湯から上がり際、俺が身も心も解しすぎてしまったせいか、足元が少々怪しかったお嬢ちゃんを、俺は大判の真っ白なタオルで包みこむと、肌に残る水滴を丁寧に吸い取ってからローブを着せてやった。続いて俺もローブと下着を身につける。ローブはすぐに脱ぐことになるとわかっているが、これも必要な手順というものだろう。
すると、タイミングを見計らったようなノック音とともに、女性が4名入室してきた。一人あたり二名担当ということか。
「お手入れを始めさせていただいてよろしいでしょうか」
「ああ」
「では、ローブをお預かりいたします」
俺が、たった今身につけたばかりだったローブの紐を緩めると、すかさず係りの女性が俺の腕からするりとローブを抜き取った。お嬢ちゃんの方も同様…と思ったら、どうしたことか、向こうの係りの者はお嬢ちゃんのローブの衿辺りを握り締めたまま棒立ちになっていた。気づけば俺の担当の女性も俺のローブを抱え、俺にひたと視線を据えたまま、息をするのも忘れたように固まってしまっている。
自慢するみたいで恐縮だが、担当の女性たちは、どうやら、俺の鍛え抜かれた身体に目を奪われ、そのまましばらくぼーっと見惚れてしまったらしい。女性達の瞳に明らかな賛嘆の気配が見えたからだ。普通、紙パンツ一枚の男の身体なんて、そう、魅力的なものではない、むしろ少し間が抜けて見えるのではないだろうか。しかも、こういう職業なら男の半裸体なんか見慣れていると思うんだが、どうやら、俺の肉体はプロの審美眼にも耐えうる…どころか、暫し魂を別世界に持っていっちまうほどのパワーがあったらしい。やれやれ、俺の身体は一人お嬢ちゃんだけのもの、お嬢ちゃん一人のために鍛え上げている肉体なんだが、見物人の心を奪ってしまうことまでは、ダメと言っても止められるものではない。
「さて、俺は、どうすればいいんだろうか」
俺が極めて冷静に尋ねると、ぱちんと、目の前で夢がはじけたように4人の女性は一様に慌てふためいて
「あ、は、は、はい…こちらを頭にして、ここにあおむけに横になっていただけますか」
と、しどろもどろに指示を出した。
見れば、何故だかお嬢ちゃんまで、慌てて台に横たわろうとしている。お嬢ちゃんまで、エステシャンと一緒に俺の身体に見惚れていたのだろうか?お嬢ちゃんには、それこそ見慣れているものだろうに…でも、もし、そうなら光栄なんだがな。そう思って、俺がお嬢ちゃんに微笑みかけると、お嬢ちゃんは真っ赤になって、ふいとそっぽを向いてしまった。俺は、おや?と思った。お嬢ちゃんは恥ずかしがりやさんだが、どれ程照れていても、はにかみながらでも、いつもなら、俺の笑みには笑みを返してくれるのだが…
しかし、俺の方も担当の者に横になるよう促され、お嬢ちゃんの不可解な態度の理由を質す暇がなかった。もしや、浴室での俺の愛撫の度が過ぎたと、些かおかんむりなのであろうか。周囲に人がいるから、いつもより恥ずかしい気持が強く、俺と視線を合わせられなかっただけだと思いたいのだが…と、俺は考えながら、いわれるままに横たわった。隣ではお嬢ちゃんの施術も始まったようだった。
俺が横たわるや、背骨のカーブにあわせて、台の腰骨の上辺りと足首の辺りが若干持ち上がるように動いた。長時間横になっても背中や腰に負担が掛からないようにマッサージ台がパーツごとに電動で動くようになっていることを知り、俺が素直に感心していると、すぐにマッサージが始まった。
まず筋肉の疲れを和らげるということで、身体にかけられたタオルの上から掌と親指で身体の要所要所…俗にいうツボというやつか…を絶妙な力加減で押された。確かに押された箇所はなんともいえず心地よい。2名の担当はまるでシンクロしているかのように左右から均等に調和した力の強弱で、俺の筋肉を順次解しリラックスさせていく。そして、この全身の指圧が終わると、俺の身体にかけられていたタオルが取り払われ、すかさず、人肌より少し暖かいオイルが満遍なく塗布された。途端にエキゾチックな香に全身が包まれる。これは血液循環を促進して、気の流れをよくし、緊張を和らげるマッサージということだった。幾度かうつぶせになったり仰向けになったりを繰り返し、蒸しタオルでさっぱりした後、最後はリラックスとリフレッシュ効果のあるという掌から肘までを使っているらしいリズミカルなマッサージを受けて、俺の身体の手入れは終わった。しかし、これから、ヘッドマッサージと、それにあわせて足ツボのマッサージが入るらしい。施術を受けている最中は時間の経過があまり感じられないので苦でなかったが、実際にはここまでで相当な時間が経っていることだろう。無為に過ごすには確かに苦痛な長さになっていたかもしれない。俺が外で待っていたらお嬢ちゃんも気兼ねしてリラックスできなかったかもしれないので、お嬢ちゃんが言う通りに、俺も手入れを受けることにしてよかったと俺は思っていた。オリヴィエ推薦の店だけあって、施設も技術も申し分なしだしな。
ただ一つ、難点は、お嬢ちゃんのすぐ隣にいるというものの、マッサージを受けている最中は基本的に動けないので、お嬢ちゃんの様子をあまり伺えないことだった。施術の間中、二人仲良く手を繋ぎあう…のは無理でも、要所要所でさっと互いに手を握り合うような10代の恋人同士みたいな甘酸っぱいことくらいはできるかと施術前は目論んでいたのだが…いや、冗談だ。とにかく単に隣同士で横になっているだけなので、カップルルームだからといって、格別にロマンチックなムードが盛り上がるというわけでもない。
ただ、俺は先刻のお嬢ちゃんの態度に少し引っかかりを覚えたままだったので、お嬢ちゃんの様子が気になった。だから、あっちを向け、こっちを向けと姿勢を変えさせられる時には、可能な限りお嬢ちゃんの方に視線を投げた。すると、大抵お嬢ちゃんと目があう。大抵というのは、お嬢ちゃんも様々な指示で顔がこちらを向いていない時があるし、フェイシャルを受けている時は、基本的に顔は仰向けから動かせない、パックなどしている最中は尚更だからだ。それでも目が合えば俺は安心するし、嬉しくなる。俺がお嬢ちゃんのことを気にかけているように、お嬢ちゃんも俺のことを気にかけてくれているのだなと思うからだ。しかし、それにしては、やはり、お嬢ちゃんの様子が何だかおかしい…そう感じる度合いは徐々に強くなっていき、これは気のせいでは片付けられない、俺は次第にそう思わざる得なくなってきた。お嬢ちゃんは俺と目があうと、一瞬、とても熱っぽい訴えかけるような眼差しを向けてくる。これはいい…というか、わかる。そぐ傍に、手の届く場所にいるのに、今はお互い、中々声もかけられないし、手を握り合うこともできないから。しかし、その熱っぽい視線を向けた後、お嬢ちゃんはふいと俺のいる方とは反対側に顔を向けてしまうことが多いのだ。まさに俺にそっぽを向くように…こんな風に感じるのは、俺の勘繰りか?いや、むしろ、そうならいいのだが…。
と、お嬢ちゃんの動向に気を取られていたら、いつの間にか足ツボと頭のツボを同時に押されて、俺は痛気持ちいいとしかいいようのない感覚に一瞬、気をとられた。その時、今まであちらを向け、うつ伏せになれなどの事務的な指示しか口にしなかったエステシャンが俺に初めて世間話のようなものを話しかけてきた。
「おくつろぎいただけてますでしょうか」
この時、身体のマッサージは終了しているので俺の身体にはタオルケットの様な上掛けがかけられ、肌が露出していたのは首から鎖骨にかけての僅かな部分のみだった。俺の肉体の大半が隠れていたからこそ、その魅力に当てられずに済み、担当の者も漸く平常心で普通に会話ができるようになったのかもしれない。
「ああ、すっかり寛いでいた。流石に俺のおじょ…妻が行きつけのことはあると感心していた」
一瞬、エステシャン手が止まる
「ご夫婦でいらしたのですか。お若くていらっしゃるので…」
「俺もおじょ…彼女も実年齢よりかなり若く見られるタチなんだ。これでも立派な社会人なんだが」
「差し支えなければ、お仕事はどのような…」
俺の肉体年齢は20代前半で通用してしまうし、お嬢ちゃんも実質ティーンエイジャーだから、意外に思われるのは無理もないか。
「公務員だ」
嘘は言っていない。守護聖なんてものは、宇宙全体の公僕だからな。
「さようでございますか。お客様は全体に筋肉が強張っておいででした。こめかみも…」
という言葉とともに、こめかみが両方向から同時に程よい力で押された。心地よい。
「かなり張っておいでなので、お仕事では相当神経もお使いになっておいででは?」
「まぁ…そうだな…肉体も使うが神経も使う…と言われたらその通りか…」
俺は独り言のように呟いた。サクリアの放出はある意味肉体労働だが、量の加減や放出する星域への調整は結構神経を使う。なにせ炎のサクリアは難物で、手綱を引き締め自在に使いこなすのは、中々に骨が折れるのだ、だが、だからこそやりがいも大きいんだが。
「よろしければ、奥様とご一緒にまたおいでください、その時のお身体の状態に合わせてマッサージプログラムを提供させていただきますので」
「ああ、ありがとう」
「お疲れ様でございました」
この言葉で俺は、俺への施術が終わったことを知った。
しかし《お疲れ様》という言葉は全くそぐわなかった。俺は身体が柔らかくなったのを感じていたし、頭もすっきりと軽い。身体が細胞レベルでリフレッシュした感じだ。自覚しておらずとも、疲れやくすみはいつの間にか溜まることがある。銀器の曇りを落とすように、極たまにであっても、こういう場で心身の澱を落とすことの効用は素直に認めた。俺は、お嬢ちゃんに色々な意味で無理をさせがちなので、お嬢ちゃんにこそ定期的なリフレッシュが必要なことは、尚更痛感したぜ。
身体を起こすと、すかさず、ローブを肩にかけられた。俺の肉体美は刺激が強すぎて目の毒だから…ではなく、すべからくそういうサービスなのだろう。俺は素早くローブに腕を通してから、寝台から降り立った。
横を見やれば、お嬢ちゃんの施術も、もうそろそろフィニッシュという印象を受けた。と、思うまもなく、お嬢ちゃんも「お疲れ様でございました」という言葉掛けと共に、背を支えられてその身を起こされた。やはり、すかさずローブが肩にかけられる。
「お客様、お着替えをすませられましたら、リラクゼーションルームの方にお越し願えますか?お飲み物をご用意いたしておきますので」
「ああ」
俺は頷いた。お嬢ちゃんもローブを羽織り、寝台から降りたとうとしている処だった。
俺が、自分の衣服を納めたロッカーの前に立つと、担当のものは揃ってそそくさと退出した。
二人きりになれたことを見計らい、俺はロッカーをあけながらお嬢ちゃんに声をかけた。
「なぁ、お嬢ちゃん…」
俺は、お嬢ちゃんの不可解な様子が…視線を避けられていたような気がしたのは、俺の思い過ごしかどうかを確かめたかったので、それとなく聞いてみる気だった。
すると、声をかけた途端、お嬢ちゃんが思い切り俺に抱きついてきた。小さな身体を勢いよく俺の胸板にぶつけるようにして、細い腕で俺の体躯を力一杯抱きしめてきたんだ。
「オスカーさまぁ…」
俺の名を呼び、俺を見上げたお嬢ちゃんの表情をみて、俺はびっくりした。お嬢ちゃんがいきなり抱きついてきたことにも驚いたが、その、なんともいえぬ複雑な表情は、更に俺を狼狽させた。
お嬢ちゃんは頬を染めて、眉をひそめ、瞳を潤ませ、僅かに口を尖らせていた。恥らっているような、今にも泣きだしそうな、若干怒っているような、色々な感情が、それぞれに独立しつつ混在している、そんな表情をしていた。ただ、その表情は決して幸せそうとか気持良さそうなものでないことだけはわかったので、俺は尚更にうろたえた。
「お嬢ちゃん、どうした?気分でも悪いのか?」
「いえ、そうじゃないんです…でも…あの…」
お嬢ちゃんは何かを俺に訴えたいといった面持ちで唇を開き、しかし、すぐ恥じ入るようにうつむくと言葉を飲み込んでしまった。
「もしかして、俺は君を不愉快にさせるようなことをしたか?」
「いいえ、いいえ、オスカー様は何にも悪くないの、ただ、私が…」
「君が…?なんなんだ?」
お嬢ちゃんは、やはり口を開かない、が、頑なに口を閉ざしているのではなく、言いたいことはあるが、上手く言葉がでない、もしくは、言っていいものか迷ってる、そんな印象だった。
どうやらお嬢ちゃんは怒っているわけではないらしいことだけはわかったが、どちらにしろ、俺にはこんな状態のお嬢ちゃんは見過ごせない。
「お嬢ちゃん…」
ゆっくりでいいから、思ったこと、言いたいことは何でも言ってくれていい…と続けようとした時、ノックが聞こえた。「お着替えはお済みでしょうか」という声と共に。
俺は内心舌打ちをしながら「もう少しだ」と返事をし、仕方なく「お嬢ちゃん、話はあとだ、今はとりあえず着替えよう、どちらにしろ、ここではゆっくり話せないからな」とお嬢ちゃんを諭した。お嬢ちゃんもこっくり頷き、身支度を始めた。俺も、心の懸念を宥めつつ、手早く身支度を終えた。
休憩用のサロンでは飲み物の前に酸素吸入を薦められた。高濃度の酸素吸入で頭をしゃきっとさせるためのようだ。そのまま寝ればいいだけの夜の客ならともかく、あまりに寛ぎすぎて身体も頭もオフ状態になったままでは、昼に来た客はその日一日使い物にならなくなってしまうからな。どこまでも行き届いたサービスだぜ。
お嬢ちゃんも飲み物を喫するうちに落ち着いたのか、先ほどよりは表情にあまり切羽詰ったものを感じさせなくなっていた。が、時折、ちらりちらりと俺の方を上目遣いでみては、俺と目が合うと、やはり視線を伏せてしまう。お嬢ちゃんは一体どんなわだかまりを胸に抱えているのだろう。俺はお嬢ちゃんが触れて欲しくないことに触れる気はないが、言いたいのに言いにくいことなら、促して、口にさせた方が気が楽になるかもしれんな…と思いながら、茶を飲み干した。
会計を済ませ扉を出ると、そこは、このスパとホテルの本館を繋ぐ通廊だ。この通廊はスパが目的の人間しか用いないのだろう、あまり人気はない。それを確認してから、俺はお嬢ちゃんに声をかけた。
「なぁお嬢ちゃん、俺に何か言いたいことがあれば、何でも遠慮なく言ってくれていいんだぜ?何か心に悩み事を抱えてるみたいなお嬢ちゃんの顔を見ていると俺は胸が痛む、どうしたのかと心配になる」
すると、お嬢ちゃんははっとしたように立ち止まり、そして、再度、むしゃぶりつくように俺に抱きついてきた。
「オスカー様、私…私、自分が恥ずかしいですー!」
「お、お嬢ちゃん?」
情けないが、俺はお嬢ちゃんが何を言いたいのかさっぱりわからなかった。
「お嬢ちゃん、一体…どうしたんだ?」
「オスカー様、私、オスカー様に失礼なことして…オスカー様は微笑かけてくださったのに、目をそらしたりしてごめんなさい、オスカー様に嫌な思いをさせて、心配させちゃってごめんなさい〜」
じゃあ、やはり目をそらしていたのは事実だった訳だ、俺の気のせいではなく。
「お嬢ちゃん、何故俺と視線を合わせなかったんだ?もし良かったら、話してみないか?すっきりするかもしれないぜ」
「う…あの…その…」
お嬢ちゃんは、一息、呼気を溜めた後、
「……やきもち…」
と消え入りそうな声で答えた。
「なんだって?」
「いやー!だから、恥ずかしいって言ったのにー…でも、オスカー様に失礼な振る舞いをしちゃったから、お詫びの気持で正直に言います!オスカー様、私…私、オスカー様のお手入れしてる係りの方たちに…ずっとずっとやきもち妬いてたの。私のオスカー様なのに、そんなに熱っぽく見つめないで、あんまりじっくり触っちゃだめーって…」
俺はあっけに取られた。
「…………ぷっ…」
そして、我慢しようと思ったのに、つい、吹いてしまったんだ。
「いやー!オスカー様、笑わないでー!自分でも恥ずかしいってわかってるんですからー!」
「すまん、すまん」
俺はエステシャンを、サービスを提供してくれる職業人としてしか認識していなかった、つまり、全く異性として意識していなかったので…当然だろう?永遠の恋人であるお嬢ちゃんがすぐ俺の隣にいるんだから、他の女性が目に入るわけないじゃないか…なので、お嬢ちゃんがエステシャンをライバル視するなんて、その可能性すら思いも寄らなかったんだ。だが、言われてみて、得心した。
それで、安堵したのと、不謹慎だが、ちょっと嬉しくなっちまってな、俺は、堪え切れずに吹いてしまったというわけだ。
でも、お嬢ちゃんは半べそ顔になってしまった。
「オスカー様、あきれた?私のこと、うんざりしちゃった?」
「何故、そんな風に思うんだ、お嬢ちゃん」
「だって、私ったら自分からスパに誘っておきながら…係りの方だってお仕事でオスカー様に触れてるってわかってるのに変なやきもち妬いて…やきもちってみっともないのに…」
俺は思わずお嬢ちゃんを抱き上げて、その場でくるくる回りたくなった。思うだけにとどめたが。それでも口元がほころぶのと、声に笑みが忍び込むのはどうにも抑えられなかった。
「だから、俺と目を合わせなかった?」
「ん…だって…皆さん、オスカー様に見惚れて、ぽーっとしてたし…無理もないんですけど…だから、私、その後、ついつい気になってオスカー様の方をみてると、係りの方ったらお仕事とは思えないくらい熱心に、じっくりとオスカー様に触れてるみたいに…見えたんですもの…オスカー様も気持よさそうになさってるし…オスカー様が気持いいのは嬉しいの、お疲れが取れて、寛いでくださったんなら、ああ、わがまま言って一緒に来ていただいたけど、よかった…って思えたんですけど、でも、他の女性の手で、オスカー様が気持よさそうになさってる処をみたら、すごく…気になるんだけど、見ていたくないような、なんともいえず複雑な気持になっちゃって…」
「それで俺と目が合うたびに、そっぽを向いてたのか」
「きゃー!ごめんなさいー!本当に失礼なことをして…でも、この、もやもやした気持をオスカー様に見透かされそうで怖くて…こんなこと気にしてしまう自分が嫌で、恥ずかしくて…でも、そのせいで、オスカー様を心配させて、嫌なお気持にさせちゃってごめんなさい…」
「謝ることはないさ、お嬢ちゃん。確かに、俺は何か君に悪いことをしたかな?とは考えさせられたが…」
「ごめんなさい、本当にごめんなさい」
「でも、こうして自分の気持ちを言ってくれたじゃないか。だから、俺も君の態度が奇妙だったわけもわかったし…それに、正直言うと嬉しかったな」
「嬉しい?」
「君が実際にやきもちを妬く処をみせてもらったのなんて、初めてじゃないか?だからさ」
「え?どうして?だって、やきもちなんて、みっともないのに…」
「ふ…ジェラシーはスパイスのようなもの、多すぎては恋を台無しにするが、適量であれば、恋の味わいはより深く豊かに美味となる…そんな言葉を読んだか、聞いたかした覚えがある。実際、お嬢ちゃんのやきもちは、俺には大層美味だったぜ?」
もっとも、この適量ってさじ加減が難しいんだがな。
「じゃ、あきれてない?私のこと…うんざりして嫌いになってない?オスカーさまぁ…」
「そんなわけないだろう?お嬢ちゃん。お嬢ちゃんが、ちょっぴり効かせたジェラシーというスパイスは、俺にはたまらなく美味なアクセントだったぜ。元々俺はスパイシーな味が好きだしな?」
自分の言葉をどこかで聞いたフレーズだなと思いながら、引き寄せられるように、俺はお嬢ちゃんにキスしていた。存在自体が砂糖菓子みたいなお嬢ちゃんがほんのり見せたジェラシーは、まさにスパイスみたいに刺激的で俺をぞくぞくさせてくれた。
「だが…やきもちを妬かせて、お嬢ちゃんの気を揉ませたお詫びに、俺にはお嬢ちゃんだけだって、教えてもやりたいな…」
「オスカー様…そんな、オスカー様がお詫びすることなんて何もない、お詫びしなくちゃいけないのは、私の方じゃないですか…」
「なら、そうだな…君は他の女性が俺に触れたのが気になるんだろう?だったら、今から、お嬢ちゃんの手が俺に触れなおすっていうのはどうだ?俺の体の隅々までお嬢ちゃんの手で触れなおせば、俺の肌に残る感触はお嬢ちゃんのものに塗り替えられる…お嬢ちゃんだけのものになる…」
お嬢ちゃんは一瞬目を丸くした、でも、すぐに、その瞳に濡れたような艶が宿った。
「ああ…オスカー様…私…」
「俺の素肌にいつまでも留まり、俺が思い起こす感触は、君のこの手と…」
俺はお嬢ちゃんのふっくらとした唇を親指の腹ですいっ…となぞった。
「この唇のそれであってもらいたいと俺も思っている。俺が心から望むもの、心底心地よいと感じるものは君の肌、君の唇の感触だから…」
「オスカー様の肌に留まるのは、私の手と唇の感触…」
お嬢ちゃんの瞳に一瞬ゆらりと立ち上り揺れた情欲の焔を、俺は、もちろん、見逃さなかった。
「ホテルのフロントは…こっちだな」
俺はにやりと笑うとお嬢ちゃんの肩を抱いてすたすたと歩き始めた。お嬢ちゃんも黙って付いてくる。ただし、今度の沈黙は…羞恥と愛の交歓への期待からだということは容易に知れた。
取った部屋にーもちろんダブルだー入るや、俺はお嬢ちゃんをぐいと抱き寄せ、深々と口づけた。
「んっ…んふっ…ふっ…」
先刻、風呂で交わした時より、お嬢ちゃんの舌も唇も積極的に応じてくるのがわかる。この部屋なら、何の気兼ねも遠慮もいらないから、お嬢ちゃんも俺を求める気持をストレートに伝えてくる。一生懸命俺の唇を吸い、俺の舌に暖かく柔らかなそれをからめてくる。このお嬢ちゃんの素直さや愛情表現の率直さを俺はこよなく愛している。
その上、お嬢ちゃんがより積極的になってくれるのは大歓迎だ。元々、手入れが終わったら俺はスパ階上のこのホテルに部屋を取るつもりだった。手入れを終えたばかりの瑞々しいお嬢ちゃんの肌を一刻も早くこの手で、この唇で確かめたかった。同じ建物にホテルがあるのだから、これを利用しない手はない。と、思っていたら、お嬢ちゃんの方から、誘いをかける切っ掛けを与えてくれたんだ。
お嬢ちゃんは、本当は、俺の思惑を何もかもわかって俺を上手に誘ったのだろうかとさえ思ってしまう…、いや、意識してのものではないとわかってもいるのだが。でも、お嬢ちゃんの作為のなさ、計算の無さが、逆に俺を至上の幸福にいざなってくれる、そんなことが多々ある気がする。まさに無欲ゆえの勝利とでもいうのか。これだから、俺はお嬢ちゃんにますます耽溺してしまうだろう。
お嬢ちゃんの求めに応じるように、また、俺自身の欲求に忠実に、俺はお嬢ちゃんの背に手を回し、ワンピースのファスナーを一気におろした。同時に空いた手で自分のシャツのボタンも外していく。袖を抜かれたなよやかな布が、重力のまま、ふぁさりとお嬢ちゃんの足元に落ちた頃には、俺はとっくにシャツを放り投げ、スラックスを下着ごと蹴飛ばすところだった。
俺は、一刻も早くお嬢ちゃんの肌に直に触れたかった。今までも、手入れを終えて帰ってくるお嬢ちゃんの肌をすぐに愛でてはいたさ、でも、手入れを終えた、まさに直後のお嬢ちゃんの肌を一刻も早く見てみたい、触れてみたいと思うのは人情だろう?だから、俺はすぐさま、彼女を…いや互いに全裸になるつもりだった。
が、俺の手がシュミーズの左の肩紐を、俺の唇が右の肩紐を咥えて肩から滑り落とそうとした時、お嬢ちゃんの手が俺の髪に埋められた。
「だめ、オスカー様…今日は私からオスカー様に触れたいのに…オスカー様に触れていただいたら、また、私、夢中になっちゃう、もっとして欲しい気持で一杯になって…私からオスカー様に触れるのが疎かになっちゃうから…」
「ふ…」
我知らず笑みがこぼれる。
「だが俺も楽しみにしているんだ。手入れを終えたばかりのお嬢ちゃんの肌を早く見たい、この手で触れたい、隅なく口付けたいってな…だって、ほら…」
俺はお嬢ちゃんの華奢な肩から二の腕をじっくりと撫でさすりながら、自然に片方の肩紐を滑らせて落とす。
「肩から腕に触れただけでも、君の肌は俺の手にしっとりと吸い付いてくるようだ。元々すべすべなのに、更にもっちりと柔らかく感じる。もっと触れたくなるのは当然だろう?」
俺は露出させた肩口にそっと唇を押しあてた。
「しっとりと瑞々しい…いくらでも口付けたくなる。君の白い肌も、いつも以上に…透き通るように綺麗だ」
「そんな…」
「お世辞じゃないぜ、論より証拠だ」
俺はお嬢ちゃんの腰をぐいと抱き寄せると、部屋の姿見の前に立たせ、自分はその後背に立ってお嬢ちゃんの腰を抱く。
「ほら、見てみろ、お嬢ちゃん。自分の肌を…まるで真珠みたいに輝いている。品よく艶めいて、抜けるように白くて…本当に綺麗だ」
俺はお嬢ちゃんの顎に手をかけて自分の方に向かせ、一度、軽く口付ける。
「こんな綺麗なお嬢ちゃんを隅々まで見たい…見たら触れたいと思うのは当然だろう?この唇で君の肌の全てを確かめたい」
「オスカー様…」
俺はお嬢ちゃんの腰を抱きよせながら、半ばまで露出していた乳房をすっぽりと掌で覆った。
「あ…」
「ああ、やはりな。かわいいお嬢ちゃんのおっぱいも、いつも以上に俺に触れて欲しそうだぜ?少し触れただけでも、俺の掌に吸い付いてきて離れようとしない」
俺はやんわりと乳房を揉みしだく。乳房を包み込んでいる俺の掌に、乳首が存在を痛いほど主張し始めているのは、すぐわかった。
「ほら、お嬢ちゃんのかわいい乳首も…」
俺は、親指と人差し指で乳首を軽く摘んで、くりくりと指の腹で転がすように捻った。
「は…」
「もうこんなに固くなってる…」
正確には、今の愛撫で更に固くなった…だが。俺は、更に敏感な乳首の先端に指をくるくると回す。
「あぁんっ…」
鏡の中のお嬢ちゃんの顔が、一層悩ましげになった。
「ああ、お嬢ちゃんは、本当にかわいいな…」
俺は背後から唇でもう片方の肩紐を咥えたまま、肩から二の腕までを口付けるように唇を滑らせて紐を外し、お嬢ちゃんの両の乳房を露にした。
真っ白で豊かな膨らみがたわわに零れ落ちるや、俺は、もう一つの乳首もすぐさま指で捕らえて、くりくりと捻った。捻りながら敏感な乳首の天辺に指を回す。同時にうなじに口付ける。華奢な肩を軽く噛む。
「あっ…あんっ…」
乳首に愛撫を加えていくたびにお嬢ちゃんの表情は、艶かしく、切なげで、どこか、もどかしげになる。もっと情熱的な愛撫を待ち望んでいるかのように。
いや、俺の方が堪えきれないから、そのように感じるのだろうか。そう、俺の方が、もう、手で触れているだけでは物足りない。
俺は斜め後ろから回り込むようにお嬢ちゃんの乳房の上にかがみこんだ
真っ白で豊かに美しい乳房と、その頂点に咲く可憐な乳首に、俺は魅了される。
賛嘆の気持を込めて、つんと上向きの乳首をゆっくりと舐めあげる。尖らせた舌先で乳首を下から上に掬い上げるように幾度も舐めると、舐め上げる度に俺の舌を弾き返す程に乳首が固くそそり立っていくのがわかる。その弾力が愛しくて、俺は尖りきったその頂点で小刻みに舌を踊らす。
「あっ…あんっ…やん…」
お嬢ちゃんの声がオクターブ跳ね上がる。
俺は、お嬢ちゃんの身体を少しはすかいにして、俺が彼女の乳首を愛撫する様子が克明に鏡に映るようにした上で、再度、お嬢ちゃんの乳首の天辺にちゅ…と口付けた。
「あっ…」
俺は、乳首を口には含まず…本当は思い切り吸ってもやりたいのだが…お嬢ちゃんに見せ付けるように舌を差し出して、尖らせた舌先で、右に左にと乳首を弾いたり、舌を乳首の上で回したりした。
「はっ…あんっ…あぁっ…」
「お嬢ちゃん、見てみろ、こんなに気持良さそうな顔をして…すごく淫らで、そそられる…」
俺は、鏡の中の自分を見るようお嬢ちゃんに促しながら、その白桃のような頬をなでた。
鏡の中のお嬢ちゃんが瞬間、自分の姿に見入ったのがわかった。お嬢ちゃんの顔が…いや、身体全体がぱぁっと一層色濃く朱に染まった。
「ほら…白かった肌もこんなに色濃く染まって…とても綺麗だ」
「オスカー様…や…恥ずかしい…」
そういいながらも、お嬢ちゃんは鏡の中の自分から目を反らそうとはしなかった。俺の愛撫を受けて昂ぶる自分に酔いしれたいのか、俺から愛されている悦びに浸りたいのか。
そう思ったら、俺の方が辛抱できなくなった。
俺はやにわにお嬢ちゃんの乳房を鷲掴みにすると、指を食い込ませながら荒々しくその豊かな膨らみを捏ねるように揉んだ。同時に深々と乳首を口に含むと、きつく吸いあげた。
「あんっ…」
お嬢ちゃんの驚いたような声音を聞くと、もっと高く甘い声を、無性にあげさせたくなった。俺は乳首の根元に軽く歯を立て、より尖らせた先端を執拗に舐め転がした。
「やっ…噛んじゃ…だめ…あんっ…んっ…あぁっ…」
お嬢ちゃんもたまらない様子で、俺の頭を抱え込む。だから俺は一層の情熱を持って両の乳首に満遍なく口付けては、舐め転がして吸う。
俺のもう片方の手はお嬢ちゃんの背から丸く張りのあるお臀を撫でさすりながら、小さなショーツを既に足元に落としていた。そのまま俺の手はあてどなく彷徨うように、お嬢ちゃんの背からお臀をずっと撫でさすっている。
いくら撫でても飽き足らず、手が離れようとしないのだ。お嬢ちゃんの背は、いつにも増して、どこまでも滑らかで、すべらかだし、まろいお臀は、乳房とはまた異なるもっちりしっとりとした豊かな心地よさに満ち満ちている。
俺の手は、お嬢ちゃんの肌から一瞬も離れることなく、お臀の方からゆっくりと滑るように、お嬢ちゃんの足の間に忍び込んでいった。指先が太腿部の内側に触れると、そこは既に溶かしたバターを塗りたくったようになっていた。その熱さと豊かさに俺の身体の芯が一層熱くなる。
俺はその熱い潤みに誘われるように、ふっくらと豊かな花弁を、後ろからそっと指先でなぞった
「あぁっ…」
お嬢ちゃんの身体が一瞬、びくんと跳ね、そのままくたっと脱力したのが腕に伝わってきた。俺は、お嬢ちゃんの膝が床に付きそうになる前に、妙なるS字を描いている腰をしっかと支えてやる。
お嬢ちゃんの細腰を支え、尖りきった乳首をしゃぶりながら、俺は、後背からゆっくりと、それこそ指先で舐めるようにふくふくとした花弁を撫でさする。合わせ目に少しだけ指先を忍び込ませると、待ちわびていたかのように熱くとろとろの愛液がとめどなくあふれ出す。俺は故意にくちくちと音を響かせるように、指をうごめかす。
「すごいな、お嬢ちゃん…こんなに濡れて…」
俺を欲する想いをこんなにも熱く豊かに溢れさせてくれているのかと思うと、たまらなく嬉しい。愛らしいお嬢ちゃんがこんなに昂ぶる姿を見せてくれるのは俺にだけだと思うと、殊更に嬉しい。
俺の指は円を描きながら焦らすように花弁の合わせ目を遡り、肉の莢を探って触れた。ちょんと花弁から顔を覗かせているのであろうその愛らしい姿を想像しながら、俺はをゆっくりとその莢を指の腹で転がす。
「ひぅ…」
お嬢ちゃんが一瞬息を飲む、身体がしなやかに反る。その表情は、ますます、やるせなく切なげになっていく。
俺はお嬢ちゃんの愛液の感触を指先で味わうように秘裂をかき混ぜては、その潤みをまぶすように花芽の上で指を回す。
「ここも、こんなに固くして…お嬢ちゃんの全てが俺を欲しいと訴えているみたいだぜ…」
2本の指で花芽を摘んで軽く捻ったら、お嬢ちゃんの膝頭がびくびくと震えた。
「だめ…オスカー様…もう…立ってられない…」
「大丈夫だ、お嬢ちゃん、俺が支えてやる」
俺はお嬢ちゃんをぐいと抱き寄せ、隙間ないほどに抱きすくめた。しっとりと潤いに満ち、弾むような弾力の肌触りを全身で味わい、確かめるように。
すると、抱きしめた瞬間、お嬢ちゃんは俺の腕の中でびっくりしたように瞳を見開き、今まで以上に頬を朱に染めた。
俺の極限まで屹立したものが、お嬢ちゃんのなだらかなお腹あたりを叩いたからだろう。
お嬢ちゃんもはっきりわかってくれただろうか。俺が、どんなに熱くを君を求めているかを。
「オスカー様…」
お嬢ちゃんが霞みのかかったような瞳で俺を見上げた。
「もう…欲しいか?」
俺としては、まだお嬢ちゃんを愛し足りないが、お嬢ちゃんの望みは明白に思えた。
「欲しい…けど」
「けど?」
「…でも、私、まだ、オスカー様に何もしてさしあげてない…私もオスカー様に触れたいの…」
薄ら開かれた、赤く濡れた唇が酷く艶かしく妖しい。
「だから…私にもさせて…」
お嬢ちゃんは背伸びをして俺の首に腕を回し、きゅっとしがみつくように抱きついてきた。
「なら…ベッドに行こう」
俺はお嬢ちゃんの膝裏に腕を回してその身を抱き上げ、部屋の中央のベッドに向かった。
いつもなら、俺は抱いてきたお嬢ちゃんを寝台に横たえる。
が、今は、お嬢ちゃんを抱いたまま、俺はベッドの端に腰掛けた。
お嬢ちゃんが俺を愛撫したいと言ってくれるのなら、俺は座る方がお嬢ちゃんが楽だろうと思ってだ。
「オスカー様…」
お嬢ちゃんが俺の背に腕を回してくる。
「私のオスカー様……」
お嬢ちゃんが俺の胸板にほお擦りする。ほお擦りしながら、自然な仕草で胸板に小さな口付けを幾つも落としていく。
俺に抱かれたままでは動きづらいと思ったのか、お嬢ちゃんは少し身体をずらして、座っている俺の脚の間で膝立ちになった。俺の肩に手をかけ、自ら口づけてくる。
「ん…」
顔を少し傾げて、俺の唇を順次食んでから、お嬢ちゃんは、そっと探るように舌を差し入れてきた。
俺は黙ってお嬢ちゃんの舌を受け入れ、自らのそれを絡めあわせた。泰然としているように見えるかもしれないが、身体に震えが来るほどぞくぞくしている。
濃密な口付けの後、お嬢ちゃんは名残惜しげに唇を離すと、俺の首筋にそれを押し当てた。ふっくらとした唇が首筋を滑って喉仏をかすめ鎖骨を撫でていく。俺の肩口に幾度も口付けては軽く歯をたてる。肩にさらさらと触れる柔らかな髪が少しくすぐったい。
お嬢ちゃんの唇は自然と胸板に滑り降りていく。先刻は胸板全般に唇を当ててくれていたが、今度は明確な意図をもって、俺の胸の突起にお嬢ちゃんが口付けてきた。ちゅっと口付けてから、おずおずと舌を差し出し、先端を舌で左右に小刻みに弾く。ちょっと照れくさそうな顔でちらと俺を見あげたので、俺はその髪を優しく撫でる。お嬢ちゃんは安心したように、顔ごと俺の乳首の上で舌を回し始める。時折ちゅっと吸い上げる。決して巧みな動きではない、だが、お嬢ちゃんがどれほど懸命に一心に俺に口付けてくれているかは、ひしひしと伝わってくる。俺の胸中は痺れるような悦びに満ちていく。
「オスカー様の体中に口付けたいの…」
お嬢ちゃんは、先刻俺がお嬢ちゃんにしたように、俺の乳首を下から上へと舐め上げながら尋ねる。
「ああ、お嬢ちゃんの一途な気持が伝わってくる…」
俺の胸板に唇を行き来させる動きは、些かぎこちなくたどたどしい。だが、だからこその懸命さが伝わってくる。
「嬉しい…オスカー様、大好き…」
お嬢ちゃんは俺に抱きつくと、胸板にいとおしげにほお擦りしてきた。そのさまが、なんともいじらしく、かわいらしい。
と、思うとお嬢ちゃんは、濡れた瞳で、濡れた唇をうっすら開くと
「オスカー様に、うんと気持よくなって欲しいの…」
と、切々と訴えながら、臍にくっつきそうなほどに屹立している俺の怒張を小さな手でやんわりと握ってきた。
「お嬢ちゃん…」
俺の声は少し掠れていたと思う。お嬢ちゃんの髪から背をずっと撫でていた俺の手も一瞬止まってしまった。
「オスカー様…もっともっと気持よくなって…」
お嬢ちゃんは、流れるような仕草でベッドから降り、床の絨毯に膝立ちする形で、ベッドに腰掛けている俺の脚の間に己の身体を滑りこませた。そして、柔らかく手を添えていた俺の男根のその先端に、一種恭しい仕草でそっと口付けてきた。
俺のものは、とっくに臨戦態勢だったから、先端には先走りもにじみ出ていた。お嬢ちゃんは躊躇なくそれを舌先で掬いとると、ちゅっと吸い上げた。俺の背筋に痺れるような快感が走り抜ける。
そのままお嬢ちゃんの唇は、俗に言う亀頭の部分に、満遍なく、幾度となく口付けを降らしてきた。こそばゆいようなじれったい快感がこみ上げる。
と、お嬢ちゃんは一度口付けを止めて、愛らしい舌を差し出し、俺のものを根元から先端へと、じっくりと舐め始めた。もちろん一度では全体を舐めきれないから、お嬢ちゃんの舌は若干角度を変えながら、何度も上下を繰り返す。俺の脈動を確かめるかのように、浮き上がる筋を舌先でなぞるかのように、何より俺に愛らしくも淫らな舌の動きを見せ付けるように、殊更にゆっくりと俺の怒張を舐め上げる。
カリの部分の張り出しをピンクの舌が掬い上げる。茎の部分から先端まで軽く閉じた唇でつ…と撫でていく。
お嬢ちゃんの試行錯誤を示すような、俺の快楽を探るような愛撫が、俺には一層淫らに感じられてしまう。
「お嬢ちゃん…上手だ…」
すると、お嬢ちゃんが顔をあげ、耳まで真っ赤にして、つっかえつっかえ俺にこう尋ねた
「ほんと?…オスカーさま…気持いい?」
「ああ、すごく気持ちいいぜ」
「オスカー様…あの…もっと教えて?どこが…どうすればいいか…」
お嬢ちゃんは痛々しいほど真っ赤だった。俺はお嬢ちゃんの唇を指先で撫でてやる。
「心配しなくていい。お嬢ちゃんはとても上手だ、お嬢ちゃんの好きに愛してくれていい」
が、お嬢ちゃんはふるふると首を振る。
「だめ…だって、まだ、オスカー様が私を気持よくしてくださるのに全然叶わないと思うの…私も、オスカー様に私と同じくらい…ううん、それ以上に気持よくなっていただきたいの…だから…お願い、オスカーさま…」
お嬢ちゃんは真っ赤になりながら、必死な面持ちで訴えてくる。
…参る。
こんなことを、こんな瞳で言われたら、俺の方が今すぐ君を組み敷きたくなっちまう。俺もまた、君を気持よくしてやりたくてたまらないのだから。
「なら…こちらにおいで、お嬢ちゃん」
俺はお嬢ちゃんの手を取って立たせる。
「オスカー様…?」
俺は一度お嬢ちゃんに口付ける。
「君が俺を愛したいと思ってくれるように、俺も君を愛したいんだ、だから…」
俺はお嬢ちゃんの手を引いてベッドにあがらせ、自分は身を横たえると、身体の向きを互い違いにして俺の身体をまたがせた。お嬢ちゃんの濡れそぼった花弁が俺の眼前に咲いた。色濃く染まり、滴る蜜に彩られた花弁は、妖しいほどに絢爛と咲き零れる花そのものだった。
「オスカー様…や…これ…恥ずかしい…」
俺は構わず、もじもじしているお嬢ちゃんの内股に舌を這わせはじめた。
「ひぁ…」
「でも、一緒に気持ちよくなれる…」
少しづつ、俺の舌はお嬢ちゃんの花弁へと近づいていく。この愛らしい花弁を、その奥で愛撫を待ちわびているであろう花芽と宝珠を、存分に舐め転がしてやりたくて、俺ももう限界だった。
俺の舌先が花弁を割った。鮮烈な愛液の味とお嬢ちゃん自身の香りが胸一杯に迫ってきて、くらくらする。
「あ…あっ…」
「さ、お嬢ちゃんも…俺のものを含んでごらん?」
「あぁ…オスカー様…」
お嬢ちゃんの手が一瞬俺のものをいとおしげに玩んだ。しなやかな指が茎に絡みつき、やわらかな唇が男根全体を滑るように撫でていく。
そして唇が先端にたどり着くと、お嬢ちゃんはおずおずとした仕草で、俺の物を口腔に含んでいった。
「そう…唇を少しすぼめて…軽く吸いながら…舌全体で俺のモノを包むように…」
「んんっ…」
「そのまま、ゆっくりと唇を上下させて…」
「ん…んふっ…」
お嬢ちゃんの願う通り、俺は、愛撫の仕方をレクチャーする。お嬢ちゃんの気持が嬉しいし、お嬢ちゃんが俺に気持ちよくなって欲しいと思ってくれているのなら、きちんと教える方が、お嬢ちゃんも嬉しいだろうと思うからだ。
そして、実際、お嬢ちゃんは素直に俺の言葉に従う。それはもう、本当に一生懸命に、一心に俺のものを愛撫してくれている。俺に気持ちよくなって欲しいという気持がストレートに伝わってくる。
俺も同じだ、お嬢ちゃんに同じように、いや、それ以上に気持ちよくなってもらいたい、さっき、君が言ってくれた事と同じことを俺も思っている。
ふっくらと柔らかな唇に包み込まれ、暖かな舌がねっとりと自分の性器に絡みついてくるえもいわれぬ官能に陶然としながら、俺は舌を思いきりつき出して、お嬢ちゃんの潤びる秘裂に差し入れた。そのまま、尖らせた舌先を幾度も抜き挿しし、柔襞を舌で掻き回す。
「んんんーっ…」
お嬢ちゃんがたまらないといった風情で俺のものを咥えたまま、軽く頭を振った。
「う…」
先端が口蓋に擦れて、俺も思わずうめき声をあげてしまう。
お嬢ちゃんは俺が感じた気配を察したのか、俺のモノを口に含んだまま、ゆっくりと頭を軽く振った。そこに上下の動きも加えてくる。お嬢ちゃんの動きが少しづつリズミカルに迷いのないものになっていく。
「お嬢ちゃん…本当に上手だ、すごく気持いいぜ」
お嬢ちゃんの秘裂を存分に舌で犯しながら、俺は途切れ途切れに言う
「うれし…オスカーさま…もっと…いっぱい…気持よくなって…」
お嬢ちゃんは俺のものを一度口から離すと、濡れて滑らかな先端を掌でくるくると愛撫してから、茎全体を掌でしごく。根元にたどり着いた手は、俺のふぐりを不思議そうに玩びはじめた。
「オスカー様…ここは?ここも気持ちいい?」
「そこは…そうだな…ここをこんな風にされる感じに近いかもな」
俺はふくふくとした花弁を指先で軽く揉むように愛撫した。
「きゃん…くすぐったい…」
「そう、穏やかに心地良いというか…触れても、ここみたいには…」
俺は、お嬢ちゃんの花弁を大きく押し広げて、莢の下に宝珠をむき出しにすると、それを舌先で縦横に弾いた。
「ふぁっ…」
お嬢ちゃんが背をくっとしならせる。
「鋭く、激しい快感は生じない」
俺は、羽のように軽い触れるか触れないかという力加減で宝珠を指先でくすぐりながらお嬢ちゃんに教える。
「ひぃんっ…」
「だが、同時に愛撫することで…もっと気持よくなれる…」
俺は、花弁全体を手で柔らかく揉むように撫でさすり、同時に宝珠を口に含んで吸いながら、固くしこりきっているその先端に舌を回した。
「あぁあああっ…」
俺は花弁をくにくにと揉んでは秘裂に指を抜き挿しし、執拗に丹念に宝珠を舌先で転がし続けた。勃起しきった肉珠のこりこりした感触がたまらなく舌に心地よく、また、いとおしくてならない。
お嬢ちゃんの手は無秩序に俺のふぐりを玩び、かわいい唇で俺のものを懸命に咥え込もうとしては、やはり無秩序に口付けを降らすのが精一杯になってしまっている。俺がお嬢ちゃんにしているように、同時に2つの部分を愛撫しようとして、募りゆく快楽に上手くそれを果たせずにいる。それだけ俺の与える快楽が大きいというのも嬉しいし、それでも、俺を愛そうとしてくれるお嬢ちゃんの気持が、また、たまらなく俺の心を揺さぶる。
「お嬢ちゃん…もう…俺は、お嬢ちゃんのかわいいここに、挿れたい…」
お嬢ちゃんから「欲しい」と言わせるつもりだったのに、花弁全体に唇を押し当てながら、自然と俺の口をついて出たのは我ながら気恥ずかしくなるほどストレートな欲望の言葉だった。
「お嬢ちゃんは…俺が欲しくないか?」
お嬢ちゃんが俺のものをやんわりとしごきながら、こくこくと頷いた。
「はい…オスカー様……私も…もう…」
「なら…そのまま君の手で俺を導いてくれ…俺は君のもの、君1人のものだから…」
「ああ…オスカー様…」
お嬢ちゃんは僅かに上体を起こして少し身体をずらし、俺のものに手を添えなおすと、俺に背を向けたままの形で、ゆるゆると俺のものの上に身体を落としていった。
俺のものがお嬢ちゃんの熱くきつく潤みきった媚肉を押し広げては、徐々に包みこまれていくのがよく見える。
「お嬢ちゃんの中に俺が入っていってるぜ。お嬢ちゃんを押し広げて…」
「やん…恥ずかしい…」
俺の言葉に昂ぶったのか、お嬢ちゃんの媚肉が俺のものに絡みつくように蠢く。
更に挿入していくほどに、豊かな愛液が押し出されて溢れて来、俺のものを淫らな艶で彩っていく。きゅっとすぼまった入口が容赦なく進入していく俺のものを締め付けてくるのがわかる。その痛いほどきつい部分を抜けると、ほんわりみっしりと柔らかな媚肉が男根全体を密に包み込んでくる。
俺のものが根元を僅かに残してお嬢ちゃんの内に収まりきった。先端がことんと弾力のある最奥にあたる感触があった。
お嬢ちゃんは少しだけ苦しげで、でも満足そうな吐息をついた。
「…オスカー様…私のオスカー様…」
「ああ…俺は…俺の何もかも、一人お嬢ちゃんだけのものだ…」
俺はお嬢ちゃんの腰をぐっと掴んで支えると
「お嬢ちゃんの何もかもが俺のものであるように…」
という言葉とともに、勢い良く、腰を突き上げた。
「あぁああっ……」
そのまま間をおかず、リズミカルに俺は腰を突き上げる。お嬢ちゃんの身体が俺の上で激しく上下に揺さぶられて踊る。
「あっ…あんっ…はっ…」
お嬢ちゃんがやるせなげに首を振る。白くしなやかな背中に金の髪が綺麗に広がる様は、黄金の翼のように美しい。
俺はお嬢ちゃんの腰をしっかと支えてはいる。が、ベッドのスプリングのせいで、どうしてもお嬢ちゃんの身体が多少浮き上がってしまう。じれったい。もっと思いきり奥まで突いてやりたい。俺はお嬢ちゃんの指と俺の指を固く絡み合わせると、お嬢ちゃんの腕を半ば後ろ手にぐっと引き寄せながら、改めて思い切り腰を突き上げた。
「ひぁああっ…」
俺に腕を引かれた以上にお嬢ちゃんの身体がのけぞり、小刻みに震えた。きっと俺のもので身体の中心まで貫かれたような気がしたのだろう。
「あっ…あぁっ…はっ…あぁあっ…」
「気持いいか?お嬢ちゃん…」
「んっ…いい…いいの…あっ…あんっ…」
お嬢ちゃんが官能の悦びにその身を震わす程に、君をもっとよくしてやりたい、もっと狂わせてやりたいと、狂気のような熱情が沸き返る。
俺は衝動的に身体を起こすと、お嬢ちゃんの背を俺の身体で軽く押さえつけるような形でベッドにうつぶせにさせた。
すべすべと滑らかな背中を見ながら、俺はお嬢ちゃんの腰に手を添え、高々とお臀を持ち上げさせる。
真っ白で張りのあるお臀の中央に咲き誇る濃い紅色の花の美しさに、そのコントラストの妙に、一瞬、魅入られる。
「ぁ…ん」
すると、お嬢ちゃんが、焦れているのか、恥ずかしがっているのか、かわいいお臀をもじもじさせる。
俺はお嬢ちゃんの腰を支えながら、背中に身体ごと覆いかぶさり、滑らかな背筋のくぼみにすっと唇を滑らせた。
「はぁっ…ん…」
お嬢ちゃんが軽く瞳を閉じて、くっ…と顎をあげたのがわかった。俺を待っているのがわかる、艶かしい美しい仕草だった。
俺はお嬢ちゃんの真っ白なお臀となだらかな曲線を描くすんなりした背中に惚れ惚れと見惚れながら、蜜を滴らせている花弁に怒張しっぱなしのものをぐっと押し付けた。
瞬間、お嬢ちゃんの腰がじれったげに動いた。すかさず、俺は思い切り突きいれ、突き上げた。
「あぁあああっ…」
お嬢ちゃんの背が綺麗な弧を描いて反った。
俺はお嬢ちゃんの腰が逃げぬよう、しっかと支えなおしてから、思い切りよく、ぱんぱんと腰を打ちつけた。背の肉壁を先端で擦り上げるように突きいれ、勢いを保ったまま最奥を叩く。先端が小気味よく弾かれる。カリで柔襞をこそげる勢いで引き抜いては、再び、渾身の力で突き上げる。律動をくりだす度に張りのあるお臀に俺の腰は跳ね返されるようだ。
「あぁっ…あっ…すごいの…すごく…奥まできて…あ…あぁっ…」
「お嬢ちゃんも…熱くてとろとろで…たまらないぜ」
俺は、背後から、重たげに揺れているお嬢ちゃんの乳房を些か乱暴に掴み、俺を挑発するような乳首を指先で摘んで捻った。もちろん、突き上げの勢いは緩めない。
「ひんっ…」
俺が尖りきった乳首を捻るたびに、秘裂の入口が更にきゅっとすぼまり、更に俺の怒張を絞めつけてくる。
「お嬢ちゃん、こんなにいやらしい格好で、きゅうきゅうと俺を締め上げて……すごく喜んでいるのがわかる…」
「あぁ…は…ず…かし…」
「俺は…嬉しい…お嬢ちゃんがこんなに喜んでくれて…」
すると、お嬢ちゃんが荒い息を押して、懸命に俺の方に顔をむけようとしてきた。
「…オスカー様…は?…」
「!…ああ…俺も…お嬢ちゃんの中で溶けちまいそうだ…」
「嬉…し……」
そんなかわいいことを言われたら…俺は…
「もっともっと、君を喜ばせてやりたい…」
俺は乳房から手を離して腰をしっかりと支えなおすと、お嬢ちゃんの身体が一瞬宙に浮きそうになるほどの勢いで思い切り突き上げた。
「くふぅっ…ふぁああっ…」
俺は、ただひたすらに、渾身の速さと勢いでお嬢ちゃんのお臀に腰を打ちつける。
力強い律動をたたきつけても、俺がしっかとお嬢ちゃんの腰を支えているから、勢いは逃げない、お嬢ちゃんは全身で、俺の渾身の攻めを余すところなく受け止め続けてくれている。限りない熱さ、豊かさ、優しさで。
「はっ…あっ…あぁっ…だめ…私…もう…」
俺は自分の指先をお嬢ちゃんの口元に運び、うっすらと開いている濡れた唇にあてがった。
「ふぁ…」
お嬢ちゃんは朦朧とした瞳で、半ば無意識に、なのに一心に俺の指を咥えてしゃぶろうとする。
「お嬢ちゃん…」
君がかわいらしすぎて、いとしすぎて、俺の頭はおかしくなりそうだ
この…溢れかえる愛しさをどうすればいい、渾身の力でぶつけずにいられない、そんな闇雲な衝動が俺を突き動かす。
「愛してる…たまらなく…」
俺は、自分を引き抜きざま、お嬢ちゃんの身体を唐突に表に返し、力いっぱい抱きしめた。
「オスカー様…私も…好き…大好き…」
お嬢ちゃんも引き寄せられるように俺の身体にきゅっと抱きついてくる。荒い呼気を押して愛の言葉を訴えてくれる。俺を見つめる瞳の底には確かに情欲の焔を揺らしていながら、その輝きはどこまでも美しく澄んで、あどけなく愛らしい。
俺もお嬢ちゃんの身体を思い切り抱きすくめたまま、噛み付くように口付ける。
そして、お嬢ちゃんの膝頭をぐっと押さえ込むと、怒張を思い切りねじ込むように一気に貫いた。
「あ…ああぁっ…」
俺はお嬢ちゃんの膝頭をその身に押し付けるように腕に力を込める、脚を押さえ込んだ分だけお嬢ちゃんの腰が浮き上がる。俺のものがお嬢ちゃんに出入りしている様が手にとるようにわかる。その淫靡な光景に、俺はますます奮い立つように肉壁を思いきり擦り上げる。子宮口を先端で叩くような勢いで、渾身の力で腰を打ち据える。
まだだ、まだ、足りない、寸分の隙もなく繋がりたい。
俺はお嬢ちゃんの上に倒れこむと、その身体をしっかと抱きしめ、乳房の先端を唇で捉えてきつく吸い上げながら、遮二無二律動をくりだす。
「んっ…あぁっ…も…はぁっ…あっ…あんっ…」
お嬢ちゃんは嫌々とも頷くとも取れない無秩序さで首を振る。嫋嫋とした啜り泣きを零し始める。びくびくと膣壁全体が痙攣するように震え始めたのを俺のものが感じた。
「あ…ああぁっ…オスカーさまぁっ」
瞬間、俺のもの全体が絞り上げられるように、締め付けられた。うねるように奥へと引きこまれる感触に伴い、さざ波のような快楽が次第に大波となって背筋を駆け上り、頂点で砕けちった。
自身がお嬢ちゃんの中に逆巻き、雪崩れ込み、限りない優しさで受け止められる。
が、俺は、その快楽に身を任せるよりも、お嬢ちゃんの忘我の表情に見惚れていた。
快楽の頂点に意識をたゆたわせるお嬢ちゃんの表情は…少し苦しげなのに、うっとりと夢見るようでもあり、濡れた唇は譬えようもなく艶かしくありながら、その唇が形作る幸福そうな微笑は、この上なく清らかに感じられた。限りなく艶冶で、聖らで、美しく愛らしかった。お嬢ちゃんのこの表情は、正真正銘、俺だけのもの、俺だけの宝物だった。
俺は、お嬢ちゃんの頭を抱え込むようにして、幾度も幾度も口付けを降らせた。
互いに荒い呼気が漸く治まった頃、
「やっぱり、オスカー様のお肌も、いつも以上に触ってて気持よかったです…」
俺の胸に頭を預けていたお嬢ちゃんが、その俺の胸板をさすさすと撫でながらポツリとつぶやいた。
「…なのに、やきもちなんて妬いたりして、私ったら、本当におばか…」
「そうか?俺は、やきもちのおかげで、とても積極的なお嬢ちゃんと愛し合えて、収穫だったがな?かわいいやきもちは、全く美味なるスパイスだったぜ」
「やん…」
「そうだ…それに、女の子は…砂糖とスパイスと、そのほかステキなもの全部でできているって歌がなかったか?まさに今日のお嬢ちゃんにぴったりの。君は元々、存在自体が砂糖菓子みたいに甘い。だから、ちょっとしたやきもちは、君の魅力をより引き立てる格好のスパイスだったぜ。おかげで俺も大層美味しい想いをさせてもらえたしな」
俺はばちんとウインクした。
「もう、オスカー様ったら…」
お嬢ちゃんはかわいくくすくすと笑った。
「私もその歌、聞いたことがあります、確か男の子は…カエル?と…」
「カタツムリ、それに子犬のしっぽ、そういうもので できてる…そんな歌じゃなかったかな?」
俺も微笑みながら答える。
「オスカー様も?」
お嬢ちゃんが小首を傾げて悪戯っぽく笑った。
「それは…君が自分で確かめてみてくれ」
「うふふ、子犬ってことはないですよね?オスカー様なら、きっと狼さん?」
「俺は君にとって狼か?」
俺は笑いながらわざと大仰に《心外だな》という顔をした。
「だって、狼って強くて逞しくて賢くて、その上、とっても愛情深い、優しい生き物だって…だから、オスカー様にぴったり、うふふ…」
そういうとお嬢ちゃんの方が、子犬のように俺の腕を捕らえてじゃれついてきた。
「参ったな…」
俺はきっと心底嬉しそうに笑ったことだろう。
「ところで…そろそろ飯にしないか?腹が減っただろう?」
「あ、はい…そういえば、お昼、いただいてませんでしたね」
「ルームサービスを取ろう。君は少し眠るといい。料理が来たら起こしてあげるからな。手入れ中、ずっと俺のことを気にかけて、今日はあまりリラックスできずにいただろう?」
俺は一人身体を起して、お嬢ちゃんにはそのままベッドにいろという意味合いで髪を撫でた。
「あ、はい…じゃ、お言葉に甘えて、少し休ませていただきます」
「そうだ、今のうちに休んでおかないと、後でまた狼がスパイス入り砂糖菓子を食べに行くかもしれないからな?」
「うふふ…オスカー狼さんになら、いつでも好きなだけ召し上がっていただきたいです…きゃん」
自分で言って自分で照れて、お嬢ちゃんはベッドの上掛けの中にもぐってしまった。
俺はくすくす笑いを堪えるのに苦労しながら、ルームサービスのボタンをプッシュした。
これだから俺は、昨日よりも今日、今日よりも明日、君を好きになっていくんだな、と思いながら…
FIN