさか、お嬢ちゃんが他の男からの贈り物など、未練たらしく大事にしているわけがない、ないに決まっている、が、なにせ、お嬢ちゃんは優しいから、もらったものをムゲにできず、捨てるに捨てられずにいるなんてこともありそうだ、だって、見られて困るものがなければ、恥ずかしいなんて感情が芽生えることもないわけだし…

と、オスカーは考えをめぐらす程に、とてつもなくいやーなもやもやした気分になりつつあった。認めたくはないと抵抗するも、不安と疑心の小さな黒雲が生まれ出づる兆しを、わずかとはいえ胸中に感じざるをえない。

「お嬢ちゃん、なら、俺が荷物の整理を手伝ってやろう。屋敷の者でなければー俺なら恥ずかしくないだろう?」

『お嬢ちゃんは、屋敷の者とは、まだまだうちとけていないから色々気恥ずかしいだけだ』と、半ば自分を励ますと同時に、オスカーは、自分ではさりげないつもりで、しかし、その実、結構、強引にアンジェリークから荷物の箱を奪いとると、その中身を何気なく目算で検分しようとした。

瞬間『何やってるんだ、俺は…情けないにもほどがあるぜ、これじゃ、俺はお嬢ちゃんの真心を、俺に告げてくれた愛の言葉を信じてないみたいじゃないか』と忸怩たる思いが頭の片隅をかすめたが、気になるものは、気になるのだ、と、開き直ったその直後、オスカーは脳天を棍棒でぶんなぐられたような衝撃を受け、同時に「見なければよかったー!」という激しい後悔のどん底に叩き落とされた。お嬢ちゃんが「俺に見られて困るものを隠し持っているのやも」などと、それがどんなに小さなものであっても、疑心を抱いたことに天罰がてきめんに落ちたのだと思った。

半ばまで荷が出された箱のちょうど中途の処に、カラフルな写真シールか?の数々が束になってまとめられおり、その束の天辺にそれ1枚だけ別にスナップ写真が乗っていた。それは、どこかの家の前でにこやかに微笑んでいる、今よりちょっと幼い印象のアンジェリークと、見知らぬー当たり前だー線の細い、一見少女と見まごうような整った顔立ちの少年の2ショット写真だった。『俺のお嬢ちゃんが、見知らぬ男にー年端もいかぬ少年だって男は男だー気安く肩を抱かれて微笑んでいる』ことにオスカーは自分でも、意外なほどの大きな衝撃を受けた。何よりショックだったのは、その少年?が、アンジェリークの肩を抱き、勝ち誇って笑っているように見えたこと、そして、それ以上にアンジェリークが肩を抱かれていることに全然嫌悪を感じていたり、硬くなっている様子がなく、むしろ、にこやかに、うれしそうに、寛いだ雰囲気で笑っていることだった。

「あ、アレクの写真、プリクラと一緒にしちゃってたんだ…アルバムの方にいれておかなくちゃ…」

『アレク?アレクと言ったら、男の名…ってことは、やっぱり、この写真の人物は男!一見少女に見えるほど可愛くても、年端がいかなくても男は男、なんだな!』

耳ざとくアンジェリークの独り言を聞きつけたオスカーは、いかにも、にこやかに、人畜無害な笑みをうかべ(たつもりだった)

「ほう、お嬢ちゃん、この写真に一緒に写ってるのは、友人か?すごく、仲が良さそうだが…」

と、自分では精一杯のさりげなさを装って、荷を傍らに置き、箱の中からその写真だけを拾い上げ、アンジェリークの眼前につきつけるように手渡し、探りをいれてみる。すると、アンジェリークは素直に写真を受取り、ちょっと照れくさそうに、でも、にっこりと屈託なく顔をほころばせた。

「あ、はい、小さい頃からよく一緒に遊んでた友達なんです。この子の両親と私の両親が学生時代からの友人だったので、本当に赤ちゃんの頃から家同士で行き来してて、仲良くしてた子なんです」

「ほほぅ、幼馴染ってやつがお嬢ちゃんにいたとは、初耳だな…」

アンジェリークが写真の人物を迷いも口ごもりもせずきっぱり「友達」と明言したことに、正直、オスカーはほっとした。しかし同時に、別方面で激しい警戒警報が脳裏に響き渡った。「幼馴染」とは、なんと危険な存在であろうか。これを聞いては油断ならない。「幼馴染」といえば一方が「ただの友達」と思っていても、もう片方は長年の恋の虜だったなんて設定のフィクションが、それこそ掃いて捨てるほどある。しかも、その場合「今まで身近すぎて気がつかなかったけど、本当は、私もあなたのことが好きだった」と気づき、今までの友人が恋人に昇格してハッピーEDというのが、王道パターンではなかったか。この少年が、そういった懸想をお嬢ちゃんに抱いていた可能性は極めて大だ。何の根拠もないが。だって、こんなかわいいお嬢ちゃんが幼馴染だったら、淡い恋心を抱かない方が確率的にありえない。お嬢ちゃんが「幼馴染」なんていう危険人物&危険人間関係に関与していたとは、オスカーは今の今まで知らなかった。今日からお嬢ちゃんと一緒に暮らせると浮かれていたところに、こんな事態が判明するとは「好事魔多し」とはこのことか。全く冷や汗ものである。

「はい、高校入学を機に会う機会が減っていたので…そういえば、お話したことありませんでしたね、あ、この写真は、私が高校に進学した時に撮ったものなんですけど、この子とは高校が別々になっちゃったので、これからは、あんまり頻繁には会えなくなっちゃうね、って言う流れで、一緒に写真を撮ろうってことになって…」

『そりゃ、そうだろう、お嬢ちゃんの母校は女子高だものな、毎日、学校で会えなくなるから、替わりに「僕の写真をもっていて」とでも言われたんだろうな』

と、オスカーは推測する、やはり、この少年は「俺の」お嬢ちゃんに恋していたのだろうな、との確信を強めつつ。もっとも、これはお嬢ちゃんが俺に出会う前の出来事だから、俺がとやかく言うようなことじゃない、小僧っ子がかわいいお嬢ちゃんに「一方的に」(ここは重要ポイントだ)熱をあげて、女子高に進学するお嬢ちゃんに自分を忘れるな、とばかりに写真を押しつけるってのは、ありそうなことだし、写真を撮る時、いかにも「アンジェリークは俺のものだぜ」的わざとらしい牽制パフォーマンスをするのも、若造には、それこそ、ありがちなことだと理解できる。

と、ここまでは、オスカーは大人の思考を展開できるのだ。

しかし、しかしだ。問題はお嬢ちゃんが、それをどう思っていたか、そして、その写真を、どうして聖地にまでもってきているのか、ってことなんだー!という心の叫びを、一方で、どうしても抑えきれないのだ、オスカーは。

そこで、オスカーは心の中のもやもやを晴らすべく、アンジェリークがこの写真の人物にどれほどの親密度を抱いているものかー正体はわかったのでー更なる探りをいれなんとする。

「ほほぅ、学校が別れるからってだけで、記念の写真を撮って、もたされるほど…お嬢ちゃんは、コイツ…いや、この子と、そんなに仲がよかったのか?」

「それはもう赤ちゃんの頃からの仲ですもの、小さい頃って、親が子供の遊びに付き添うことが多いので、親同士も仲のいい子と遊ぶことがどうしても多くなるから、もう尚更でした。だから、いっつも一緒に遊んでたんです。でも、高校で別れることになって、アレクが…あ、この子、アレクって言うんですけど、私が女子高に行くと決まったら、アレクったら「スモルニィの女生徒は粒ぞろいで、合コンのお誘いもひっきりなしらしいし、もし、文化祭とかで他校の男子に声をかけられたら困るんじゃないか」って心配して、それで、わざとこんな風に肩を組んで写真を撮ったんです。もし、その気もない男に言い寄られたら、この写真を見せて「私、彼氏がいます」って言えって言われて。私は、それって効果あるのかなー?っで思ったし、第一、そんな心配ないと思うって、言ったんですけど、ふふっ…」

くすくすと無邪気に思い出し笑いをしながら、アンジェリークは、その写真を懐かしそうに眺めている。そんなアンジェリークを横目に、オスカーは、ちょっとだけ呼気が楽になった。彼女は「わざと肩を組んだ」という明言した、ということは、逆に、この2人は特別な関係ではなかったということだろうー少なくとも、お嬢ちゃんは、この少年に特別な感情はないと、ナチュラルに自覚してたってことだ、となれば意識してないからこそ、肩を組まれても、それこそ、屈託なく笑っていられたのだろう、この年頃だと、異性として意識した対象には、逆に、硬くなったり、ぎこちなくなったりすることの方が多かろうし。

「気のおけない存在だった、ってことか」

せいぜいが、ここまでだろう。ただ、この小僧の方はどうだったか怪しいが、とオスカーが思っていると、アンジェリークが言葉を続けた。

「はい、それで、私が女王候補に召喚されたら、たぶん、もう会えないってわかってたからでしょうね…飛空都市に出立する前に、写真をもって行ってくれって言われて…この写真以外も、両親にも他の友達にも、いっぱい写真を持たされました。私より、周囲の方が女王試験に召喚されることの意味を、よく、わかっててくれてたんですね」

と言いながら、アンジェリークはその写真を、箱の中から探し出したアルバムに大事そうにしまった。

「お嬢ちゃん…」

そのアンジェリークの言葉と振る舞いに、オスカーは、かなり理性的に思考を立て直した。自分たちは、この聖地に赴く時、多くの人と2度と会えない別れを経験する、その相手がどんな立場の誰であれ、互いにどんな感情を抱いていようと、それに気づいていようといなかろうと、別れは恒久的かつ避けられないものだーなればこそ写真の1枚や2枚で、四の五の言うまい、それが「俺の」お嬢ちゃんを私物化してみせるような写真ではあっても…と、オスカーの理性の天秤はこの時点では「大人の判断」の方に大きく傾いでいたので、自然と、理解あふれる言葉が口をついて出た。

「そうか、親同士が仲がいいって言ってたものな、主星にいれば一生の付き合いだったかもしれないんだものな」

そう、主星にいれば、こいつとアンジェリークは一生の「友達」付き合いだったかもしれん、が、お嬢ちゃんは何よりも俺と共に過ごす生涯を自らの意思で選んでくれたのだから、と、いう余裕のー少々厭らしいが、ちょっとした優越感も込でー感情が、オスカーに寛大な言葉を紡がせた。が、更に続いたアンジェリークの言葉に、オスカーのこの少々の優越感は、程なく、跡形もなく木っ端みじんに打ち砕かれて吹っ飛んだ。

「はい、たまたまなんですけど、私の両親は2親とも一人っ子で、アレクの両親も1人っ子同士のご夫婦だったんです。2親とも一人っ子だと、親類とかの係累がいませんから、万が一、自分たちが不慮の事故で早世したような場合、子供に頼れる身寄りがないってことをすごく心配して、それで、お互いに何かあった時は、互いに互いの子の養親になろうって、私たちが生まれる前から約束してたんですって。生まれてくる子が男女に別れたら、もう、許嫁にしちゃう気だったとも聞きました、いくらなんでも、気が早すぎですよね。なので、私とアレクは、万が一の時は、いつでもなじめるようにって、互いの家をしょっちゅう行き来して、一緒に遊んでたんです。お互い、子供がそれぞれの両親になじむように、子供同士がいつ兄弟になっても、ぎくしゃくしないようにって。ものすごく心配症だったんですよね、私たちの両親は。でも、それだけ大事に思われてたってことだし、親って、そこまで子供の将来を案じて、いろいろ考えてくれるんだなって、今は純粋に感謝してます。幸い、私もアレクのご両親も大過なく過ごせたので、懸念してたようなことは起きなくて…私は、こうして、聖地でオスカー様と共に生きていくことになりましたし、どちらにしろ、もう一人立ちする年齢になりましたから、両親の用意してた安全網は、使われないままで終わって、よかったんですけど…」

と、アンジェリークがしみじみ語った昔話は、途中から、オスカーの耳に全く素通りだった。

この時のオスカーの耳の中には、アンジェリークの言った「許嫁」という言葉が渦を巻き、何重にもエコーして、響き渡っていて、他に何も耳に入らず、気がいっていなかったのだ。

『許嫁…?許嫁だって?この少年が?!じゃ、お嬢ちゃんは、もし、聖地にこなければ、この少女みたいな少年に嫁いでいたっていうのか?』

という思考にとらわれ、あっという間にオスカーの理性は身動きとれなくなった。そして、1度「アンジェリークが自分の手から失われてしまう」可能性に囚われた思考は、凄まじい勢いで負の螺旋を描き始めた。

『いや、ここ聖地に来ても、今、俺と婚約してても、もし、お嬢ちゃんが補佐官に正式に就任する前に、やっぱり下界に戻るなんてことになったら、お嬢ちゃんは、この男のモノになっちまう?生まれた時からの仲良しで幼馴染で、親も公認の許嫁のこの若者の花嫁になっちまうっていうのか…?』

オスカーは息苦しさでどうにかなりそうだった。この周辺だけ酸素が薄いような気がする、もしや、炎のサクリアが暴走して、周辺の酸素を燃焼しつくしているのではないかとさえ思った。そして、実際、オスカーの思考は燎原の火のように瞬く間に制御の効かないものへと暴走していく。

そうだ、考えてみればお嬢ちゃんは、まだ正式に補佐官に就任したわけじゃない、守護聖と異なり、補佐官はなってもならなくてもいいー去就を自身で決められる職種だ、女王ならともかく、正式就任の前の補佐官なら辞意を示せば聖地から出ていけないわけじゃない、いや、お嬢ちゃんが正式に補佐官になったとしても、女王位と異なり、補佐官は中途退職も不可能ではないのだ、もし、お嬢ちゃんが、何らかの理由でこの聖地を出たい、と言い出したら?お嬢ちゃんは、外界に帰って、この少年のものになっちまう?

いや、そんなことはない、ありえないとオスカーの理性は断じる。責任感の篤い彼女が補佐官職を投げ出すはずがない、しかし、聖地からは去らずとも、俺からお嬢ちゃんが去っていく可能性は?絶対にゼロだと言い切れるか?だって、この少年に限らず、彼女の周囲には、彼女を大切に思い、恋慕う男どもがわんさといるのだ。今のお嬢ちゃんは俺を選んでくれている、だが、明日は?もっと先の未来では?お嬢ちゃんは、俺の傍らにいてくれると、断言できるか?

お嬢ちゃんがずっと俺のものであり続けるには…お嬢ちゃんを俺の手元に、留め置くために、俺は何をすればいい?お嬢ちゃんが、決して俺の手元から飛び去ってしまわぬようにするためには、どうすればいい?

「お嬢ちゃん…いや、アンジェリーク…」

「はい?どうなさったんですか?オスカーさ…」

とアンジェリークが問いかけたその唇を、オスカーはいきなり、かつ、強引に塞ぎ、塞ぐとすぐに、いつにない荒々しさで無理矢理のように舌を捻じ込んだ。

「んんっ…」

アンジェリークはいきなりの強引な口付けに戸惑い、僅かではあったが、反射的に身を退こうとした、それが、オスカーを更なる焦慮で焼いた。

「お嬢ちゃん、逃がさない…君は、俺の、ものだ…」

「オスカー様…?」

アンジェリークの声に戸惑いと、微かな怯えが滲んだーような気がした。

その怯えの色が、オスカーをどうしようもなく追い詰める。

俺は、どうしたら君をこの胸に抱いたままでいられる?この腕の中から君が絶対に消え去らないと、どうしたら言い切れるようになる?だって、君は天使だ。誰からも愛される、誰もが愛さずにいられない、その背に白金の翼をもつ天使なのだから。俺が幾度君を抱いたって、その身を組み敷き貫いたって、その翼が消えてなくなるわけじゃない、君の翼は何物にも手折られるものではない、その翼は目には見えてもー俺には感じ取れても手にはとれないものだから。手にとれないものをー憧憬をもって眺めるだけのものを手折ることなど誰にもできないのだから…。

畢竟、俺にできることは…君の翼をがんじがらめに縛り、君がどこにも消えてしまわなうよう、この俺の身に、君を繋ぎとめるだけ。君が俺の元から飛び去ってしまわぬよう、官能の鎖と快楽の楔で、俺にしばりつけ、俺に縫いとめてしまうだけ…俺には、それしか、考えられない、思いつかない…。

「アンジェリーク、君は、俺のもの…俺だけのものだ…」

アンジェリークの耳孔に甘い毒薬を流し込むようにオスカーは囁きざま、もう1度、荒々しく唇を奪い、すかさず舌をからめ取る。身動きできぬほどにきつくアンジェリークを抱きすくめ、そのまま自身の体重をかけて倒れこむように、アンジェリークを絨毯の上に押し倒した。

荒々しく舌を貪りながら、手探りでもどかしげにブラウスのボタンを幾つかはずし、強引に胸元に手を差し入れる。手に触れたランジェリーの内部に、更に強引に手を進め、直に乳房をわしづかみ、こねるように揉みしだく。

「んんっ…んっ…」

アンジェリークがオスカーの腕の中で反射的に身じろぐ、が、退こうとすれば、尚更、追われることになる、追わずにはいられなくなる。

『だめだ、お嬢ちゃん、逃がさない…逃がしはしない…』

オスカーは兇暴な熱情に浮かされ、瞬間、アンジェリークの身を抱え込み、折れよとばかりにきつく抱きしめてしまう。

そして、再び乳房を荒々しくこねまわす。指と指の間にまだ穏やかな弾力の乳首を挟み込む。手指をずらして、もっと意識的に乳首を指先でつまみ上げ、ひねり、指の腹で押しつぶす。

「んんんっ…」

押し殺した声とやるせない吐息が零れるのが、オスカーの唇にも伝わってくる、オスカーの指先に、アンジェリークの乳首がみるみる硬さを増していくのがわかる。アンジェリークはオスカーの与える官能に日に日に敏く反応するようになっていた。そのアンジェリークの感じやすさが、更にオスカーの情欲の焔を燃え上がらせる。アンジェリークをもっと追い詰め、追い込みたくなる。

ここで、オスカーはアンジェリークとの口づけをようやく解くと、即座に己の唇を、しなやかな首筋へと滑らせ、縦横に唾液の跡をつけ、時折きつく吸い上げる。手はブラウスを乱暴にはだけ、ぐい、とブラを押し下げて、アンジェリークの乳房を完全にあらわにしてから、乳房の膨らみに吸い寄せられるように舞い戻る。長い手指は自在に動いて、膨らみの頂きを遠慮なく摘み、くりくりと捻り、指の腹で転がし、天辺を軽くつまびく。

「ふぁっ…あっ…やっ…オスカーさま…だめ…だめです…あんっ」

解放されたアンジェリークの唇からは、堪え切れない喘ぎと、オスカーの愛戯を窘める言葉とがない交ぜに漏れ出た。

「だめじゃないだろう?お嬢ちゃん、俺にちょっと弄られただけで、こんなに乳首を固くしておいて…」

「や…だって、人が…お家の中に、たくさん、人がいるのに…」

「だから…?」

平然と受け流され、アンジェリークは、瞬間、どうしていいかわからなくなる、と、その虚を突いたように、オスカーはアンジェリークの肩口から鎖骨にかけて滑らせていた唇をやにわに乳房の頂点へと滑らし、ちゅぅっ…と音をたてて乳首を吸い上げた。

「あぁんっ…」

オスカーは、乳房を思いきりよくこねまわしながら、両の乳首を交互にきつく吸って、より固く屹立させる。痛いほど尖った乳首の、片方は指で紙縒りを縒るように捻り摘んでは、先端を爪先で軽くひっかくように刺激する、もう片方の乳首は、大きく口に含んでねっとりと舌で舐め転がし、舌先で押しつぶす。

「あっ…だめ…だめ、オスカーさまぁ…」

「どうしてだ?お嬢ちゃん、君のおっぱいは、嫌とはいってないぜ、ほら…」

乳首の根元に軽く歯先をあてがったまま、乳首の天辺をくすぐる様に勢いよく舌を蠢かすと、アンジェリークが悲鳴のような嬌声をあげた。

「あぁあっ…」

「ほら、気持ちいいんだろう?俺におっぱいを弄られて、気持ちいいって、正直に言ってごらん、お嬢ちゃん…」

「だめ…だって、だって、声、でちゃう…お家の中に…人、いるのに…」

「聞かせてやればいいさ、お嬢ちゃんのかわいいさえずりを…君が、俺のものだという証を…」

オスカーは、アンジェリークの耳朶をぺろりと舐めまわし、耳孔に舌を差し入れながら

「人がいることなど忘れさせてやろう、お嬢ちゃん…」

と、不敵な言を放ち、アンジェリークのスカートを無造作にめくりあげると、ショーツの中に荒々しく手を差し入れた。

「きゃ…」

アンジェリークが、びっくりしたように身をにじり上げて逃げようとした処を、オスカーは体全体で抑え込みながら、掌でふんわりとした繊毛とその奥の花弁を指先でくにくにと柔らかく揉んだ。アンジェリークの身から僅かに力が抜けるのがわかる。その機にショーツをさっと足首まで下ろして取り去ってしまう。

「おっぱいが気持ちいいだけじゃ、物足りないんだろう?だから…こっちも気持ちよくしてやろうな、お嬢ちゃん、何もわからなくなる程に」

オスカーは改めて、アンジェリークの乳首を口腔に咥え混み、同時に、下腹に伸ばした手指で花弁の合わせめを割って、指先を幾度も前後させた。秘裂は、しとどに濡れそぼるという程には潤びてはいなかったが、快楽の証拠を確かに滲ませており、オスカーが指を曲げ伸ばしする毎に、くちくちと湿った音をたてた。

「ほら、お嬢ちゃんの花も、もう蜜を滲ませてる…くちゅくちゅ言っているのが、自分でもわかるだろう?」

「あぁっ…やっ…はずかし…」

「すぐに…恥ずかしいと思う暇もなくなる…」

オスカーは指先にたっぷりと露を乗せるや、花弁の頂点に控え目に顔を覗かせていた花芽を指先で探りあてると、その上で、指の腹で円を描き始めた。

「あぁあっ…」

アンジェリークの身がオスカーの体躯の下で、跳ねるようにのたくった。

オスカーが指先で花芽を掬いあげ転がす程に、莢に覆われた肉珠が、硬さを増していくのが、オスカーの指に伝わってくる。露を宿すために前後させる指先も、もう、秘裂の奥まで指し挿れる必要もなかった。アンジェリークの愛液は、花弁の表をぐっしょりと濡らして滴る程に溢れていた。そのとろりと滑らかな蜜の助けを借りて、オスカーは指の動きを一層早め、かつ、複雑にしていく。合わせ目の極浅い部分を幾度も指先で割るだけの焦らすような愛撫の後、いきなり、指を奥まで差し入れて、わざと水音を立てるように中をかきまぜては、肉壁を勢いよく擦る。合わせて唇で乳頭を咥えこんでは、両の乳首を交互に、吸い、しゃぶり、舐め転がす。

「あっ…ぁんっ…や…ぁっ…だめ…」

肉体は間違いなくオスカーの紡ぐ快楽に酔っているのに、アンジェリークの唇からはまだ否定の言葉が漏れ出づる。それが、オスカーを苛立たせる。わかっている、この程度の愛撫では快楽の忘我には、まだまだ程遠いのだと。アンジェリークは快楽に酔いつつある、でも、まだ心理的な抵抗も周囲を気にする理性も残っている。我を忘れて、俺に更なる快楽をねだる処まで行ってない。

「お嬢ちゃん、その唇が「もっと」としか言えないようにしてやろう」

オスカーは注意深く手探りで花芽を押し開いて肉珠を晒し、その突端で極々軽く指の腹ーもちろん、たっぷりと彼女自身の蜜をまぶしてあるーを回すと、アンジェリークの身が、オスカーの体の下で激烈に跳ねた。

「ひぁあっ…」

そのままオスカーの指は、せわしなく秘裂と肉珠の先端の往復を始めた。差し入れた指で柔襞をねっとりとかき回し、翻って、その指の腹で、ぴんと張り詰めた肉珠をやんわりと押しつぶしては、尖った先端をくすぐるように指を躍らせる。

「あぁっ…はっ…やぁ…あぁあっ…」

肉珠の先端を指先が弄う度に、綺麗なソプラノの嬌声が、嬌声のみが奏でられる。花弁と肉珠への緩急自在の愛撫で、アンジェリークの唇は、もう、ダメとか嫌という意味のある言葉を紡ぐ余裕をなくしていくーオスカーがなくさせている。

指先の動きを休めることなしに、オスカーは唇を乳房から離し、少しづつ体躯を下方へとずらしていく。アンジェリークが、オスカーの与える快楽に溺れつつあること、もう少しで快楽に身を投げ出す寸前であるのが、その身の解れ具合から察せられた。今のアンジェリークは、オスカーが自身の体躯で強く押さえつけていなくても、もう上方へにじり逃れようとしない、足を閉じようともしないから。

だから、ここで、あとひと押しを押してやる。

己の体躯をアンジェリークの開かせた脚の間にするりと流れるように収めると、オスカーはアンジェリークの腰の下に手を差し入れて、お臀ごと少し持ち上げると、おもむろに花弁に食らいつくように口づけた。間髪入れずに秘裂に深々と舌を差し入れ、あふれ出る愛液を音をたてて啜る。芳しく、微かな潮に似た味わいの蜜を唇を鳴らすように、味わう。

「あぁっ…やっ…」

突然、ぬめぬめと暖かな物の侵入を感じたせいか、アンジェリークが反射的に身じろごうとした。が、その前に、オスカーはすかさず、とがらせた舌先で花弁を舐め割り、そのまま、むき出しにされた肉珠に舌をあてがうと、勢いよく左右にはじいた。

「ぁああっ…」

アンジェリークの背が、きれいな弧を描いて反りかえる。

オスカーは、そのまま、愛しげに唇で肉珠を食み、根元にぐるりと舌を回しては先端に向かってなめ上げた。極軽く根元に歯先をあてがっては、珠全体をちゅくちゅくと音をたてて吸いあげ、その突端で舌を自在に躍らせた。

指で弄うより、唇で挟み込み、舌でなめ転がす方が、アンジェリークの肉珠がどれほど健気に屹立してるか、痛いほど張り詰めているのか、よくわかった。その硬い弾力が、なんともいえず唇に心地よく、小気味よい。

そして、舐める程に硬さを増していくように思えるこの愛らしい珠を、もっと苛めてやりたい、もっともっと狂わせてやりたいという狂気のような欲望がこみ上げてき、オスカーは、指先での愛撫と、口唇での愛撫を交互に繰り返し肉珠に与え始める。荒々しく野性的な指先での愛撫の後に、珠にねっとりと舌全体を押し当てると、繊細な舌遣いで舐め転がしては、音をたてて吸い、閉じた唇で尖った先端を撫でてやる。

「ひぅ…ぁっ…はぁあっ…」

アンジェリークが火のような息を絶え間なく吐く。時折、小さく身が震えるのは、軽く気をやっている証左かと思い、オスカーは身の内が震える。何度めかの小さな戦慄きを、オスカーが肌に感じた後、アンジェリークが半ばすすり泣きながら訴えた。

「オスカー様…もう…もう…お願い………」

ここで、オスカーは暫時、唇を珠から外し、指先で、穏やかに珠を転がしながら問うた。

「なんだ、もっと、ここを弄ってほしいのか?こんなに舐めてあげてるのに、お嬢ちゃんは欲張りだな…」

オスカーは肉珠の先端にとがらせた舌先をあてがったまま、素早く左右に顔を振った。

「ひぁああっ…やっ…違うの…お願い…も…我慢できない…」

「我慢なんてしなくていいんだぜ、お嬢ちゃん、どうしてほしいのか、はっきり俺に言えばいい、さ…どうしてほしい?」

ほの暗い喜びを胸に秘めつつ、オスカーは問う。

アンジェリークは、切なそうに瞳を細め

「も、お願いです…オスカー様をください…」

と、震える微かな声で告げた。

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