百神の王 47

羊皮に認められた書面が、妙に読みづらい、そう思って、ヴァルナが、ふと、顔をあげてみると、周囲が驚くほど暗くなっていた。

「なんだ、これは…まだ、日没には早い…いや、太陽の馬車は漸く中天に指しかかろうという刻限に、なぜ、宮の中が、これほど暗いのだ…?」

乾季といえど、太陽が、気まぐれな雲に一時隠されて、燦燦とした陽光が遮られる時は間々ある、だが、それでも、乾季は雲の色も、雲のかかる空の色自体も明るい。今は、雨季のようにどんよりした灰黒色の雲が全天を覆うわけではないのだ、こんなにも…昼日中に灯火が欲しくなるほど、室内が暗くなるなど、考えられない…と思ったとき、ヴァルナは嫌な予感に背中を押されるように、宮の外に出た。

と、天上宮の回廊のあちこちで、神官と巫女たちが、ざわざわと落ち着きなく、いかにも不安げな様子で、一様に天を仰いでいる光景が目に入った。

ヴァルナは「もしや」という危惧と「まさか」という思いを同時に抱きながら、自身もあわてて空を見上げた。

と、そこには、燦然と輝く真円の太陽の姿はなかった。

中天にあるのは、円の半ば以上が闇に喰らわれたように真っ黒になった、しかも、漆黒の部分が時々刻々と増殖し、侵食の度合いを深めつつある、異様な太陽の光景だった。

その時、反射的にヴァルナは、スーリヤが、軌道交差のすれ違い方を、その前後を間違えたのだ、と思った。

「いくら、初めての軌道交差とはいえ、あの者が、よもや、このような単純なミスを犯すなど、考えられん…ソーマと綿密に打ち合わせも済ませていたであろうに、これは、一体、どうしたことか…」

今日は軌道交差があることは、天上宮では周知の事実だった。少し、冷静になってみれば、今、太陽が黒く欠けつつある異様な光景も、月が太陽の表面を横切って、日輪とそれの放つ光輝を遮っているからであり、ある程度、時間がたてば、太陽は、また、月の影から姿を現すということは理屈の上では、わかるはずだった。恐れたり、心配するにはあたらない、極単純な自然現象だ。

ただ、年若い神官や巫女たちは、生まれてからこの方、軌道交差といえば、月が太陽の裏側を通ることだと思っていたし、それしか知らない。月と太陽の軌道上の位置如何で、太陽が月の裏側を通れば、太陽も欠け、昼日中でも姿を隠すことはあるし、その間は、昼間といえど、一時的に暗闇に世界は覆われることも知らないし、たとえ、そこまで考えが及んだとしても、未知の体験に、どうしても動揺してしまうのだろう。

だから、これは単純なミスであっても、ヴァルナは、日没後にスーリヤに厳重に注意せねばと考えた。

軌道交差の予定も仕組みも熟知しているはずの天上宮の神官たちでさえ、ことは、月と太陽のどちらが表になってすれ違うかという単純な事象なのに、太陽が欠けるという未曾有の光景に、浮き足立ってしまうのだ、何も知らない地上の民が、この太陽の異様な姿に、どれほどうろたえ、恐れ慄いていることかと思うと、処分は免れ得ない。

「今頃はスーリヤも、自分の犯したミスに気づいて慌てふためき、地上に与えた影響を気にかけていることだろう…」

そう考えたヴァルナは、自分の意識をスーリヤの目に同調させようと試みた。

そして、頭の中に結ばれた映像に、瞬間、絶句した。

ヴァルナの脳裡に浮かんだのは、遥か眼下に見渡せる地上の様子ではなくー普段、スーリヤと意識を同調させた時、ヴァルナに見える映像は、広がる緑の大地や、ゆったりと流れる雄大な河川、さもなくば、群青の大海原のいずれかの俯瞰であるが、今、見えたものは、その、どれでもなかった。そこは、見知らぬ小さな部屋の中だった。室内は温かみのある朱金の灯火に照らされており、部屋のーいや、視界の中心か?ーには、絞りたての乳の色をした肌と、ふんわりしたハチミツ色の巻き毛をもつ、ほっそりとした少女のように愛らしい女性が、生まれたままの姿で横たわっていた。その肌も髪も、生き生きと弾けるような色艶で、室内を満たす朱金の光をきらきらと反射しているかのように、まばゆく輝いて見えた。

一瞬、ヴァルナは混乱し、あわててスーリヤとの接触を断った。一瞬のこととて、確信はなかったが、脳裡に映った女性の顔が、どう見ても、ウシャスとしか思えなかったからだ。ヴァルナは、自分がスーリヤの目と意識を同調したのではなく、スーリヤの思念ー願望とか、想像とか、そういうものを読んでーというより盗み見てしまったのかと思い、酷く、居心地の悪い思いをした。

この刻限に、ウシャスが天空の道上で実体化できるはずはないのだから、私が今、見たものは、スーリヤの願望以外ありえない、そう思って、再び、今度こそ、間違いなくスーリヤの目に、意識を同調させようとし、そして、やはり、意識野に結ばれた映像は、全裸で毛皮の敷物の上に横たわる…酷く悩ましげで、あでやかで、そして喜びに満ちた表情のウシャスの姿だった。

「なんだ、これは…何故、私にウシャスの姿が見えるのか…これではまるで、今、スーリヤの眼前に、ウシャスが生まれたままの姿でいるかのようではないか…」

そう独り言ちた言葉が自分の耳に入ったことで、思考が刺激され…そこでヴァルナは、はっと気づいた。

軌道交差時に欠け行く日輪、一時的に世界を覆う暗闇、それが、スーリヤの単純なミスでなどではなく、意図されたものだったとしたら?かの神が、軌道交差の仕組みを利用して、月と太陽の位置を故意に入れ違え、恣意的に、日中に暗闇を出現させたのだとしたら?

何のために?

そうだ…決まっている…目的は明らかではないか!

だが、一人スーリヤの意図だけで、太陽と月の位置は決められまい、しかも、ただ、月が太陽の表を横切ったにしては、今、世界を覆う闇の色は深すぎる。まるで、日輪の発する熱と光輝が全て、失われたようではないか…

その時、今朝に限り、スーリヤの出立を見送っていたソーマとトバシュトリの姿が、そして、彼らが「軌道交差を見届ける」と言っていた光景が、ヴァルナの脳裡によみがえった。

「あやつら…全ては、計画づくか!?」

もしや、トバシュトリが、疲労困憊していたのも、今日、この時のために、何か企んでいたからだったのか…いつのまにトバシュトリを味方に引き入れていたのだ、ソーマは…いや、スーリヤか?ええい、今は、そんなことはどうでもいい。今、スーリヤの眼前に、ウシャスが存在するのは間違いない。そのスーリヤはといえば何処にいるかといえば…闇に侵食されつつあえるとはいえ、今現在、太陽は中天にある…そして、スーリヤは、太陽の馬車から離れることはできない…となれば、今のスーリヤとウシャスの居場所は…太陽の馬車の傍であることは間違いない…が、我が目に見えたのは、馬車の御者席ではなく、どこかの室内だった…ということは馬車の車内か!?…それだ!それしかあるまい。

「まにあうか…それ以前に私に、中天まで飛ぶのは可能か…」

ヴァルナは、あまり長距離の転移というものの経験がない。太陽神が太陽の馬車から離れられぬように、蒼穹神は天空から離れられない、という枷がある故、最上層から離れたことがないし、而して、転移というのは神殿間の移動に留まり、高低差のある転移は経験がない。だから、現在、太陽の馬車が在る中天まで、自分が上手く飛べるかどうか、全くわからない、それでも、取り返しのつかぬ事になる前に…スーリヤとウシャスが真の夫婦として契りを交わしてしまう前に、なんとか、それを阻止せねば!

そう思って、転移すべく、太陽の馬車の姿を意識して思い浮かべようとして…ヴァルナは、自身の思念に、雑音…耳障りな砂嵐のような思念が、割り込んでくるのを感じ、目的の映像を思念に結べず、転移が果たせなかった。

「ち…どうしたことだ…」

再び、太陽の馬車を思い浮かべ、そこに飛ぼうと意識する…だめだ…どうしても集中できない…

焦るヴァルナの耳に…いや、これは思念か?…重々しく深みのある声が響いた。

「何度試みても無駄なことだ…」

振り向かずともわかった。悠久ともいえる歳月、対の神として共に生きてきた者の声音だったから。

「ミトラ、今のは貴様か!貴様が私の邪魔を…」

「邪魔はどちらだ…おまえは、夫婦の契りの成就を、そして、スーリヤが永劫のスーリヤとなると宣言した契約に介入、妨害しようとしているのだ、契約神として見過ごすことはできんな…」

「何を世迷言を!」

言い捨てざま、ヴァルナは、再々、転移を試みる、が、やはり、思念が集中しきれない。

「ちぃっ…なぜだ…」

「何度、試みても無駄だと言っているだろう、おまえに私は振り切れん。天則は…つまり理は、私の方にあるのだからな。契約成就の…特に高位神が正式に交わした契約への故意の妨害は天則に反する。故に、おまえが、何度転移を試みても、その目的が、スーリヤの契約の成就の妨害を企図したものである以上、契約神たる私の神力を超えることはできない…」

「契約だと?…一体何のことだ?…スーリヤは、いつの間に、そなたと、そも、何の…どんな契約を交わしたというのだ!?」

「だから、言っている。あれは…あのスーリヤは、私に…いや、この契約神ミトラの身を介して、正式に天則に誓いをたてた。自分が最後の、つまり永遠にして唯一無二のスーリヤとなると。まあ、ウシャスと真の夫婦になろうと思えば、それは必須の条件だからな、私の手で、契約を交わしてやった。あわせて、あれが、ウシャスと真実、夫婦として契る、という契約も、無論な」

ミトラは、瞬間、人の悪い笑みを口元に浮かべた。この契約を交わしたースーリヤに交わさせられた時のことを思い出していた。

まったく、あのスーリヤときたら、向こう見ずで恐れ知らずの契約を交わす一方で、取る戦略は、とことん周到だ。まったくしたたかな男よ。小気味よいほどにな。

『ウシャスの幸せのためとあらば、私の契約神としての力だろうが知識だろうが、好きに使え』といったのは、確かにミトラ自身だった。そして、その言葉どおりにスーリヤは、ミトラの能力と特質を抜け目なくーと言っては言葉が悪いが、尤も有効に、最大限に利用した。いざ、軌道交差が始まって、事の次第に気づいたヴァルナに、逢瀬の場に踏み込まれたり、邪魔立てされる心配が寸分もなきよう、契約神と正式な契約を交わすことで…つまり「ウシャスと真の夫婦となる」そして「自身が永劫に唯一無二のスーリヤとなる」という二つの誓いを交わすことで、スーリヤは天則そのものを自身の盾とし、味方としてしまったのだ。ひとたび天則に誓いをたて、正式な契約を交わせば、契約を無事成就させることを義務とするミトラ神、及び、天則そのものから、スーリヤは加護の力を受けられる。尤も、万が一、契約不履行の場合は、神力の一切を失い、その場で天界から堕とされるというリスクもスーリヤには課せられるが、スーリヤは、そんなリスクはものともせず、正式に契約を交わすことで得られる実利をのみ重視した。

確かに、私の神力は、このヴァルナとほぼ同等だ、ということは、素で力の張り合いをすれば、私も、相当消耗したであろうし、下手をすればー少しでも気を抜けば、ヴァルナに出し抜かれる恐れもないとは言い切れなかった。しかし、天則を交わし、その成就のためという大儀が成り立てば、その契約を守るため、私の力は、どの神をも凌駕する。おかげで、私は、このヴァルナの神力を抑えるのに、今、まったく、苦労せず、楽させてもらっているのだからな。

「…!…それでは…彼らの契りが成就されねば…彼らは神職を失い、あまつさえ、天から堕ちるということではないか!私に、手出しをさせぬために…私に介入を許さず、静観させるために、そなた…スーリヤに契約を結ばせたのか…なんということを…そなた、なんという、取り返しのつかぬことをしてくれたのか!」

「契約を持ちかけてきたのは、あくまでスーリヤの方だが…私が楽をさせてもらっているのは、まちがいないな。なにせ、私には天則という、錦の御旗がついている。おかげで、今、大した力を出さずとも、らくらくとおまえを抑えておけるわけだ。が、この事実をもってすれば…これだけで、理が、私とおまえ、どちらにあるか、自ずとわかるであろう?ヴァルナよ。おまえは、私の力を振り切れない、それは、おまえ自身のなそうとすることに理がないから…天則に反するからだ」

「ぐ…だが!ウシャスとスーリヤとが契るのを許して、取り返しの付かぬことになったら、どうするのだ!ウシャスの存在が損なわれでもしたら、そなた、どうやって…」

「繕いも償いも、必要にはなるまい。そも、理に反する無体な望みであれば、契約自体、成立せぬのだからな。まあ、ウシャスがこれから見知る事は、不可逆という点では確かに取り返しはつかぬとはいえるが…取り返しの付かぬこと、すなわち、不都合なことと決まっているわけでもあるまい…それでも、ウシャスの身が脅かされることが、どうしても心配でならぬというなら…その目で、直に確かめてみればよかろう?」

「なんだと?」

「今、おまえは、太陽の馬車に転移はできない、スーリヤとウシャスの婚姻を外部から邪魔立てする企図は、全て、契約神たる私の神力で抑えられるからな。だが、おまえの目がスーリヤとつながることは、妨害にはあたらないだろう、となれば、おまえがスーリヤの目と意識を同調させることは、私にも留め立てできぬ。ま、する気もないがな、せっかくの特権と能力なら、それで確かめてみてはどうだ?ウシャスが、今、どんな様子であるのか…その面(おもて)に浮かぶのは、どんな表情であるのか…」

「!」

「私としては、おまえが、スーリヤの目と意識を同調できることを、今ほどうらやましいと思ったことはないぞ。私だったら、迷わず、この目で確かめたいところだ、ウシャスが、今、どれほど幸せそうか、心から満ち足りているかをな。ウシャスが、幸福に満たされ、その美貌を一層輝かせ行く過程をつぶさに見届けられるのだから、まったく、うらやましい限りだ」

このミトラの皮肉?もしくは、挑発めいた言葉の影に『さすれば、おまえの反対、妨害、邪魔立てが、いかに、詮無きことであったか、むしろ、百害あって一分の利もないことが、身に染みるであろうよ』という言葉がー唇から発せられずとも、ヴァルナには、そう聞こえた気がした。

しかし、なにより、ウシャスの無事を確かめたくてたまらなかったヴァルナは、この時、ミトラの挑発に反発するどころか、無意識かつ反射的に、気がつけば、再々度、スーリヤと意識を繋げてしまっていた。

 

 

「きゃ…」

うつぶせにされた瞬間、アンジェリークが戸惑ったような声をあげたが、オスカーは、後背から、彼女の頤を摘まんで自分の方を向かせ、その唇を塞いだ。が、唇で唇を食むような口づけを与えると、すぐ、頤から手を放し、彼女の耳に、自分の声を流し込むように

「肘をついて、少し身体をあげて…」

と囁いた。

アンジェリークが、素直にーというより、オスカーの声の魅力に操られたように、手触りのいい毛皮に、腕をつく。白い背中がいくらか持ち上がり、彼女が頭をあげた分、金の巻き毛は、零れるような二つの流れになって彼女の華奢な肩におちる。後れ毛に彩られたうなじが、巻き毛の間から見え隠れする。と、オスカーは、誘われるように彼女のうなじに唇を押し当てるや、その唇をうなじ全体から、肩甲骨にかけて縦横に滑らせ始めた。

「あ…」

無意識にであろうが、彼女の背が一層しなって、上体があがる。すかさずオスカーは、前方に手を伸ばして、乳房を大きな掌で掬いあげるように包み込みしな、己が唾液に濡れて、すっかり硬く立ち上がっている乳首を親指と中指で軽く捻るように摘みながら、人差し指の腹で円を描くように、その頂点を撫でさすった。

「あぁあんっ…」

アンジェリークが小さく、いやいやをするように頭を振る。

その仕草に、むしろ、煽られたように、オスカーは、アンジェリークの背中のあちこちに、ちゅ…ちゅ…と唇を鳴らしながら口づけ、差し出した舌で、しなやかな背筋をなぞった。もちろん、腕は、前に回されて、乳房を愛撫したままだ。しっとりとした乳房の重みと吸い付くような肌の感触を、掌で味わい、染み入らせるように、たふたふと持ち上げるようにこねながら、指先は、休むことなく、乳首を愛撫する。軽く摘んでは、指の腹で、乳首を軽く押しつぶすように転がし、下から上へと、その堅い弾力を指先で弾く。

「あぁっ…あんっ…はっ…あぁっ…」

オスカーが、背中のそこここに口付けると、そのたびに、アンジェリークの白い背が、なまめかしく、小さくくねる。舌先で、背中のあちこちをくすぐる度に、アンジェリークのあげる吐息交じりの嬌声は、どんどん忙しなくなっていく。

オスカーには、アンジェリークが、心から、全身で、彼の唇に触れられることを喜んでくれているのが、ひしひしと伝わってくる。

無論、乳房への愛撫が、直裁に鋭く官能を刺激しているのは確かだが、それが主旋律だとすれば、うなじや背筋への口戯は、いわば、主旋律をより引き立たせる伴奏というところか。

そんなことを考えながら、オスカーは、アンジェリークに自分の重みがかからないよう、自身も肘で体重を支えつつも、己の厚い胸板を、なるべく彼女の背を覆うように密着させて、うなじから背中への口づけを繰り返していた。

と、オスカーの下で、アンジェリークが、夢見るように、訴えた。

「…オスカー…オスカーの身体、暖かい…背中にもオスカーの温もりが伝わってきて……素肌で触れ合うのって…ほんとに…こんな…幸せで…気持ちいいことなのね……」

「アンジェリーク…君も暖かい…それに…君の肌は滑らかで心地よくて…いくらでも、口づけたい…食べちまいたいほどだ…」

そう告げるや、きゅっとくびれた腰のラインを、ちゅっ…ときつく吸い上げる。

「あぁんっ…」

アンジェリークが、誘うように、身体をくねらせた。

素直に官能に身をゆだねてくれるアンジェリークがオスカーは愛しくてならない、直截な官能の喜びの発露が、自然な媚態となって、オスカーの情欲をさらに煽る。

背中や、腰のラインに口付けるだけでも、こんなに喜びを露にしてくれるアンジェリーク、ならば、今、既に、花弁は、俺の愛撫に応えるように、しとどに歓喜の蜜を零してくれているのだろうか、その花弁に直に触れたら、彼女はどれほどの喜びを示してくれるだろう、彼女が、素直に喜びを訴えてくれる程に、オスカーは、そんなことを、否応なく想像してしまう、早く、彼女も、俺と同じほどに欲情していることを確かめたいと思ってしまう。

オスカーは、意を決したように、体ごと、アンジェリークに触れる唇を徐々に下方へとずらしていく。無論、アンジェリークの官能が片時も褪めることのないよう、乳首を指先で捏ねては、軽く摘みあげながら。

身体を滑らせゆくと、きゅっとくびれてから豊かに張り出した腰のラインと、そこから続くはちきれそうに瑞々しい真っ白なお臀に目を奪われる。一瞬、乳房から手を離して、その、まろいラインを撫でさすれば、肌さわりは繻子のように、しっとりと潤って、オスカーの掌に肌そのものが吸い付いてくるようだった。一度、口づけたら、とてもではないが、自分からは唇を放せなくなってしまいそうだ。アンジェリークの肌は、それこそ、どこもかしこも、そんな妖しいまでの滑らかさ、心地よさに満ちていたが、オスカーは、今まで以上に夢中になって、アンジェリークの豊かな臀に、それこそ、雨の雫のように小さな口づけを、間断なく降らせた。

「や…あぁん…気持ちいい…くすぐったい…」

アンジェリークが、僅かに腰を浮かせて、オスカーの唇から逃れるように、それをくねらせた。その逃げるような仕草は、無意識なゆえに、また、オスカーを一層そそる。彼女が、軽く腰をくねらせる度に、大腿部の合わせ目が、ちらちらと光って、濡れたような艶を放っているのが、オスカーの目に入る、彼女が、自分でも気付かぬうちに、しとどに愛液を溢れさせているのだろうことが、その大腿部の濡れた艶色を見ているだけで、わかってしまう。どうかすると、淡い金の繊毛に彩られ、ふっくらとゆたかに盛り上がった花弁が見え隠れして、オスカーは、その度に、頭が沸騰する思いだ。

俺を誘惑するように濡れて、揺れる花弁に、舌を…いや、一刻も早く、いきり立った自身をねじ込み、根元まで沈み込ませてやりたいという、狂気のような欲望が、瞬間、オスカーの体内に吹き荒れる。

実際、オスカーのものは、もう疾うに猛りきって、下帯の窮屈さに悲鳴をあげていた。オスカーは、今、初めて、その窮屈さに気付いたように、ここで漸く、自身の腰布と下帯をむしりとり、無造作に脇に投げ置いた。彼女の薄衣を雲を払うように恭しく取り去った時とは、全く違う荒々しさで。

が、自身が解放されると同時に、彼女のかわいい懇願が頭に蘇る。全身、くまなく口づけて欲しい、その唇で触れてほしいという、いじらしく、健気で、オスカーには、何より嬉しいおねだりの言葉が。

そうだ、それは、俺自身にとっても無上の喜びではないか。彼女の花に、接吻を許してもらうこと、思う存分、この花を、めでて、愛して、一層豊かな歓喜の露を零させることは…

オスカーはアンジェリークの腹に腕を回して、ぐっと抱きしめざま、手品のように、もう一度、その身を、くるんと表に返した。

一度、軽く口づけざま、すかさず、オスカーは、片手をアンジェリークの膝頭に手をかけて、極、自然な様子で脚を開かせる。もう片方の手は豊かな腰に添えられ、綺麗にくびれたラインを慈しむように撫でさすりながら、オスカーは、アンジェリークの脚を己の体躯で割って、流れるように自然に、彼女の脚の間に己が身をすべりこませた。

と、アンジェリークが、僅かに身じろいで、オスカーの方を見た。

「オスカー……私のおなかや脚にも口づけてくれるの…?」

アンジェリークが、ほのかな期待の色を見せつつも、どこまでも無邪気な表情で、オスカーに問うてきた。

自分の脚の間を割る形で、オスカーの身体があることに、アンジェリークは、些かも、たじろいだり、恐れ気を見せる気配はない。

男女の情交に知識のないアンジェリークは、オスカーの意図を理解していないから、というのも、もちろんあるだろう。

だが、それ以上に、アンジェリークは、この俺に全幅の信頼を寄せてくれているから、というのが大きいように、オスカーには思えた。

実際、アンジェリークは、オスカーが、どんなものであれ、自分に不快な思いや、嫌がることをするはずがない、オスカーが、与えてくれるのは、無限ともいえる慈しみだということを、本能的に理解していた。

自分の身体が、オスカーの唇に触れられることによって、こんな豊かな快楽を紡げることも、心地よい響きを奏でることも、アンジェリークは、ついさっきまで知らなかった。オスカーが触れてくれる処は、そこがどこであれ、アンジェリーク自身、不思議に思うほど、この上なく心地よくて、頭がくらくら・ふわふわと、酔ったような心持ちになる。しかも、オスカーに触れられる処が増える程に、たまらなくやるせなく、胸が切なく苦しくなるような、それでいて、そのままもっと続けてほしいような、そんな新しい感覚を知る。それが繰り返されて、どんどん降り積もっていく。

だから、オスカーが私に口づけてくれる場所は、それが、どこであろうと、たまらなく私を幸せにしてくれるってわかってる、そう思えたから、アンジェリークは、オスカーが、自分の身体のどこに口づけようと、それを厭うたり、恐がる気持ちはまったくなかったし、オスカーは、身体中、口づけたいと言ってくれていたから、次は、きっと脚に触れてくれるのだろう、と、単純に考えただけだった。

ただ、自分では、何も意識したことがなかった背中に触れられることが、あんなにも心地良いと知らなかったこと、ましてや、乳房とその先端を指で弄られ、舌で舐られると、狂おしいまでの心地よさに翻弄されることは、もっと知らなかったから、次、オスカーが、どこに触れてくれるつもりでも、きっと、同じように、心地よいのだろうという予想が、アンジェリークに無意識に期待を抱かせていたことも否めない。でも、その期待の色に、淫らでなまめかしい雰囲気は、ほとんど感じられなかった。アンジェリークは、ネコの子が、優しい手になでられることを喜び、愛玩を期待するような、無邪気でいとけない眼差しで、オスカーを嬉しそうに見つめていた。

その限りない信頼は、オスカーに、十全に伝わっていた。

オスカーは、その信頼に、眩暈がするほどの喜びを覚えながらも、ただ、喜びに身を任せることはせず、むしろ、気を引き締めた。

この無限の信頼と愛情は、もちろん、その相手が俺だから…と自惚れることは、簡単だった。が、アンジェリークの純真、素直すぎる性情、一切の穢れを知らず、浄らに大事にされてきた生育歴からして、アンジェリークは、呼吸をするように自然に他者を信じるのだろう。一方で、悪意の存在、負の感情というものが人にありうることは、思いもつかないだろうと思えてしまう。

と、なると、ヴァルナの懸念が、オスカーには、嫌でも理解できてしまう。

太陽神といえど善人ばかりという保証はなく、アンジェリークを1人の女性として大切に扱うとは限らない、女性を支配するものとしか考えないような男がスーリヤとなり、たまたま、アンジェリークの保全の秘密に気づき、手に入らないものなら、壊してしまえと破滅的な考えを抱かないとも限らない、だが、アンジェリーク自身は、そんな感情がこの世にあることなど、思いもよらないだろう、悪意に代表される負の感情を一切知らず、持たない彼女は、他者からのそれを察知しようがないのだから。そのような事態を案じたからこそ、ヴァルナは、スーリヤとウシャスが必要以上に近しくなることを防いでいたのだろう。スーリヤに限らず、何よりもウシャスを大事に思い、大切に守ると信じられるヴァルナ・ミトラ・ラートリーの3神以外の神とは、ほとんど、接触をもたせなかったのも、それを考えてのことかもしれない、とオスカーは思う。

でも、なればこそ、オスカーは、決意をより強く、新にする。俺が、最後にして永劫の、絶対のスーリヤになってみせる、否、ならねばならないのだと。何よりも、アンジェリークを大切に守りぬくために。

俺はアンジェリークをこよなく大切にする、俺なら、アンジェリークを1人の女性として尊重し、未来永劫、愛しぬき、守り抜くと誓える。だが、他のスーリヤにこの保証はない。他の火の子が、新スーリヤになったら、俺と同じほどの思いで、アンジェリークを愛するとは限らない、その時こそ、アンジェリークの実在は危うくなる。俺以外の火の子がスーリヤになることこそが、彼女の存続を危うくするのだ。だからこそ、俺は、最後にして永遠のスーリヤにならねばならない。

そのためにも…俺が彼女を慈しみ、守り続けるためにも、彼女と身も心も結ばれ、愛を確かめ合うことが不可欠だ。俺が永劫のスーリヤとしてあるべく、己が存在を安定させるためのみならず、俺の火の気が、彼女の光と交じり合うことで、恐らく、彼女の実存は、今よりずっと確固としたものとなるはずだから。

だから、俺は、迷わない、恐れない、絶対に君を幸せに…君が幸せな気持ちのままでいられるように、守り抜く、そのためにこそ、俺は君を抱くのだ、と。

オスカーは、この上なく優しく笑んで、あやすように優しい口づけを、アンジェリークに一つ、与えた。

「ああ、君の身体中に口付けたい、口付けると約束したからな…君のこのすんなりした脚も、滑らかなおなかにも、俺は、唇を寄せたい…でも、今、俺は、それよりも、もう、君のかわいらしい花に触れてみたくてたまらないんだ…」

「はな…?」

アンジェリークが、小鳩のように小さく首を傾げる様をいとおしげに見つめながら、オスカーは、極、自然な様子で、アンジェリークの股間に手を差し入れる。ふんわりと柔らかな繊毛が手に心地よく、更にその奥に、オスカーの胸を騒がせずにはいられない、とろりとぬめる暖かな感触を指先が感じた。

後背から、アンジェリークの臀部に無数の口づけを落とした際、垣間見えていた花弁の様は、オスカーの期待通り、いや、それ以上だったかもしれない。指先で割るまでもなく、アンジェリークは、花弁の合わせ目から、愛液を溢れさせているのがわかった。それも、大腿部の内側まで濡れ濡れと潤すほどに、豊かに、とめどなく。

オスカーは、めくめくような喜びと、少々の安堵を胸に、指先をそろえて、花弁の表面をすっとなぞった。

「きゃん!」

アンジェリークの腰が跳ねて、一瞬、宙に浮いた。

アンジェリークは、今、自分の身に走った感覚が、よく、わからなかったようで、呆然とした表情を見せた。

「なに…今…私…何か…体の中に走った…?」

「今、教えてあげよう、存分に…」

オスカーは、心とろかすような声でアンジェリークに囁きながら、そろえた指の腹で、再び、花弁の表面を撫で始めた。豊かな愛液のおかげで、指先は、まさに滑るように、花弁の表を慈しむ。

「あっ…やっ…なに…これ…あぁっ…どうして…?」

と、悩ましい未知の感触に、アンジェリークが、今までになく強く戸惑う風の声をあげた。

今、アンジェリークは、自分の股間が、とろりと暖かな液体で濡れそぼっていることを感じていた、逆に言えば、その液体は体と同じ温もりだったがゆえに、オスカーの指が触れてくるまで、アンジェリークは、自分の股間が濡れていることに気づいていなかった。沐浴もしていないのに、しかも、なぜ、この、身体の内側だけが濡れているのか、わからない。しかも、オスカーの指は、この濡れている部分を、ただ、撫でるのではなく、ぬるりとしたものに助けを借りて、滑るように前後している、そして、オスカーの指が滑らかに動くほどに、アンジェリークの身中に、もやもやと、もどかしいような、悩ましいような、じれったい感覚が募り行く。まるで、オスカーの触れる部分から、その指先から、この悩ましさが紡がれていくようだった。

アンジェリークは、初めて知る感覚を、受け取りあぐねていた。オスカーの指にもたらされる未知の感覚を、いまだ、快楽とは認識できず、持て余しているようだった。

アンジェリークの戸惑いを感じとったオスカーは、アンジェリークを安心させるように、一度口づけると

「わかるか、アンジェリーク…君のここ…このかわいい花が、豊かに蜜を溢れさせて、しとどに濡れていることが…」

「あ…これ…濡れてるの…私の…私の中から…?」

「そうだ、この蜜は…君が俺を欲してくれているからこそあふれ出した甘露だ…」

オスカーは、頑是無い子供に噛んで含ませるように、落ち着いた、優しい声音で囁きながら、一定のリズムでじっくりと花弁をなでさする、決して、手の動きは止めずに。とはいっても、オスカーは、まだ、指先を些かなりとも花弁の内に差し入れていない。とろとろの愛液で濡れている、ふくふくした花弁の表を、やさしく、宥めるように、なでているだけだった。

「私が、オスカーを欲しているから?欲しているから…濡れて溢れているの…?」

オスカーの優しい態度に、アンジェリークの声と身体が、安堵したように柔らかく解れていく。

「そうだ、君が、俺と一つに結ばれたいと願ってくれた…俺を欲し、受け入れるために、この蜜が、君の花を潤しているんだ…」

もう一度、口付ける。限りない愛しさを込めて。

「だから…わかるか?俺が、今、どんなに嬉しいか…感激しているか…君が溢れさせている、この豊かな蜜は、何よりも雄弁に、率直に、君が、どれ程、熱く、俺を欲してくれているのか、俺とつながりたいと願ってくれているのか、示し、伝えてくれているのだから…」

「あ…私…オスカーと結ばれたい…そう願っていたから?…それで…こんなに滑らかなの?……」

アンジェリークの言葉から、戸惑いは消えうせていた。自身の身体の変化のその理由を理解し、納得したがゆえだった。

納得すると同時に、アンジェリークは、それこそ、花が満開に開いたかのような笑顔をオスカーに見せた。

「嬉しい…私の身体も、ちゃんと、オスカーと結ばれたいって、わかっているのね…わかって、準備してくれている、そういうことなのでしょう?」

「そうだ…俺が君と、ここで、この花で、俺を受け入れ、一つにつながれるよう…君のここに、俺が入れるよう…君が、俺を受け入れたいと願ってくれた気持ちが、この蜜になって、溢れてきたんだ…」

オスカーは、ここで初めて、指先をほんの少し花弁の合わせ目に差し入れ、そのまま、極浅い部分をかき回してみた。くちゅり・ぬちゅりと、粘り気のある水音があがる

「あっ…あんっ…オスカーの指?…私の中に…少し入ってる…?」

「俺にここを触れられると不快か?」

「ううん…嫌じゃない…ただ…不思議な…気持ち…」

オスカーは、指先でアンジェリークの愛液を味わうように、じっくりと手を前後させる。

「あ…ぅうん…こんな…こんな感じ…初めて…あん…なんだか…ウズウズ…むずむずするの…なにか…もっと…」

「もっと?…」

「なんだか、身体の奥の方が…うずうずして…もどかしくて…もっと…奥まで来て…触って…埋めてほしいような…」

「嬉しいことを言ってくれる…それも、君の身体が俺を受け入れたいと願ってくれているからだ…だって、俺のこれが、君のここに…君の体の中に入るんだからな…」

オスカーは、アンジェリークの手を取って、己の怒張に導いた。アンジェリークは、導かれるまま、素直に、その怒張を掌でふんわりと包み込んだ。

「これ…オスカーのこれが、わたしの中に入ってくるの…?男と女はそうやって…それで、オスカーと私は、一つにつながれるのね…?こんな…大きくて、熱くて、堅いものが…私の中に入るなんて、すごい…」

アンジェリークの声に、恐怖や不安の色は微塵もなかった、ただ、純粋に、男女の身体の作りの妙に驚き、不思議に感じていることが伝わってきた。

「ああ、君の中に入りたくて…君と身体の深いところで、一つにつながれるように、俺の物も、こんなに硬くなっている…だからこそ…君も俺を欲しいと思ってくれなければ…女性の身体が進んで受け入れてくれなければ、とても、入るものじゃない…俺は、君とつながりたいから、硬く大きくなる、君は、俺を受け入れたいと思ってくれるから、滑らかに濡れる…俺たちが互いに愛し合い、求め合っているからだ」

「ん…わかる…わかるわ…オスカー…嬉しい…」

「嬉しい…?」

「だって…オスカーも、私のこと、強く熱く欲してくださってるから、私に入ってきてくれる所が、こんなに熱く硬くなっているのでしょう?それに、こんなに逞しくて、力強いものが、私とオスカーを結びつけてくれる…と思うと、私たちの結びつきも、それだけ強固になるみたいで…とても嬉しいの…」

アンジェリークの手が、包み込むように優しく、限りなく愛しげにオスカーの怒張をやんわりと握りこむように撫でさすった。

「う…」

「あ…なに…?オスカーの…先の方が濡れてる…?」

「ああ、俺のものも、君に受け入れてもらいやすいように…君の中に入りたいから、男も…少しだが…濡れる…」

「ああ…オスカー…」

アンジェリークの掌は、いとおしげに、オスカーの先走りを先端に濡れ広げるように、くるくるとやわらかくまわされた。

「く…ぁ…」

「オスカーも、気持ちいいの?結ばれるところは、触れて気持ちいい所でもあるのね…私も、今、オスカーの指が動くのを感じるほどに…なんだか…おなかの奥の方が、きゅっと絞られてるみたいで…やるせない感じが、どんどん、強くなってくるの…」

「ああ…君のここが濡れるのも…体の奥が、何かもどかしい感じがするのも、君が、俺のものを受け入れたいと思ってくれている証なんだ…」

「あ…わかる…なんとなく、わかるわ…オスカー…何か、欠けてる…足りない…埋めてほしい、満たしてほしい…そう願う気持ちが、身体の奥の、このむずむずした感じなのね…」

じれったい…そう、この感覚は、決して不快なものではなく、むしろ、もっともっとと、せがみたくなるものだった、せがみたくなるのは、足りてないから、欲しているからこそ。だから、じれったく、もどかしい…私は、オスカーに身体の奥深くまで来て欲しい、オスカーに一杯に満たしてほしいんだわ、だから、こんなに…居たたまれないように、身体の奥がうずうずするんだわ、と、アンジェリークは理解した。

「じゃあ、私の中にオスカーが来てくれたら、このやるせない感じも、満たされるのでしょう?…なら、お願い、オスカー…私の中に、もう、入って来て?」

オスカーに無邪気にねだりごとをするアンジェリークに、オスカーは、まさに微笑ましいという笑みを返して、もう一度キスをした。

「喜んで…と言いたいところだが…俺も、今、もう、君の中に入りたくてたまらないし、君は確かに俺を求めてくれている、でも、まだ、火がつくほど…もう、たまらないというほど、ではないはずだ…ちがうか?」

「そう、言われてみると、そうかも…」

「だから、今から俺が、君をそうする。俺を欲する想いが、こんなものではすまなくなるまで…君自身も、俺が欲しいと、火のように求めてくれるようになるまで…俺は、君を愛する」

「え?どうやって…あぁっ…あぁん!」

オスカーは、ここで、花弁の入口をかき回していた指を、すっと上方に滑らせ、合わせ目の際にちょこんと顔を出しているはずの、愛らしい肉の莢の表に、指の腹で円を描いた。

「やっ…何…あぁっ…」

「気持ち…いいか…?」

「あぁ…すごい…痺れて…じんじんして…何か…身体の中…走って…突き抜けて……あぁっ…」

「ああ、かわいいな…君は…莢を弄っただけで、こんなに乱れて…」

「だって…どうして…こんな…あぁっ…」

「アンジェリーク…君のここ…この肉の莢の中には、何よりも貴重な、君の宝珠が隠れているからだ…触れられるのを待って…」

オスカーは、ほんの少し、指を深く差し入れ、そろえた指先に、アンジェリークの愛液をたっぷりと乗せた。そのまま、その指先を、やさしく肉の莢を剥き、中に隠れていた肉珠の先端に、そっとあてがってみた。

「ひぁんっ…」

アンジェリークの身が、びくんと大きく跳ねた。

オスカーは細心の注意を払って、こりっとした感触の肉珠の表面を、触れるか触れないかという微妙な加減で指先をまわした。

「ここも…俺に触れられたくて、こんなに硬くしこらせて…」

陸にあがった魚のように、アンジェリークの身は、ぴちぴちと音がしそうなほど、忙しなく跳ねた。

「ひぁっ…あっ…あぁっ…や…」

「ここを弄るたびに、君の中から、蜜がどんどん溢れてくる…かわいい…かわいいな、君は…こんなに乱れて…俺を欲しがって……ほら、もう、脚の方までぐっしょりだ…」

オスカーは、アンジェリークの蜜でとろとろになった指先で、こよりを捻るような動きで、くりくりと花芽を刺激した。

「ふぁあっ…」

「この溢れかえる蜜を、味わいたい…もう…君のこのかわいい花に触れているだけでは…我慢できない…口づけたい…」

囁きながら、オスカーは、少しづつ身体をずらし、同時にアンジェリークの脚を大きく開いていく。

アンジェリークは、オスカーが何を言っているのか、よく理解できていなかった。

オスカーの声は、なんとも心地よく、自分を安心させてくれると同時に、胸を酷く騒がせて、気持ちを落ち着かなくさせる不思議な音楽のように、アンジェリークの耳に響いていたが、言葉の内容は、今のアンジェリークには何も意味を成して届かなかった。

それほど、オスカーの指に紡ぎだされる、鋭く尖った鮮烈な感覚にアンジェリークは翻弄されていた。

オスカーの指が、今、どう、動いているのか、何をしているのかも、よくわからない。アンジェリークにわかるのは、脚の間、身体の中心ともいえる部分の一点から、頭の中を全てを吹き飛ばしてしまう嵐のような感覚が、次々と迸り、体を走って抜けていく、それだけだった。

でも、決して、嫌とか恐いとは思わなかった。

アンジェリークは、不思議な感覚に、ただ溺れ、酔っていた。それは、オスカーのくれる数多の口づけと同じで、初めて知るものだったけど、無性に胸をときめかせ、もっともっとと、キリなく欲せずにはいられないような、妖しい魅力に満ちていた。それも、これは、オスカーが与えてくれているもの、オスカーが触れてくれているからだ、オスカーが、私にしてくれることだから、私は、こんな、ただ、身をゆだねて、声をあげるしかできないほどの…何も考えられないような強く激しい感覚に流されて、それでも、もっとと求めてしまう、そんな気持ちになるのだと、アンジェリークはわかっていた。どんな未知の感覚を教えられようと、何も怪しまず、恐れずにいられるのは、それを与えてくれるのが、オスカーだからだった。

と、オスカーの指が、鋭い快楽を生じる一点から離れると、その部分が、オスカーの指で、より大きく、外に向かって押し広げられるような…身体の奥深くに秘められていたものが、むき出しにされるような気恥ずかしさを、アンジェリークが覚えた、その時だった。指とは違う、指よりもっと暖かでー熱いくらいで、やわらかな弾力のある肉厚なものが、その部分に触れてきて、その感触の、覚えのある悩ましさに、アンジェリークは、オスカーが、そこに、口づけていることを、直感的に察した、察すると同時に、爆発するような歓喜と羞恥に、居たたまれない気持ちになったが、その直後に感じたー感じさせらた、ぬめりと濡れた熱いものが、そこをなでるように舐る感触に、頭の中が、一瞬にして、真っ白になって、何も考えられなくなった。

「あ…あぁああっ…」

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