「ふ…我慢できないのか?お嬢ちゃん、俺の…これが欲しくて…」オスカーは半身を起こし、手際よくスラックスを緩めて、剛直をまろび出させると、アンジェリークの手を取って、それにあてがわせた。
「あ…」
節くれだった肉の幹の硬く熱い感触に、瞬間、戸惑いためらいように、アンジェリークの白く細い指が宙に泳ぎかける、が、オスカーは、アンジェリークの手をしっかりと自分のものに押し付け、握りこむようにと示唆する。
「俺のものが欲しいなら…ちゃんとお強請りしてごらん、お嬢ちゃん」
空いている方の手指で、縒るように肉珠を捻りながら、オスカーはととびきり甘い声で囁いた。
「あぁ…オスカー様、これをください…オスカー様が欲しいの……」
アンジェリークがオスカーのものに手を添えたまま、半ば夢見るように、せつせつと訴えた。
「ああ、今、あげような、お嬢ちゃん」
オスカーは蕩けそうに優しい声で応えると、アンジェリークに小さく口づけた。唇を軽く吸いながら、大きな手でアンジェリークの膝がしらをしっかりと掴み、ぐいと、力をこめて脚を大きく開かせ、自分は彼女の脚の間に身を滑らせ膝をつく。そして、つかんだままだった彼女の脚を、おのれの大腿部に導き乗せることで、彼女の腰を浮かせ気味にする。
淡い繊毛を透かして、豊かな蜜で艶やかに濡れ光る花弁がオスカーを誘う。誘われるままに、剛直の先端を花弁にあてがう。己の先走りと彼女の蜜を混ぜて塗り拡げるように、先端で花弁を撫でると、とろりぬるりと温かな愛液の滑らかさも、ぷっくらとした弾力に富んだ花弁の感触も、たまらなく悩ましく心地いい。
すると、アンジェリークが焦れて、にじにじと腰をせり出すように押しつけてくる。無論、これも計算してのことだ。とことん、アンジェリークが自分を欲するように、と。
「や…オスカー様、意地悪しないで…お願い…」
眦に涙を受かべてアンジェリークに訴えられ、オスカーはぞくぞくするような喜びを覚える。
そうだ、お嬢ちゃん、俺に餓えてくれ、焼けつくほどに俺に飢え、俺を欲してくれ。そうすれば、俺は楔で、君を俺に縫い付けることができる。君が俺をひどく欲する限り…そして、君が俺の腕の中で歓喜のさえずりをあげる間は、君は俺のもの、俺だけのものと、俺は安心できる。
「俺がお嬢ちゃんに意地悪なんて、するわけないだろう?」
震えるほどの喜びを胸に、オスカーは先端を花弁の合わせ目にゆるゆると飲み込ませていった。オスカーのものが自身を、徐々に、いっぱいに満たしていくその感触に耐えるかのように、アンジェリークが息をつめて、悩ましげに眉をひそめる。その表情はとても扇情的で、清艶だった。情交を知り染めて間もないアンジェリークは、未だ、挿入の瞬間にはー自ら望んでいてもー幾許かの苦痛や圧迫感を覚えるのかもしれない、が、その悩ましげで切なげな表情は、初々しくもあでやかで、オスカーの雄の部分をひどく刺激してやまない。そして、ならば、尚のこと、もっと俺を強く感じさせたい、俺の存在をいやというほど感じてほしいとの嗜虐的な思いが沸き、突如、オスカーはアンジェリークの最奥めがけて一気に貫いた。
「ひぁあっ…」
アンジェリークが歓喜とも苦痛ともとれるような甲高い囀りで鳴いた。
先端が弾力に富んだ最奥を叩くと、その力強い突き上げに、反射的にであろう、アンジェリークの秘裂は痛い程にきつくオスカーの男根を締め付けてきた。
待ちわびられていたのだと、素直に、深い喜びに浸り、その喜びは、たちまち、オスカーの頭は沸騰させる、彼女を欲する気持ちに抑えがきかない、思う存分、彼女に自分自身を突きたてたい、一気呵成に、攻め立ててしまいたいと、焼けつくように思う。
心の欲するままに、オスカーはアンジェリークの脚をしっかと抱え込んで、勢いよく、立て続けに腰を叩きつけた。
己の男根が、アンジェリークの花弁の真芯を貫く様に、引き抜く度に鮮紅色の柔襞がめくれかえる様に目を奪われる。これでもかと言わんばかりに思い切りよく突きたてれば、きゅうと苦しい程に肉茎を締め付けられ、引き抜けば柔襞が名残惜しげに絡みついてくる。
「あっ…あぁっ…はっ…ぁあ…」
奥を突きあげる度にアンジェリークのきれいに澄んだ嬌声がリズミカルにあがる。
媚肉はとろとろやわやわとして捉えどころのない程柔らかく温かく、その妖しい感触も、ひどくオスカーを酔わす。抜き差しを繰り返す程に、豊かな愛液が、彼女の中から、迸るように溢れてくるのがわかる。滑りが良すぎて並みの男なら物足りない程かもしれない、が、己が男根を淫らに艶めかす彼女の豊かな愛液が、オスカーには、嬉しくありがたい。力の限り突き上げ、つきたてても、彼女を傷つける恐れがない、むしろ激しすぎるほどの自身の律動を、彼女は悉く深い快楽として受け取ってくれていると、わかるから。
「気持ちいいか、お嬢ちゃん…」
「んっ…いい…いいの…あ…はぁ…んっ…」
「もう、すぐにもイっちまいそうだな、お嬢ちゃん…」
オスカーが故意に腰の動きを少し緩める。
「…や…やめちゃいや…オスカーさま…もっと…」
「もっと…どうしてほしいんだ?お嬢ちゃん」
「お願い…もっと…もっと動いて…オスカーさまぁ…いっぱい…いっぱい奥まで…きて…」
最初は焦れて切羽詰まった口調で、なのに、言葉の最後は、恥じらいからであろう、消え入るようにつぶやくアンジェリークのおねだりに、オスカーの心は存分に潤い、満たされる。
そうだ、お嬢ちゃん、もっと俺を欲してくれ、俺が与える快楽に夢中になってくれ。そして、こんなにも深く激しい快楽を君に与えられるのは、俺だけだ、他の誰でもない俺だけだと…どうか…
祈るような気持を胸に、オスカーは、それでも、にっ…と自信ありげな笑みを口元にたたえ
「ああ、思い切り、奥まで突いてあげような、お嬢ちゃん…」
と、告げざま、アンジェリークの足首をがっしと掴んで己が肩に乗せ、すかさず渾身の力で腰を叩きつけた。
「はぁあっ…」
勢いのついた律動を立て続けに繰り出すと、アンジェリークが、今にも泣きだしそうに切なげな表情で、いやいやをするように頭を振る。
「さっきより…奥まで来るだろう?」
「んんっ…すご…奥、あたるの…あっ…擦れて…や…あぁんっ…」
「ああ、もっともっと、よくしてやろうな、お嬢ちゃん」
オスカーはアンジェリークの脚を肩に担ぎあげたまま、上体を倒し、自身の身体で抑え込むようにアンジェリークの体を2つ折りにすると、己と彼女を寸分の隙もなく縫い付けるように、男根で彼女の花を刺し貫いた、凄まじい勢いで、幾度も執拗なまでに。
「ひぁっ…あぁああっ…」
肉の杭を深々と穿たれるたびに、体全体で抑えつけられたアンジェリークの身が、どうしようもなく、オスカーの下で小刻みに震える。アンジェリークは、溺れる者のように懸命にオスカーにしがみつき、その小さな手は、オスカーの広い背中を闇雲にさまよい、時に爪をたてる。
「あぁっ…やっ…すご…激し…ぁあんっ…」
「もっと…もっとだ…君に俺をやる…」
「あぁっ…オスカー様…オスカーさまぁっ……」
「ああ…俺の名を呼んでくれ…アンジェリーク」
「んっ…オスカー様…好き…好きなの…オスカーさまぁ…」
「俺もだ…愛してる…愛しているんだ…俺の…俺だけのアンジェリーク…」
アンジェリークが、感極まって、俺の名を呼ぶ、無我夢中で俺を欲し求めてくれているのが、彼女の声、表情、体のすべてから伝わってくる。彼女の熱い想いが、オスカーの魂を隅々まで温かいもので満たし、うるおしていく。
オスカーは、素早く半身を起こすと、揺さぶられ続けるアンジェリークの乳房を両手で思い切りわしづかみ、荒々しく揉みしだきながら、一層、腰の動きを早める。素早い一突きごとに、渾身の力を込める。
「あぁっ…や…あぁああっ…」
アンジェリークが、オスカーの激しい突き上げと揺さぶりに耐えきれないとでもいうように、細く甲高い悲鳴をあげた、全身が戦慄き、媚肉がうねるように、オスカーのものを包み込み、きゅうきゅうと締め上げた。
「くっ…」
もうこらえきれなかった。アンジェリークの身体の一番奥深い処で、オスカーも自身を解き放った。
自身が内側から爆発するような凄まじい開放感と、彼女に自分のありったけを注ぎ込み、受け止められた充実感に、陶然とする。そしてオスカーはアンジェリークの上に倒れこむように、未だ、すすり泣きをこぼしている唇に口づけ、両の頬と両の乳首の天辺にも、軽く、だが、優しい口づけを落とした。絨毯の上には、アンジェリークの金の髪が扇のように広がっておりーオスカーに思い切りその身をゆすぶられた所為だろうーオスカーは、アンジェリークの金の髪をまとめるように、愛しげに、彼女の小さな頭を己の胸の中に抱え込んで幾度も撫でながら、切々と告げた。
「アンジェリーク…俺の傍にいてくれ。これからも、ずっと…いつまでも、俺の傍に…この俺の腕の中に…」
するとアンジェリークの腕は、か弱い程の力で、が、確固とした意思をもった動きでオスカーの背に回され、オスカーをきゅっと抱き締めかえした。荒い呼気の間に間に
「はい…はぁ…いつまでもお傍に…はぁ…私の方こそ…オスカー様のお傍に…はぁ…ずっと…いさせてください…」
と応えてくれた。
「アンジェリーク…」
荒れ狂う激情を余すところなく受け止めてもらい、真摯にひたむきに自分の存在を求めてもらえたことで、ようやく、オスカーの気持ちが凪いでくる。
そして、人心地のついた処で、初めて気づく。オスカー自身に着衣の乱れはほとんどなかったが、オスカーの身体の下に横たわるアンジェリークは、半ばまでしか着衣を解かない状態で、思い切り愛されたため、着衣の乱れは、しどけないどころではすまない有様だということに。
白いブラウスの胸元は大きくはだけられて、ブラジャーは押し下げられて、紐様に細いウエストに絡みつき、スカートはお腹までめくれあがって、ショーツは足もとに放り出され、真珠のような肌の露出している部分はほぼオスカーの体液まみれで、未だ息も絶え絶え(にオスカーには見えた)に荒い呼吸を繰り返し、毛足が長く触り心地はいいとはいえ、本来横たわる場所ではない絨毯から起き上がる気力もないようなアンジェリークの様子を目にして、ようやく頭の冷えつつあったオスカーは、激しい後悔と慙愧の念に囚われた。
「お嬢ちゃん、すまない、無茶をしちまって…今、服を整えて…いや、1度、服を脱いでシャワーを浴びる方がいいか?」
オスカーはアンジェリークの背を抱き起こしながら、ブラウスのボタンに手をかけようとして、1度手を止め、アンジェリークの顔を心配そうに覗き込む。
「は…はぁ…はぁ…できれば、シャワーを浴びたい…かも…でも、あの、すみません、オスカー様、私…ちょっと、立てない…みたい…」
「!…すまん!お嬢ちゃん!浴室には俺が運んでやる!ああ、着替えは、家の者に用意させておくからな!」
「え?あの…」
オスカーはきっと眦を決して、快楽の余波でぽやんとしたままのアンジェリークを勢いよく抱き上げると、寝室脇の浴室に直行し、備えつけのインタホンからオンフックで使用人にアンジェリークの荷物の整理と、着替えの用意を命じた。その間も手を一瞬も休めず、勢いよく熱い湯を出して湯船に湯を張りつつ、アンジェリークの着衣を、今度は、きちんと順番に、無論、この上なく優しい手つきで全て取り去り、湯が適度に溜まったところで、湯船の中にそおっとアンジェリークを横たえてやった。アンジェリークが、ほぅと安堵したような吐息をついたのを見て、オスカーは、アンジェリークの上にかがみこみ、その髪をいたわるようになでた。
「すまなかった、お嬢ちゃん。お嬢ちゃんの足腰を立たなくなせちまうなんて、俺はさいてーだ…」
アンジェリークは、お湯の浮力で体が楽になったのと、ようやく、深すぎた快楽の余韻が薄れてきたことで、強がりでなく
「そんな、オスカー様、私が立てないなんて言ったせいで、心配かけちゃって、ごめんなさい。少し休めば動けますから…きっと…。だから、大丈夫です。お風呂まで連れてきてくださって、ありがとうございます、オスカー様」
と、はにかみ微笑みながら、礼を言った。
そのいじらしい、むしろ、自分を気遣う言葉に、オスカーは、感動すると同時に、強い懺悔の衝動にかられた。
「すまん、重ねてすまなかった、お嬢ちゃん。俺は、つまらない嫉妬に駆られて、君を手荒く乱暴に扱っちまったのに、君って子は…俺に心配をかけたなんて、謝らなくていいんだ、荒々しいセックスで君の足腰立たなくさせたのは、俺なんだから、君を風呂場に運ぶのなんて当然のことだ、礼を言われるようなことじゃない。なのに、君はどうして、そんなに優しいんだ…俺は君に「いきなり乱暴にしてひどい」って非難されて当然なのに…」
「いえ、そんな…オスカー様は乱暴なんかじゃなかったですよ、その、あんまり気持ちよくしていただいて…とろとろに溶けちゃうかと思ったほど…それで、私、体に力が入らなくて、動けなくなってしまっただけで…その、確かに、なんだかすごく、いつにもまして激しいとは思いましたけど…きゃv」
アンジェリークが照れて、湯船の中で顔を掌で隠す。
「でも、あの、そのいつもより、激しかったのも、なんだか、すごく突然?…だったのも…あ、突然でも全然かまわないんですけど…あの、どうして?それに嫉妬って?何?何のことですか?オスカー様」
アンジェリークは、真実、純粋な疑問の形でオスカーに問いかけた。アンジェリークは、荷ほどきの最中に、急にオスカーに押し倒された事自体を怒ったり嫌がったりはしていない。ただ、あまりに唐突に思えて驚いたのと、オスカーに愛撫されたら、声が抑えきれないことは自明だったから、もし、お屋敷の人に聞かれたら恥ずかしいと思い、最初、少々、尻ごみしていただけだった。尤も、その羞恥の訴えは、オスカーにあまりに平然と受け流されてしまったことで、アンジェリークは「家の中にいつもどなたかが居るのが当たり前だと、ドアさえ閉めてればプライバシーは保たれる位に思ってないと、きっと平常心で生活できないんだわ。このお屋敷に私たち以外人がいない時なんて、そう、あるとは思えないし、確かにいちいち気にしてたら、これから落ち着いて生活できないかも。もちろん、こうして愛し合うことも(きゃv)…だから、オスカー様は家内に使用人がいることを、私が当たり前に思えるよう…使用人がいても、遠慮や気兼ねせず普通に振る舞えるよう、私の意識を切り替えさせようとなさっているのね、きっと」と、超肯定的にオスカーの言動を解釈したため、その後は、オスカーの愛撫を窘める、もしくは嫌がるような言葉は控え目になっていったのだった。尤も、その場で、即、100%完璧に意識の切り替えができる筈もないので、つい、もしくは、思わず「だめ」とか「や…」位の文言は、たまに口をついで出てしまったが。だが、それも、オスカーの愛戯があまりに情熱的だったため、意識がそちらに行ってしまった後は、ほとんど、口から出なくなっていたし、オスカーの行為を、純然たる「これからこの御屋敷で暮らす自分への思いやり」と解釈したアンジェリークは、単純に「オスカー様の行動が突然だったのは、どうして?」という疑問を投げかけたのだった。
そして、何の含みもない純真なアンジェリークの問いに、オスカーは、一瞬、ぐっ…と言葉に詰まったが、ここは率直に詫びねばならんと、さもなければ、こんなにも無限に優しいアンジェリークに、それこそ俺は愛される価値がないぜ、と思い、勇気を出して自らの狭量を懺悔し始めた。
「いや、面目ない。俺は、お嬢ちゃんの幼馴染が君の許嫁だったと聞いて、それで、頭に血が昇っちまったんだ。君は俺のものだ、俺だけのものだと、叫びだしたいような、どうしようもない焦慮に駆られ、君を…独占欲と所有欲むき出しで君を抱いた。愛情の発露としてではなく、だ、本当に俺は最低だった…心から詫びる、すまなかった、お嬢ちゃん」
「え?え?許嫁?オスカー様、何をおっしゃってるの?」
「わかってるさ、お嬢ちゃん、許嫁とはいっても、親同士が、生まれる前から勝手に決めたこと、と君も言っていたものな、実際、君は、俺とが初めてだったから、真実、君が男として愛してくれたのは、俺が最初、俺1人だと頭ではわかってるのに…」
「も、いやーん、オスカー様ったらぁ…それは、その、はい、オスカー様のおっしゃる通りですけど…私が、こんなにも触れたい、触れてほしいって思ったのはオスカー様が初めてですし、今もこれからもオスカー様だけですよ、きゃ…」
そう、彼女は処女だった。彼女が初めて、深く密につながりたいと思ってくれたのは、俺なのだ、肌を合わせたい思った男は、俺が初めてだったのだ、過去に親に決められた許嫁がいようが、彼女が、自分から結ばれたいと初めて思ってくれた男は間違いなく俺で、それが、俺にはこの上なく嬉しいことだった。
なのに、俺は、情事の最中、彼女が処女だったことに、若干のー贅沢すぎるが、もどかしさを、ちら、と感じたりもしたのだ。勢いだけの若造とのセックスしか知らなかったら、俺が君に与える快楽が、どれほど深く豊かなものか、その真価をわかってもらえただろうに、これ程の快楽をもたらすのは、俺だけだと…俺とのセックスだけだとわかれば、君は俺とのセックスの虜になって、俺から絶対に離れたりしないだろうに…などと詮無いことすら考えそうになった。今となれば、なんとバカなことをと、自嘲するしかないが。
だって、考えてもみろ。お嬢ちゃんに名前だけの許嫁がいただけで、こんなにも激しい妬心で我を失う俺が、彼女が処女じゃなかったら、どれほど、見えないライバルに気を揉み、敵愾心を燃やしたことか、知れたもんじゃない。俺自身は、処女崇拝とか純潔至上主義なんていう、ばかげた価値観に縛られてはいない、が、お嬢ちゃんが、初めて、深く密につながりたいと思ってくれた男は俺だったこと、それが、俺は純粋に、この上なく嬉しかったんだ。彼女の一番深い柔らかい部分に触れることを許され、受け入れてもらえた男は、俺が最初、俺ただ1人だということが、理屈抜きで嬉しかったんだ。アンジェリークは俺のもの、俺だけのものだと、言いきれる証左に思えたことも。正直、ただれた異性関係を重ねていた自分は、そんなことを言える筋合いにない、言えた義理じゃないことは、わかっているんだ、だから、なおのこと、嫉妬で我を失って、彼女を手荒く扱ってしまった自分が、俺は許せない、彼女に申し訳なくてならない。
「ああ、君がどれほど深く俺を愛し、ひたむきに俺を欲してくれていたか、俺は知っている、なのに、俺は…君に形ばかりの許嫁がいたと聞いただけで、嫉妬心が抑えきれず…すまん、お嬢ちゃん、本当にいろいろ、すまなかった。俺は…自分のことは棚にあげて、君に許嫁がいたという話を聞いただけで、あんなに酷いやきもちを焼いて…」
「あの、私、オスカー様のおっしゃってることが、そこだけ理解できないんですけど、どうして許嫁って言葉が出てくるんですか?しかも、私に?私に、許嫁なんていませんけど?」
「何を言っている、お嬢ちゃんが、さっきの写真の男は、生まれる前からの許嫁だって言ったんじゃないか、それで俺は…」
「さっきの写真?男?…って…アレク?アレクのこと?ですか?」
「そんな名前だったな、その男は…写真ではまだまだ子供っぽかったが、少女みたいな綺麗な顔立ちだったし、君も仲良しだと言っていたから…」
「だって、でも、オスカー様、アレクは女の子ですよ?」
「………は?」
「アレクは…アレクサンドラは女の子なんですけど…」
「アレク…サンドラ?」
「はい、私、言いませんでしたっけ?」
「本名も…女性だったとも…聞いてないぞ!友達とは言っていた、けど、男友達ってことだって、あるじゃないか!あいつ、いや、あの子はお嬢ちゃんと肩を組んで写真に写ってたし、その写真も、その気のない男に言い寄られた時の悪い虫よけ用だって、お嬢ちゃんがいうから、俺はてっきり…」
「…きゃー!ごめんなさい、そういわれてみたら、私の説明、すっごく舌足らずでした…アレクは、女の子にしては、背が高くてボーイッシュだったので、肩を組んだりしたら、きっと、知らない人からは恋人同士に見えるかもって話から始まって、あれ、冗談半分で撮った写真だったんです。でも、いくら、アレクがボーイッシュでも、かわいいから男の子には見えないよね、って私は思ってて、だから、あの写真も効果があるとは思ってなかったんですけど…でも、本当に、そう見えちゃったんですね…」
「俺も確かに、一目見ただけでは、美少年とも美少女とも判じかねる子だとは思ったんだ、が、この年頃なら、男でも線が細くて女の子みたいに見える子もいるだろう?そう、マルセルみたいに…。その上、その子はお嬢ちゃんとは高校が別になったって言ってただろう?お嬢ちゃんの母校は女子高だから、それで、ああ、男は女子高に入れないからだよなって、思いこんじまったんだな、俺は…」
「ほんっとーにごめんなさい、オスカー様、私、自分で承知のことだから、言葉足らずになってしまって…肝心なことを、言ってなくて、ごめんなさい〜」
オスカーは、がっくりと項垂れた、気が抜けたのと、安心したのと、笑いだしたいような気分がごっちゃになって、気づけば、くつくつと小さな笑い声が口から漏れ出ていた。
「いや、いいんだ、お嬢ちゃん、君が謝るようなことじゃない、俺が早とちりしたんだ、でも…すまん、俺は、君のアレクが女性だったと聞いて、今、心底ほっとしてるんだ。だって、君に生まれる前からの許嫁がいたなんて聞いたら…それが名目上のことであっても、君が、そいつをなんとも思ってなくても…そして、俺が、君の初めての男だという事実があっても、俺は絶対心穏やかではいられん。もしかしたら、いつか、君をその男に取られるかも、とか、万に一つ、いや、億に一つでも君がその男の元に行ってしまうかも…なんて、思うだけで、俺はいても立ってもいられん。いや、実際、頭がおかしくなりそうだった…お嬢ちゃんは俺のもの、俺だけのものだと叫びたい、この宇宙全ての男に宣戦布告してやりたい気持ちで、他のことが考えられなかった」
「…だから?あの、さっき…すごく激しかったのは…」
「う…む…まぁな」
オスカーはバツの悪さから黙りこんでしまったが、自分でも頬が熱くなっているを感じた。きっと、アンジェリークにも丸わかりだろう。
「オスカー様も、やきもちを焼いたりなさるんですね…」
心底驚いた、と思っているのが、よくわかる声音だった。声に「呆れた」という色がないのが、アンジェリークの優しさであろうと、オスカーは救われもしたが。だから、半分拗ねたような口調になってしまっていたかもしれないが
「知らなかったのか?お嬢ちゃん。俺は、存外、嫉妬深い男なんだぜ」
と、オスカーは、それでも、精一杯かっこをつけて、なんとか冗談めかして、自分の弱みを晒したのだった。
「うふふ、でも、それって、私にはちょっと嬉しかったです、なんていったら、怒られちゃう?」
オスカーが冗談と思わせたかったものを、アンジェリークは律儀に冗談と受け取ってくれたようで、心底うれしそうなくすくす笑いを零した。花の香りの宝石が口元からこぼれ出た、そんなことを思わせる笑い声だった。
「勘弁してくれ、お嬢ちゃん。頼むから、俺の心が、どれ程の嫉妬心に耐えられるか、なんて試したりしないでくれよ、俺は、君が他の守護聖と歓談してるだけでも、心乱れて仕方ないんだからな。どうか、この俺のガラスのハートを壊さないでやってくれ」
「もう、オスカー様ったら、ご冗談ばっかり、うふふv」
アンジェリークが朗らかに笑う。
『うーむ、根っこのところは、冗談じゃないんだが…』
本音を冗談のオブラートに包んで呈したオスカーとしては、アンジェリークが冗談と受け取ってくれてほっとするが、同時に、その奥の本音を、少しでいい、くみ取っても欲しいような、手前勝手かつ矛盾した感情もあったりする、すると、アンジェリークが急に真顔に戻って
「でも、あの、オスカー様、真面目な話、私がオスカー様以外の男性に惹かれるなんて、絶対にありえませんし、そして、何より、オスカー様のお心を試すようなことは決してしません、それは、きちんとお約束します。だって、人の気持ちを試すって、その人のことを信じてないって言ってるみたいで、すごく失礼な気がするし…何より、私が、オスカー様のことを、信じられなくなるなんて…そんなこと、それこそ、ありえません。オスカー様は、私が宇宙で一番愛する、1番信頼できるお方ですもの。それに、もし、逆の立場で、私が気持ちを試されたりしたら、私がオスカー様を好きな気持ちはきちんと伝わってないのかな、信じてもらえてないのかなって、きっと悲しくなっちゃうから。えっと、オスカー様はモテるから、私も、もしかしたら、やきもち焼くことはあるかもしれませんけど…でも、オスカー様がモテるのは当然のことだから…だって、こんなにも…宇宙一素敵なんですもの、オスカー様は。だから、どんな女性だって、一目みてぽーっとしちゃうのは仕方ないです。でも、オスカー様は、私のこと、その、愛してくださってるって…とても優しく大事にされてるって、わかりますもの、私。だから…」
と、真摯な表情で、生真面目に約束してくれた。
「っ…ありがとう、お嬢ちゃん」
オスカーは、感動のあまり、一瞬言葉につまり、結果、一呼吸おいて礼の言葉を発した。アンジェリークは、俺の赤裸々な、気恥かしくもある真情を…心の本音を、半ば直観的に肌で感じ取り、くみ取ってくれたのだと、わかった。
アンジェリークの真心を受取り、オスカーの心は、それこそ羽が生えたように、瞬時に軽くなった。
そう、お嬢ちゃんは、人の気持ちを試すなんて、さもしいことはしない、そのために、他の男に気のある振りをするなんて、愚かで底の浅い振る舞いを絶対するはずがない、と、心底、信じられるし、言い切れる。そして、彼女が俺を心から愛し、大切に思ってくれていることは、こんなにも明らかで…そう、君の魂は、この上なく高潔にして清廉、そして、心根は限りなく優しい…
「お嬢ちゃん、いや、アンジェリーク…君は、本当に俺にはもったいない程の女性だ…心からそう思う。俺の伴侶になってくれて…俺と共に人生を歩む決意をしてくれて…本当にありがとう、アンジェリーク」
「いやん、オスカー様、私、オスカー様に相応しい女性になるにはまだまだだと思ってるんです、だから、そんなに甘やかさないで…もっと、もっと魅力的な女性になりたいの…いつまでも、オスカー様のお傍にいたいから…」
「アンジェリーク…」
あまりのいじらしさ、健気さに、オスカーは、今すぐアンジェリークを思い切り抱きしめたくてたまらなかった。が、狭苦しい浴室の1人用のバスタブでは、浴槽に乱入することもできないし、浴槽からアンジェリークを出して抱きしめたら、せっかく温まって楽になった彼女の身体が冷えてしまうだろう。この浴室がこんなに狭くなければ!(今まで狭いなんて思ったことはなかったのだが)、即、この場でお嬢ちゃんを思いきり、思う存分、抱きしめ、愛し抜けるのに!ああ、もう!と、焼けつくようなもどかしさに、オスカーはぎりぎりと歯噛みした。そして、できる限り早く浴室をリフォームせねば!と考えをめぐらしていたところに、控えめなノック音と共に
「オスカー様、アンジェリーク様のお荷物の整理は終了いたしました、お嬢様のお着替えはソファの上におかせていただきましたが、それでよろしいでしょうか」
という執事のものらしき問いかけの声が響いた。
「あ、ああ、ご苦労。手間をかけさせたな」
屋敷の主人としての顔と声を瞬時にして立て直して、オスカーが扉越しに答えると、アンジェリークが、少し複雑そうな居心地悪そうな顔をしていることに気づいた。それでオスカーは、アンジェリークが私物を使用人に見られるのが恥ずかしいと言っていたことを思いだした。もともと、俺の早とちりの遠因もそれがあったからだよな、と思い
「そういえば、お嬢ちゃん、なぜ、荷物の整理を屋敷の者に頼むのが恥ずかしかったんだ?」
と、オスカーは純粋に疑問を解消したいのと、使用人に遠慮や気兼ねしては、これから暮らしにくかろうから、その理由を知って、気兼ねの原因を取り除いてやりたいとの思いで問うてみた。
すると、アンジェリークは湯船の中でもじもじしながら、上目づかいにオスカーを見上げて、こう、打ち明けた。
「だって…私の持ち物って、その、子供っぽいものばかりだから…ついこの前まで高校生だったんだから、それが当然なんだと思うし、あまり高価な物をもってたら、その方がそぐわないし不自然だとは思うんですけど、オスカー様の立派なお屋敷の、重厚な家具に、私の子供っぽい持ち物は似合わないなって…場違いだなって、荷物の整理をしてる時、感じてたんです。それでなくても、オスカー様の御屋敷の方々は、良いものを見なれて、目も肥えてらっしゃるでしょうし…それで、ちょっと気後れしちゃったの…」
「それは…そうか…気づいてやれなくてすまなかったな、お嬢ちゃん、居心地の悪い思いをさせちまって」
「ううん!そんな、いいの、いいんです、私の勝手な引け目だってわかってるから…私自身が努力して、補佐官としても、オスカー様の恋人としても、認められるように自分を磨いていけばいいだけだし…そうしたら、私物も、高校生っぽいものじゃじゃなくて、補佐官らしいものが自然と似合うようになるかもしれないし…あの、だから、いろいろ教えてくださいね、オスカー様…」
「お嬢ちゃんは、今でも十分魅力的だと思うが、俺に手助けできることは、なんでも頼ってくれよ、お嬢ちゃん。それに、調度の件に関しては、俺も気遣いが足りなかったと思ってたんだ、お嬢ちゃんを屋敷に迎え入れるのに、あらかじめ、お嬢ちゃんの部屋を用意しておけば、よかったと…」
「え?いやいや、オスカー様、私、自分の部屋なんていらない、別々のお部屋なんて、寂しい…オスカー様と一緒のお部屋じゃダメですか?」
「っ…まったく、なんて、うれしいかわいいことを言ってくれるんだ、お嬢ちゃんは…いや、俺だって、お嬢ちゃんとわざわざ別々の部屋で暮らすなんて、そんなさびしい他人行儀なことはしたくないが、君にも1人でいたい時間やプライバシーが必要かとも思ってな…」
「オスカー様って、なんてお優しい…でも、私はオスカー様と一緒にいられる時間が何より幸せですから…むしろ、私からお願いします、どうか、一緒のお部屋にさせてください」
「本当に…なんて…どこまで、かわいいんだ、お嬢ちゃんは!だが、せめて、お嬢ちゃん専用の家具とかインテリアは用意させてくれ。とにかく、早速、君の家具をそろえような。好みは遠慮なくいってくれよ」
「オスカー様こそ、本当に、なんて、お優しい…ありがとうございます…大好き」
「俺もさ、お嬢ちゃん、この世の誰よりも何よりも愛している…」
湯船に浸かったままのアンジェリークと、優しく触れるだけの口づけを交わすと、オスカーは、軽く咳払いをしてから、ちょっとそわそわと
「お嬢ちゃん、そろそろ体は大丈夫そうか?」
と問うた。
「あ、はい、もう歩けると思います」
「あ、いや、君はそのままでいい」
と言うや、オスカーはバスタブの湯を抜き、タオルを取ると、アンジェリークを立たせて、肌に僅かに残っていた水滴を丁寧にぬぐってから、彼女をひょいと抱き上げた。
「オスカー様、私のこと、甘やかしすぎです…」
「とんでもないぜ、お嬢ちゃん、俺は先刻、独占欲と嫉妬心に駆られて君を抱くという、愛の行為を汚すような真似をしちまった、その責任をぜひ、取らせてほしいんだ」
「…?」
「というわけで、さ、お嬢ちゃん、今すぐ、ベッドで仕切りなおしだ!今度こそ、愛といたわりにあふれる、愛の交歓というにふさわしいセックスをしような!」
と、高らかに宣言すると、オスカーはバスルームの扉を足で蹴飛ばすように明け、確かな足取りで寝台に向かった。
アンジェリークのあまりの愛らしさ、可憐さ、いじらしさに、オスカーの愛は無限の泉のごとく溢れかえり、それに加え、オスカーは自身の罪悪感も相まって、あんな乱暴な勢いだけの情交を、仕切り直し、上塗りせずにはいられない気分だったのだ。俺は、本当に馬鹿だった、目先の嫉妬に心乱し、盲いて、我を失いかけた、その詫びを、その埋め合わせをせずに、いられるか、という気持ちだった。
「あ、あの、オスカー様…?」
事態がよく呑み込めていないらしいアンジェリークに、オスカーは
「大丈夫だ、お嬢ちゃん、何も心配はいらない、お嬢ちゃんの荷物は、家の者が片づけてくれたからな、もう、君がやることはない、ああ、違った、君にしかできないことがある、それは、俺の恋人、俺のスイートハートとして、俺と愛しあい、何物にも替えがたき妙なる喜びを交わしあうこと、それだけさ」
と自信満々な笑顔で告げざま、包み込むようなキスをした。全裸のアンジェリークを大事そうにベッドに下ろしてから、此度は、自分もさっさと着衣を全てを解いて、アンジェリークの上に覆いかぶさり、全身でアンジェリークを包み込むように、その身をひしと抱きしめた。アンジェリークの滑らかな素肌の感触を楽しみ、肌の温みを交わしあうようにその身を抱きながら、オスカーは、優しく、だが、真摯な瞳で、アンジェリークの顔を覗きこみ
「お嬢ちゃん、俺は…絶対に君を幸せにする。この愛、この命をかけて君を守り抜く。かけがえのない人たちとの多くの別れと引き換えに、俺と共に歩む人生を選んでくれた君を、決して、後悔などさせない」
と、真剣な声音で告げた。
アンジェリークは、そんなオスカーに、にっこりとほほ笑み返し
「後悔なんて、決してしません、オスカー様。オスカー様と共に歩む人生が、私には何より1番大事な宝物だから…どんなものと引き換えにしても、欲しかった宝物だから…だから、ずっとオスカー様のお傍にいさせてくださいね」
と、優しい声音で、でも、きっぱりと言い切った。
「アンジェリーク。俺には、そんな君こそが、宝だ…」
オスカーは、ベッドの上で、はにかんだ笑顔でオスカーを見上げるアンジェリークの可憐な裸体を、改めて、寸分の隙もないほどにきつく抱きしめた。そして、すぐさま、今度こそ、愛しい恋人を、純粋に喜ばせ、酔わせ、快楽の極北につれていくことに、オスカーは専心、没頭し始めたのであった。
FIN
このお話は、80万HITのキリリク創作として書かせていただきました。
いたただいたリクエストのお題は「オスカー様がリモちゃんと見知らぬ誰かが仲睦まじく並んで写っている写真を見つけて、ヤキモチを焼く。その友人は男にも女にも見える美形さんで、オスカー様は男と勘違いするけれど、実は女の子」というものでした。そして、リクエスターの色さんが「黒執事」という漫画がお好きで、主人公の少年に幼馴染の許嫁がいる設定がお気に入りということだったので、私が、その設定をアレンジして「友人である親同士が、生まれてくる子供が異性だったら結婚させちゃおう的・口約束レベルの許嫁がいた」という設定にし、オリキャラの名は男にも女にも聞こえる名前を考え、このお話を書かせていただきました
幸い、リクエスターの色さんには、大変気にいっていただけ、お話を見ていただいた後、色さんから、リモちゃんとアレクの間にこんな会話があったのではないかという、派生小話までいただいちゃいました。せっかくなので、こちらにUPらせていただきますね
色 夢虫様作「飛空都市に出立する前のリモちゃんと友人アレクの会話」(リ=リモ/ア=アレク)
ア「ねえアンジェ、今から言うこれ、馬鹿話だと思って聞いてくれる? 今ここで聞いてくれた後、忘れちゃえばいいから」
リ「…?どうしたのアレク、改まっちゃって」
ア「あのさ〜アンジェ、あたしねぇ…自分がリアル男じゃないのが、すんごい悔しいわ」
リ「…へっ? 何?アレク、どうしたの突然…?」
ア「いやマジ、本っっ当に!あたしが本物の男だったら、絶対あんたを他の連中に…ケダモノ狼男連中なんかに渡したりしないのに!! も〜、すんごい残念よ!!あたしがマジ男だったら、可愛くてたまらないあんたと四六時中一緒に居て、悪い虫がつかないように24時間態勢で目光らせてるとこよ!! でも残念ながら、女に生まれちゃったあたしにはそれが出来ないのよねぇ… こないだの写真撮ったの、それもあったからなのよ」
リ「…え、ええ〜〜っ?!…やだもお〜、アレクったら〜☆(笑)」
ア「だからねアンジェ、あの写真、聖地…いや飛空都市、だったっけ?向こうに行っても、ちゃんと持ってってよ?スモルニィに居た間、幸か不幸かあんたに言い寄る男がいなかったみたいだけど…あたし、もしかしたら今度は向こうであんたをかっさらってく男が出てくるかも知んないって、思ってるんだから」
リ「…また〜、アレクってば…そんなありえない可能性大よ。それに私、向こうへは試験受けに行くのよ?女王になる為の!そんな余裕たぶん無いと思うわよ?お勉強三昧の日々を送るに決まってるんだし…」
ア:「ん〜…ううん、分かんないわよ?とにかく、用心するに越した事はないと思うわ お願いアンジェ、あの写真…持ってって? …それに多分…あたしはあんたとこれで、もう二度と会えなくなるかも知んないんだし…」
リ:「…アレク…」
ア:「…ごめんアンジェ、湿っぽくなっちゃって …まあだから、あの写真はねぇ、もしもだけど…これから現われて来るだろう、あんたをかっさらってく男への、あたしからの精一杯の置き土産つーか…試金石みたいなもんよ」
リ:「…!!アレク?!」
ア:「あたしが本当の男だったら、アンジェの居場所はさらってく野郎なんぞの隣じゃなく、あの写真のまま!あたしの隣になってたんだよ!あっかんべー!!ってね、アハハハ!!」
リ:「…アレ…ク…ごめ…ん…」
ア:「…謝らなくていーの!馬鹿話なんだから、忘れちゃってくれりゃいいんだし! ほら、もー…泣かないの!」
作中にはないこんな過去話を妄想して形にしていただけるなんて、文字書き冥利につきる喜びですよ。だって、それだけお話を気にいっていただけたってことですもの。
公式では、リモちゃんの交友関係は高校時代からのものしか描かれていませんが、それ以前にも、また、学校関係以外にも友人はいたと思いますし、ならば、親同士が仲のいい友人がいたってこともありえましょうし、その場合口約束レベルで、子供同士結婚させちゃおうか、ってノリの話があった可能性もゼロではないと思うのです。
で、誤解からやきもちで暴走するオスカー様っていうと、やっぱり、結ばれてまだ日が浅くて、余裕のないオスカー様がマッチするだろうと思い、久々に、出会って間もないころの若くて青いオスカー様を描いてみました。
でも、こういう設定は、由貴本人は思いつかなかったとおもうので、これぞ、キリリクの醍醐味と申しますか、私にとっては珍しい切り口のお話で、自分では新鮮な気持ちで書かせていただいたので、ここまで見てくださった方が、このエピソードを楽しんでくださるといいなーと思ってます。
そして、リクエスターの色さんには、楽しいキリリクのお題と小話まで頂戴して、感謝の気持ちでいっぱいです。
やきもちでちょっと暴走がありつつも、結局、とことん、らぶらぶの2人のあまあま話、お楽しみいただければ幸いです