百神の王 33

アンジェリークに、どこまで話していいものか、未だ、結論の出ぬまま、オスカーは、とにかく、アンジェリークの懸念、不安だけは払拭してやらねばと、その思いだけで思念を発した。

《アンジェリーク…ラートリー女神の様子が、普段と違ってみえたのは、それは恐らく、神力とか、体調の不良ではない、と思う、だから、その点に関しては、心配するには及ばない》

《ほんと?よかった…オスカーが、そういうのなら心配はないって、私、わかるわ。だって、オスカーは、この世界の全てを見渡す力をもつ百神の王ですもの、ラートリーの神力は、いつもと変わりないって、オスカーには、感じられるから、でしょう?》

アンジェリークは、オスカーが、拍子抜けする程あっさりと納得してくれた。オスカーの能力をそれだけ信頼しているということだろう。

《神力の衰えとか、調子が悪いのではないのなら、いいの…でも…それなら、どうして、あんな……あ、でも、ラートリーの心の中までは、オスカーにもわからないわよね、ラートリーの気持…それは…それだけは、ラートリー本人に聞いてみないと…》

考え込む様子のアンジェリークは、オスカーに対しては、これ以上、突っ込んだ問いを投げる気はなさそうだった。

『どうして、ラートリーが私を避けているのか、オスカーにはわかる?オスカーの考えを聞かせて?』

とでも問われたら、憶測であることを前提としても、

『それは、ラートリー女神が、君から、話しかけられ、問いかけられることを恐れているからだろう』

と、俺は彼女に告げざるをえなかっただろう、とオスカーは思う。

俺は、天界の高位神のやり口ーアンジェリークを守るためという大義名分の下、彼女に故意に情報を与えずにきた、そのやり方が、真実、アンジェリークのためになっていたのか、甚だ疑問に思っているのだから…彼らと同じことはできない。彼女の問いに対し『君は何も知らなくていい、何も考えなくていい、全て、こちらに任せておけ、何も心配は要らない』と返すのは、主観としては善意からの行為であったとしても、俺には不実に思える。

が、ここまで言ってしまったら、ラートリーが君を避ける理由も、併せて告げねばならなくなろう…つまり、ラートリー女神は、俺たちが親密になるのを、よく思っておらず、ゆえに、俺たちの逢瀬を阻止せんと、君の実体化を阻んでいるのはラートリー女神本人であることも、告げねばならなかっただろう。

俺は、君には、誠実に相対したいし、問われた事には、真剣に答えてあげたい、が、一方、こんな告げ口みたいな真似は、俺は好きじゃないし、なるべくなら、したくない…そんな葛藤もあったし、この事実は…ラートリーが、俺が君と親密になることを厭わしく思っているという事実は、どういう言い方をしても、君を哀しませるのではないか…

それを懸念していたから、オスカーは、アンジェリークが、オスカーの言葉に納得して、それ以上、オスカーの意見を求める気はなさそうなことに、安堵した。

だが、オスカーは、アンジェリークに自身の安堵は気取られぬよう、思念を抑えた上で、重ねて、アンジェリークを安心させようと、念押しにこんな思念も追って放った。

《ああ、ラートリー女神は、君のことを、こよなく愛し、大事にしているし、夜の世界に対する守護も磐石で揺ぎ無い。君への愛にも、力にも、全く変わりはなさそうだ…俺には、そう感じられる》

思念を送りながら『こういう処は…やはり、俺も天界神たちと変わらんな』とオスカーは、自分に苦笑する。彼女が心安くいられるよう、彼女を守ろうと、過剰に、つい、先回りして動きたくなるのだから、これでは、俺も、それこそ、ラートリー女神と、まったく同じじゃないか、と。

なにせ、俺がスーリヤとなってからというもの、俺には、君が凝る気配すら全く感じさせないままに、ラートリー女神は、君の実体化を完璧に阻んでいる。君の光を一粒たりとも漏らさぬ徹底振りを見れば、ラートリーの神力は、衰えをみせるどころか、力漲ること著しい。そして、それもこれも、俺と親密になることで、結果、君が哀しむことのなきよう、かつ、君の純粋さを守らんがためなのだから、君に対する愛情の強固さもまた、しかりだ、な。

と、つい、皮肉気に想起してしまった思念も、決して漏らさぬよう注意しつつ、オスカーは、自分のこの考えに、ふとした、引っかかりを覚えた。

まてよ…ラートリーが疲れて見えた、そして、アンジェリークを避けようとした理由は明白だ。アンジェリークがこの俺に会いにいかぬよう、夜通し東の神殿に注意を払っては、実際に実体化を阻止するため、神力を使っているせいであろうし、また、夜に自分が実体化を出来ぬことを不審に思ったアンジェリークから、何か尋ねられることを恐れ、神経質になっているからだろう。

しかし、アンジェリークは、最近ーこの乾季に入ってから、ラートリーの様子が変だと言っていた。もし、アンジェリークの実体化を阻むことで消耗し、アンジェリークにその事を尋ねられることを恐れるとしたら、俺が、スーリヤとなった直後から、そうでなくてはおかしいではないか。ラートリー女神は、俺がスーリヤの御名をいただいたその日からずっと、同様の振る舞いを続けているのだから。だが、先の乾季には、ラートリーには疲れた様子も、アンジェリークを避ける様子もなかったはずだ。

そう考えたオスカーは、念のため、アンジェリークに確かめてみる。

《ただ、アンジェリーク…ちょっと確認したいんだが、ラートリー女神が、疲れてみえたのも、君を避けているように見えたのも、この乾季が始まってからのことで間違いはないか?先の乾季…俺が太陽神に就任してすぐの乾季の時に、似たようなことはなかったか?》

《え?いいえ…一度もなかったわ、オスカー。この乾季が始まるまでは、ラートリーが、憔悴した様子をみせることも…夜明けの儀式で、すれ違う私と決して目をあわせない、声もかけてこないなんて…そんなこと、これまでに…永劫のような長い年月の間、一度もなかった…だから、私、心配になってしまったのだけど…》

《そうか…》

やはり、そうだ。先の乾季と、この乾季とで、ラートリーの様子が明らかに違う。やっていることは、同じなのにだ。

この差は何だ?

この雨季を挟んだ前後で、ラートリーの考え方に何らかの変化が生じたのか?

先の乾季までは、ラートリーは己が行為に何の疑問も、やましさも、感じていなかったはずだ。ウシャスの実体化を阻むのは、彼女にとって善であり正義だったからだ。だから、何をしようと自信満々、疲れなど微塵も感じないし、アンジェリークを避ける必要もなかった。何を聞かれようと、全く後ろめたくなかったからだろう。尋ねられたら、ラートリーは、自分が彼女の実体化を阻んでいることを、むしろ、得々として「これは、あなたのためなのよ」と語ったかもしれない。

しかし、雨季が明けてからのラートリーはウシャスを避けている…目を合わせようとしない…これは、ウシャスから、自分の行いを問い質されること、延いては、実体化を阻んでいるのが自分だと、知られたくなくなったから、ではないのか?

知られたくない…ということは、自分の行いが正義であるという自信が揺らいだ?それどころか、むしろ、やましさや後ろめたさを覚えるようになったということだ…。

だが…なぜだ?何故、ラートリーは、今頃になって急に、自分の行いに後ろめたさや、やましさを感じるようになった?

ラートリーは、ウシャスをどんな種の憂いからも遠ざけておくこと、そして彼女の純粋な光の気質を守るという大儀が己にあると信じていたから、自信に溢れていた。

ところが、最近になって急にラートリーの心…自信は揺らいだ…が、ラートリーの気質を考えるに、あらゆる意味において『ウシャスを守る』というラートリーの目的自体が揺らぐとは考えにくい。

となれば、揺らいだのは何だ?彼女の目的に大儀があるか、否か…か?その点について自信がもてなくなったということか?

大儀の有無に自信がなくなるとしたら、どういう場合が考えられる?

…考えられるとしたら…自らの別の信念や信条としている価値観と、己の行いが食い違いを見せたり、齟齬をきたしている場合か…

ラートリーの信念や信条といえば…光の眷属の理想、価値観そのものだろう、それは、遍く広がるを良しとすること、ために、一族が遍く広がるために欠かせない女性を、女性の意思を何より大事にすること…

となると、ラートリーは『ウシャスを守る』という己の行為に、光の眷属としての価値観と相容れない部分でも見出したのだろうか…光の眷属の『良しとするもの』は、遍き拡散と女性性の尊重…逆に、光の眷属が、最も軽侮したり、嫌悪する行為や価値観といえば…決まっている、光の理想とは真逆の…女性の意思を尊重しないこと、蔑ろにすること、だからこそ、彼女は、一般的に女性の意思を軽視しがちな火の眷属の男を侮蔑していた…

そうか!ラートリーの行いは、彼女個人の心情としては「ウシャスのため」であっても、他方、ウシャスの「実体化したい」という願いを阻止したということでもあり、その点だけ見れば、光の女性の意思や意図を尊重せず、無視して、蔑ろにした…どころか明らかに妨害をした…と、いうことじゃないか!そして、それは、光の眷属の価値観からすればーなかでも最も高貴な女神の望みを蔑ろにし、あまつさえ邪魔や妨害をするなど、本来、絶対にしてはいけないタブー、ありえない禁忌だったのではないか。

ラートリーは、自分の行いが主観としては「ウシャスのため」であっても、同時に、光の眷属としては、最も唾棄・軽蔑すべき行為でもあることに気がついたのだ…そして、これは、あの誇り高き夜の女神には、とてもではないが、看過しえない恥ずべき行為であり、これを指摘されるのは耐えられない屈辱であろう。

が、そんなことは、本来、始めから気づいてしかるべきこと、わかっていた上ではなかったのか…

いや、ウシャスの心の安寧・純粋を守ることを絶対正義と信じているラートリー女神は、今まで、己の行いを考え直してみたり、省みるなど、そも、してみたこともなかったのだろう…そうだ、そんなことを彼女がするはずがない、常に大儀は己にありと信じているからこそ、彼女は、あんなにも自負と矜持に溢れていたのだろうから。

にもかかわらず、ラートリーは、どういうわけか、己の行いを別の視点から見直し、省みてみたら…自分の行いが光の眷属としては、褒められたものではないことー恥ずべき行為であると思いあたった、それゆえに心が揺らいだのだとしたら…己の行為を考え直さざるをえない、何らかのきっかけがあったのだ…この雨季の間に…さもなくば、雨季前と雨期明けのラートリー女神の変貌ぶりに説明がつかない。

その時、オスカーの視界の端に、丁度、地平に沈み行く、月の姿が目に入った。

「!」

ラートリー女神が、箴言に耳を傾けるー傾けざるを得ないとしたら、それは誰の言葉だ?あの誇り高い女神は、自分より僅かでも地位の劣る…下位に位置する神の言葉など、聞く耳をもたない、最初から聞くわけがない。神の格としては名目上対等であっても、俺のような若造の言などは、とりあえず聞く振りをするだけでーあからさまに無視することはできないから、面従腹背で、右の耳から左の耳に素通りがいいところだろう、彼女に何かを真剣に考えさせることなどできはしまい。ラートリーの耳を傾けさせるー箴言をして、彼女に考えさせることができるのは、ラートリーが一目置くーおかざるをえない、彼女に比して遜色のない高い神格にあり、なおかつ、同じほど長い年月ーつまり、天地開闢の頃より神としての世界を統べていた高位神だけーそう天界を司る最古参の最高位神しかいないだろう。

しかし、ラートリーのように誇り高く、潔癖な女性は、どんなに高位の神が、正面から正論をぶつけ、意見しても、他者の言に筋が通っているほど、逆に、自らの正しさに固執し、より依怙地になる傾向も強い。意見して、考えを改めてもらうのは、至難の技だ

だから、有効なのは、意見することではなく…もちろん、彼女の持論に反論するのでもなくーやりこめるなどもっての他でー自身の主張は韜晦しつつ、ただ揺さぶりをかける…ああ、まったく、あの神なら、こういうことにどれ程の手練れであろうことか。あの神は、俺に対しても、そうだったではないか。何一つ、決して、断言などしない、どころか、自らの意見は微塵も明らかにせず、ましてや他者をやりこめることなど、絶対になく…彼のやり口は、次から次へと疑問を呈し、こちらの質問にも質問で返すという徹底ぶりで…そうして、とことん、相手に自分の頭で考えさせ、結論を出させることだった。しかも、自らの望む方向へと、質問を通して、会話の流れを誘導しつつ。

質問を呈されると、人は反射的にその答えを考えてしまう。そして、人は、自分で考え、自分で出した答えや結論は無視できないものだ。人から押し付けられたー外からもってこられた意見なら、反発をもって、撥ね退けることもできるがーあの神は、自身の考えは決して明言しない、だから、人は、意見を押し付けられた気にならないし、押し付けられない意見には、そも、反発できない。しかし、自分で考え、出した結論は…一時、見ないふりして無視したり、棚上げすることはできても、自分の内部から生じたものだから、完全に拒否して、撥ね退けることはできない、見ないふりはできても…ーだって、それは、自分が、自分の頭で考えて出した結論なのだから、いわば自分の一部だ…一蹴などできず、心のどこかに留まることになる。

そして、一度、自覚してしまった思いというものは…誇り高い人間ほど、なかったことにしたり、無視はできないものだ。

まったく、あのソーマ神が揺さぶりをかけたのだとしたら…人のよさ気な笑みを浮かべながら、どれほど容赦なく、ラートリー女神を揺さぶり、翻弄したことか。質問に次ぐ質問を呈され、ラートリー女神も、息つく間もなく、己の行いを考え直し、省みざるをえなかったであろうし、結果、かなり、心が揺らいだことだろう、さもなくば、1回の雨季を挟んで、あんなにも、あの女神の態度が変わるはずもない。

しかし、ソーマ神は、雨季の間、何度も俺たちともった宴の席で、自身が、ラートリー女神にそんなちょっかいをかけたことなど、おくびにも出していなかったな、とオスカーは思い出す。これも…ソーマ神のテストなのだろうか?俺が彼の仕掛けた裏工作に気づくほど目端が効くかどうかを見る…いや、ソーマ神にとっては、ラートリーの信念を揺らがせるという結果のみが大事で、それを誰がやったかも、それに俺が気づくかも、どうでもいいことだから、何も言及しなかったのだろうか…その両方かもしれんな。

そして、確かに…考えれば考えるほど、ソーマ神のこのアプローチは、ラートリー女神にはとても有効な手段であり…かつ、俺の…俺たちの未来のために必要不可欠だということが、よくわかる…。

だって、たとえ、俺とアンジェリークが、どれ程深く心を通わせようと、ラートリー女神の邪魔や介入が残ったままでは、結局、会えるのは、この夜明けの僅かな時間、場所は、ここ空の通廊の上だけになってしまう、

しかし、ラートリー女神の性分では、俺が「彼女の実体化を阻害しないでくれ」と懇願したとて、鼻で笑ってあしらうだけだろう。他の神々からの同様の箴言だって、無視される可能性が高い。ラートリが、己の行為への大儀に絶対の自信を持っている限りは、だ。

しかし、ラートリーが、己の行いは、アンジェリーク本人からの願いを蔑ろにしているのと同義だと、気づけば…

さすれば、彼女自身、己の行為に疑問をもったり、大儀への自信がぐらつくかもしれない、畢竟、夜間のアンジェリークへの縛りも緩もうし、ウシャス実体化を阻止すること自体を、取りやめざるをえなくなるかもしれない。

そう、外からの苦言だけでは、ラートリー女神は行いを改めたりすまい。彼女自身の物の見方、考え方が根本的に見直されることなくば、彼女の行いが変わるはずがない。そして、彼女の行いが変わらねば、俺とアンジェリークが共に過ごす時間は、永遠に増やせない。

だが、ソーマ神は、今の事態を打開するための布石をうち…端緒を…ラートリーが己の行いに疑問を持ち、延いては行動を改めるための、端緒を拓いていてくれたのだ、この雨季の間に…

となれば…話は別だ。

アンジェリークが哀しむかもしれないといって、事実の上澄みしか告げずにいたら…告げ口のような真似は嫌だと、俺が感情論に留まっていたら、ソーマ神のおいてくれた布石を俺は無駄にしてしまうことになる。

ソーマ様の尽力を生かすためにも…あなたの「協力」、俺は、ありがたく活用させせいただこう。あなたと同じやり方で…これが、彼女を真実の幸せに…目隠しされ囲い込まれた幸せに留めおくのではなく、彼女が、自らの意思で欲し、自らの力で手にする幸せへと導く布石だと、信じて。

《ねぇ、オスカー、どうしたの?今、一瞬、何か、火花がはじけて閃いたような思念が迸ったのを感じたけど…オスカーの考えが…伝わってこない…ラートリーの様子が、この乾季に入ってから変わったことって、何か…やっぱり、心配なことなの?》

《ああ、すまん、アンジェリーク、その…ラートリー女神の様子が変わったのは、この乾季に入ってからだと君から聞いて、その…原因を考えていたんだが…先の乾季と、今の乾季で、ラートリー女神の君への態度が違う…変わったのだとしたら…まず、君自身に変化があって、それがラートリー女神の態度も変化させた、ということはないか?アンジェリーク、君にも、先の乾季とこの乾季の間に、変化があったと、さっき言っていただろう?》

《え?私…ええ、そうよ、オスカー…確かに、私は、最近、意識しても、夜に体をもてなくて…それで、おかしいなって思って…》

アンジェリークはオスカーの言葉に意表を突かれた思いだった。自身の変化がまずあって、そのために、ラートリーの態度が変わったのかもしれない、なんて、そんな視点を考えもつかなかったからだ。

でも、オスカーの言うことは、思いもよらなかったが、説得力があった。

そうよ、だって、そもそも、私自身に「おかしいな」と思うことがあって…意識しても、夜間に体がもてなくなっている、この不可解な現象を、アンジェリークはラートリーに相談したかったのだから。そして、この現象は、確かに、最近になって気づいたこと…前の乾季の時には気づいていなかったことで、そして、ラートリーの態度がおかしいのも、この乾季に入ってからのことだわ、確かにオスカーの言うとおり…。

でも、私自身の不可解な状態が、ラートリーの態度の変化に、どう関係があるの?あるとしたら、何?

考え込んでしまったアンジェリークに、オスカーは、続けて、こう、尋ねてきた

《それならアンジェリーク…君は、そのことを、ラートリー女神に相談したい、尋ねたいと考えていなかったか?君とラートリー女神は姉妹神だから…自分の変化に関して、ラートリーなら何かわかること、知っていることがあるかもしれない…そんな風に考えなかったか?》

《!…すごい、どうしてわかるの…オスカー…オスカーは百神の王だから…そんなことまでわかってしまうの?》

《その…君がラートリーに尋ねたい、相談したいと考えていること、それは、先の乾季から抱えていた疑問だったか?》

《…いいえ…この乾季に入ってから…前の乾季の時には、抱いてなかった…気づいてなかった疑問よ…だって、私が自分の変化を自覚したのは、この乾季になってからですもの》

《では、まとめてみよう。君は自分の身に起きた変化に疑問を抱き、それをラートリーに相談しようとした、そして、ラートリーの態度はこの乾季に入ってから変わったんだよな?…具体的には…ラートリーは、どんな態度を取った?どう変わったと君は言った?》

《…ラートリーは私と目を合わせなくなったわ…声もかけてこない…今朝、久しぶりに目があって、それで私から話しかけたら…疲れてるっていって、すぐに、眠りに行ってしまった…》

《君には惨い言いようになるかもしれないが…自分のことと切り離して、客観的に考えてみてくれ…人と目を合わせない…話を避ける…逃げるように立ち去る…それは、どういう時だと思う?》

《話しかけられたくない?》

《重ねて聞くが…それは、いつから始まった?》

《この乾季に入ってから…》

《この乾季に入ってから、君は自身の変化を自覚しー具体的には、夜、意図しても、実体化できないという問題だな、そのことをラートリーに相談しようと思っていた…が、ラートリーは、君に話しかけられるのを恐れているかのように君を避けている…となると、ラートリーの振る舞いの意味は…俺には…明白に思える》

《オスカー…それは…ラートリーは、私が、ラートリーに私の抱えている問題を最初から知ってたか…少なくとも察してて…でも、それに答えたくなかったから…私に声をかけられるのを避けていた…そう、いいたいのね…》

《もちろん、これは状況証拠から導いた憶測にすぎんがな…そして、重ねて確認するが…君は、ラートリーに、具体的にどんな相談をしようと考えていた?》

《…それは…私は、先の雨季から、夜に身体をもとうと思っても、もてない…だから、その理由…夜の間のことなら何でも知ってるラートリーなら、私とも姉妹神だし…何か、思い当たるところがあるんじゃないかと思って…相談したいと思っていた…》

《だが、ラートリー女神は、君から声をかけられたくなくて、君を避けていた…それの意味するところは…》

《ラートリーは、私が、彼女に相談したい問題を最初から知ってた…でも私から何も相談されたくない、尋ねられたくないとも、ラートリーは思ってた…だから、私を避けていた…ということね?…そして、その意味するところは…!!!…まさか?…そうなの?…オスカー…》

《そうだ、君の考えた通りだろう。ラートリーは、君の相談の内容を察していた、が、その相談にのりたくはなかった…というのも、君が困っている問題の原因に、心当たりがあったからで、しかも、尋ねられても、君に答えたくはなかったからだろう…》

《ああ…やっぱり、そうなのね…私は、まだ、このことを、誰にも何も相談してなかった。なのに、ラートリーには、私の問題に心当りがあった…ということは…ラートリーが、私の実体化を阻んでいた、その当人だったから…と、オスカーは、そういいたいのね…》

《そうだ…》

《そうよ…考えてみれば…ラートリーなら雑作もないことだわ…元々、あやふやな私だし、夜のラートリーは文字通り、全知全能で万能なんですもの…私が姿を現そうとする気配なんて、簡単にわかるだろうし、その焦点がわかれば、まとまろうとしている気を散じるのなんて…本当に簡単なことのはず…いえ、そんなことができるのは、ラートリーしかいないはず…なのに、私、どうして、今まで…今、オスカーにヒントをもらうまで、何も気づかなかったのかしら…》

《ラートリーが、そんなことをする理由も意味も、君には、思いもつかないからだろうな》

《そうね、それも、オスカーの言うとおりだわ…私には、何故、ラートリーがそんなことをするのかわからない…だからラートリーが、私に身体を持たせまいとしていたなんて、思いもよらなかったのね…》

《なら、それも…その理由も考えてみてくれ。ラートリーが、何の目的もなく、気まぐれや悪戯で、そんなことをすると思うか?君に体を持たせない、それ自体が、目的だったと思うか?》

《いいえ…ラートリーは、生真面目だし、理屈の通らないことは嫌い…そんな意味のないことはしない…だから、何か理由があると思う…》

《と、なれば…ラートリーが、阻止したかったのは、君が身体を持つ、そのこと自体ではなく、君が身体を持ってやろうとしていたこと…とは、考えらないか?君は、夜に身体をもって…何をしようとした?何をしたくて、実体化しようとした?》

《それは、もちろん…雨季の夜間になら、オスカーに会いにいける…昔みたいに…火の泉で一杯おしゃべりしたみたいに、いつもより長い時間、オスカーと一緒にすごせると思って…でも…どんなに意識しても、身体をもてなかったから、私、この雨季にオスカーに会いにいけなかったの…っ!!!…オスカー…そうなの?…ラートリーは、私をオスカーに会いにいかせたくなかった…だからなの?…》

《そうだ…》

《!…なぜ…?オスカー…全然驚いてない…もしかしたら、オスカーは、ご存知だったの?私がラートリーの干渉で身体をもてなくなっていることも…その理由も…》

《ああ…実は、ラートリー女神本人から聞いていた、俺がスーリヤになったその日に、その夕刻に…俺がスーリヤでいる限り、夜に君を実体化はさせない…君には、決して身体を持たせない…夜明けの儀式以外、君と俺とが会う機会は決して与えない、とな…。今まで、黙っていてすまなかった…だが…そのことを、俺から君には…》

《ああ…オスカー…今、あなたの哀しみが、響くように伝わってきたわ…私が、心痛めると思って…私とオスカーが仲良くするのを、ラートリーは快く思っていない…それを知ったら、私が哀しむと思って、何もいわずにいたの…》

《ああ、つい先刻まで、しらせるべきか、どうか、迷っていた。君が実体化しようと試みなければ、ラートリーの干渉が、実際にあるかどうかは、わからないし…憶測だけの俺の言葉では、君に納得してもらえるかも、わからなかったし…証拠もない時点では、君に…仲の良い姉妹である君に、ラートリー女神を悪く言うようで、それも嫌だった…だが、君自身が、身体をもてないことを疑問に思うようになっていたから…》

《そうね…実際、体がもてない…そして、ラートリーが私を避ける…この事実があったから、私、オスカーの言葉が、すとんと腑におちたもの…でも、ラートリーが、私を避けていなければ、私、実体化ができないことに、何か、違う理由を探していたかもしれない…だって、本当にわからないの…何故、ラートリーは、私とオスカーをあわせたくないの…?その所為で、私と目もあわせない、口もきいてくれないなんて…たった二人の姉妹なのに…》

《アンジェリーク…》

《ごめんなさい、オスカー…オスカーは、私がこうして哀しむだろうって心配して、何も言わずにいてくれたんだって、わかるの、ありがとう、オスカー。オスカーは本当に優しい…なのに、どうして…どうしてなの、ラートリー…オスカーは、こんなに優しい…そして、並ぶ者無き高貴な百神の王なのに…昔とは違うのに…昔、オスカーが神職を賜ってなかった時、火の泉で、オスカーが私に近づこうとした時…それを留めようと、ラートリーは介入してきた…それは、まだ、わかるの…私に触れていいのは、スーリヤ様だけと天則で決められているから…でも、オスカーは今はスーリヤ様で、私に会うために…私に触れられる唯一の存在になるために…大変な努力をして、スーリヤ様になってくださったのに…なのに、何故、今も、ラートリーはオスカーと私が会うのを、嫌がるの…?》

《それは…俺が君に恋しているから…君を愛し、君を1人の女性として欲しているから…欲してやまないからだ…》

《オスカー…それは、どういうこと…?オスカーは、私を愛してると言ってくれる…それが、どうして、自由に会わせてもらえない理由になるの…?私だって、オスカーが好きなのに…オスカーと、もっと、たくさん、一緒にいたいのに…》

《それが、理由だ、アンジェリーク。君もまた、幾許かの情愛を俺に抱いてくれていること、そして、俺がスーリヤであること、それが…ラートリーが、俺と君とが、これ以上、親密になることを恐れ、厭う理由だ…》

《どういうこと?わからない…わからないわ、オスカー…》

《君が知るスーリヤは俺で何人目だ?アンジェリーク…》

《!…わからない…覚えてない…だって…数え切れないほどだったから…いつも…いつのまにか、私を抱く腕は変わっていて…》

《そうだ…スーリヤの在位は、普通の天空神に比すと、驚くほど短い…だからこそ、俺はスーリヤの御名をいただけたし、君をこうして抱く権利を与えられたのだが…そして、歴代のスーリヤの在位は、長くて数百年、数百年たてば、また、新たなスーリヤがその地位につく…普通ならそうなろうし、誰もが、そうなるだろうと考える…》

《!!!…嫌!オスカー、嫌よ、オスカーは、変わらないで…このまま、スーリヤさまでいて…》

《だからだ…アンジェリーク…君と俺とが心を通わせれば通わせるだけ、もし、俺がスーリヤの地位を退くようなことになった時、君は哀しみ、寂しく感じる…感じてくれることだろう、憂いに心を曇らせるだろう…》

《いやよ、そんなこと言っては嫌!》

《聞いてくれ、アンジェリーク…だから、天界は、君とスーリヤが心を通わせないよう、色々な策を講じてきたんだ。念話の存在を教なかったのも、その所為だ。スーリヤの在位が不安定であり、そんな不安定な存在と心を通わせ、心の結びつきが深まれば深まるほど、いつか来る別れの時は辛く、切なく、悲しいものになってしまうこと…そして、天界の神々は、君をこよなく愛し、大切に思っている…だから、どんな憂いであれ、哀しみであれ、君に微塵も感じさせたくなかったんだ……スーリヤの在位は限定的であると天界は考えているからこそ、ウシャスがスーリヤと心を重ね、繋いでしまったら、そう遠くないうちに訪れる別れに、アンジェリーク、君が嘆き悲しみ、打ちひしがれると…それを、天界は恐れ、案じていたんだ…》

《!…私のため?私を哀しませないため……将来、オスカーが、スーリヤ様の地位を退く日が来た時、その別れの辛さに、私が酷く嘆き哀しまないように…?そのために…今、ラートリーは、私とオスカーを会わせないようにって…これ以上、仲良くならないようにって?》

《そうだ、ラートリー女神は、俺が君を深く愛していることを知っている。だが、それは…数年の寿命しかない獣が人間の乙女に恋するも同然だとラートリー女神から言われた。天界の尺度では、極短い年月で、力を失い、この天界から去ってしまうような存在と…つまり、俺と君とが深く心を通わせるほど、別れが来た時に、君が、悲しく寂しい思いをするだけだから…だから、俺の恋を絶対、成就させはしない…と、ラートリーは言った。君に束の間の恋の幸せ、喜びを知らしめた挙句、すぐさま別れることになるのは、君にとってどれ程残酷なことか、君にそんな悲しい思いをさせることになったら、どうするのだと…それなら、何も知らないままでいたほうがいい、別れの辛さに嘆くくらいなら、最初から、スーリヤと心など繋がないほうがいいのだと、ラートリーは言っていた。ラートリーは、君に、どんな哀しみも苦しみも味あわせたくないんだ、それだけ、君を大切に思っているし…それだけ俺は見込まれたということでもある。君と心通わせ、君に、別れを惜しんでもらえる存在になる恐れがあると…な》

《オスカー…私…どんなに遠い将来でも、オスカーが、スーリヤ様でなくなってしまったら…天界から去って…私の前から姿を消してしまったら…って思ったら、今、もう、恐くて、哀しくて仕方ないわ…なのに、ごめんなさい、オスカー…ラートリーが、あなたにそんなに失礼なことを言っていたなんて…私に身体を持たせないなんて…そんなことをしても、意味がないのに…だって、私とオスカー…もう、こんなに心を通わせているのに…私は、オスカーのことが好き、だから、今だって、オスカーが、いなくなってしまったら…そんなこと、考えるだけで心が凍りつきそうになる…嘆き悲しむに決まってるのに…なのに…》

《アンジェリーク、君が謝ることはない、それに、ラートリー女神の行いは、ひとえに君の安寧を願い、君の幸せを願うゆえの行為でもある…それが、多少、独りよがりであったとしても、その気持自体は尊いものだし、俺には、ラートリーの気持が理解できる。彼女を失礼だとも思っていない、だから、そんなに心を痛めないでくれ…》

《え?…だって…オスカー…》

アンジェリークは、酷く動揺していて、自分の不安や心の揺れに気がいってしまい、すぐには、わからなかったのだが…オスカーが、自分の哀しみ、動揺を鎮めようと、落ち着いた思念を送ってくれていることに、程なく気づいた。こんな衝撃的な…悲しく恐ろしい将来の可能性を話しているのに…オスカーの心は、全く、揺らいでない…いいえ、むしろ、すごく、力強く…しっかりと輝いてる…どんな困難にも負けないという気概に…何も諦めはしないという強さに満ち溢れてる?

《オスカー…オスカーは…恐れてない…嘆き哀しんでもいないのが、わかる…オスカーは不安ではないの?何故?いつか…私たち、会えなくなってしまうかもしれないことが…》

するとオスカーは、思念で、力強い笑みを送ってきた。

《心配しなくていい、アンジェリーク、大丈夫だ、俺は今までのスーリヤとは違う、そんなに易々と…早々と、この神力を燃え尽きさせ、天界を去ったりしない。君が望んでくれれば…君が望む限り、永遠にスーリヤとして、この世を統べ、百神・万民を照らし導いてみせる。君が望む限り…俺はずっと君の傍にいる、君をこの手で抱き続ける、そう約束する》

《!?…オスカー…そんなことが…できるの?》

《ああ、勝算?自信?言い方はなんでもいいが…スーリヤが神として短命だったことには訳がある、だから、その原因を取り除いてしまえばいいんだ、俺には、そのあてがある》

こう自信をもって断言できるのも、アンジェリークを安心させてやれるのも、太陽神とウシャスの関係性、その秘められた事実を、ソーマ神が包み隠さず教えてくれたからこそだった。オスカーは、胸の内で、改めてソーマ神に感謝していた。

《すごい…オスカー…オスカーの強い意志が…波動になって、私に伝わってくる》

《そして、いいか、アンジェリーク、スーリヤが短命でないのなら…ラートリー女神の行いには、意味がなくなるんだ、なぜなら、ラートリー女神が、案ずるのは君の哀しみ、君の憂いなのだから。君と俺とが心を通わせても、早々に別れがこなければ、君が、憂いに沈む心配はない。君が俺と共にいることを願ってくれ、その間、俺がスーリヤでいられれば、君が哀しみ傷つくことは決してない。そして、アンジェリーク、俺自身は、君をこの手に抱くこの幸せ、この特権を他の誰かにくれてやる気など、さらさらないぜ?》

《ああ、オスカー…ほんとに、オスカーは…そうできると信じてる…固い決意が伝わってくる…》

《ああ、君が、俺と共にいることを望んでくれる限りは…俺はスーリヤでいるつもりだ、ただ…もし…もしも、君が俺を必要としない時がきたら…その時も、ずっとスーリヤでいたら、君に重荷だろうから、未来永劫とはいわずにおくが…》

《そんなこと…そんなこと、絶対にないわ!私、オスカーと一緒にいたい…ずっと、一緒にいたい…オスカーみたいに優しい…オスカーみたいに、私自身を…女神と知らなくとも、私と心を通わせようと思ってくれた人なんて他にいないもの!ウシャスである私にも…こんなに優しくしてくれたスーリヤ様は、他にいらっしゃらなかったもの…》

《それをラートリーに確信させることができれば…君の実体化を阻む理由も大儀も、ラートリーにはなくなる》

《そしたら、私、もっと、オスカーと一緒に…長い時間、オスカーと一緒に過ごせるようになれる…のね?そう、なりたい…そのためには、どうすればいいかしら…》

《まず、俺が、絶対に短命なスーリヤでは終らないことを、どうにかしてラートリーにわかってもらう、そして、できれば…君は…君自身の気持を…よく見据えてくれ、アンジェリーク》

《あ…私が、オスカーを好きな気持が、オスカーと同じ『恋』かどうか…それが確信できたら、ラートリーも、私たちのこと、認めてくれる?そういうこと?…》

《ラートリーが、どう出るかの確証はない…だが、俺が、未来永劫スーリヤでいる確実性は、絶対に高くなる。君への恋心が、俺の神力を安定させてくれるから、その上で、もし、君と真実、結ばれることができれば…尚更に…俺は、絶対に、君を放したくない、君と離れたくないと強く思うだろうから、俺の神力は、君との愛を源に、まさしく、この太陽と同じ無窮無限の力となることだろう…俺は君を愛しているから…心から愛しているから…》

《オスカー…》

《ああ、今日、話せるのは、ここまでのようだ…いつのまにか…君の華奢な肩に…かわいらしい乳房の膨らみに…もう、この手が届いてしまう処まで、来てしまっていた…》

《オスカー…もう、こんなに近くまで来てくれていたのね…なら…もう…早く…私を抱きしめて…》

《俺も…もう、限界だ…キスを…アンジェリーク…》

オスカーの柔らかな唇が、アンジェリークのそれを覆い、同時に、唇以上に熱く柔らかなものが、アンジェリークの口腔内に、荒々しく入り込んできた。

束の間、アンジェリークは、びっくりした。唇を触れ合わせる以上に、オスカーが自分の奥深くに入ってきたのは、これが初めてのような気がしたから。でも、すぐに思い出した、オスカーと再会したその時に、オスカーに、はじめて口づけを…この心騒ぐ、心満たされるふれあいを教えてもらった、あの時、ほんの少し、ほんの僅かな時間だったけど、その時も、オスカーは、私と深く口づけようとして、でも、驚いた私は、すぐ、触れていた唇を振りほどいてしまったことを…でも、今は、わかる、これは、オスカーが私とより深く繋がりたいと思ってくれている気持の現れだって、そして、私は、オスカーのその気持を、喜びをもって、受け入れたいと思っているって…その気持のまま、アンジェリークは、反射的に、オスカーの舌を、一瞬間だけだったが、吸い返し、その上で、光となって飛び散った。

この上ない幸福に満たされた艶やかな思念が、空一杯にひろがり、目覚めたばかりの世界に、生き物達に降り注ぐ。満たされた思いを世界に振りまく一方で、アンジェリークは、己が意識が希釈されて何も考えられなくなる寸前

『ラートリーにも、伝わればいいのに…伝えたいのに…今、私が感じている幸せな気持が…私、今、オスカーと出会えて、オスカーと一緒にいられる時間が何よりの幸せなのって…それを…せめて、それだけでも伝えたい…だから、ラートリー、お願い…私に身体を持たせて…オスカーよりも、まず、あなたに会いに…話しに行かせて…』

真摯に、こう願い、願いながら、ウシャスの光気は、スーリヤの放つ光と熱に溶けて交じり合い、この世界の大気に一杯に広がっていった。

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