百神の王 16

その時、オスカーが感じたのは、何故か、強い既視感だった。

俺は、知っている。この空気、この雰囲気…あからさまではないが、俺の出方を、反応を伺うような思わせぶりな態度、俺の力量を探るような瞳…

「!」

これは…以前の…出会って間もない頃のアグネシカだ、とオスカーは思い当たった。

新参の世話係り…そう、ここに来た当初の俺は、神馬にとって、それだけの存在だったろう。対等のパートナーなどではありえず、ましてや、俺の指示に唯々諾々と従うなど考えられない。世話をされてやってもいいかどうかさえ、馬に値踏みされていたような気がする。

だが、一方で、俺がどれ程の器量のものか…自分を御する力があるなら、それを見せてみろ、と、今思えば、アグネシカは常に俺に問いかけていたような気もする。つまらない者の言いなりになる気は毛頭ないが、それだけの力があると認めれば、自分は喜んでおまえの指示に従ってやろう、とでも言いたげな。だから、アグネシカは、時折、値踏みするように俺を見、俺の出方を伺うように振舞うことがあったーわざと俺を無視したり、あからさまに指示と反対の方向に進んだあげく、俺の顔色を窺ったりー俺の力量や可能性を測ろうとしてのことだったのだろう。

そして、今、俺は同じ空気を、視線を聖娼たちから感じている…。

ということは、彼女たちは上から俺を「導き教える」存在から「俺の器を測る」存在に変貌したということだ。俺の男としての器量を推し量ってやろう、俺の器量がどれ程のものか見極めてやろうというような雰囲気がじわりと伝わってくる。

だが何故、今、急に…。

オスカーは、先刻まで彼女達と交わした言葉の数々を思い返す。

彼女達の雰囲気が急に変わったのは…そうだ…何故、俺が子供のように聞きたがりなのか、逆に問われた後だ。そして、俺は問われるままに、光の女性への思慕を匂わせた。上手い言い訳をとっさに思いつかなかったことと、別段、隠す必要も感じられなかったからだ。俺のアンジェリークへの想いは、多分、言葉の端々ににじみ出たことだろう。

それが、聖娼たちのプライドを刺激したのだろうか。

俺は1人の光の眷属の女性に心奪われている、だから、目の前の聖娼たちに俺は指1本触れずにきた。

しかし聖娼たちは、光の女性の一種の理想形、象徴であり憧れの存在だーただし女神を除きー。そんな自分たちを差し置いて、聖娼ではない光の女性に俺が心奪われていることが、彼女たちの矜持をいたく傷つけたのだろうか…俺が恋い焦がれている女性が至高の女神であることを彼女達は知らないのだから…。

オスカーは、聖娼たちの意図と考えを探るため、無礼なことと知りつつ、わざと挑発するような問を投げてみることにした。

「あなた方は、参詣者の欲するものを与えるはずだな?だが、俺は…あなた方に身体の慰めを求めていないことは、先刻承知のはずだ。なのに、何故、今更、俺に、あなた方を抱けという?俺が欲しているのは…ある1人の光の女性、その人だけだ。俺の望みはその女性と心を通いあわせることだけだというのに…」

聖娼たちは、ゆったりとたゆたうように、笑みを交わしあった。さながら水に浮かぶ睡蓮の花のように玄妙に美しく、ゆらゆらと捉え所なく。

「そうね、だから、オスカーは、光の女性のことを色々知りたがっていたのですものね」

「オスカーは、ある光の女性を特別に思っているから」

「だからこそ、オスカーは、女の、言葉だけでは伝えられない部分も知っておいた方がいいと、私たちは思うの」

「?…なぜだ?…あなた方を抱いても、俺は、彼女の気持を測れるようになるとは思えない…彼女と心を通い合わせられるようになるとは思えない…だから…」

あなた方は「女神の妹」ではあっても、俺の欲する女神その人ではないのだから。第一、あなた方からは、アンジェリークが時折漂わせた憂愁のような物を感じられない、あなた方は、どこまでも誇らしく、一点の曇りもない輝かしい存在だから…。だが俺は、アンジェリークの、あの憂いの正体を知りたかったのだ。知って、彼女のその憂いを少しでも払ってあげたい、できることなら解き放ってあげたいと思い、似た立場にいるあなた方から話を聞けば、少しは彼女の抱える憂いの正体を推し量れるかと思っていた。彼女と再会できた時、彼女のために何かしたくて、でも、憂愁の原因がわからなければ、その方策もたてようがないからだった。だが、あなた方とアンジェリークは、やはり似て非なる存在だと、今の俺は思うばかりだ。ましてや、あなた方と親密な関係を持ったとて、どうして、俺とアンジェリークとの距離が縮まるというのか…と、オスカーは胸の中で一人呟く。

あなた方を抱いても…あなた方がどれほど素晴らしい女性か知ってはいるが…だが、女神の形代や代替品では、俺の心は満たされない、だから、あなた方の慰撫は不要なのだと言うのが、オスカーの掛け値なしの本心ではあった。しかし、オスカーは、聖娼からの誘いが、純粋に彼女たちの親切心から出ているものなのか、オスカーが心惹かれてやまぬ女性への対抗意識から出ているものなのか、まだ、判じかねていた。そして、彼女達の本心がどこにあろうと、オスカーは、人に対して口にしていい言葉と、してはいけない言葉というものがあることを本能的に弁えていた。たとえ、聖娼からの提言が、ライヴァル意識の発露だったとしても、だからといって「あなた達は所詮代替品だから俺はいらない」などと口にするほど、オスカーは無作法でも愚かでもなかった。だから、聖娼たちの誘いを、遠まわしにそれとない言い方で固辞しようとしたのだが、聖娼たちは、そんなオスカーの遠慮がちとも取れる態度のわけも全てわかっていると言いたげに、鷹揚に頷くばかりだった。

「確かに、直接、速攻の効果はないでしょう。でも、あなたは、ある光の女性が好きで、だけど、ただ自分が「好き」というだけでは満たされないのでしょう?」

「?」

「その光の女性からも、オスカーは、好かれたいと思っているのでしょう?オスカーがその人を思うのと同じように、同じほどに、その人から思ってもらいたいのでしょう?オスカーがその人を特別に思うように、オスカーはその人の特別な存在になりたいのでしょう?」

「!」

「火の眷属はそう願うものなのでしょう?そして、オスカーは火の眷属」

「そう、それが問題」

「でも、さっきも言った通り、私たち光の女は、滅多なことでは1人の決まった男に心は捧げない」

「そう、『これは』と見込んだよほどの男でなければ…」

オスカーはぐっ…と詰った。痛い所を突かれた、というより、自身が挑発され返されているように感じた。

俺では…たとえ将来、太陽神に叙されたとしても、人生経験の乏しい未熟な若造な俺のことなど、アンジェリークが本気で思ってくれるはずがないと彼女たちは言いたいのか…光の眷属の女性は、男を見る目が肥えていて厳しいと、聖娼たち自身が言っている、そして、実際、アンジェリークは気の遠くなる程の歳月を過ごす中で数多の太陽神をー火の眷属の中でも最高に優秀な男たちを間近に見知ってきた筈だ、だから、そこを突かれると、理屈以前にオスカーは辛い。些か語気が荒くなるのが抑えられなかった。

「それは…所謂性技のことを言っているのか…俺のように、未熟で経験不足な若者に、本気で心を傾けてくれる光の女性などいないと、あなた方はそういいたいのか?」

オスカーがわざと露悪的な表現をするも、聖娼たちのさんざめく笑みは変わらない。

「小手先の技術など瑣末なこと」

「でも、最低限、知っておいたほうがいいことはある」

「だから…それは性技のことではないのか?」

わからずやの子供を前にして『困ったものだ』…とでも言いたげな失笑が、聖娼たちの間から零れた。オスカーは、とてつもなくいたたまれない、居心地悪い気分に襲われる。

「では、考えうる限りのありとあらゆる技術を身につけたと思っても、その効果があまり芳しくなかったらオスカーは、その時、どうするの?」

「それは…」

「基本の技術はもちろん必要だし有用。無知は罪でもあるし。でも、あくまで技術は方便でしかない」

「技術だけに頼ろうとする者は独りよがりになって、却って、相手の心の望みや反応に無頓着になりがち。身体や心は道具ではないから、ここを押せばこう動くという風に、いつも決まって同じ反応が返ってくるとも限らないのに」

「そう、むしろ、目が曇ってしまうの。思い込みに捉われて」

「そして、手持ちの札を出し尽くしたと思ったら、その先、どうしたらいいかわからなくなってしまう男性は存外多いの」

「本当に大切なことは、その時の場合に応じて相手の気持をくみ取ること、感じとることなのに」

「そう…技術は…いわば根底、土台。だからもちろん疎かにしてはいけないけど、大切なのはその先。だって、その人が、どのようにされると心地よいのかは、その場になってみないとわからないでしょう?」

「その時々、相手によって、それは異なるもの」

「例えば…オスカーは普段は馬の世話をしていると聞いているけど、いつも全く同じように馬を扱う?」

「晴の日も雨の日も?」

「馬の体調が良さそうな時も悪そうな時も?」

「馬の機嫌のいい時も悪い時も、全く同じように馬の世話をする?」

オスカーは聖娼たちの言わんとすることが漸く、少しばかり飲み込めてきた。

「確かに…馬の体調如何その他で、世話の仕方は臨機応変に変える。基礎となる技術や方法は厳然としてあるが…大切なのはその時々の馬の様子を良く見、体調や気分を感じ取ること…些細な変化や反応も見逃さぬよう、感度を鋭く保ち…」

「ね?基本的な接し方はあるとしても、判で押したように、どんな時も同じように扱ったりはしないでしょう?」

「女も同じこと」

「…だが馬と女性は違う、馬は言葉をしゃべれないが、女性とは言葉を交わしあえる…」

くすくすという笑のさざなみが、またもオスカーを洗う。

「女が心の内を全て言葉に出すとは思わないほうがいいわ、オスカー」

「もちろん、言葉にしなければわからないことはたくさんある。でも、言葉にならない部分ででも、大切なことや気持は伝えられるし伝わってくるもの」

「そうよ、大事なことは、あえてはっきり言葉にしないことだってあるのよ、女は」

「そう、だから、大切なことは、女性に対し、心を平らかに開いて、相手の気持や望みを感じ取り、心を通じあわせようと努めること」

「でも互いに心を通じ合わせたいのなら、相手の気持は汲むだけではダメ」

「相手の気持を汲みつつ、自分が相手を欲している気持ちをきちんと伝えること」

「自分の気持ちを押し付けるだけでも、言いなりになるだけでもダメ」

「どちらからのものであっても、一方通行の関係は心を通じあわせるとは言わないから」

「そして、自分の言葉を聞いてもらいたいなら、自分がそれだけの価値のある存在だと知らしめなければ…」

「そう、つまらない男だと思われたら、女は何も聞いてくれないかもしれない」

「だから、光の女性と互いに特別に思い思われる関係になりたいなら、オスカーは、そのために有効そうな術(すべ)を前もって学んでおいた方がいいと思う」

「それは、つまり…俺は、女性の気持を読み取るための想像力と感受性を研ぎ澄まし、なおかつ、自分の気持を受け入れてもらうためには己を磨いて、ひとかどの男になれと…あなた方が言いたいのはそういうことか…?」

馬と女性を同列に論ずることは今も些か心理的な抵抗があったし、全く同じではないとも思ったが、心を通い合わせるための方便は、言われて見たら、確かに、馬との関係性と共通する部分があるということはオスカーも認めざるをえなかった。実際、オスカーはアグネシカと心を通わせるために、馬の気分や体調を細やかに見て取ることの重要性を良く知っていたし、かといってただ馬の言いなりになるだけではダメだということも…それでは侮られるだけで、結局、こちらの意図や要求が伝わらなくなるということも知っていた。自分の意図を正しく伝え、かつ、真摯に応えてもらうためには、此方が相手を尊重すると同時に、相手からも「一目おかれる」ことが必要、つまり、相互に等分に尊重しあえる関係の構築が必要であることをーあくまで馬との関係においてだがーオスカーは重々承知していたから、聖娼たちの言い分もある程度は納得できた。

「そう、オスカーの言うとおり」

「でも、きっとオスカーなら大丈夫」

「そう、とても激しく強い火の力がオスカーにはあるから」

「オスカーからは、とても強い力…ただ強いだけでなく、眩しく熱く清らかな力を感じるから…」

「その眩しいほどの力と情熱がたわまず育っていけば…そして、相手の気持を尊重し、同時に、オスカーがその人を真剣に請い欲する気持ちを正しく伝えることができる男になれば…それができれば、きっと、どんな女性も、オスカー、あなたに夢中になる」

「そう、真に強い男は、最も優しい男になれる。そんな男に女は惹かれる。私たちだって同じ」

「そのためにも、女性への触れ方・扱い方は一通り覚えておいた方がいい。慣れないせいで、おどおどしたり、うわずって力の加減を間違えると、一度で侮られたり、嫌われてしまうことだってあるのだから」

「そして、オスカーが正しく経験を積んで、私たちを夢中にさせられるような素晴らしい男になれば…きっとその女性も、オスカー、あなたを特別な存在と思ってくれることでしょう」

「……つまり…俺があなた方を夢中にさせられる程の男になれれば…俺が恋うる光の女性も俺を好いてくれるだろうと。そのためには、俺が神を目指して精進するのは当然のこととして…それ以外に、最低限、女性の扱い方・気持の汲み方の基本も覚えろと、あなた方は言うんだな?その訓練を俺に施そうと…そのために、あなた方は、俺の練習相手になってくれるつもりだと…あなた方の言わんとしているのは、そういうことなんだな?」

「そう」

「何故だ?何故、あなた方は、俺にそこまでしてくれようとする?」

オスカーは、答えを半ば予期しつつも、彼女達の提言のその理由を尋ねずにはいられなかった。彼女達が「自分たちを抱け」と言い出したのは、俺の思い人に対する所謂ライバル意識のせいかと思っていたが、そうではないことは最早明白だった。それなら、残る理由は…。

「何故?何故って、当たり前じゃないの」

「だって私たちでは、オスカーが本当に欲しているものを、あげることができない」

「オスカーは、いつも、何かを求める気持が強すぎて苦しそうだった。オスカーは光の眷属に関する知識が欲しいと言っていたけれど、私たちがどれ程知識を授けても、なぜだかオスカーは満たされていないのが感じられて、私たちも困惑していた。でも、今は、知識だけではオスカーが満たされなかった理由もわかったし、私たちでは、オスカーの渇きはどうしても癒せないのだと、よくわかった」

「オスカーが切望しているのは、ただ1人の決まった女性だから。その女性の心だから。だから、女神神殿中の聖娼全員がオスカーを慰めても、オスカーの渇きは癒されない」

「オスカーも自分でそれを知っているから、私たちを求めなかったのだと、よくわかった」

「でも、私たちは、オスカーが渇きを癒せるような、手助けはできるかもしれない」

「そう、その女性にオスカーが特別に想ってもらえるよう…絶対の保証はないけれど…役に立ちそうなことは教えてあげられる」

「そうしたら、オスカーの渇きはいつか癒される。少なくともその可能性は高くなる」

「…すべては俺のためか…」

「そう、オスカーが本当に得たいと思うものを得るための手助け」

「私たちでは、オスカーが真に欲するものを与えられないけど、でも、応援はできるから」

「だって、何も知らなければ、いざ、その光の女性に会えた時、どう、接したらいいか、戸惑うかもしれないでしょう?」

「女性の気持をどう読み解くかも、わからないかもしれないでしょう?」

「自分の気持ちを率直に伝えることも、いきなり上手にできる自信はある?」

どこか身構えるような気持でずっといたオスカーは、大きく吐息をついた。脱力する思いだった。

本当に、彼女達は、心底から善意だけでできている存在なのだ。恐らくは、アンジェリーク同様に。善意を発揮する動機は若干違えども、だ。

彼女達は、俺が1人の特定の女性を欲していると知り、その女性も俺を好いてくれるようにと思って、俺の「男としての力量」を測り、足りない部分を教え導いてくれるつもりなのだと、オスカーは今、十全に理解していた。それならば、あの、俺を値踏みするかのような態度も頷ける、と納得した。

同時にオスカーは己の心の持ちようを恥じた。

彼女たちが、俺が思いを寄せていると告げた女性に、幾許かの敵愾心を感じたか、矜持を傷つけられたがゆえに、自分を挑発するような態度に出たのではないかと僅かでも思ったことを。

そして、彼女達の奉仕は、所詮、天界の意思にそって職務を果たしているに過ぎないと斜に構えた見方をしたことも。

彼女たちの提言は、あくまで俺の幸福を願ってのものだった。アンジェリークを得られるまでは、俺に真の意味での魂の充実はないことを彼女達は理解してくれ、その上で「遠い未来、いつか得られるかも知れない俺の幸福」のための助力を申し出てくれているのだ。

俺に希望を与え元気付けることで、天界側はより一層の精進を期待しているのかもしれないが、彼女たちからは、そんなうがった思惑は感じられない。俺が彼女達から感じられるのは、ただ、純粋な善意だけだ。

だって考えてもみろ。花園を作った者には、それ相応の理由があり、思惑があろう。だが、花園に咲いている一つ一つの花々たちは、そんな思惑など預かり知らぬことだろう。花々は、ただ、美しく、芳しく、懸命に無心に咲くだけだ。花はひたすらに無垢で純真な魂しか持っていないー訪れる人々をその美しさで、慰めんとしているだけだ。花園を作った者がどんな意図を持っていようと、それは花々の責任ではないのだ。

「まったく…あなた方は、確かにウシャスの妹と称されるに相応しい存在だ…」

オスカーは感極まったように呟いた。

オスカーは、聖娼たちをアンジェリーク=ウシャスとは似て非なる存在だとみなしていたことを心の中で詫びた。『所詮聖娼は女神の代替品だから俺には不要だ』などと傲岸不遜なことを僅かでも考えた自分を恥じ、同時に、そんな無礼な言葉を口にせずに本当によかったと安堵した。すると聖娼たちはオスカーの胸中などお見通しだとでもいうように、申し合わせたかの如く、この上なく柔らかな笑みを浮かべた。その笑みに、オスカーは許されたような、同時に、背中を押されたような気持になった。

「それなら、俺は、あなた方を…光の巫女たちを夢中にさせられる程の男になればいいんだな…」

そう言いながらオスカーは、ローブの飾り紐を緩めた。

1人の聖娼…最初にオスカーが神殿を訪れた時、出迎えてくれた巫女だった…が、一歩前に進みでた。透けるような薄絹のローブの衿元を緩めながら。あわせて、他の聖娼たちは、衣擦れの音だけを微かに響かせて退いていく。

もし、彼女たちの気持ちが、単なる対抗意識や聖娼としての矜持の表れであったら、俺は決してこの手を取らなかっただろう、と思いながら、オスカーは、その白い腕をそっと取った。

オスカーが彼女達からの施しを受ける気になったのは、彼女達が、これを「慰撫」としてではなく、オスカーがアンジェリークをその手にしやすくなるための手段、助力として供してくれたからだった。

ただ、オスカーは『俺がどんなに女性の心理や扱いに長けたとて、だからといってアンジェリークが俺を男として好きになってくれるかどうか、男としての俺を欲してくれるかどうかはまったく別物だ、そんな保証などどこにもない』ということもわかっていた。冷静に、これは単に彼女と自分とに間に無数にあるハードルの一つを低くする手段でしかないことを知っていた。「嫌いではない」ことと「望んで好きになること、異性として欲する」ことは全く別物、それこそ天と地ほどに違う心の動きなのだから。

だから、それを理由に、聖娼たちの申し出をあくまで固辞することもできたが、オスカーは、差し出された手を受け取ると決めた。聖娼たちからの申し出の、その動機は純粋な善意のみから生じたものと感じたからだ。それをむげに断るのは、酷く礼儀知らずな気がしたからだった。

彼女たちは、何時の日か俺が幸福をつかめるようにと、そのために、俺をひとかどの男に仕立て上げる手助けをしてくれるというのだから…そのために、敢えて練習台になってくれるというのだから…

「ならば…なってみせよう」

オスカーは、誰に聞かせるともなく呟いた。

オスカーは、聖娼の白く柔らかな身体を静かに横たえた。豊かな膨らみの間から、えもいわれぬ香が立ち上ったのを感じた。

アンジェリークも、こうして歴代の太陽神に、妻として慰めを与えてきたのだろうか…そう、思うとつくん…と胸が疼いた。それは、ウシャスとしては当然の勤め、光の女性としも極当然の心情で、ましてやその相手は常に、火神の中の火神・太陽神その人なのだから、その能力・器量は「ひとかどの男」どころではない。至高の女神ウシャスが慰撫を与えるのに、太陽神はまさしく似合いの相応しい存在なのだろうと、オスカーも理性ではわかっている、それでも、胸の疼きはどうしようもなかった。

そう思うと同時に、オスカーは、対抗意識は自分の中にこそあるのかもしれない、と、ふと、思った。だから、俺は聖娼達からの提言を、俺は「俺が恋うるアンジェリークへの対抗意識」故ではないかと勘ぐり、虚心で聞くことができなかったのかもしれない、とオスカーは思い至った。

アンジェリークの上を通り過ぎていったのであろう、無数の太陽神、その誰に比しても、素晴らしい男になりたい、アンジェリークにそう思ってもらいたいという気持がオスカーに無いと言えば嘘になるからだった。

アンジェリークと再会できるのなら、その時は、彼女から一人前の男として仰ぎ見られたい、それだけの男になっていたいと思う欲は、オスカーの内に確かにあるからだった。

『人は自分の心のありように応じてしか、人を測れないものらしい…』

半ば自嘲にも見える不敵な笑みを口元に浮かべながら、オスカーは、聖娼の成熟した裸身を検分するようにゆっくりと覆いかぶさった。

途端に、甘く濃厚な女の香りに頭がくらくらした。オスカーは『思い込みをもたず心を平らにし、相手の気持も自分の気持ちも、真っ直ぐに受け取り、伝えること』は、この状況に慣れぬ身では大層難しいことを、即座に、そして否応なく知った。確かに所謂「場馴れ」は有用なのかもしれないと、素直に思った。

どんな面から見ても、どのような才においても、超一流のすぐれた男でなければ、天界の至宝たるウシャスには相応しくなかろう、加えて、俺自身にも、歴代のどの太陽神にも負けたくないという気持がある、ならば、所謂男としての魅力?技術?何でもいいが、とにかく、何事によらず研鑽するしかあるまい、そう、オスカーは心に決めた。

 

ことが終って、オスカーが真っ先に感じたものは、女性という存在への、混じりけのない純粋な感謝の念だった。

初めて身近に接してみて、女性とは、かくも柔らかく暖かいものかと肌身で感じ、新鮮な感動を覚えた。それ以上に、女性の豊かさ、男を受けとめる限りない優しさは、確かに直に触れてみ、受け入れられなければわからぬものだったと、オスカーは実感として知った。

味わった快楽自体は、正直、あっけないものだった。

自暴自棄に自分を慰めた時に感じた放出の開放感と、そう大差があるとは思えなかった。

が、やわやわと熱く湿った部分に受け入れられ包み込まれるえもいわれぬ感触は、自分そのものが包み込まれ、丸ごと受け止められているような、今までに感じたことのない安心感を教えてくれた。人肌の温もりというものは、尖った気持をやわらげ、慰める力があるのだということが素直に頷けた。自分を1番深いところで受け止め、受け入れてくれた女性の豊かさ、優しさを思うと、感謝と敬慕の情が自然とわいた。

オスカーは、聖娼のもてなしが、純粋に自分の幸福を願ってのものであると知っているから、感謝の想いを尚更強く感じたのかもしれないということは否めなかったが。

しかし、これだけ客観的な所感を抱けるということは、オスカーが、この一連の行為に我を失うほど没頭してはいなかったという証左でもあった。

何もかも初めての状況下だったから、気持が上ずり手綱を失いかけた瞬間があったことは事実だ。が、それでもまったき自制を欠くほどには我を失わなかったのは、これが「場慣れ」のための、いわば修練であることを、オスカーが終始意識していたせいかもしれなかった。

ただ、終始、冴え冴えとした意識を堅持していたオスカーは、結局これは「練習」だから、自分は最後まで手綱を放さずに済んだのではないかと、危ぶんでもいた。

どんなに美しく魅力的でも、素晴らしい肉体や技巧を持っていても、相手がアンジェリークではないから、自分は我を失うこともなく冷静にことを運べたのではないか、という憶測があった。

恋焦がれてやまないアンジェリークを、いつの日かこの腕に抱いた時、同じように冷静でいられるとは、オスカーには到底思えない。

本気ではない相手との練習が上手くいったといって、素直に喜べるものでも、有用といえるかどうかもわからないな、とオスカーは自分の心の動きを客観的に見据えていた。

ただ、所謂「手順」に戸惑いがあったのは事実だったし「獣は自然に行える事を、人は教わらねば上手できない」のは本当だな、と妙な処で感心した。

それに、もし、アンジェリークをこの手に抱けるとしたら…他の太陽神に比して、あまりに無様な振る舞いはしたくないという欲も見栄もあったから、予め基本のレクチャーを受けておくことの利も必要も実感した。

なにせ、他の太陽神は、候補の時分にこの恩恵を存分に堪能したに違いないのだ。彼らには、聖娼という花たちを愛でる権利を躊躇う理由は微塵もない、むしろ、太陽神に叙される前の役得として大いに楽しみ、結果、女性の扱いに関しては一際すぐれた手練になっていったことだろう。

そしてアンジェリークは、そんな太陽神たちの妻となってきたのだ。一流の女性と多数接することで、女あしらいにかけてもひとかどの男になっていたであろう太陽神たちの…

そして、オスカーは、アンジェリークが知っている今までの太陽神に比して、どんな面でも遜色のない男でありたいと思う。ならば、これも、己のスキルを充実させる手段と割り切るしかあるまい。

どんな方面のことであれ、アンジェリークに幻滅されたり、落胆されたりはしたくないのだ。アンジェリークは、他人と俺とを比較するようなことはしないだろうとわかっていても、アンジェリークの手を臆さずに取るために、どんなことであろうと、堂々と振舞えるだけの自信と実力を自分が備えておきたいのだった。

それを思えば、この一度で、女性の扱いを何もかもわかったような顔をするのも傲慢というものだ。

「練習」で上手くいったことを本番でも手際よく行うためには、結局「習うより馴れろ」が有効かもしれない。多分、俺は、まだまだ実践で学ぶことがあろうから、時間をみつけては、これからも、女神神殿を詣でることになるのだろうな…と、やはりどこか他人事のようなことをオスカーは考えた。

もっとも、それは、神馬の調教が進み、俺の能力がきちんと伸張していった場合だ。もし、このまま馬を増やされることがなければ、女神神殿で何を学ぼうと無意味だ、とオスカーは思った。アンジェリークに出会えないのなら、女性の扱いを学ぶ必要はない、而して、他の女性を無理に抱く意味も意義もないのだから、と。

アグネシカの調教が順調に完成に近づいているからこそ、オスカーは、若干の不安を覚えていた。女神神殿への参拝が無駄にならぬよう祈らずにはいられなかった。

そして、週末の休みが明けて朝、いつものように厩舎に行ったオスカーは、一瞬、己が目を疑った。アグネシカ以外に、見知らぬ2頭の馬をオスカーは見出したのだ。

オスカーは、改めて自分の辿ってきた道が間違ってはいなかったらしいこと、そして、自分が目指すゴールにまた1歩近づいたことを知った。

 

新たに2頭の馬を見つけた時、オスカーの胸に真っ先にこみ上げた感情は何より安堵の思いだった。それが最も大きかった。自分の歩んできた道、選んできた方針は、どうやら正しかったらしいこと、そして、そのための精進と努力が認められたらしいと思うと同時に、遅れて、じわじわと喜びがこみ上げてきた。

アグネシカの馬車馬としての調教は、ほぼ完成していたからこそ、ここ数日、オスカーはこの後、自分に何が求められるのか、ここから先に自分は進めるのか、幾許かの期待と不安を胸に抱えていたからだ。

もし、このまま世話をすべき馬が増やされるどころか、馬車馬として完成したアグネシカが、余所に連れていかれるようなら、俺は単なる調教員であり、アンジェリークの元へ至る道は、ここで断たれてしまうことになるのか…という慄きは、常に小さな楔となってオスカーの胸を痛めつけていたからだ。

だが、御すべき馬が三頭に増やされたことで、俺は、単なる調教員とはみなされていないことが確信できた。1頭の馬は完全に馬車馬として制御できるようになったと評価されたからこそ、扱う馬を3頭に増やされたのだろうし、そう思うとたまらなく嬉しかった。これで馬車を多頭立てにする訓練ができるようになる。そしてこの3頭の馬を馬車につなげるようになり、また、自在にその馬車を操ることができるようになった暁には、恐らく、また、御すべき馬の数が増やされることだろう、そして、最終的には7頭の神馬を自在に御することができれば…それが恐らく俺の望んだゴールとなる。その先にはアンジェリークの姿があるはずなのだ。

オスカーは、まだ、喜ぶのは早い、と頭ではわかっていても、こみ上げる熱い歓喜を抑えることができなかった。やった…という充実感が全身に染み渡るようだった。

俺は、ここまでこれた。ついに、とも言えるし、漸くとも言える。だからこそ、ここで躓くわけにはいかない。3頭の馬を御せずして、7頭の馬を御すことなどできる筈がないのだから。絶対に、俺は、この神馬たちを立派な馬車馬に訓練し、自在に操ってみせねばならない。今まで以上に不退転の決意が必要だと、オスカーは自身に言い聞かせた。

そして、オスカーは新たに来た馬の首筋を軽く叩くようになでてやった。

「これからよろしく頼むぜ。俺は、おまえたちを何が何でも立派なドライビング・ホースに仕立て上げ…」

と言ったところで、一瞬、オスカーは遥か上空を仰ぎ見た。

「おまえたちに、天空の道を走らせてやる。あの輝かしい太陽をおまえ達が引くんだ。俺が、あそこまで、おまえたちを連れていってやる。必ずだ」

すると、隣の馬房にいたアグネシカが首を思い切り伸ばして鼻面を突き出してき、オスカーの手に頭をすりつけてきた。

「ああ、もちろんその時はおまえが先頭だ、アグネシカ」

オスカーは屈託なく笑ってアグネシカの耳の後ろをかいてやると、馬はオスカーの言葉を理解したように、満足げな顔をした。

しかし…一方でオスカーは些かの懸念を覚えずにはいらえれなかった。

馬の世話というのは、時間も労力もかかる。今まではアグネシカ1頭だったから、俺は馬の世話をしながら調教を施すことができたが、3頭の馬を同時に世話をしながら調教の時間を十分に捻出できるだろうか…と。

その時だ。

「ああ、ここにいたのか」

今までオスカーに馬の扱いを教えてくれてきた厩務員がオスカーに声をかけてきた。どうやらオスカーを探していたようだった。その背後に、珍しく他にも数人の厩務員の姿がみえた。最近ではオスカーもすっかり馬の扱いに慣れていたので、あまり教えを請うことはなくなっていたし、彼らもオスカーに調教を任せてくれていたので、ここ神馬の厩舎に顔を出すことは滅多になかったので、オスカーは一体何用だろうといぶかしんだ。

なので、普通に挨拶を交わした後、オスカーは早速用件を尋ねようと口を開きかけた。が、オスカーが言葉を発するより早く、ベテラン厩務員の方が

「オスカー、新しく連れてこられた馬たちの世話及び馬房の管理は、これからは俺たちでやらせてもらう」

と言った。

「なんですって?」

オスカーは事態がよく飲み込めなかった。

「君は、今までどおり、最初の一頭…君はアグネシカと名づけたんだっけな、世話をするのは、そのアグネシカの分だけでいい。そして、後りの時間は調教に専念してほしい」

「!…そういうことですか」

オスカーは厩務員の申し出の意味を理解した。そして彼は…すくなくともこのベテラン厩務員はアグネシカが神馬エータシャの1頭であることも、俺が施していた調教の意味もはっきり知って、評価してくれていたのだと悟った。オスカーがアグネシカの調教を進展させるにつれ、タイミングよく褒賞が贈られてきていたので、誰かが調教の進展具合を観察、天界の上層に報告をあげているのだろうとは思っていたが、恐らく、それはこのベテラン厩務員だったのだろうとも思った。そして、だからこそ、馬の調教に専念してくれという厩務員の申し出はオスカーには非常にありがたかったし、この申し出は、オスカーが太陽神の卵として一応認定されたらしいことも同時に意味していた。そして、そう思えることはオスカーには大層嬉しいことだったが、オスカーは、それら諸々の感情を押し込めて、用心深く、一つの懸念を表明した。

「そのお言葉は俺には大変ありがたいものですが、しかし、この火の馬は、俺のような火の眷属以外には身体を触らせないのではなかったですか?」

それとも背後にいるほかの厩務員は火の眷属なのだろうか…いや、それはありえない。普通の厩舎にいる普通の馬は、火の気配に酷く怯えるのだから、俺以外の厩務員が火の眷属であるはずがない。

すると、ベテラン厩務員は面白そうな顔をして笑った。

「ああ、君のアグネシカは、多分、私たちには指1本触れさせてくれないだろうな、今でも」

「なら…」

「だが、馬房の管理…厩舎の清掃や飼料の準備などは、馬が馬場に出ている間にできるし、馬に直に触れる必要もない」

「確かに。それらの作業を手伝っていただけるだけでも、俺には、随分助かります。それなら俺は、調教後のケアをするだけですみますから」

「いや、新参2頭の世話も俺達で引き受けさせてもらうつもりだ」

オスカーは新参の馬たちの気位の高そうな面構えを見てとり、あからさまな懸念を示した

「失礼ですが、あの火の馬たちは、そう、容易く馬体に触れさせてくれるような性格とは見受けかねます」

「はは、君も随分馬を見る目が肥えてきたな、俺も、実際そう思う」

「ならば…」

「だがな、オスカー、君も知っての通り、馬は本来群れを作って暮らす動物だ。群れを作る生き物には必ずリーダーというか、ボスがいる。そして、この厩舎、この火の馬たちの中でボスといえる存在は…」

「!…そうか」

「そう、君のアグネシカだ。だから新参の馬たちは、基本的にアグネシカの指示には従うはずだ、そして、アグネシカは君の指示に従うはずだ。君には、もうそれが出来るはずだと、私は理解しているが?」

オスカーは、これもささやかなテストなのだろうかと思い、苦笑しつつも、よどみなく、自信たっぷりに

「無論です」

と、答えた。

そして、オスカーはすぐさまアグネシカに向き直ると、アグネシカの首筋を軽くはたきながら、俺とおまえたちは一緒に天駆ける訓練をせねばならないこと、しかし、オスカーの身体は1つで時間は限られていること、だから、新しくきた若駒たちの体の世話と馬房の管理は俺以外の者に任せないと、訓練が十分にできなくなることを、おまえの世話は今までと変わらず俺が行うと付け加えたうえで、懇々と言い聞かせた。その間、終始、自分の意思を載せるように火の力を放出することも忘れなかった。

「いいか、アグネシカ。おまえたちは、他の馬にはない素晴らしい能力と才能がある。俺は、それを十全に開かせてやりたい、俺は、おまえたちと一緒に、あの遥けき天の道を駆けたいんだ。その訓練に十分な時間を取るために、あの人たちに馬房の管理を任せる。彼らは馬の扱いは俺以上だから何も心配はいらない。それを若駒たちに納得させるべく、おまえにも手伝ってほしい」

アグネシカは静かに佇み、ただ耳を僅かにひくつかせていた。表情や態度は落ち着いており、心地よく寛いでさえいるように見えた。オスカーが潤沢に放出する火の気をシャワーのように存分に浴びるのが快いかのようだった。

徐にオスカーは厩務員たちに向き直った。

「では皆さん、今は、ひとまずお引き上げ下さい。この馬たちを馬房に入れるより、まずは、訓練から入りたいと俺は考えています。実際にこの若駒たちの気性や性質を見つつ、俺のことを、わかってもらうつもりですので」

「君の力量を見せ付けて、誰がリーダーかを、まず、知らしめないと、馬が言うことを聞かないからか?」

「言い方はともかく、まあ、意味する処はそういうことです」

オスカーはにやりと笑った。

「アグネシカが何故俺の指示に従うのか、若駒たちに納得してもらわねばなりません。さもないと、若駒もアグネシカの指示に従わないでしょうから」

「ははは、存分に君の火の力を注いでやるがいいさ、火の馬でも火傷するくらいのな」

「夕刻、馬房に帰る時を楽しみにしていてください」

オスカーがそういうと、厩務員たちは笑いながら手を振って引き上げていった。

オスカーは、2頭の若駒の前にたつと

「さ、おまえたちのお手並み、いや、足並み拝見といこうか。おまえちも俺の器量を測りたくてウズウズしているだろうからな」

といって引き綱を取った。もちろん火の気を引き綱に十分に注ぎこんだ上でだった。

2頭の馬は存外おとなしくオスカーに引かれて馬場にむかった。

この時、オスカーは眼前の新馬2頭を、この後どう訓練するかで頭が一杯だった。何故、今日、このタイミングで馬が増やされたのかまでを考える余裕はなく、当然、その理由を思いつきもしなかった。


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