片翼〜燦爛〜 2                                                    

ジュリアスはファスナーを下まで降ろすと、アンジェリークの腕を衣装から引きぬいていく。

ジュリアスの意図することを察し、明るい執務室で肌をさらすことに抵抗を感じて、アンジェリークは身じろぎして、弱弱しくジュリアスに抗う。

「いや・・やめて、ジュリアス様・・こんなことろで・・・もし、誰か来たら・・・」

「今日、女王の執務室に来るものなど、だれもいないことは、おまえのほうがよく解っているはずだ。」

アンジェリークの形だけの抵抗を見透かしたように、ジュリアスはくっと軽く口の端をあげて微笑むと、かまわずアンジェリークから女王の衣装を剥ぎ取って行く。

豪奢な薄朱鷺色のドレスをアンジェリークから取り去ると、無造作にソファに投げ置く。

アンジェリークは白い繊細なレースのシュミーズをまとうだけとなり、頼りなげに自分の肩を抱いていた。

女王の装束を失うと同時に、女王の威厳も荘厳さもすべて剥ぎ取られたようで、剥き出しの自分のあまりの頼りなさに体の震えを押さえることができない

ただの女にされた自分の無力さを思うと、その場に崩れ落ちてしまいそうになる。

「震えているな・・」

ジュリアスが優しい声とともに、アンジェリークをその腕に抱きよせた。

そして、アンジェリークの顎をつまんで自分のほうに向かせると、

「不安か?何を恐れる?おまえに惨いことなどせぬ。ただ、オスカーがおまえの体にどのように触れたのか、知りたいだけだ。

おまえの体を隅々まで調べてでもな・・・」

と、むしろ楽しそうな口調で、アンジェリークに囁いた。

紺碧の瞳は底無しの深海のように、暗い光を湛えていた。

その瞳に見つめられると、、深い海溝にひきずりこまれていくようで、アンジェリークは引き寄せられるように、ジュリアスの胸に倒れこんでいった。

 

ジュリアスはアンジェリークの体を抱き上げると、執務室の机の上に座らせて、自分はその正面に立った。

自分の胸を覆い隠すように肩を抱いているその手を振りほどく。

そして、シュミーズの紐をゆっくりと肩からずらして行く。

肉の薄い華奢な肩が現れる。白い肌のあちらこちらに、鮮やかな紅い花が咲き乱れ、その血のような色は痛々しい印象すら与える。

「ずいぶんときつく吸われたな・・」

ジュリアスは、オスカーのつけた所有の証を指でなぞる。アンジェリークの体が一瞬びくりと震える。

紅い跡の意味するところは明らかだ。

自分の不在中にジュリアスが一人でアンジェリークを抱くであろうことを予想して、牽制しているのだ。

アンジェリークはジュリアス一人のものではないと・・

オスカーの考えは手に取るようにわかったが、よもやオスカーも、ジュリアスがすぐ次の日にアンジェリークのもとを訪れるとは予想していなかっただろう。

そう考えると、出抜いたのは、オスカーと自分、どちらになるのかとふと、思う。

益体も無い事だと、その考えを頭から振り払い、ジュリアスはアンジェリークにかがみこむと、オスカーの散らした紅い跡に、自分の舌を這わせた。

「あぁ・・」

アンジェリークの口から、切なげな吐息が漏れる。

やはり、アンジェリークが乱れる部分に的確に所有印はつけられているようだ。

『このような目利きはオスカーに一歩譲ることを認めざるをえんな・・』

ジュリアスはこんなことを思いながら、なおもオスカーの足跡を追って舌を這わせては、ときおり吸い上げる。

「あ・・はぁ・・ん・・」

アンジェリークの吐息に切ない色が増していく。

「ここを吸われて、そのあと、オスカーはどうしたのだ?」

ジュリアスが、あくまで優しい声音でアンジェリークに尋ねる。

アンジェリークは漂いかけた官能の海から現実にひき戻され、縋るような瞳でジュリアスを見上げた。

「言うのだ。」

「胸を・・触りました・・」

「直接か?」

「いえ、夜着の上から・・」

「ふ・・では、こうだな・・」

ジュリアスは、アンジェリークのブラジャーだけはずすと、シュミーズの上から、やわやわと揉みしだきはじめた。

唇は相変わらず、うなじから首筋のそこここに舌を這わせている。

昨夜の情事を辿らされることで、アンジェリークの体はオスカーに与えられた甘やかな快楽を否応無く思い出して行く。

ジュリアスの手に、乳房を寄せ揚げるように執拗に揉まれているうちに、乳首がその存在を主張し始め、敏感な先端がシュミーズにこすれて更に甘い疼きが体を熱くしていく。

「それから?」

ジュリアスは、あくまで追求する手を緩めない。

ジュリアスの声音には人を従わせずには置かない何かがあることを、アンジェリークは感じる。これが威厳というものかもしれない。

この威圧的な声と口調は、アンジェリークに自分が女王候補だった時のことを思い出させずにはおかなかった。

この厳しい声に叱責され、何度枕を涙で濡らしたことだろう。最初の頃、ジュリアスの前に出ると、いつも恐怖で身が竦んだものだった。

彼の厳しい言葉が自分を思っての不器用な愛情表現と解ってからは、彼の言葉に素直に耳を傾けることができるようになっていったが・・・

しかし、一度染み付いた恐怖の記憶というのは、何かのきっかけで触発されてしまうのかもしれない。

ジュリアスの言葉にどうしても逆らう事のできない自分に、アンジェリークは気付く。

もう、心を明渡すしかないのかと、アンジェリークの心は諦念の思いに支配される。

しかし、ジュリアスに心まで委ね、意のままに支配されるのだという事実は、一瞬アンジェリークに甘美な陶酔のようなものを与えた。

その熱に浮かされたようにジュリアスの求めるままに、アンジェリークは答えを口から紡ぎ出していた。

「夜着をとって・・・・・・乳首を口で愛撫してくださいました・・」

自分から、激しく愛してほしいと言ったことまでは、ジュリアスに言えなかった。聞かれたら答えていただろうか、とアンジェリークは思う。

アンジェリークの答えに、ジュリアスはシュミーズの紐を肩からはずして、アンジェリークの胸を露にした。

乳房がふるりと揺れて零れ落ちる。

薄紅色の乳首は半ば立ちあがって、ジュリアスに触れられるのを待っているかのようだ。

シルクのシュミーズは、完全に体から落とされ、アンジェリークのウェストあたりにたなびく雲のように纏わりついている。

ジュリアスは、アンジェリークの乳房に手を伸ばし、自分の方に乳首を際立たせるように揉み上げてから、花の蕾のような乳首を口に含んだ。

舌で乳輪をなぞるうちに、乳首が固く立ちあがってくる。その立ちあがった乳首に舌を移し、敏感な先端の部分を何度も舐めあげる

たちまち、アンジェリークが艶のある声をあげ始める。

「あっ・・あん・・あぁっ・・・」

縋りつくようにジュリアスの背に腕をまわして、自分の方に更に引き寄せる。

「ふふ・・こうやって、オスカーにも強請ったのか?」

「あんっ・・そう・・噛んでもらって・・んっ・・」

「ああ、少し乱暴にされるのがいいのか・・」

ジュリアスはこういうと、アンジェリークの乳首に軽く歯をたてた。

「ああぁっ・・」

アンジェリークの体が、大きくびくりと跳ねた。

その反応にジュリアスは、反対の乳首も口に含むと、舌で転がして固くしてから、甘噛みを与えた。

固くなった乳首の弾力が口に心地よく、舌で嬲りながら、何度も歯をてて、その感触を楽しんだ。

アンジェリークの情感がどんどん高まって行くのが、色濃く染まって行くその肌でわかる。

ジュリアスは机の端に腰掛けているアンジェリークの膝をわり、股間に手を伸ばした。

アンジェリークの体がびくりと震える。

ショーツの上から秘唇をなでると、もうそこはじっとりと露をふくんで溶けたように潤んでいた。

レースから愛液が滲み出し、ショーツの上からなぞるだけでも、ちゅくちゅくと音がする。

「こんなに溢れさせて・・オスカーに乳房を愛撫されたときもこうだったのか?」

「・・はい・・」

伏し目がちにちいさな声で答えるアンジェリークを、更にジュリアスが問い詰める。

「オスカーはここも触ってくれたか?」

ジュリアスが、ショーツの上から秘唇をなであげた。

「あぁっ・・・・いえ、オスカー様は直接触ってくださらなかっので・・私から・・・頼んでさわっていただきました・・」

「ふふ、可哀想なほどあふれているからな、触ってもらいたくて我慢できなかったのか、無理も無い・・私にも触って欲しいか?」

ジュリアスは楽しそうに、ショーツの上から秘唇を撫でつづけている。

布の上からあたえられるぼんやりとした刺激に腰が焦れるように自然と動いてしまう。

その部分は、電流の走るような鋭い刺激を求めて、ジュリアスの指を待っている。

「ああ、ジュリアス様・・触ってください・お願い・・」

アンジェリークがたまらずジュリアスに懇願する。瞳は欲情に霞がかかっている。

ジュリアスは軽く微笑むと、黙ってアンジェリークの足を押し広げ、小さなショーツをそろそろと脱がせた。

しかし、ジュリアスは、アンジェリークの待ち望む愛撫を与える替わりに、

「おまえのここが私に良くみえるように、大きく足を開け」

というと、アンジェリークの膝頭を掴み、大きく股を広げさせた

「あっ・・いやっ・・」

アンジェリークが羞恥に慌てて足を閉じようとする。

「隠してはならぬ」

ジュリアスの厳しい一喝にアンジェリークの身がすくむ。

「自分で足を開くのだ」

ジュリアスの厳しい声に、アンジェリークは恐る恐るその屈辱的な命令に従っていく。

「・・・そうだ、そのまま、足が閉じないように、自分で膝をおさえていろ」

更に容赦の無い命令に、アンジェリークは泣きそうな顔でジュリアスを見上げる。

しかし、その声と同じ、厳しい光を紺碧の瞳に見出し、アンジェリークは屈服する。

ふるえる唇を噛みしめ、ジュリアスに秘唇がよくみえるよう足を開き、その足が閉じないように、自分の手でひざを押さえた。

羞恥と屈辱に顔をあげることができない。

しかし、ジュリアスの鋭い視線が、その部分に注がれていることを、アンジェリークは強く意識する。

ジュリアスに自分を曝け出しているという事実に、なぜか体が熱くなる。

ジュリアスの手がそっと秘唇に触れて、襞を押し広げ、秘裂をあらわにしていった。


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