片翼〜灼熱〜 2                                               

オスカーはアンジェリークをそっとベッドにおろすと、自分も隣に座り、アンジェリークについばむようなキスを繰り返し与えつづける。

手は夜着にかけられ、徐々に肩を露にしていく。

白い肌が現れるにつれて、唇も徐々に、肌の方へ動いていく

うなじから首筋へと何度も舌を往復させ、アンジェリークが切なげな吐息を漏らすところで唇を止めてはきつく吸い上げる。

前回の情事の際、自分とジュリアスどちらがつけたものか、うっすらと跡が残る肌に、あらたに自分の所有の証を残して行く。

恐らく自分の不在にジュリアスがこの肌を愛でるのだろうと思うと、わざと情事の痕跡を残したくなる自分に気付く。

『我ながら度しがたい・・』

納得づくで始めた関係なのに、いつもジュリアスの目を意識している自分がここにいる。

二人でアンジェリークを愛しているときも、つい、躍起になって、アンジェリークに声をあげさせようと、惨いまでに苛んでしまう。

『俺の愛撫で、俺のもので君がよがり乱れるさまをジュリアス様にみせつけてやりたい・・』

しかし、それは多分ジュリアスも同じなのだろう。

普段のジュリアスからは想像できないような淫らな言葉でアンジェリークを追い詰め、その指と舌でアンジェリークを狂わせて行く様は

多分に自分を意識してのものだろう。

お互いに、よりアンジェリークを乱して、自分を、自分だけを感じさせたいと、切に願う。

どちらがより多く、アンジェリークの心に自分を住まわせられるか、瞬間瞬間で競い合う。

勢いアンジェリークは、間断ない快楽の嵐に翻弄されつづけることになるが、

それでも、アンジェリークはひるむことなく自分たちを受け入れ続ける。

二人のどんな要求にも、臆することなく応じ、より一層の情熱を持って応える様は、痛ましいほどにけなげだった。

その姿からは二人から下される審判を従容としてうけいれる聖女の趣さえ感じられた。

無数の女と体を重ねてきたオスカーだったが、アンジェリークを知れば知るほど、抱けば抱くほど、手放せなくなっていく。

比喩でなく宇宙最高の女を手に入れたとオスカーは思う。たとえそれがこの一瞬の刹那であっても・・・

そして、今の二人の逢瀬もまた刹那だ。

刹那と解っていても、追い求めずにはいられない。

人はこのように刹那の時間を切り離し、積み重ねて生きていくのだろうか。また次の刹那を心の支えにして。

『それなら・・』

いま、二人だけの時間を持てる今だけでも、ジュリアスの視線から逃れ、ジュリアスの呪縛を感じず、アンジェリークを愛したい。

自分だけをアンジェリークに感じさせたいと、オスカーは思う。

それはとても難しいことだったが・・・

 

オスカーに肩を露にされながら、アンジェリーク自身もオスカーのドレスシャツに手をかけ、もどかしげにボタンをはずして行く。

はだけたシャツの隙間から小さな手をすべりこませ、、オスカーの存在を確認するかのように、厚い胸板をなでさすりながら、上半身を露にしていく。

逞しい胸元からオスカーの香りが立ち上り、アンジェリークを包みこむ。

香りと言うものは、人に体感的な記憶を呼び起こす。

オスカーの香りに包まれるうちに、以前の情事がまざまざと脳裏によみがえり、アンジェリークの体が熱を帯びて行く。

その熱さに突き動かされるように、オスカーの背に腕を回して縋りつく。

自分の肩に舌を這わせているオスカーの緋色の髪に指を埋めて、オスカーを自分の方へ引き寄せる。

もっとオスカーに触れたくて、もっと近くに、オスカーを感じたくて。

だが、オスカーの舌は首筋から鎖骨のくぼみ、なだらかな稜線を描く胸元までを縦横に這い回っているが、其処から先に進まない。

手は、夜着の上から豊かな乳房を柔らかく揉みしだいているだけで、乳房を露にする気配もない。

オスカーがやわやわと乳房を揉むにつれ、立ちがりかけた乳首が薄い夜着にこすれて、甘い痺れが、全身に広がりつつあると言うのに・・

今夜のオスカーにはいつもの情事でみせる性急さが全くなかった。

普段のオスカーは、息次ぐ間もなく、次ぎから次ぎへと鋭い快感をアンジェリークに与えつづけ、否応無くアンジェリークを官能の渦に叩き込んで行く

その間断無い快楽に無理やり慣らされ、いつしかそれを当然のこととして受けとめてきた体は、この穏やかな愛撫にもどかしさを禁じえない。

もっと、めちゃめちゃにして欲しい・・なにもかも忘れるくらいの快楽で翻弄されたい・・

そんなことをつい考えてしまう自分に気付き、アンジェリークは愕然とする。

なんと、自分は変わってしまったのだろうと。何もかも忘れられる瞬間がないと、自分は生きていけないのだろうかと。

そして、この思いの行きつく先はいったいどこなのだろうと。

『・・でも・・・・これが、本当の私・・だから・・いいの・・お二人と生きていくと決めたのは私自身なのだから・・』

そう、自分で決めた事への責任は自分が背負って行くしかないことを、アンジェリークはよくわかっていた。

そして、その、自分の重荷をともに担って、支えてくれているのが、目の前の愛しい男であることも。

アンジェリークは、自分の心のままにオスカーを求めることを、心に決めた。

 

オスカーは、はやる心を無理やり押さえつけ、アンジェリークの白い肌をねぶるように味わっていた。

今すぐアンジェリークを全裸にして、体中に所有の証を刻みたい。

乳房を形が変わるほど揉みしだき、その先端をきつく吸い上げ、嬲りたい。

アンジェリークの股間を極限まで押し広げ、溢れでる愛液を舐め尽くしてしまいたい。

そんな狂暴な思いで、心の中は嵐が吹き荒れていた。

しかし、その一方で、ジュリアスのいない今くらい、思う存分白い肌を隅々まで味わい尽くし、無理やり追い詰めることなく

アンジェリークを官能の海に漂わせてやりたいと、思っている自分もいた。

この二人の夜を性急に終わらせてしまいたくないという思いと、自分だけで思うさまアンジェリークを苛んで、

その口から自分だけの名を狂ったように叫ばせたいという、相反した思いに、心は千々に乱れ、引き裂かれていた。

その、迷いが、オスカーの愛撫をより、煮え切らないものにしていたともいえる。

その迷いを吹っ切ったのは、アンジェリークの一言だった。

「オスカー様・・もっと・・激しく愛して・・」

オスカーが顔を上げ、アンジェリークを見つめる。その瞳は熱に浮かされたように潤んでいるが、しっかりと、オスカーを見つめ返していた。

「・・いいのか?お嬢ちゃん、そんなことを言ったら・・俺は自分を押さえられなくなる・・優しくなんてできないぜ・・」

「いいの・・オスカー様。優しくなんてしなくていいの。だから・・・オスカー様のことしか、考えられないようにして・・」

こう言って、アンジェリークはオスカーの首筋に口付けると、きつく吸い上げて、うっすらと、跡をのこした。

それはアンジェリークが印した契約の証のようだった。

その瞬間、オスカーの心の枷が外れた。

アンジェリークはオスカーに心の全てを埋めてほしく、オスカーは自分の事だけをアンジェリークに感じて欲しく、

お互いの心が求めていたことが同じだとわかって・・

オスカーははじかれたようにアンジェリークに覆い被さり、二人は勢い良くベッドに倒れこんだ。

アンジェリークの手を一まとめにしてベッドにきつく縫い付け、噛みつくように口付けると、荒荒しく舌を侵入させて行く。

口腔内を思いきり蹂躙しながら、もう片方の手で、夜着を一気に引き剥いだ。無理な力を加えられた衣が悲鳴をあげて引き千切れる。

白いからだのそこここに衣の残骸が纏わり付き、その眺めは全裸のときより、より一層扇情的で、オスカーの心も体も熱くする。

自分のものが痛いほど張り詰めて行き、オスカーは手早く残りの服を脱ぎ捨てて再度アンジェリークを組み敷いた。

アンジェリークの乳房を絞るように揉みしだいて先端を際立たせ、乳輪ごと口に含むと、乳首の輪郭を舌でなぞる。

口の中で固く立ちあがっていくその感触を楽しみながら、なおも、乳首を舌先でつつき、転がし、舐めあげては、

跳ねかえるような弾力を心ゆくまで味わう。

その固さを確かめたくて、軽く歯をたてると、アンジェリークが甘い声をあげて背をしならせる。

「ああんっ・・」

もっとアンジェリークに声をあげさせたくて、オスカーは乳房を激しく捏ね回しながら、両の乳首を交互に甘噛みする。

「あんっ・・あっ・・んっ・・くぅん」

アンジェリークは乳房がオスカーの唾液で濡れて光るほど愛撫されてから、今度は体を裏返され、うつ伏せにされた。

その背中にオスカーが覆い被さってきた。

金の髪をかき分けて、うなじに唇を当て、きつく吸い上げ、舌を這わせる。

そのまま舌を、肩から、肩甲骨、背筋からわき腹と、あちこちに移動させながら、ところどころに、紅い花を散らして行く。

「ああっ・・あぅん・・んくぅ・・」

アンジェリークの声が艶を帯びるところには、特に念入りに舌で舐めあげる。

手をアンジェリークの背中から重たげに揺れる乳房に伸ばし、尖った先端を大きな掌ですりあげながら、激しく揉みしだく。

舌と唇で背中を嬲るうちに、アンジェリークの腰が自然に持ち上がってゆき、ゆらゆらと揺らめいて、妖しくオスカーを誘う。

それを見たオスカーはわき腹に這わせた舌を休ませることなく、手を臀部のほうからアンジェリークの股間に伸ばして行く。

申し訳程度に股間を覆い隠している布地の上から、ふっくらと豊かな秘唇の部分をなであげると、そこはもう布の上からでもはっきりわかるほど

愛液に溢れかえっていた。

下着が愛液にまみれて秘唇にべったりとはりつき、布の上からでも秘唇の形状が透けて見えそうだ。

オスカーは布の上から、秘裂にそって指を上下させた。くちくちと、湿った音が響く。

「あぁんっ・・」

「すごいな、お嬢ちゃん、もう、こんなになって・・まるで、洪水だぜ・・」

オスカーは下着の上から、なでさするだけで、直接その部分に触れようとしない。

アンジェリークは焦れて、腰をさらにオスカーのほうに突き出してしまう。

「やっ・・そんな・・上からじゃなくて・・」

「どうして欲しいんだ?お嬢ちゃんは・・」

答えのわかりきった問いを、オスカーが投げける。アンジェリークに選択の余地はない。

「脱がせて・・直接触って・・オスカー様の指で・・」

オスカーの瞳が酷薄そうに細められる。青白い焔が燃えているように、瞳は強い光を放つ。

「しょうがないお嬢ちゃんだな。すぐ我慢できなくなって・・」

オスカーがこう言いながら、アンジェリークの下着を脱がせた。取り去られた下着から愛液が糸を引く。

オスカーは中指と薬指を秘裂の入り口にあてがってから、ふっくりとした秘唇をなでさすった。愛液に塗れたそこはまったく摩擦を感じさせない。

そのまま、襞を指でかき分けていくように、徐々にこする速度を早めて行く。

「あっ・・あん・・んっ・・」

アンジェリークの腰がさらにたかだかと持ちあがる。その一方で、金の髪をシーツに散らし、小さな顔は苦しげな表情でシーツにこすり付けられる

オスカーは乳房から離した手も股間に伸ばし、秘唇をこすりながら、その上方に息づいている花芽を探り当てると、その部分をきゅっと摘んだ

「ああっ!」

アンジェリークの体がびくりと跳ねた。オスカーの指からのがれようとするかのように腰が引けるが、オスカーはそれを許さず、花芽を離さない。

「お嬢ちゃん、ここもさわってほしいか?俺の指で・・」

オスカーが優しく囁きかける。

「さわって・・オスカーさま・・・」

快楽への期待に声を上ずらせ、ためらうことなくアンジェリークが答える。

オスカーは端正な唇を綻ばせ、花芽を摘んだまま、その指を円を書くように動かし始めた。

もちろんもう片方の手は休まず秘唇にそって上下している

オスカーの指の動きに花芽が固くしこり、ぷくりと立ちあがる。愛液は尽きることなく溢れだし、オスカーの大きな手全体を濡らして行く

オスカーは突き出したアンジェリークの臀部の中心に紅々と咲き誇り、自分の愛撫に蜜を滴らせている花を視姦する。

自分の指に弄られている花芽は紅く艶やかに輝き、オスカーにもっと触って欲しいと自分の存在を主張しているかのようだ。

幾重にも重なる花びらは自分が零した蜜に濡れそぼってひくひくと蠢き、早くここに来て欲しいと、オスカーに誘いかける。

その、妖しい誘いに抗いきれず、オスカーは蠢く襞の中心に、秘唇を撫でていた二本の指を飲み込ませていった。

指を軽く曲げて、あちこちの肉壁こすりながら、アンジェリークの乱れる部分を探る。

「あああっ!」

オスカーの長い指が奥の一点を突いたとき、アンジェリークが一際高く鳴いて、秘裂がきゅっとすぼまった。

オスカーは口の端を軽く上げると、その一点を狙って、激しく指を突き入れる。もう片方の手は飽くことなく花芽を弄りつづけている。

「あっ・・あぁっ・・くぅっ・・んっ・・はぁっ・・」

アンジェリークが身も世もなく乱れて腰を蠢かし、体中が紅潮していく。手は掴むものを求めて、シーツの海をさまよっている。

「こんなに腰を振りたてて、俺に弄ってもらってそんなに嬉しいのか?」

オスカーが手を休めることなく、アンジェリークを言葉で嬲る。

「あっ・・あぁっ・・オス・・・さ・・ま・・好き・・好きなの・・だから・・」

「ふっ・・お嬢ちゃんは、かわいいな・・じゃあ、もっと気持ち良くしてやろう」

オスカーは指を秘裂から引き抜いた。アンジェリークの襞が名残惜しげに指に絡みついてくる。

突然の喪失感に、アンジェリークはたまらなく不安になり、後ろを見ようとしたとき、オスカーの生暖かい舌が、秘裂を舐めあげた。

「ひゃぅっ!」

アンジェリークが秘裂から走りぬけた快感にまた、シーツに突っ伏してしまう。

オスカーは後ろからアンジェリークの足を大きく開かせ、秘裂に舌を深くさしこんできた。

秘裂の中で舌を縦横に動かし、肉壁全てを味わおうとする。

自分の内部で妖しく蠢く肉の感触にアンジェリークは更によがり狂い、嫋嫋たるすすり泣きをあげ始めた。

「あぁっ・・やぁっ・・・くはぁっ・・」

「いい声だ・・もっと鳴いてくれ・・」

オスカーはこう言うと、アンジェリークの体を表に返し、今度は前方から股間に顔を埋め、今まで指で嬲っていた花芽を舌で舐め上げた。

固くしこった花芽の弾力を確かめたくて、何度も歯を立てると、そのたびに腰がびくんとはねて、悲鳴にもにた喘ぎ声が上がる

「あああっ・やあぁっ・・・だめぇっ・・」

余りに激しい快楽は苦痛と表裏一体となって、アンジェリークを責めさいなんだ。

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