Sugar&Spice 1

月に一度、お嬢ちゃんは外界に降りる。肌理細かな真珠の肌に文字通り磨きをかけ、更に美しく輝くためにだ。

男の俺には、彼女がエステサロンというところでどんな施術を受けているのか、話を聞いたことはあるがよくイメージできない。ただ、その手入れを終えて聖地に帰ってきたお嬢ちゃんの肌は、確実かつ明らかに手触りが一言では言い表せないほど心地良くなっている。元々すべすべで滑らかな肌が、更にしっとりと柔らかく、もっちりと弾力が増して、触れる俺の手に自ら吸い付いてくるほどになる。

もちろん俺は飽くことなくその肌を撫でる…が、手で撫でるだけでは、当然、全く物足りない気にさせられる。彼女の肌のあまりの心地よさに、俺は触れるほどにもっと触れたくなる。美しい肌は、それだけで麻薬のような官能となることがよくわかる。

だから俺は、俺の全身で直に彼女の肌をくまなく感じたいと熱望する。一分の隙もないほど思い切り抱きしめ、脚と脚とを解けぬよう絡めあわせる。妙なる芳香を放つ乳房の谷間に顔を埋めながら、その、譬えようもなく柔らかな膨らみに頬ずりをする。それでも足らず、俺は彼女の身体中に口付ける。手指の1本1本から足指のつま先まで、執拗なまでの入念さで、彼女の肌を残さず味わい尽くす。そうせずにはいられない程…そう、悪魔的といえるほどに、彼女は俺を惹き付けてやまない。磨きをかけた後は殊更にその肌は艶めいて光り輝き、思わず手を伸ばさずにはいられない。そして、一度その肌に触れたら、今度は唇でこの肌の感触を味わってみたいという想いが熱病のように俺を悩ませ、俺は彼女の体中隅々まで口付けずにはいられないんだ。この誘惑には到底抗えるものではない。俺は、引き寄せられるままに、精魂込めて彼女の肌を賛美し、沈み込むように彼女に耽溺するのだ。

無論、俺は彼女の肌だけを愛しているのではないし、彼女の肌の美しさにのみ惹かれているわけでもない。それは彼女のあまたある美点の一つではあるが。俺は彼女の姿を形作る全て、彼女の清新な魂の全てを求め、愛してやまない。こんなにも熱く求めてやまず、求めるに甲斐のある女性に出会え、愛し、愛されたことを感謝せずにはいられない。

だから、最近の俺は一月に一度の彼女の外出にも、最初の時ほどの手持ち無沙汰感や、物寂しさを感じずに済むようになってきていた。だって、ほんの数時間待っていれば、普段から魅力的なのに、いつもより更にすべすべで、もちもちで、しっとりで、いい匂いがして、その上、休息時間が深いリラクゼーションになっているのか、感度も更によくなってお嬢ちゃんが戻ってくるのだ。しかも、この手入れの全ては彼女自身のためであると同時に俺のためでもあって…俺のために、もっと綺麗に、もっと魅力的になりたいとお嬢ちゃんは思って肌に磨きをかけてくるんだ。この気持を嬉しく、有難く思わない男なんていない。

更に、俺は数時間のお嬢ちゃん禁断症状で、やっぱりお嬢ちゃんへの飢餓感が増す。元々美味しい物を更に美味しくいただける準備が俺もできるのだ。彼女の外出に嫌な顔をするわけがない。近頃の俺は、他の男と一緒にでかけるお嬢ちゃんをいつも笑顔で送り出す、できた夫なのだ。

もっとも、最初は、この「他の男」と一緒というのが、癪の種だったことは認める。

あいつはお嬢ちゃんにヨコシマな感情を抱いてはいないし、不埒な真似をするはずが無いという点では、守護聖中誰よりも信頼できる。それは、わかっている。だが、お嬢ちゃんの隣にいるのは…お嬢ちゃんの傍らを歩き、街中のありとあらゆる危難からお嬢ちゃんを守るのは俺だけの役目なのに!と思っているのに、この時ばかりはエスコートを他の男に…それがたとえ、男女か女男か迷うような風体の持ち主でも、極楽鳥と言われるほど派手派手しくとも男は男だ…任せなくちゃならんのが感情的に納得いかなかっただけだ。

ただ、冷静に考えてみれば、どうせお嬢ちゃんを預けねばならんのなら、オリヴィエほど信頼できるやつはいない。あの派手な外見のおかげで、一瞬、あいつが男か女か迷う人間は多く、お嬢ちゃんと並んでも女性同士に見えない…こともない。かなり苦しいが。その上、男だとわかったら、むしろ多くの人間はオリヴィエを遠巻きに眺めるだけで、決して連れのお嬢ちゃんにちょっかいを出そうとはしないだろうから、悪い虫よけにオリヴィエは最適なのだ。それでもコナをかけてくる不届き者が万が一いたとしても、オリヴィエはそれなりに腕も立つ。何が何でもお嬢ちゃんを守ってくれるだろうという事に関して、俺はやつに全幅の信頼を置いている。

というわけで、俺はオリヴィエとの外出に関しては、今では、しぶしぶどころか、快くお嬢ちゃんを送り出すようになっていた。まったく、他の男との外出を妻に許すほど心の広い男はそうはいないぞ。俺はなんと寛大で鷹揚な夫なのであろうか、うむうむと自分に頷きながら。

そして、この週末は、どうやら、その恒例のお肌磨きの外出日のようだった。

というのも、休日はいつも寝ぼすけのお嬢ちゃんが、今朝に限って自分から起き出して外出の身支度を始めたからだ。

レースの部屋着をまとって豊かに波打つ髪を梳るお嬢ちゃんの姿は一幅の絵画のようだ…と見惚れながら、俺は、お嬢ちゃんが出た後は、たっぷりと筋トレをして帰宅後の彼女を思い切りかわいがる準備運動をしておくか…なんて考えていた。が、そこで、ふと、思い出したことがあった。そういえば、昨日からあの極楽鳥は、とある辺境惑星の式典に参加するため、珍しく出張に出ていたんじゃなかったか?

おかしいなと思った俺は、お嬢ちゃんにこう尋ねた。

「なぁ、お嬢ちゃん、なんで、こんなに早起きなんだ?今週は外界には行かないんだろう?」

「え?どうしてですか?」

俺の方が「WHY?」と尋ねた筈なのに、何故かお嬢ちゃんからも「WHY?」が返答として返ってくる。

「どうしてって…今日は、オリヴィエがいないじゃないか」

「?…オリヴィエ様はいらっしゃいませんけど、私は普通に聖地にいるんですもの、いつも通り主星に行くつもりですけど?」

「なんだって?お嬢ちゃん、オリヴィエがいないのに一人で外界に行くつもりなのか!」

俺のあげた声に、お嬢ちゃんはきょとんとしている。

「え?ええ。だって、もう何度も行っているお店ですもの、私1人でもいけますもの」

「いかん、いかん、いかーん!」

「な、何がですか?オスカー様」

お嬢ちゃんが今度は目をまん丸にした。びっくり顔もかわいいぜ…いや、今は、それどころじゃなかった。

「お嬢ちゃんを1人で外界にやるなんて、そんな、危ないこと、許せるわけがないだろう!」

俺が声を些か荒げたというのに、お嬢ちゃんは全く意に介した様子もなく、逆に、ころころと弾むような愛らしい笑い声をあげた。

「やだ、オスカー様、心配しすぎですよー、私、子供じゃないんですし、何度も行った場所だから行き方だってわかってるし、道に迷う心配なんてありません、平気ですよー」

…あああ…お嬢ちゃん、お嬢ちゃんは危険の何たるかがちっともわかってない。

「いや、俺が心配なのは、お嬢ちゃんが道に迷うことじゃなくてだな…」

「じゃ、何がご心配なんですか?」

お嬢ちゃんは俺の懸念の正体が心底全くわかっていないようだ。小鳥が首を傾げるような無邪気な仕草からそれがよくわかる。

俺は一瞬、この懸念を言おうか言うまいか迷った。あまりにあけすけな気がして、気恥ずかしい気持があった。が、結局はすぐ白状することに決めた。彼女に俺の懸念を理解してもらえるかどうかはダメもとだが、真情を吐露せずに、俺の懸念が伝わる可能性は皆無と判断したからだった。

「こんなかわいいお嬢ちゃんが主星の街中を歩いたら、あっというまに、数え切れない男どもが群がってくるからに決まってるだろう!ただのナンパでも許しがたいのに、お嬢ちゃんの魅力に目が眩んで、力づくで無体な真似をしようとする男がいたら、どうするんだ!1人で主星になんて、絶対、行かせられん!」

「オスカー様ったら、私のこと、心配してくださるのは嬉しいんですけど、ちょっと考えすぎっていうか、心配しすぎですよー。今まで、主星に降りても、私、声をかけられたことなんて1度もありませんでしたし…」

「それは、オリヴィエが一緒にいたからに決まっているだろう。お嬢ちゃん、まったく、お嬢ちゃんは自分の魅力に自覚がなさすぎる」

はぁああーと俺は盛大なため息をついた。

この聖地に来たばかりの時のお嬢ちゃんは、確かに、まだまだ幼さを感じさせた。かわいく、愛らしくはあったが、その魅力は花の蕾のそれであって、開花後の美しさを予感させはしても、どんな花となって咲くのかは、正直、わからなかった。でも、今のお嬢ちゃんは、まさに咲き初めたばかりの花のようだ。瑞々しく初々しい美しさに満ち溢れている。すんなりと伸びやかな体躯ははじけるように若々しく、綺麗な姿勢は素直さを、愛らしい笑顔は優しい気性を自ずと表している。こぼれそうな翠緑の瞳は、色々な勉強や経験を積んで得た思慮が深く豊かな輝きをもたらして、覗き込むと吸い込まれそうな美しさだ。背の中程まで伸びた金の巻き毛は陽の光を弾いてきらめき、思わず掌に掬って口付けたくなる愛らしさだし、俺との濃密な愛の交歓の賜物で、お嬢ちゃんの肌は真珠のような光沢を放って艶めき光り輝いている。お嬢ちゃんを見かけた人間は、つい、視線で追わずにはいられないだろう。それでなくても、俺の妻となってからというもの、俺が丹念に丁寧にとことんお嬢ちゃんをかわいがってきた成果で、今の彼女は、時折何気なく見せる仕草や表情が、はっとするほど艶かしくコケティッシュだ。立ち居振る舞いの全てから、上品でまろやかな色気が薫りたつように溢れている。こんな女性が町を1人で歩いていたら、ちょっと目の利く男なら声をかけない訳がないのだ。

「お嬢ちゃんは俺が惚れに惚れぬいている女性だぜ?この俺がこんなに夢中な君が魅力的でないわけないだろう?そして、俺にとってたまらなく魅力的な君は、他の男にとっても、魅力的に映るに決まってる、ましてや、君は自分を磨きに行くんだろう?磨き終わって、一際光り輝く君を見たら…いつも、俺が君を全身くまなく愛さずにはいられないように、君の魅力に惹かれてふらふら群がってくる男が山ほどいるに決まってる、そんな、ケダモノのうようよいるジャングルに、オリヴィエが一緒ならともかく、みすみす君を1人で行かせられるわけないだろう。ケダモノどもに取り囲まれでもしたら、どうするんだ!」

「そ、そんな風に言っていただけて…そこまで心配してくださって嬉しいです、オスカー様…」

お嬢ちゃんは俺の言葉に明らかに感銘を受けてくれたようだ。

俺の魂の奥底からの訴えが、お嬢ちゃんのハートを揺り動かしたのだろう。見栄も何もあったものじゃなかったが、やはり本音を訴えたのが功を奏したようだ。例えば「君は補佐官なのだから、身の安全には人一倍気を使わねばならない、1人での外出などもっての他だ」と、しかつめらしい正論を呈することも可能だったし、こう言おうか…と、一瞬考えもした。が、俺は彼女が補佐官だから案じるでのはない。彼女の『地位』や『身分』ゆえに彼女を心配をするのではないし、そんな風に受け取らせたら、彼女を傷つけるだけじゃないか。ここが公の場ならこういう物言いを方便として使うこともありうるだろうが、二人きりの時に、敢えて、こんな言い訳をする必要がどこにある?想いを寄せ合う男女の仲なら、俺は、変に正論や小理屈を振りかざすより、みっともないほどの真情を訴える方が、相手の心には届きやすいし、通じやすいと思う、今も実際そうだったしな。

だが、感銘に瞳を潤ませていたお嬢ちゃんは、続けて、軽くため息をついた。

「でも、それじゃ、仕方ないですね…」

「どうした?お嬢ちゃん。何も困ることはないだろう?今週のエステの予約をキャンセルして、来週に伸ばせばいいだけじゃないか」

「いえ、今週の予定を来週に延期しても、同じなんです。オリヴィエ様は出張なさってる星でご当地エステを試してくるって…出先でお手入れなさってくるっておっしゃってたから…来週は主星には外出なさらないと思うんです、だから…」

「オリヴィエなら、毎週手入れに出かけたって異存はなかろう、むしろ、こっちはこっちで、主星の方にも喜んで行くんじゃないのか?」

俺がそういうと、お嬢ちゃんはさっぱりした顔でにっこり笑った。

「それは何ともいえませんし、私の都合であまりわがまま言っても申し訳ないので…なので、今月は、私、お手入れはなしにしますね、オスカー様。来月、オリヴィエ様が一緒に行ってくださる時まで主星に行くのは延期しますから。オスカー様にご心配おかけしてまで、行かなくちゃならないものでもないし…」

「!…いや、そんな、君に我慢や無理強いをさせる気はないんだ」

俺は、お嬢ちゃんが外界行きをあっさり諦めようとしたことで、むしろ慌ててしまった。予定の延期が難しいなどと俺は思ってもいなかったんだ。

それに極楽鳥のヤツに、最低でも一月に一回は、慢性睡眠不足のお嬢ちゃんに…有体にいって俺のせいだ…たっぷり休息を取らせて肌のメンテナンスをさせねば、彼女の身体にも心にも疲れが溜まってしまうと釘を刺されている。俺は、彼女のためにならないごり押しをする気は毛頭ないのだ。

「それにお嬢ちゃんも本当は肌の手入れに行きたいんだろう?」

「それは定期的に行ったほうがお肌のためにはいいかなと思いますけど…でも…」

その時、俺の頭にある解決策が閃いた。こんな簡単なことにどうして今まで気づかなかったんだ、俺は。

「だからな、俺が一緒に主星までついていく。オリヴィエの替わりに俺が君をエスコートする」

「オスカー様が?オスカー様も私と一緒にスパでお手入れをお受けになるの?」

「は?いや、俺は単に君を店まで送っていくだけのつもり…で、君の施術が終わるのをどこかで待つつもりだったが…」

俺は君をエスコートすると言っただけだよな?それが、どうして一緒にエステを受けることになるんだ?

「だって、オスカー様はお手入れなさらないなら、そんな…そんなに長くオスカー様をお待たせするわけにはいきません。それこそオスカー様に申し訳ないですー」

「長いって、どれくらいだ?」

「午前9時に受付を済ませると、全部終わるのが午後一時半くらい、それくらいです」

「それは昼食もコミの時間じゃなくてか?」

お嬢ちゃんはこくんと頷いた。

そ、それは確かに長い…女性の手入れとはそんなに手間隙がかかるものなのか…

「そうか、それに向こうでの予約は午前中なのか…じゃ、バーで酒を呑んで時間をつぶすのは無理だな…なら…そうだな、カフェで本でも読んでいれば、時間なんて、あっという間に経つさ」

本当は君のいない時間は1分が1時間になったみたいに長いけどな…なんて、俺は殊勝なことを考えながら、君を待つ心積もりをした時だった。

お嬢ちゃんが、いきなり、大きな声を出した。

「だめー!オスカー様はカフェで、そんなに長い時間をすごしちゃダメですー」

「な、なんでだ?お嬢ちゃん」

今度は俺が目を丸くする番だった。

するとお嬢ちゃんは、一瞬はっとして、もじもじしながら

「だって…そんなに長いこと、オスカー様がカフェにいたら…絶対たくさんの女性から声をかけられるに決まってます、オスカー様はこんなにステキでかっこいいんですもの、もし、オープンカフェでオスカー様が長い脚を組んでコーヒーでも飲んでいたら、一目みた女性はみんな夢中になって、きっとオスカー様はたくさんの女性に取り囲まれてしまいます。だから、カフェはダメですー」

と、切実な口調で俺に訴えてきた。

俺は思わず相好を崩した。

「なんだ、お嬢ちゃん、やきもちか?」

お嬢ちゃんにほんのりとでもやきもちを焼かれるとは、なんと甘美なことであろうか、背筋がぞくぞくするぜ。

図星をさされたお嬢ちゃんは、耳まで真っ赤になって、ほんの少し口を尖らせて、俺にこう抗弁した。

「う…だって…オスカー様は私のオスカー様なのに。オスカー様が、他の女性とデートなんてしないってわかってますけど…でも、もし、あんまりたくさんの女性に囲まれちゃったら、そこから抜け出せなくなっちゃうかもしれないじゃないですか〜。オスカー様はお優しいから、女性を無理に振り払うなんてなさらないだろうし…それで待ち合わせしててもはぐれちゃったり、会えなったりしたら嫌ですー」

「なら、俺の気持もちょっとわかるか?君が心配でたまらない、街中を君を1人で歩かせられないと思うわけが…君を信じていないんじゃない、ただ、心配なんだ。君にそんな気はなくとも、君の魅力に惹かれた男に君が取り囲まれてしまうかもしれないことが」

「!…あ、はい…なんとなくわかりました…。でも、私が声をかけられるより、オスカー様が声を掛けられることの方がずっと多いに決まってると思うんですけど…」

「いや、それは…」

と、言いかけて、お互いどちらがより異性をひきつけてしまうかを比べあうことが本論ではないことを俺は思いだした。

しかし、どうしたものか。

彼女は俺を長時間待たせたくない、カフェで待つのがダメなら、俺がスポーツクラブでマシンジムをしたり泳ぐのもお嬢ちゃんは心配するかもしれん…ああ、こんな束縛さえもが心地よいぜ。なにせ、お嬢ちゃんは心が広く美しすぎるから、めったにやきもちなんて焼いてくれないからな…そして、俺は彼女を1人で外出させたくないが、エステには行かせてやりたい。彼女の懸念は考えすぎという気がするが、それを指摘すれば、俺の懸念だって心配しすぎだと返されるに決まってる、また、どっちがより多く声をかけられる心配があるかっていう堂々巡りに戻ってしまう。

ううーむと俺が考え込んでいると、突然、お嬢ちゃんが、ぱむ!とかわいらしく手を打ち鳴らした。

「あ、そうだ!オスカー様、私が行ってるエステって、カップルルームっていうのが確かあったと思うんです、お友達同士とかで二人一緒にお手入れを受けられる筈だから…やっぱり、オスカー様も一緒にスパに行きましょうよー」

「なんだって?カップルルーム?」

「はい、確か、そういうお部屋があったと思うんですよねー、パンフレットに親子や姉妹、お友達同士でもどうぞって書いてあった記憶が…」

俺の背筋を一瞬流れた冷や汗は、この一言ですっと引いた。お嬢ちゃんの口調は伝聞を表す間接話法だったから…オリヴィエと一緒にカップルルームを使ったことがあるわけじゃないんだな、と察せられたからだ。いくらあいつが無害かつ安全牌で、君が無防備でも安心といえど、それは、いくら何でもちょっと無防備すぎるんじゃないのか…とか、なんとか、あまり、みっともない質問をせずに済む前に事情がわかって助かった…

「だから、私1人の予約を、カップルルーム使用でオスカー様と二人に変更して、一緒に行きましょうよ、オスカーさまぁ。お肌の手入れだけじゃなく、男性が受けられるマッサージプログラムもありますから、ね?」

お嬢ちゃんが、斜め下30度の角度から、熱っぽい瞳で俺を見上げておねだりを始めた。

お嬢ちゃんからのおねだりは、全く、どうして、こうもかわいらしいのだろう。

「お嬢ちゃんは俺がスパに一緒に行くほうがいいのか?」

俺は、少しだけもったいつけてみせる。

「はい、待ち合わせで会えなかったらどうしようって心配しなくていいし、ずっと、オスカー様と一緒にいられたら、心強いし安心できますし…何より嬉しいですもの」

お嬢ちゃんが、つつつ…と俺の傍にきて、膝の上にちょこんと乗ってきた。そして俺の首の根元に腕をまきつけて、ちゅ…と俺の頬に軽く口付けてから、小首をかしげて俺を見上げた。

「それに、お手入れの後、オスカー様と一緒に外界を歩いたり、外でお食事できたら、私、もっと嬉しいな…デートみたいで…」

全く、言うこと、為すこと、何もかもが愛らしさの極致だ。元々、俺はお嬢ちゃんのおねだりなら、何でも聞いてあげたいのだが、お嬢ちゃんのおねだりの仕方がたまらなくかわいいので、俺はわざと勿体つけて、お嬢ちゃんのおねだり自体をなるべく引きのばして、長く多く味わいたいと思ってしまう。その一方で、すぐにおねだりを聞いてあげ、一刻も早くお嬢ちゃんの喜ぶ顔を見たいとも思う。この二律背反はいつも俺を悩ませる。全くお嬢ちゃんが罪作りにかわいらしすぎるせいだ。

「わかった。この週末はお嬢ちゃんに付き合うぜ」

そして、今回の俺の心の天秤は『速攻、お嬢ちゃんの喜ぶ顔を見る』に傾いた。お嬢ちゃんにお出かけを諦めさせ、がっかり顔をさせる処だったお詫びの気持も天秤をこちら側に傾けた。

「本当ですか?オスカー様、ありがとうございますー!早速、予約の変更をメールしておきますねー」

お嬢ちゃんはぴょこんと俺の膝から降りると、すぐさまコンソールを立ち上げた。メールはすぐに送れたようだった。外界とはタイムラグがあるとはいえ、予約変更は時間の余裕をもって行うほうが、店の方もありがたいだろう。お嬢ちゃんのこういう気配りやフットワークの軽さも、また魅力の一つだな。

「これで大丈夫だと思います、オスカー様と一緒に行けるなんて、すごく楽しみ…」

「ああ、そうだな…」

俺は、お嬢ちゃんの手首を取って、ぐいと引きよせた。

お嬢ちゃんはぽすんと軽い音をたてて、俺の膝の上に舞い戻ってきた。

「オスカーさま…?」

「だが俺は、お嬢ちゃんと一緒に過ごす時間はどこで何をするのであっても楽しみだぜ?」

俺はお嬢ちゃんの頤を摘んで上を向かせ、お嬢ちゃんに全身で覆いかぶさって口付けた。

「んんんっ…」

俺はお嬢ちゃんの歯列を割って深々と舌を差しいれ、お嬢ちゃんのそれを左右に大きく弾くように舐った。

ひとしきり唇を吸った後、俺は、お嬢ちゃんの首筋をぺろりと舐めあげてから、桜色の耳朶を唇で食みながら囁きかけた。

「今でもこんなに美味しいお嬢ちゃんがますます美味しくなるのは、一層の楽しみだってことも事実だがな」

お嬢ちゃんは、俺の舌遣いにふるりと身震いしながら、

「やん…オスカー様ったら…」

と消え入るような声で恥ずかしそうに呟いた。伏せた瞳を彩るまつげもふるふると震えていた。

俺は、その震える瞼に口付けながら、この外出に存外うきうきしている自分に気づき、内心苦笑した。

 

お嬢ちゃんとのスキンシップは鉄の自制心で首筋までのキスにとどめ、きちんと朝食も取って、俺とお嬢ちゃんは時間の余裕をもって次元回廊をくぐり主星に降り立った。

女王府前からエアタクシーで10分ほど走ったところで車から降りたお嬢ちゃんが

「あ、オスカー様、ここです」

と、俺に指し示した建物は

「お嬢ちゃん、ここは、ホテルじゃないのか?」

と、俺が言った通り、主星でも5つ星クラスの都市型ホテルだった。俺はお嬢ちゃんとホテルで楽しい時間を過ごすのはやぶさかではない…いや、むしろ大歓迎だが、それは肌の手入れ後の方が楽しいんじゃないだろうか…などと考えていると

「はい、ここの地下1階にスパがあるんです。エレベーターはこっちです、オスカーさま」

と、言ってお嬢ちゃんは俺と腕を組み、意気揚々と歩き出した。

ああ、そういうことか…と、俺は納得した。そして、これは色々と楽しいことになりそうだと、同時に思う。

「オスカー様、なんだか、とっても楽しそう」

いかん、考えていることが、どうやら顔に出たらしい。

「それはお嬢ちゃんとのお出かけが楽しいからさ」

赤頭巾を一のみにしようと目論む狼みたいな答えを俺は返した。ただ狼と異なり、俺はごまかしや嘘は言ってない。少しばかり広い視点からの意見を言っただけで。

「うふふ、私もオスカー様とお出かけできて嬉しいです」

屈託のない笑顔が眩しいったらなかった。

お嬢ちゃんが手馴れた様子でスパのフロントでチェックインを済ませると、本日の手入れに関するカウンセリングとやらで、俺は、色々と質問やら説明を受け、結局、筋肉の凝りを解すという全身マッサージとリラクゼーション効果があるというヘッドマッサージを受けることにした。お嬢ちゃんの方からはボディーラップ後スクラブをして全身マスクの後、アロマオイルマッサージとフェイシャル…と俺には馴染みのない単語が多々聞こえてきた。

そしてカウンセリング後、俺たちはカップル専用というコネクティングトリートメントルームに案内された。部屋は木目調の落ち着いた内装で、照明がかなり絞られて全体に薄暗い。ほのかにエキゾチックな香りのアロマオイルか香が炊かれている。流れるBGMは神経に触らない程度の音量のイージーリスニングだ。とことん客をリラックスさせたいという意図がよくわかる。部屋の中央には普通のベッドよりかなり高さのある簡易寝台様のものが2台、人1人が立てるくらいの間を開けて並んでいる。

案内の者は部屋備え付けのロッカーを示し、ここに服を預けた後、トリートメント開始時刻まで、続き部屋となっている浴室での入浴を勧めてきた。マッサージの効果を高めるためだという。

「ごゆっくりおくつろぎになってください」

一通りの諸注意を終えると、こう言って、案内の者は退出した。これから客は全裸になるのだから当然の心遣いだろう。ハンガーをあけると、上質な綿のローブと…これは紙パンツか?が入っていた。

お嬢ちゃんは、着てきた服をハンガーにかけながら、

「オスカー様、私もこのお部屋初めてなので、面白いです、いつもはお手入れ前に女性用の大きなお風呂にはいってたんですけど、ここはお風呂も部屋付きで専用なんですねー」

と、きゃっきゃとはしゃいで楽しそうだ。

「俺はお嬢ちゃんと一緒なら、なんでも楽しいけどな」

と、俺もさっさと服を脱ぐ。これから入浴だし、ここは個室だから今はローブは羽織らない。

「さ、お嬢ちゃん、とりあえず言われたとおり風呂に入るか」

「あ、はい」

俺に手を差し伸べられていきなり照れくさくなったのか、お嬢ちゃんは、それとなく乳房に手を当てながら、頬を染めて僅かに瞳を伏せ、軽く身体をはすかいに引いた。その仕草が愛らしくて俺は思わず顔をほころばせながら、恥じらいにうつむき加減のお嬢ちゃんをひょいと抱き上げ、浴室に通じる扉を開けた。

「きゃあ、すごぉい!こんなお風呂初めてですー!」

それまで頬を染めて静かに抱かれていたお嬢ちゃんが、俺の腕の中で身を乗り出すように歓声をあげた。確かに俺も初めてみた、浴槽一面に色とりどりのバラの花弁が浮かんでいる風呂など…。こんな風呂は女性向けロマンス小説の中だけにしか存在しないと思ってたぜ。しかも風呂はこれ一つではなかった。小型ながらも湯が白濁している浴槽…これは超音波風呂らしい…と、このバラ風呂…こちらはジェットバスとあるので、恐らく激しい水流にあわせて花弁が乱舞する演出なのだろう…とバスタブが二つ、それにミストとドライのサウナ…これも二人用の小さな物だが、それぞれあり、ほてった身体を冷やす冷水槽も小さいながら備え付けられている。

確かに、充実した施設だ、オリヴィエ御用達…といってもあいつはこの部屋を使ったことはないだろうが…だけのことはある。

そして、壁に貼られた風呂の入り方の注意書きを見て、俺は更にあっけにとられた。

超音波風呂10分、ジェットバス10分、ミストサウナ15分、ドライサウナ15分、身体が火照ったら合間に冷水浴を5分と全ての風呂の入浴時間と、風呂に入る順番から滞留時間までが全て事細かに定められている。

寛ぐどころか、これではまるで修行だと、俺は半ば呆れ半ば感心した。お嬢ちゃんが手入れに時間がかかると言っていた訳がわかると思いつつ、俺は、お嬢ちゃんを抱いたまま、まず超音波風呂に身体を沈めた。

お嬢ちゃんは環境に順応しやすい性質(タチ)…いや、むしろ、どんな環境も前向きに取り組み楽しんでしまう性質なので、風呂に入るや即座にリラックスしたようだ。俺の脚の間にちょこんと収まると、俺の胸にそっと身体を預けてきた。力が抜けて体の線が柔らかくなっているのが、お嬢ちゃんを抱いている俺にはよくわかった。

「オスカー様、気持いいですねぇ。オスカー様と一緒だから、いつものお風呂よりずっと気持いい気がします」

「ああ、そうだな、俺もお嬢ちゃんと一緒でよかった…」

だってなぁ…お嬢ちゃんと一緒だから良かったものの、これが1人で無為に風呂に入らねばならないのだとしたら…まさに修行と思わないとやってられなかったのではなかろうか。お嬢ちゃんは、いつも1人で入浴してて厭きたりしないのか。この1分1分が美しさのためと思えば女性は、耐えられるのだろうか。それとも何も考えないぼーっとした時間自体が癒しになるのだろうか。

などと考えながら、俺の両の手は極自然かつ当然のようにお嬢ちゃんのたわわな乳房をすっぽりと包み込んだ。俺は、そのまま掌をゆっくり回して、乳房の表面をやんわりとなでさする。かわいらしいものを、かわいいなと思うから自然と愛でる、この時の俺の愛撫は、そんなナチュラルな心情ゆえの行為だったんだが…

「あん…」

お嬢ちゃんは、鼻にかかった甘え声をあげ

「オスカーさま…だめ…私、あんまり触れられると困ったことになってしまいますから…」

俺の手の甲に自分の手を重ねて、やんわりと俺の動きを制しようとした。

「どう困るんだ?お嬢ちゃん…」

俺の問いに、お嬢ちゃんは困ったようなはにかんだ笑顔を俺に向け、こう言った。

「その…あの…もっと触ってほしくなっちゃうから…触れてほしい気持が抑えられないかもしれないから…だって…オスカー様の手、すごく好きなんですもの…」

「お嬢ちゃん…」

胸か、鳩尾か、とにかく、その辺りが俺はきゅうっと締め付けられるように苦しくなった。

「でも、ここは家のお風呂じゃないか…んんっ…」

俺の指は意識するより先にお嬢ちゃんの頤を捕らえていた。頤にかけた指に力をいれ、俺は少し強引にお嬢ちゃんを後ろに向かせると噛み付くように口づけ、唇を貪った。

そして、深い口づけを与えながら、たわわな乳房の感触を味わうにとどめていた俺の手は、背後からお嬢ちゃんの両の乳首を1度に摘みあげた。そのまま親指と人差し指の腹で、俺はお嬢ちゃんのかわいい乳首…今は湯に隠れて見えないが…を軽く押しつぶすようにくりくりと捻った。

「んふっ…んんんーっ」

突然、両の乳首を捻り転がされてお嬢ちゃんの吐息が荒くなる。

湯に入ったままだから、息が苦しくなってはいけないと思い、俺はいつもより相当短い時間で口付けを切り上げた。替わりにピンクに染まった耳朶の裏側に舌を這わせ、耳たぶを軽く噛んだ。

「あんっ…」

「お嬢ちゃん、かわいい声だな…」

「あっ…やん…だって……」

「ああ、風呂だと、君のかわいい声が一層よく響く」

「やっ…オスカー様の意地悪…」

俺はにやりと笑ってお嬢ちゃんのすんなりとしたうなじに口付ける。ゆるく上げた髪から金の後れ毛が一房二房と零れ落ち、真っ白なうなじを彩る様が艶かしい。その後れ毛の隙間を縫うように舌を這わせると、お嬢ちゃんがくすぐったさそうに首をすくめた。

「は…ぁ…」

極軽く乳首を捻りながら乳頭の天辺に指の腹を軽く回し、うなじに口付ける。お嬢ちゃんの乳首が少しづつ硬さを増していくのを掌に感じる。抜けるように白いうなじにも少しづつ桃の色が射してくる。

俺は背後からお嬢ちゃんの肩口に顔を埋めるようにして、華奢な肩に極軽く歯を立てて、その部分の肌を吸った。休みなく乳首の周りに指を回しながら。

「んっ…オスカー様…だめ……もう…本当に困っちゃうから…」

「何が困るんだ、お嬢ちゃん…」

「やっ…意地悪…お分かりなのでしょう?…」

「何をだ?」

お嬢ちゃんは懸命に首を俺の方に回してき、俺に切々と訴えかけるような瞳を投げかけてきた。

「だって、私、もう…」

「『もう』…なんなんだ?」

俺は極め付けに甘く優しい声音でお嬢ちゃんに問い返す。

俺は口元に浮かぶ笑みを隠せない。声に忍び込む悦びの色を隠さない。

「知らない…」

お嬢ちゃんの拗ねて甘えた声が更に俺を蕩かす。

「ここに…」

やるせなげに組まれたお嬢ちゃんの脚を…膝頭から大腿部の内側を撫でさすりながら、俺の手は湯に揺らぐ繊毛に触れ

「触れてもらいたくなったんじゃないか?」

こういいながら、俺は、更にその奥にある花弁に指先をしのばせた。

「あっ…」

花弁に指がいたるより前に、湯とは全く異なる粘度の高い液体の感触が俺の指先に触れた。

「ああ、やはりな…もう、こんなにとろとろになってる…」

「や…」

お嬢ちゃんが小さく頭を振る。

「俺にここを触って欲しかったのかな?お嬢ちゃんは…」

俺は、とろりとした蜜の感触を指に味あわせるように、花弁の合わせ目を少しだけ指先で割る。が、お嬢ちゃんは唇を噛んで

「や…知らない…」

と重ねて小さく呟く。

「それとも…こうなっていることを…俺に教えたかった?」

俺がこういうと、お嬢ちゃんははっとしたように俺の方に振り向き、切なげな瞳で俺の顔を見つめた。

「ん……だって、私、全然隠せない…私がどれほどオスカー様を好きか…ちょっとオスカー様に触れられただけで…すぐこうなってしまうから…本当に、恥ずかしいくらい、あっというまにこんなに溢れてしまって…だから、恥ずかしいから、これ以上はだめって…」

「お嬢ちゃん…恥ずかしがらなくていい…」

俺は笑みを零すと、お嬢ちゃんに幾度も口づけた。

「わかっているさ、お嬢ちゃんの気持は…ここだって、こんなに固くして…」

俺は、少し強めにお嬢ちゃんの乳首を捻った。

「あんっ…」

「俺は、君の気持が…俺への熱い想いを伝えようとしてくれる君の気持ちが何よりもとても嬉しい…」

「オスカー様…でも、もう…もう…だめ、これ以上は、ほんとに、私、のぼせちゃいます…オスカー様に…」

俺は思わず破顔した。

「俺は、もう、とっくに君にのぼせっぱなしだがな」

「やん…」

「だから、君をもっと俺に夢中にさせたい…俺にのぼせてほしい…」

全く、ここがスパの風呂じゃなく、外でエスティシャンが待ち構えていなければ、いくらでもその努力は惜しまないのだが。その上…

「と、言いたいところだが、お嬢ちゃん、そろそろ身体の方も火照ってのぼせそうだろう、一度風呂から出て、少し冷まそう」

そう、湯のせいか、俺の愛撫のせいか…恐らくはその両方でお嬢ちゃんの肌全体が薄紅色に染まってきているのに俺は気付いていた。

湯の温度自体はそう高くはなかったが、俺にのぼせるのと違って、お嬢ちゃんの体の方が湯当りしたら大変だ。

「あ、はい、確かに、そのそろそろ体が熱くなったきちゃったって思ってたんですけど…どうしてわかるの?オスカー様」

お嬢ちゃんは目をまん丸にして俺を見上げた。その瞳は、お湯のせいか、俺のちょっとした愛撫のせいか、とろんと少し潤んでいる。

「わかるさ、お嬢ちゃんの肌を見ていればな…身体が熱く火照ってどうしようもなくなると、君の白い肌は、内側から火が灯るみたいにピンクに染まる、だから、のぼせちまう前に冷ました方がいいタイミングがわかるんだ」

「オスカーさまって…すごい…」

「俺にのぼせてくれるのは大歓迎なんだが…本当にのぼせたら大変だからな…ただ、ここがスパの風呂じゃなかったら、このまま君をどうしようもないほど火照らせ高ぶらせてやれるんだがな?」

「んもう…オスカー様のばか…」

俺が、お嬢ちゃんの頬にキスすると、お嬢ちゃんは更に頬を火照らせてうつむいてしまった。

実際、俺も身体の一部に血液が集中しかけていたので、冷水で冷ます必要があった。これからマッサージを受けるというのに、俺のものが臨戦態勢になっていたら、エステシャンには目の毒だし、この俺の雄姿はお嬢ちゃん1人のものだからな。

この後、俺は入浴しながらのこんな感じの極軽い(?)愛撫とキス、そして身体が火照ったら冷水を浴びることを繰り返した。

そんなこんなで規定の入浴時間はあっという間に終わった。

風呂から上がり際、

「お嬢ちゃんの身体も、すっかり解れてとろとろになったみたいだな、今日はいつにもまして、マッサージの効果も高いんじゃないか?」

とお嬢ちゃんの耳元で囁いたら、

もう一度、

「んもう…オスカー様の…ばか…」

とお嬢ちゃんがかわいく俺を睨んできた。

この、なんともかわいい「ばか…」が聞きたくて、俺は、ついついお嬢ちゃんを優しく苛めてしまうのかもしれない、なんてことを俺は思ってしまった。我ながら処置なしだと、同時に思った。

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