彼女に花を捧げられなかったことを残念に思っていたのに、オスカーは、今、そのことをすっかり忘れていただって、今、自分の掌中に、腕の中に、花の中の花ともいうべき存在がいてくれるから、ましてや、今、オスカーは、その花を思う様、心ゆくまで、愛でているから。
指先で軽く花芽を弄うだけでも、アンジェリークは、率直に、官能の喜びを現してくれた。花芽の中の珠は、これ以上ないほど硬くしこって、オスカーが、指の腹をその天辺にあてがい、くすぐるように蠢かせると、花弁の奥からは、とめどなく蜜が溢れてきた。
でも、指での愛撫は、どうしても、力の加減が難しい、オスカーは、自分の欲望に手綱をつけておくのも、もう限界に近いことを自覚していた。彼女を思い切り、愛したい、でも、夢中になるあまり、力の加減を忘れて、彼女の身が、僅かでも痛みに竦むようなことは、絶対に避けたい。それにもまして、この、しとどに溢れる蜜を自身が存分に味わいたくてたまらない、この花弁にも、かわいい珠にも、口づけたくて仕方ない、という焼け付くような欲望が、これ以上、抑えられなった。
ふっくらとした花弁全体を閉じた唇で慈しむように撫でてから、ちゅ…と音をたてて口づけた。
アンジェリークが、ぴくんと震えた。
すかさず、舌を差し出して、花弁の合わせ目を割り、舌を浅く差し入れたまま、上方へと舐め上げる。
アンジェリークの腰が、オスカーの舌の動きにあわせ、せりあがるように浮き加減になった。
その機に乗じて、オスカーは、掌でアンジェリークの腰をしっかと抱えながら、両の親指で、一層花弁を押し広げると、合わせ目を綻ばせた花弁に深々と舌を差し入れ、それを、素早く、幾度も抜き差しした。
「や…ぁああんっ…」
戸惑いの中に官能を匂わせる嬌声をアンジェリークが発する。
愛らしい声音に聞きほれながら、オスカーは、丸めた舌先で秘裂の中で溢れかえる愛液を掬い、舌を鳴らすように味わう。その蜜のむせ返るような濃厚な芳香、甘酸っぱく鮮烈な味わいに、彼女自身が花だ、花の中の花だという思いを、オスカーは一層強くする。
蜜の味を確かめながら抜き差しする舌を、オスカーは、少しづつ、上方へとずらしていく。彼女を焦らす、というよりは、自分自身を焦らして楽しむように、オスカーは、徐々に、舌先を、ちょこんとかわいく立ち上がっている肉の莢へと近づけていく。
ここに直に口付けたら、彼女は、どんなに乱れるだろう、舌で転がし、突付いたら、どれほど深い歓喜にふるえてくれることだろう、そして、彼女は、その官能の喜びを、どれ程素直に歌い上げてくれるだろうと思うと、オスカーは胸の高鳴りを押さえられない。
どこまでも純真でまっさらな性情のアンジェリークは、知識も経験もないことも良い方に作用して、オスカーの与える快楽を、まっすぐ素直に享受する。初めて知る官能に、時折、戸惑い驚きながらも、その歓喜を率直に歌いあげて、深い悦びをオスカーに伝えてくれる。オスカーの愛撫に響くように反応し、倍する歓喜の旋律で応えてくれ、より密な触れ合いを求めてくれる、だから、オスカーは、アンジェリークを愛撫すればするほど、もっと、愛撫したくなる。こんなにも、心豊かに官能の喜びを歌い上げ、肌を重ねる幸せを訴えてくれる女性に、奮起しない男はいない、そんなことを思いながら、オスカーは通った鼻筋のその先と唇を使って、器用に莢を剥き、肉の珠を露にする。
濃い紅色につやつやと濡れ光るアンジェリークの珠は、オスカーの目には、懸命に、健気に屹立しているように見え、いじらしくてたまらない。小さく、愛らしいその珠は、今まで与えられた快楽に応えて硬く尖り、今、それ以上に深く激しい喜びの予感に、期待に震えているようにも見える。オスカーには、その宝珠が『早くその唇で触れてほしい、たくさん口づけてほしい』とねだっているように感じられた。
「赤く染まった…何よりも貴重な、君の宝石…」
感嘆したように呟くや、オスカーは、徐に、そっと口づけた。
「ひぁっ…」
手で抑えこんでいても、アンジェリークの腰が、瞬間、跳ねる。
オスカーは、しっかと彼女の腰を支えなおすと、改めて、肉の珠全部を口に含んで、その根元から先端へとじっくりと舐め上げた。先端まで達した舌は、そこで、左右に素早く蠢く。尖った肉珠の、その更に天辺を、オスカーの舌は弾くように小刻みに踊る。
「あぁああっ…やぁ……すご…い…」
「…っ…きもち…いいか…?」
「んんっ…いい…さっきより…もっと…すごい…気持ちいい…痺れる…みたい…」
「なら…一杯舐めてあげるからな…」
「んっ…いっぱい…いっぱい、して…オスカー…」
熱心かつ率直に、アンジェリークは、オスカーがくれる快楽をねだった。オスカーを前にすると、きりのないほど欲張りになってしまう自分に、アンジェリークは自分が一番驚いている。でも、それほど、オスカーのくれるものは何もかも…愛情も、信頼も、そして、今、知り初めた官能の快楽も、もらえばもらうほど、自身が満たされゆき、幸せを感じさせてくれる。だから、もっともっとと、欲してしまうのだと思う。
実際、アンジェリークは、初めての交わりで、女の身として得られる最高に深く味わい豊かな快楽に酔いしれていた。それは、オスカーの愛撫が、優しく、いたわりと情愛に溢れたものであるからというのは無論のこと、アンジェリークの胸の内が、オスカーへの真正の愛情と信頼で満たされているからでもあった。アンジェリークは、オスカーの愛情を、その人となりを心から信じている、だから、オスカーの愛撫を、100%純粋な愛情表現として受け取る。彼女自身にも無意味な気取りや強がりという心の鎧がないー彼女には、自分を偽り飾る必要が全くないからーので、オスカーの愛情を余すところなくストレートに受けとり、受け取った分以上の喜びで、オスカーに応える。オスカーが、丁寧に性愛の本質を説いてきたので、アンジェリークには、性愛に対する頑迷な偏見や頑な羞恥もない。だからこそ、肉の快楽は、より一層深みを増し、その味わいは豊かになる。心行くまで、純粋に性愛の喜びを堪能できる。
オスカーの舌はぬめりと暖かく、優しく、悩ましい。オスカーが口づけてくれ、舐めたり、吸ったりしてくれる処から、アンジェリークの体には、不思議な心地よさ…というには、あまりに鋭く、強烈で、目のくらむような感覚が、次々と、爆ぜるように突き抜けて、走りゆく。特に、今、オスカーの舌が触れているのは、股間の小さな部分だけのはずなのに、何故か、そこから迸る先鋭な感覚は、今まで以上に圧倒的に鮮烈だった。熱を感じるわけではない、なのに、オスカーの触れる所が、白熱しているように思える。じんじんと痺れるような気がするのに、触れられるほどに感覚は鋭敏になっていく気もする。呼気は自然と荒くなり、自分のものでないような声が間断なく零れ出る。
オスカーの舌が、じっくりと蠢く時は、全身がそこからとろけて、流れ出していくようで、また、オスカーの舌が、激しく、素早く動く時は、閉じた瞼の裏に極彩色の火花が次々と飛び散ってはきえ、また、重なるというような、鮮やかで強烈な快楽に圧倒された。時折、ぴちゃぴちゃと響く水音が、酷くなまめかしく聞こえて、アンジェリークは、更にやるせなくなる。きゅっ…ときつく吸われる感触に、自身がふわり…と、中空に漂っていくように、錯覚しかける。
「はっ…あぁっ…変なの……そこ…熱い……痺れて…私…溶けちゃう…とけちゃいそう……」
「ああ…溶けてしまえ…」
『もう…疾うに…とろとろ…』
オスカーの声に心の中で頷きながらも、更に「もっと私を溶かして」と、アンジェリークを突き動かす声も身体の内側からする。
だって、もし、今、オスカーの舌が…ぬめぬめとうごめく悩ましいこの感触が、突然途絶えてしまったら、私、きっと「やめないで」と叫んでしまう。
オスカーが与えてくれる、この、狂おしいほどの心地よさを、喜びを、私は、全身全霊で求め、浸りきっている、無我夢中になってる。
今、官能の喜びはアンジェリークの五感全てを支配し、身体の自由も、思考の自由も奪っていた。オスカーの愛撫を受ける以外のことなどできないし、あまりの気持ちよさに、これを求めること、感じつくすこと以外、何も考えられない。それほどに、オスカーのくれる官能の喜びは、強烈で、圧倒的で、新鮮で、アンジェリークは、この官能の果てまで極めずにはいられない、そんな気持になっていた。
自分が、どこまでも無防備に開かれていくようで、自分の何もかもが開け放たれ、自由になっていくかのようで…それは、自身が光に戻るのとは全く異なる、初めて知る感覚だった。が、それを嫌だとか、恐いとは、微塵も思わない。尻込みもしない。
それは、オスカーの気持ちが、想いが、オスカーの触れてくれる触れ方で、わかるから、伝わってくるから。
本来の婚姻も、その意味すら知らなかった私、それどころか、男性と…いえ、他者と真正面から関わりあったこともなかった私に、オスカーは、人と心を通わせあうこと、その結果として、肌を触れあい重ねあわせることは、人として得られる、純粋にして最高の喜びなのだと、私に教えようとしてくれているのだと思う。愛情と信頼に裏打ちされた男女の情交は、限りなく豊かな喜びに溢れたものなのだと、一生懸命伝えようとして、それで、私をこんなにも気持ちよくさせてくれているんだと思う。
『心から愛している』『大切に慈しみたい』それを愛する相手に、態度と行為で表し、伝え合うのが情交だというのが、オスカーの、情熱的で、この上なく優しい触れ方からわかる。好きでたまらないから、肌と肌とを密に触れ合わせたいと強く熱く願う、そんな想いが切々と伝わってくる。
だから、アンジェリークは、幸せで、嬉しくてたまらない。官能の快楽が純粋に心地いいだけでなく、それ以上に、自分をこんなにも気持ちよくしようとしてくれるオスカーの優しさ、自分と隙間のないほどに触れ合いたいと願ってくれるオスカーの真摯で深く熱い思い、限りなく大きな愛情を、全身で感じられて。
好きだから、触れたくて。
あまりに好きだから、溶けあってしまいたいとさえ思う、だから、こうして肌を重ねるのだ、と今のアンジェリークには理屈でなくわかる。
だったら…自分からも伝えたい。
突然の天啓のようにアンジェリークは気づき、気づいた途端、この上なく強く願う。
私がどれほどオスカーを愛しく想っているか、私も、オスカーに伝えたい、私だけが気持ちよくしてもらうのではなく、オスカーにも同じように、いえ、それ以上に心地よくなってほしい。
そう思うのに、それを、どう行為で現せばいいのか、情交に不慣れなアンジェリークは、わからない。オスカーのくれる喜びが深すぎて、考えをめぐらす余裕もなく、何を、どう、返していいのかもわからない。
それでも伝えたい、そう思ったとき、アンジェリークは、無意識のうちに懸命に腕を伸ばして、オスカーの髪に指を埋めて、さらさらとそれを梳き、荒い呼気のまにまに、端的な言葉を訴えていた。
「あぁ…オスカー…好き…すきなの…何よりも…」
「俺もだ…愛している、アンジェリーク…なによりも…だれよりも…だから、いっぱい、愛してあげたい…君を、もっともっと気持ちよくしてあげたいんだ…」
告げるや、オスカーは、硬く尖った宝珠をちゅっと吸いざま、その根元にくるりと舌を回した。
と、アンジェリークは官能の喜びに震えながらも、頑是無い子供のように嫌々と頭を振りつつ、オスカーの髪に指を深く埋めてきた。
「ん…もう…すごい…気持ちいい…でも…だから…オスカー…私も…私からも…」
「どうした…?」
「気持ちいいの…オスカーがすきなの…だから…オスカーにも気持ちよくなってもらいたいの…オスカーが私に優しくしてくれるみたいに、私からもオスカーに何かしてあげたいの、けど、私、どうしたらいいか、わからない…それが…もどかしくて…」
切なげに訴えるアンジェリークを見て、オスカーは、アンジェリークが熱い思いで胸が一杯で、でも、それをどう伝えていいのかわからない、そんなもどかしさを持て余して、焦れている気持ちを感じとった。感じ取るや、自身の胸は舞い上がるような悦びで一杯になった。
オスカーは一度上体を起こして、彼女の髪をゆったりとなで、あやし宥めるような優しい口づけを与える。
「ありがとう、アンジェリーク、その君の気持ちが、俺は何より嬉しい…でも、焦らなくていい。ゆっくり慣れて、少しづつ、色々試してみたり、覚えていけばいい…俺たちが肌を重ねるのは、これが最初で最後じゃない、これ1度きりになんて、絶対、させやしない、だから、一時に、なんでもやろうとしなくていい…」
「ああ…オスカー…そうよね、私たち、また、こうして、触れ合えるわね?この1度きりじゃないのね…」
「ああ、だから、今は、まだ不慣れな君は無理しなくていい、情交が、どんなものか、肌身で感じて…そしてそれを君が喜びとして感じてくれれば、俺は、それ以上にうれしいことはないのだから…」
そう告げながら、オスカーは、アンジェリークの乳首をちゅ…と軽く吸い上げ、大きな掌で愛しげにアンジェリークの身体のラインをなぞるように撫でた。
「あ…ぅうん…でも、オスカー、少しだけでも…教えて?…オスカーが気持いいこと…あ…さっき触れた…私とオスカーを繋いでくれるところ、触ったら…オスカーも気持ちいい?」
「アンジェリーク…」
オスカーは、アンジェリークの言葉に、その健気ないじらしさに、胸が、頭が、幸せと喜びと彼女への愛しさのあまり、はちきれそうな気がした。
そうだ、俺たちは、互いに愛しあう、愛を交わし、与え合うと決めていた。君が、情交には不慣れだからというだけで、俺が一方的にことを進めていいものではなかったな…だが、それでも…
「今日は…まだ、いい…」
「どうして?」
オスカーはアンジェリークの手を取り、指先にちゅ…と口付け、苦笑交じりにこう応えた。
「この可愛い手で弄られたら、我慢できそうにない…君の中に入る前に、果てちまいそうだからだ…いや、前もって1度抜いておいた方が本当はいいのかもしれないが…俺は、せっかくだから、君の中に放ちたい…一滴余さず、俺の全てを、君の中に注ぎ込みたい…」
「???」
愛くるしく小首をかしげるアンジェリークに優しく笑み、触れるだけの口付けをもう一度落とすと
「ふ…なら…アンジェリーク…俺の指をしゃぶってくれるか?…」
と言いながら、オスカーは、片手をすっと彼女の口元に持っていった。
「んんっ…」
アンジェリークは、促されるままにオスカーの手を大事そうに捧げ持つように抱え込み、その指を愛しげに口に含んだ。大事そうに舌をまわして、自然な仕草で、先端をちゅくちゅくと吸う。
自分からもオスカーに何かしてあげたくて、自分の「好き」「愛しい」気持ちを、どうにかして、伝えたくてたまらなかったアンジェリークは、自らオスカーにしてあげられる何かがあることが、嬉しくてならない。手指を舐ると、オスカーがどう感じるのか、そこまで考える余裕はない。ただ、アンジェリークは、オスカーの望みに応えられる、それが嬉しい。オスカーが望み、喜んでくれるなら、どんなことでもしてあげたいと思う。
そんなアンジェリークの髪をなでながら、オスカーの眼差しが、苦しそうに細められた。
「君は…本当に…どこまで、いじらしい…」
アンジェリークは微塵の迷いも見せず、その理由を問うこともなく、流れるような極自然な態度で、俺の手指を口に含んだ。俺の望みに、素直すぎるほど素直に、むしろ、進んで喜びをもって応えてくれたのがわかる。駆け引きも、もったいつけも、何もなく。
君の情愛は限りなく深く豊かに溢れ、俺に真っ直ぐに注がれる、でも、君は、その情愛を、男女の性愛として現し伝える術を知らない、だからこそ、俺の望み、俺が喜ぶだろうと思えば、君はどんなことでも、懸命になってくれるのだろうと、君の振る舞いから自ずとわかる。
それ以前に、アンジェリーク、君は、今まで、俺がどんな愛撫を与えようと、身を引いたり、身体を硬くしたりは決してしなかった。それを、俺は、ずっと肌で感じていた。それは、君が俺に絶対の信頼と愛情を抱いてくれているからだということが、ひしひしと伝わってきた。
その篤き信頼と限りない愛情に同じくらい、いや、それ以上の応えを返したいと、強くオスカーは思う。
その一方で、アンジェリークが無心に己の手指に舌を這わす悩ましい感触、時折、ちらりと唇から覗く舌先の淫らな動きに、オスカーの忍耐も限界に近い。
「アンジェリーク…」
掠れた声でその名を呼びながら、オスカーは、片手をアンジェリークに預けたまま、幾つもの小さな口づけを与えながら、もう片方の手の指先で、花弁をくすぐるように解し、慎重に、秘裂の合わせ目に、今までより、指をほんの少しだけ深く差し入れてみた。ちょうど、第一関節が隠れるほどであろうか。
「あ…ぅうん…」
と、アンジェリークが、悩ましげに瞳をきゅ…と閉じ、小さくのけぞって、切なげな声を発した。アンジェリークのあげたその声に、恐怖や苦痛は微塵もない、が、声を上げたことで、大事そうにしゃぶっていたオスカーの指先は、彼女の唇から一旦離れた。オスカーは、その機に己の手を引き上げ、その手も、アンジェリークの股間へと伸ばす。オスカーは、秘裂に差し入れたままだったその指を、軽く曲げると、蜜の溢れる壷をねっとりとかき回すように、うごめかし始めた。同時に、彼女の唾液にまみれたままの指先で、尖った肉莢の天辺をくすぐるようになでる。
「あぁっ…ん…あぁん…は…ぁ…」
くちゅりと指をまわすごとに、アンジェリークはそのしなやかな身をのたくらせる、声には、悩ましさが増していく。
「や…オスカー…あぁん…なんだか…私…もう…我慢できない…じれったい…」
「…ほしいか?…」
「ほ…しい…?」
「俺がほしいか?欲しくて堪らない…そんな気持ちか…?」
すると、アンジェリークが、瞬間、驚いたように瞳を見開き、そして、すぐさま、切なげに瞳を細めながら、こっくりと頷いた。
「ああ、この感じ…気持ちいいのに、物足りなくて、もどかしい…我慢できない…苦しいくらい…これが…オスカーがさっき言ってたこと?火がつくように、相手を欲しい、ほしくて堪らない、そう感じる気持…なの?」
「そうだ…俺も…もう、ずっと…君のかわいい声を聞く度に…君がこの花から、蜜を溢れさせるのを感じる度に、早く君のここに入りたいと…君にここで受け入れられ、包み込まれ…君とつながりたいと切望していた…もう、たまらない気持ちになっているのは、俺も同じだ…」
オスカーが、一際、大きく、指を蠢かした。アンジェリークの腰が、何かを待ちかねるように、僅かに浮きあがる。
極、浅い部分をじっくりとかき回されるからこそ、アンジェリークは、感じた。自分の身体は、オスカーに、もっと奥深くまで来てほしい、満たしてほしいと、求めてることを。だから、こんなにも、もどかしく、やるせなく、たまらないのだ…なんだか、我慢できないのだと。
「オスカーも…?ああ、なら、もう、お願い、オスカー…私の中に…きて…?私…もう…今すぐ…オスカーを感じたい、オスカーと一つになれる瞬間を、感じたいの…もう…待てない…」
「わかった…」
オスカーは僅かに身をおこし、アンジェリークに口づけながら、彼女の腰をしっかと支えなおした。慎重に、潤びきった花弁の合わせ目に先端をあてがう。暖かな愛液のとろりとした感触を先端に感じ、オスカーの理性は、それだけで、焼ききれそうになる。
「身体の力を抜いて…楽に…」
「ん…」
掠れ気味の声で、ようよう、これだけ伝えると、アンジェリークは、素直に、身体から力を抜く。
オスカーは、厳かな思いで、アンジェリークの中に、粛々と、自身を沈めていった。
先端が、暖かく潤びた花弁を割る、すかさず、蕩けるように柔らかな肉襞に自身が包み込まれていく。
暖かい…いや、熱いほどだ。
そして、とてつもなく、やわらかい。包まれたところから、自分が、溶かされていくようだ。
腰を進めるほどに、自らまとわりついてくるような媚肉の悩ましい感触に、思わず呻く。熟しきってとろける果肉に己を突き立てているような気がして、酷い背徳感を感じ、だからこそ、一層の昂ぶりを覚える。
そのせいか、唐突に、自身を沈めきる前に暴発してしまいそうな不安に襲われ、オスカーは、先端が入りきったところで、一転、一気呵成に自身を突き入れた。途中、先端が、弾力のあるものに少し阻まれるような感触があったが、怯むことなく、いっそ強引にそれをこじ開け、突き破るかのように、オスカーは、思い切って、根元まで一気に沈みこませた。
瞬間、アンジェリークが、自分でも驚く程の甲高い嬌声をあげた。
「あ…あぁああっ…」
それでもアンジェリークの秘裂は愛液で溢れかえっていたから、オスカーのふてぶてしいほどに逞しい剛直は、驚くほど滑らかに、すんなりと、根元まで収まった。
オスカーを受け入れた、その時の衝撃は、なんと、形容すればいいいのか、アンジェリークはわからない。
オスカーの指と舌を受け入れた時は、自身の内側からオスカーの存在を感じるという不思議な感覚に、心浮き立つような喜びを覚える一方で、酷く気恥ずかしく、心を灼くようなやるせなさに、いたたまれない思いがしたが、ぬぷり…と指や舌どころではない大きさのものが、それでも、難なく入ってきた瞬間、その存在感ー質量と硬さに息を飲んだ。が、それが、ほんの先端だけだったなんて、アンジェリークはわからなかった。次の瞬間、激しい…身体の内側、それも身体の真ん中から脳天に突き抜けるような重い衝撃が、全身に響き渡った。凄まじいほどの勢いで、自身が圧倒的な量感に貫かれ、一杯に満たされた。
身体が内側から隙間なく満たされて、はちきれそうな充足、息もろくにできないような圧迫感に、アンジェリークは、暫時、声も出ず、陸にあがった魚のように喘いだ。
「あ…あぁ…」
「痛…む…か?」
途切れ途切れで、かすれ気味のオスカーの問いかけに、つられたようにアンジェリークは瞳をあけた。オスカーが、切なげに眉を顰めながら、いたわしげな、心配そうな眼差しで自分を見下ろしていた。はらりと額にかかった前髪は少年の頃のままで、胸に溢れる愛しさに、アンジェリークは、引き寄せられるようにオスカーの首に腕をまわした。
問われて、初めて気づく。身体の内側に、少し、引き連れるような鈍い痛みがあることに。
確かに、微かな苦痛があったーオスカーが、力を抜けと言っておいてくれたおかげで、身体が柔らかく解れていたことと、無論、十分以上に潤っていたおかげで、破瓜の瞬間の苦痛が、驚くほど軽微で済んでいたことを、アンジェリークは気づいていなかったがー痛いというよりは、息苦しい方が強い。なぜだか、呼気が自然と荒くなって…でも、ほんとに苦しいのではなくて…私の中が、隙間なくオスカーで一杯で、はちきれそうだから、上手く息が入ってこないだけで…でも、この息苦しさが、不思議に嬉しくて…なんだろう、この充足は…欲しくて欲しくてたまらなかったものが、漸くもらえて、ほっとするような気持ちもあって…。今、なぜだか、無性に嬉しくて、幸せで、誇らしくさえあって…
アンジェリークは今、切望したものを、漸く、与えてもらった、それも、はちきれんばかりに、一杯に…そんな満たされきった充足感の方が、ずっと大きかった。満足と安堵の吐息が、自然と零れた。
アンジェリークは、オスカーを安心させるようにーオスカーの表情が、この上なく、心配そうで、「痛むか?」と尋ねてきたオスカーの方が苦痛に耐えているように見えたからーほんのりと微笑んだ。
「大丈夫…少し…びっくりした…だけ…」
「無理は、するな…しないでくれ…痛かったら、遠慮なく…」
「ほんとよ…確かに、おなかの中…オスカーでいっぱいで…なんだか、息ができないくらい…いっぱいで…苦しいくらいだけど…それが、すごく嬉しい…今、私、無性に嬉しくて、誇らしくて…幸せでたまらないの…だって、私、こうしてほしかった…オスカーが、私の中に来てくれたから、はっきり、わかったの…私、こんな風に…オスカーに、私を一杯にしてほしかったんだって…」
「!…アンジェリーク…」
「オスカー…ありがとう、私…嬉しい…オスカーが、私の中にいる…いてくれる…苦しいくらいにオスカーで一杯だから、余計に、強くオスカーを感じられる…私たち…私とオスカーと、今、一つにつながって…本当に結ばれてるってわかる…これが、交わるってことなのね…本当に…私たち、今、一つなのね…一つに結ばれてるのね…すごく…すごく嬉しい…なんだか、涙が出そうなくらい…幸せ…」
「俺も…だ…君とつながって…君に隙間なく包まれて…今…信じられないくらい…幸せで…」
瞬間、オスカーの顔が、泣き出しそうな子供のようになる。
「オスカー…どうしたの?苦しそう…どこか、痛いの…?」
オスカーが、先刻より苦しそうに眉を顰めていた。自分を案じるオスカーの方が、よほど苦しそうで、アンジェリークは心配になって、思わずオスカーの顔に手を伸ばし、その頬を小さな掌でそっと包み込むようになでた。
その途端、自分の内部で、オスカーのものが一層硬く、大きくなったような気がした。
「あ…なに…?オスカー…また、おおきく…?」
アンジェリークが、内から感じる圧迫感に、無意識に、悩ましげに喘いだ。
「っ…すまない…もう…だめだ…こらえきれそうに…な…い…アンジェリーク…動いてもいいか…?」
「動く…?」
心から不思議そうに無邪気に尋ねるアンジェリークに、オスカーは、微苦笑を浮かべて口づけた。
「俺と、君と…もっと一つだと思えるよう…二人で溶け合ってしまえるように…」
「え…?」
瞬間、オスカーが、自身をアンジェリークから引き抜く感触に、アンジェリークは、とてつもない寂しさ、心細さを感じた。
「いやいや、抜かないで、オスカー…ずっと、私の中にいて…」
思わず、そう、訴えそうになった瞬間、アンジェリークは、身体の一番深いところに、凄まじい…最初にオスカーを受け入れた時に匹敵するくらいの衝撃を受けた。
「あ…ぁああーっ…」
しかも、その衝撃は、一度ではすまなかった。そのまま、立て続けに、休みなく、一定のリズムでーそのリズムはこれ以上はないというほどに忙しなく、しかも激しかったー与えられる。
「あっ…あぁっ…あっ…」
硬く熱く、苦しい程の質量をもった逞しい物が、凄まじい勢いで、自身に抜き差しされる。おなかの一番奥深いところを、しなやかにしなるような強い力が、ずしんと叩いていく、その度に、自然と小さな叫びににも似た声が口から迸る。全身を痺れさせるような感覚が、重く響き渡る。その響きは、狂おしく、悩ましく、アンジェリークの全身を洗ってゆさぶり、身体の芯を、奥底を酷くざわつかせる。
「や…なに…?…あ…オスカー…おなかの奥…いっぱい…すごい…ずしんて…響いて…あぁっ…あん…」
「くぅ…ぅあ…アンジェリーク……君の中…熱い…俺は…とけちまいそうだ………」
荒い吐息混じりに発せられるオスカーの声は、掠れて、うわずって、切羽詰っていて、オスカーのそんな声を聞くのはアンジェリークは初めてだった。なんだか、おなかの奥がきゅっと絞られるような気がして、アンジェリークはぞくぞくした。優しく、落ち着いていて、甘く低く響くオスカーの声も大好きだけどーこんな…掠れたオスカーの声を聞くと、すごく、ドキドキする…
眩しそうに瞳をあけると、オスカーの姿が目に入ってきた。
軽く顰められた眉は、先刻より一層苦しそうで、何かに耐えているような表情を見せる。張りのある紅い髪が、無造作に額に散らばり、それが、汗で張り付いている。切なげに細められた瞳は、なにか、真摯に訴えているようで、アンジェリークは、魅入られたように、オスカーの顔を見つめ、腕を伸ばして、その逞しい首の根元にすがりついた。オスカーの切なそうな表情を見ると、何故か、抱きしめてあげたくなる。身が自ずと震えだすような喜びを感じて、身体の奥の方が、ぞくぞくする。
「オスカー……気持ちいい…の?…」
「ああ…君の中…とろとろに濡れて…とろけて…絞り込まれる…絡み付いてくるみたいで…たまらない…」
そう告げながら、オスカーは、一層激しくアンジェリークの身体を揺さぶり、力強く腰を打ち付ける。
「く…」
苦しげに眉を顰めると、アンジェリークのたおやかな身を、骨が軋むほどにきつく抱きすくめた。
「ひぅ…」
アンジェリークの唇から、鳥の囀りのような声が零れた。反射的にオスカーは僅かに腕の力を緩め、すかさず口付ける。そのまま、唇を首へと滑らせるとオスカーは、ぴちゃぴちゃと舌を鳴すように、アンジェリークの首筋を執拗になめ回す。その間も腰の律動は緩まない。
挿入した瞬間から、一瞬たりとも気が抜けなかった。
アンジェリークの媚肉は、信じられない柔らかさで、みっしりと吸い付いてくるようにオスカーを隙間なく包み込んできた。熱く潤びた柔襞は、とろとろに蕩けているのに、うねるように蠢いて、己の剛直に絡みついてくるようでもあって、ただ、挿入しているだけでも、オスカーは射精の衝動を堪えるのに、ありったけの精神力を要した。
そう長くは、辛抱が効かないと思った。だからこそ、早く、動きたかった、こんなにも、切羽詰って…何かに追い詰められるように、自身を打ちつけたいと思ったのは、初めての経験だった。
愛液が潤沢すぎると、滑りがよすぎて、挿送には、些か物足りない感覚を覚えるものだということを経験上知っていたから、穏やかな挿送を行う間に、この、のぼせきった頭を少しでも冷やしたかった。冷やせると思った。
なのに、実際に、律動を始めたら、そんな思惑などふっとんだ。
あんなにも豊かに潤い、今も、腰をうちつけるたびに、じゅぷ・ぬぷと、酷く淫らな水音を絶え間なく響かせるほど、彼女の秘裂は、愛液で溢れかえっている、なのに、しなやかで張りのある肉壁は、一部の隙もなくオスカーの男根を握り込むように締め付けてくる。複雑に重なり合った柔襞は、自らまとわりついてくるようだ。
特に、入口付近の肉壁の締め付けはきつく、突き入れるたびに、茎の部分をしごかれているような錯覚を覚え、思わず、声が漏れそうになる。胎内が滴るほどに濡れていなければ、痛みを感じるほどだったかもしれない。あれほど豊かな愛液の助けがあればこそ、このきつい肉壁をこじ開けるような挿送の度に、頭がおかしくなりそうなほどの快楽が自身の真ん中を突き抜けていくのだと、オスカーにはわかる。
そして、一度、じっくり腰を進めて最奥にたどり着けば、オスカーのものは、天界の雲もかくやという暖かで柔らかで緻密な媚肉にほんわりと優しく包み込まれる。その底なしに柔らかな媚肉の感触は、熟しきった果実のようだと、挿入の瞬間からオスカーは感じていたが、今、一層、その思いを強くする。己の男根で媚肉を貫くたびに、熟した果肉に思い切り指を突き刺すような、そして、その指が、際限なくずぶずぶと、蕩けきった果肉に吸い込まれていくような、そんな、背徳的な官能を覚え、陶然とする。
一転、思い切り良く突き上げれば、弾力のある最奥に小気味よく先端を跳ね返され、その打てば響くような反応に、夢中になって、激しい律動を繰り返して与えてしまう。抜き差しするたびに、彼女の柔襞に、狂おしいほどに雁首をめくられて、くぐもった叫びが喉にこもる。尚更に、勢いをつけて、貫いてしまう。
そんながむしゃらな律動も、彼女のぽってりとふくよかな花弁が、柔らかな弾力で、全て受け止めてくれる。それがわかるからこそ、意地になったように、オスカーは、力強く、激しい挿送を殊更に繰り返す。
こんな…どんな風に動いても、これほど狂おしい快楽を、こんなにも極上の官能を与えてくれる肉体をオスカーは知らない。それなりの数の巫女と交わったことがあり、皆、それぞれに魅力的な女性だった、が、その経験の全てを凌駕するほど、アンジェリークの肉体は、この上なく熱く、驚くほど柔らかで、それでいて、オスカーの激しい律動をすべからく受け止めてくれるしなやかな強靭さをもっていた。もぎたての果実のような、はじけるような瑞々しい張りにみち、うっとりするような芳しさを放ちながら。
突き入れれば、突き入れるほど、もっと、早く、激しく、力いっぱい、己を叩きつけたくなる。
彼女は、初めてなのに…もっと、優しく、穏やかにことを進めるべきだと思うのに、オスカーは、自身を止められない、これでもかと言うほど、早く、激しく、そして、ありったけの力で、腰をうちつけずにはいられない。それほどにアンジェリークは、オスカーを惹きつけてやまない。
一度、抱いたら、間違いなく男を虜にする、離れられなくなる、恐ろしいほど魅力的な身体だ…と思いかけ、オスカーは、心の中であわてて首を振った。
いや、それもあるだろうが、それだけじゃない。
俺が心から愛し、永年焦がれ、焦がれ続けてきた女性だから、彼女が、俺には、こんなにも、いとおしい。とことん溺れ、貪りつくさずにはいられぬほどに。
そして、彼女もまた、俺を心から愛し、俺を欲してくれ、心底、俺を受け入れたい、俺を包みたいと願ってくれているからだ。俺と一つにつながれて嬉しいと思ってくれている心が、彼女の反応を、こんなにも鮮烈で、におい立つように魅惑的なものにしてくれているのだ。
身体は正直なものだから。特に、精神体として純粋なアンジェリークは、心のありようが、そのまま如実に肉体に反映されるから。
俺が突き入れるほどに、彼女の秘裂も、きつく、俺を締め付けてくる。引き抜くたびに、名残惜しげに、彼女の媚肉が絡みついてくるのがわかる。最奥を叩けば、妙なる囀りで応えてくれ、小さな手は俺の背をさまよい、しなやかな指は俺の髪を闇雲に梳く。
「アンジェリーク…好きだ…たまらなく好きだ…」
「あぁっ…は…オスカー…私も…私も…」
火を吐くような吐息混じりに、うわ言のように愛の言葉を呟く紅い唇に思わず口づける。
この愛しさを、どう、伝えればいいのかわからない、あまりに愛しくて、頭がおかしくなりそうで。
オスカーは、何かをふっきるように一度上体を起こすと、アンジェリークの膝頭をがっしと掴んで大きくこじ開けた。更に腰を密着させるようにせり出して、激しく力強い律動を立て続けにくりだす。突き入れる時は反り返った男根で彼女の肉壁を擦りあげるように、抜く時は、張り出した雁首で、柔襞をかき出さんばかりの勢いで。
「あ…やぁっ…すごい…擦れて…あ…あぁ…ん…」
膝頭を押さえ込まれた分、アンジェリークの腰が若干浮きあがり、彼女の花弁を惨いほど押し広げて、己の男根が勢い良く出入りする、その様が、オスカーの目にはっきりと映った。自身の肉の楔が、深々とアンジェリークの身を貫き、己に縫い付けているように思え、胸が震えた。
引き抜ききった瞬間には、彼女の柔襞もめくれかえってオスカーに肉茎に名残惜しげに絡み付いてくる。秘裂の内側の、濃い紅色の肉襞が、濡れ濡れと光って、やはり、彼女の愛液にまみれて濡れ光る己の男根にまとわりついてくる様が目に入り、オスカーは、そのあまりの淫靡さに、頭が沸騰しそうになる。
「アンジェリーク…俺のものが、君を貫いている…俺と君とが、つながっている様がはっきりと見える…夢じゃない…これは夢じゃないんだ…」
オスカーは、揺さぶられるままに、あてなく毛皮をまさぐっていたアンジェリークの手を取り、自分たちの結合部分に触れさせる。
アンジェリークの小さく柔らかな手が、自身の花弁とオスカーの性器の根元の部分とに同時に触れる。改めて触れるオスカーのものは、これが人の身の一部とは信じられないくらい熱くて堅くて大きくて、でも、それが、確かに、自身に出入りしている。こんなに大きくて堅いものが、驚くほど滑らかに根元まで入ってしまうのも、その度に、体中に、ずしんと重く響き渡る、痺れるような快楽が走り抜けていくのも、アンジェリーク自身が、オスカーを欲し、受け入れ、包み込みたいと願ったからこそだと、アンジェリークにもわかる。だって、オスカーのものは、つかみ所がないくらい、すべるようになめらかで、それは、自分自身も同じで…横たわる毛皮の下は、今、ぐっしょりと滴り落ちるほどに、濡れているのが、アンジェリークの手にもわかっていた。
「あ…あぁっ…嬉しい…」
アンジェリークの手指は、自身の愛液の助けを借りて、踊るように、オスカーの男根の根元を撫でさすった。
「ほんとに…私の中に…オスカーが…入って……こんな…深く…奥までいっぱい…」
「ぅ…くぅ…」
「オスカー…私、幸せ…幸せなの…」
「っ…ああ…俺もだ…君を、こんなにも深く感じる…君の中で溶けてしまいそうだ…」
切羽詰ったようなオスカーの訴えが、アンジェリークの耳に響き、オスカーへの愛しさが爆発しそうに膨れ上がる。アンジェリークは、膝頭を抱えるオスカーの手に、自分の手を重ねてきゅっと握り締める。
「嬉し…オスカーにも気持ちよくなってほしかったから…オスカー…もっと…たくさん、気持ちよくなって…」
「なんて、かわいいことを言うんだ、君は…もう…俺は…もっと…留められなくなっちまう…」
「ん…いいの…オスカー…いっぱい…して、オスカーが気持ちいいように…思い切り、して……」
「なら、一緒に…一緒に同じくらい、気持ちよくなろう…アンジェリーク…」
オスカーは、アンジェリークの細い足首を掴むと、それを肩に担ぎ上げ、そのまま、アンジェリークの身体を二つ折りにして、深々と貫く。
「あぁああっ…」
そのまま、男根を腹側の肉壁に押し付け、こそげるような動きを意識して、思い切り素早く、力強い律動を放つ。その一方、先端が最奥を叩く瞬間は、僅かに腰を溜めて、余韻がアンジェリークの全身まで響き渡るよう、待つ。
「あっ…やっ…なに…奥…すごい…あ…あぁっ…」
「ここが…いいか…?」
突き上げるたびに、アンジェリークが悲鳴のような声を発する部分を意識して、先端で小突く。小突いたまま、腰を密着させて、ぐりぐりとまわす。
「ひぁああっ…」
アンジェリークが狂ったように頭を振る。眦に涙が滲む。
オスカーはねばつくように腰を回しながら、親指の腹を、結合部の少し上で顔を出している肉芽にあてがう。
律動にあわせて、あてがった指が揺れて動いて、肉芽を刺激する
「あぁっ…ぁ…いい…いいの……もう……や…変…私…破裂しちゃう…いっぱい…いっぱいなの……」
「大丈夫…そのまま…俺を感じて…」
オスカーが、一層、律動を早める、速めた分だけ、アンジェリークの腰が浮いて逃げないよう、がっちり自分の体躯で抑え込む。
激しい突き上げに、アンジェリークの乳房が大きく揺れる、その眺めに誘われるように、荒々しく乳房を掴んで揉みしだく。
腰を打ち付けるたびに粘り気を帯びた水音と、湿った肉を叩く音、それにアンジェリークの悲鳴のような声、荒々しい己の吐息が重なって耳を打つ。
「ああ…オスカー…オスカー…私…何か…こみ上げ…もう…いっぱい…はじけちゃ…あぁああっ…」
甲高いさえずりがアンジェリークの喉から迸った。きゅっと切なげに苦しげに眉が顰められた。
と、彼女の苦しげでやるせない表情が、魔法のように、ほんわりと夢見るようなそれに変わっていく。満たされた幸せそうな笑みがほのかに口元に浮かぶ。見つめずにはいられないような、それでいて、見つめるのが恐れ多いような神々しい表情だった。
が、オスカーに、その表情に見惚れている余裕はなかった。
瞬間、アンジェリークの肉壁は、ぐぅっとうねるように、オスカーのものを、奥へ奥へと絞り込むように蠕動した。
その途端、自身が、アンジェリークの中で、更に大きく膨らんだような気がして、それが限界まで達したと思うや、自身は爆ぜた。
「くっ…」
身体の中心から、背筋、そして脳天へと、爆発するような快感が駆け上がり、走りぬけていった。瞬間、目の前が真っ白になるような眩い光が脳裡に閃き、オスカーは、自分自身が清浄な純白の光で満たされたように感じた。その一瞬、世界は音を失った。
同時に、己の命の一部が…熱く燃える炎が奔流となって勢い良く迸り、脈うって、アンジェリークの中に注ぎ込まれた。その流れはアンジェリークに余すところなく受け止められ、彼女の身体の中に、隅々まで溶け込んでいく。
俺の炎と君の光…最早、分けることができないほど、一つに溶けて、交じり合って…そんな感覚に、オスカーは、そのまま…例えようのない快楽にたゆたったまま、気が遠くなりそうだった。
「あ…あぁ…熱い…あったかいの…オスカーの…私の中に…溶けて…混じっていく…」
見下ろせば、何よりも大切で愛しい恋人が、幸せそうな笑みを口元に浮かべながら、小さく、しゃくりあげていた。
この時のオスカーには、知る由もなかったが、この瞬間、月の影から抑えきれぬ程の陽光が一閃、漆黒の空に迸った。その光は、天を埋めるどの星よりも、眩く、清らかで、あたかも、天空に浮かぶ大きな指環に据えられた極上の金剛石が、眩く煌めくようだった。その光が瞬いた時、天界・地上を問わず、多くの者が、身の内に自然とこみ上げ溢れるような、深い愛情と満ち足りた幸福感とを感じ、自ずと涙した。