Princesa blanca〜白の皇女〜 2
挿絵 青空給仕様

『んんんーっ…』

硬く尖りきった小さな突起をきつく吸い上げた瞬間、リアーネの全身が瘧にかかったように震えた。

ネサラは身体を起こして、リアーネを抱き寄せキスしながら、子供に諭すように告げた。

「リアーネ、俺は、もう、おまえと一つになりたい…」

『ネサラと…一つに…?』

リアーネは肩で息をしながら、ぽーっとした表情でおうむ返しに応えた。瞳は紗がかかったようで、薄く開いた唇は艶やかに濡れている。

ネサラは、握っていたリアーネの手を、己の張り詰めきった男根へと導いた。リアーネは、導かれるまま素直にやんわりとそれに触れた。

『すごく硬くて…熱い…』

「これがおまえのここに入りたいって言ってる…」

ネサラは、リアーネの首筋に舌を這わせながら、潤びきった秘裂を長い指でゆっくりとかき回した。

『ふぁっ…ネサラの…これ…入るの?…私のそこに?』

「ああ…そして、俺とおまえは一つに繋がるんだ…」

『一つに?……』

「…怖いか?」

『…ううん、怖くないよ。ネサラだから…怖くない』

「いい子だな、リアーネ…」

ネサラはちゅっと口付けながらリアーネの髪をなでた。

リアーネが無邪気な笑みをみせた。

『うん、私、ネサラが好き、ネサラ大好き』

「ああ…俺も…おまえが好きだ…」

『…嬉しい…』

ネサラが瞳を細めて、優しく告げてくれた「好き」という言葉を聞いた瞬間、リアーネは胸がきゅぅっと絞られて苦しくなるような不思議な喜びを覚えた。胸が苦しいのに幸せでたまらない、それは初めて感じる不思議な気持ちだった。その心のままにリアーネは自然に微笑みをネサラに返していた。花が咲き綻んだようなその笑顔は、ただ無邪気なだけではない、たおやかな含羞を湛えていた。

頬をぽぅっと紅潮させて恥らいを滲ませ、嬉しそうに微笑むリアーネを見るや、ネサラは、思いきり強くその身体を抱きしめていた。

「ったく…そんなかわいい顔、見せられたら…俺は…」

ネサラはリアーネを抱きかかえたまま身体を起こして胡座を組み、くたんと力の抜けているリアーネを懐に抱きかかえなおした。己の首にリアーネの腕を巻きつけさせ、改めて細い腰をしっかりと支える。

そして、リアーネの小振りなお臀を包み込むように両手でしっかと掴むと、指先で彼女の花弁を僅かに引き開きながら、その身体をゆっくりと己の怒張の上に降ろしていった。

先端がリアーネの花弁に触れた。熱いぬめりを感じた瞬間、ネサラの背筋に震えが走った。

「しっかり俺につかまってろよ」

ネサラは、ゆるゆると静かに、だが躊躇わずに、己の怒張をリアーネの中に飲み込ませていった。複雑に重なり合った柔襞を豊かな愛液に助けられてネサラのものが割り入っていく。

『ぅ…あぁ…』

リアーネが、やるせない吐息を零した。滴るほど濡れていて、なお、リアーネの秘裂は痛いほどきつかった。が、中に分け入るほどに肉襞はとろけるほど柔らかく、燃えるように熱い。そんなリアーネの柔襞に男根が包みこまれていく感触にネサラも思わず呻きそうになる。

「っ…ほら…リアーネ、おまえの中に、俺が入っていくぜ…」

『うっ…くぅ…』

ネサラの男根がリアーネの胎内に姿を消していくにつれ、リアーネの零す吐息は苦しげになり、眉が切なげにきつく顰められていく。無意識にであろう、リアーネはゆっくりと嫌々するように頭を振る。

ネサラはリアーネの腰が逃げぬよう、しっかりお臀を抱え、最後は、ぐっと力を込めて己の怒張全てを、根元まで容赦なくリアーネの胎内に収めきった。

「っ…」

リアーネの熱い媚肉に隙間なく包まれる、とろけるような一体感に、ネサラは言葉を失った。

『くふぁっ…』

そして、その瞬間、リアーネは陸に上げられた魚のように喘いだ。身体がぷるぷると小刻みに震えてしまう。リアーネがネサラの首に回した手は、無意識のうちに硬く引き締まったその肌に爪を立てていた。

身体中がネサラで埋め尽くされているようだった。

お腹が一杯で、苦しくて、上手く息ができない。

「ほら…一つに繋がったぜ…わかるだろう?おまえの中に、俺がいるのが…」

『…ぅう…ん…』

喘ぎながら頷くリアーネをネサラはきゅっと抱きすくめた。

「痛いか?リアーネ…」

『痛く…ないけど…お腹、きつい…ネサラで…一杯……くるしい…くらい…』

「すまないな、こればかりは慣れてもらうしかねぇ…」

ネサラが、リアーネの唇を捉えて、口付けた。

『んんっ…』

唇を吸った瞬間、リアーネの媚肉が僅かにすぼまったようにネサラは感じた。思わず声が出そうになった。もう、留め置くのも限界だった。初めて雄を受け入れたリアーネの違和感がきついのは承知していたが…

「動くぜ…」

リアーネの耳元でささやいたネサラの声は、少しかすれていた。

リアーネはネサラのこの言葉の意味がよくわからなかった。身じろぎするのも躊躇われるほど、身体の芯までネサラで一杯で、頭がぽーっとして、何も考えられない。

と、ネサラは、リアーネのお臀をしっかと支えなおすや、いきなり、思い切りよく腰を上に突き上げた。

『ひぁあっ…』

リアーネは、脳天までネサラに突き貫かれたような突然の衝撃に、一瞬気が遠くなった。

背中がきれいな弧を描いて反り返り、そのまま後ろに倒れこみそうになる。

ネサラは、すかさずリアーネの背に腕を回して、その身体をしっかと抱き支えた。

軽い…膝の上に乗せた時も思ったが、改めて感じる。リアーネの身体は頼りないほど軽いと。

ネサラはリアーネの身体が突き上げに浮いて逃げてしまわないよう、改めて華奢な身体を両の腕で囲い込むように抱きしめた。折れてしまいそうな骨細の身体なのに、渾身の力で抱きすくめずにはいられなかった。リアーネが余りに軽くて、いくら抱きしめていても羽毛を抱いているように頼りなく思え、ネサラは、尚更、リアーネを抱く手に力を込めてしまう。彼女がこの腕の中からすり抜けてしまうのを恐れているかのように、力の限り抱かずにはいられない。

その上で、そのいたいけな肢体に、ネサラは容赦なく激しい突き上げを続けざまに放った。肉の楔で、リアーネの身体を自身に縫い付けようとするが如く。

『ひぁっ…あっ…やっ…あぁああっ…』

身体の最奥を突き刺し抉るようなネサラの律動に、リアーネが悲鳴のような声をあげた。

ネサラに身体ごとゆすぶられ、1番奥深い部分を思い切り突き上げられる。身体の中心を熱く硬いもので鋭く射し貫かれているかのようだ。力強く重い衝撃が、リズミカルに、途切れることなく、ずしんと身体の最奥に響き、その度に、頭の中に真っ白な火花がはじけて飛び散る。

痛みは、ない。でも、苦しい、上手く息ができなくて。ネサラの身体があんまり熱くて、自分の中に感じるネサラは怖いほど固くて、大きく思えて…身体中もうネサラで一杯に満たされているのに、これ以上なんて無理と思うのに…それでも、尚深く、より強く、ネサラが入ってくる、はちきれそうに満たされる…もう、頭も身体もネサラで一杯…自分を抱きしめる腕の力も強すぎて、いくら息をしても身体に空気も入ってこない…

それなのに、ネサラの律動はより早く、激しくなる一方だった。リアーネの身体を一分の隙間を許さないほど固く抱きしめて、がむしゃらなまでに激しく腰を突き上げる。

リアーネの媚肉の妙なる感触にネサラは我を忘れていた。溺れていたと言ってもいい。

女を知らないわけじゃない、なのに、挿入した時、思わず呻きそうになった。挿送したら尚更だった。一瞬にして魅了された。この俺としたことが…抑えがきかない、止めようにも止められない。

突き上げるリズムに合わせるかのように、きゅうきゅうと痛い程に、リアーネの膣壁はネサラのものを締め付けてきた。特に、入口あたりの締め付けはきつく、突き入れる度に、若干の痛みを感じるほどだ。だが、その奥の柔襞は果てなく優しく、絡みつくようにみっしりとネサラの男根を包み込んでくる。とろとろにとろけるように柔らかく、煮えたぎる坩堝のように熱いリアーネの媚肉に、ネサラは突き入れるたびに脳髄まで溶かされそうな思いに、酔いしれていた。

まるで若造だと思う、なのに挿送をどうにも止められない、突き上げる勢いを僅かに緩めることもできない。ひたすらに、もっと深く、もっと奥までと、リアーネを貪らずにはいられない。リアーネの何もかもを食らい尽くすがの如く、律動は強く烈しくなるばかりだ。

眼前には、リアーネの真っ白なふくらみが、自分の突き上げにあわせて激しく上下に揺れていた。ぴんと硬くそそり立った薄紅色の先端に誘われ、ネサラはそれを唇で捉える。遮二無二吸う。

「ひぁあんっ…」

リアーネが、苦しそうに頭を振った。眦に涙が滲んでいる。

「リアーネ…」

ネサラはそんなリアーネに無性に接吻したくなる。リアーネの顎を指先で捉えて、噛み付くように口付け、吐息ごと飲み込むように唇をきつく吸った。

「んんんっ…んぁっ…」

苦しそうにリアーネが無理矢理のように口付けを解いてしまった。とても、呼気がおいつかない。

『はっ…はぁっ……苦し…』

「!…っ…すまない…」

この時ネサラは、自分が無我夢中でリアーネを貪るあまり、この華奢な身体をどれほどの力でだきしめていたかを初めて自覚した。

(ったく、俺としたことが…)

慌てて抱擁を…腕の力だけをどうにか緩める。

リアーネが、ほぅと、安堵したように息をついた。

ネサラは包み込むようにふんわりとリアーネの身体を抱きなおすと、上気し汗ばむリアーネの小さな顔に幾つも口付けを落とし、眦に滲んでいた涙を己の唇で拭った。

「わるい…おまえ、初めてなのに、無茶をした」

『はっ…はぁ…ううん…息が…苦しかっただけだから…』

「すまなかったな…苦しい思いをさせて…」

『はぁ……ううん…は…平気…嬉しかった…し…』

「嬉しい?」

『…うん…ネサラが私の中にいるんだって…本当に一つに繋がってるんだって思うと、なんだか、お腹の中から体中熱くなって…嬉しかったから……平気…』

リアーネは肩で息をしながらも、恥じらいと喜びを湛えた笑みをネサラに向けた。

「っ…リアーネ……」

『きゃ…』

今しがた、見境ない抱擁を省みたばかりだというのに、ネサラは、またも、リアーネを力の限り抱きしめ、口付けていた。

翼ごと縛めるように抱きすくめてしまっていたんだ、苦しいに決まってる、鳥翼族にとって翼の自由を奪われるのは何よりの恐怖であり苦痛でもあろうに…。

なのに、どうして、おまえは、こんなにも優しい…俺との繋がりを喜びと感じてくれて…俺を信じ、丸ごと受け入れて…。

『…く、苦しいよ…ネサラ…』

リアーネがネサラの腕の中で、身じろぎした。

「…苦しいだけじゃ終わらせねぇ…」

呟きざま、ネサラは、リアーネを寝台にうつぶせにさせた。

間髪入れず張りのある小振りなお臀を抱えて、高々と持ち上げた。真っ白なお臀の真ん中に艶々と濡れた紅色の花弁が咲いていた。今までネサラの男根を受け入れていた花弁は、僅かに入口を綻ばせ、豊かに蜜を滴らせて濡れ濡れと艶めいていた。譬えようもなく淫らで美しいと、ネサラは、その花に見惚れる。

「一杯…気持ちよくしてやるからな…」

ひんやりと滑らかなお臀を一撫でするや、ネサラは、リアーネを後背から一気に思い切りよく貫いた。

「ひぁあんっ…」

あまりの勢いにリアーネの身体が前につんのめりそうになるのを、ネサラはリアーネの腰をしっかと支えて堪える。そのまま、ネサラはリアーネのお臀を抱え支えて、勢いよく、腰を打ち付け始めた。ぱんぱんと湿った肉を打つ小気味よい音と、じゅぷっぬぷっと、粘り気のある淫靡な水音が重なって響いた。

「ふあぁっ…んんっ…あんっ…あぁっ…」

リアーネのあげる艶やかな声に、ネサラは安堵すると同時に奮い立つ。

我を忘れてリアーネを攻め苛んでしまった分も、リアーネを、もっともっと、よくしてやりたい。

リアーネが乱れる箇所を探るように、ネサラは様々に突きいれる角度を変えて、リアーネの膣壁を擦りあげる。下向きに媚肉をえぐりこむように、上向きに子宮口を小突くように、時には円を描くように、巧みに腰を使う。

『ひぃいんっ…中…こす…れて…あぁんっ…やぁっ……』

一際鋭く肉壁を擦って突いてやると、リアーネの背がくぅんとしなった。

「ここが…いいのか…?」

上向きに意識して突きいれ、柔襞を思い切りカリで掻きだすように擦ってやる。

『はぁああっ…だめぇっ…』

リアーネが激しく頭を振る。

と、ネサラは、根元まで挿入して密着させたまま腰を粘っこく回した。先端で、リアーネの最奥をぐりぐりと擦っては小突く。

『ひぃんっ…』

リアーネが、感極まったように敷布に突っ伏してしまう。細く綺麗な指先がくしゃくしゃと敷布を握り締める。

『やぁあっ…奥…奥、すごいのぉ…』

「気持ち…いいか?…」

『いい…すごい…いいの…あぁんっ……』

「ああ…もっと、よくしてやる…」

『ひぃいんっ…ひぁっ…あぁあ…』

リアーネが絶え間なく火のような吐息を零す。

リアーネが深い官能の悦びに震え乱れる姿に、ネサラもリアーネを更に深く激しく貪ることしか考えられなくなっていく。

勢いよく突きいれ、引き抜くたびに、リアーネの襞がめくりかえって名残惜しげに己の男根に絡み付いてくるのがわかる、その度に、ネサラの背筋にもぞくぞくした快感が走りぬける。挿送するほどに重なりあう肉襞がカリを逆撫でする如くまとわりついてくるようで、その感触は狂おしいばかりで、ネサラは、更にリアーネの身体に溺れゆく。

「誰にも…やらねぇ…俺の…ものだ…リアーネ…」

ネサラがリアーネの腕を取り、思い切りよく後ろ手に引いた。

「はぁあっ…」

苦しいほどに結合が深くなって、リアーネの背がきれいな弧を描いて反った。

ネサラは、リアーネの腕を引いたまま、勢いよく腰を打ちつけては、意識してカリで柔襞を掻くように擦った。思い切り腰を密着させたまま、ぐりぐりとえぐるように腰も回す。

『あぁっ…ネサラ…すごい…奥…熱いよぅ…ネサラぁっ…』

お臀に打ち付けられる肉の感触、身体中に伝わり響き渡る振動、内側から擦られる度に走る灼けつくような快楽、身体の1番深いところを容赦なくえぐられる程に感じる狂おしい思い…。

頭も身体もネサラで一杯で、リアーネの心は焼ききれそうだった。ネサラで一杯で、ネサラに与えられるもので、身体も心もいまにも破裂してしまいそうだ。

『やっ…もう…いっぱい…私、弾けちゃ…あぁっ…』

リアーネの翼が、ふるふると震えて、今にも開こうとしているかのように見えた。

その瞬間、ネサラは、ぐっと力をこめて、更に自分の方に引き寄せるようにリアーネの腕を引いた。これ以上はないほどに、思い切り深く、力強く、リアーネを刺し貫きながら、ネサラは自身も上体を倒してリアーネの背に口付け、白金の翼の付け根に軽く歯をたてた。

『あぁあああっ…』

その時、リアーネの身体がびくびくと大きく震えた、媚肉がうねるように蠕動してネサラのものを一際きつく締め上げた。同時に、リアーネの翼がぱぁっと大きく開かれ、白金の羽毛が中空に舞い散った。

「くぅっ…」

世にも美しい光景に見惚れ、そして爆ぜた。己の命の証が、どくどくと音を立てて逆巻き迸り、リアーネの中に注ぎ込まれていくのをネサラは感じた。

スローモーションのようにリアーネが敷布に突っ伏していくのが見えた。広げられた翼がゆるゆるとたたまれていく。

ネサラは、倒れこむリアーネを追う様にその白い背に覆いかぶさると、羽交い絞めにリアーネを抱きすくめた。そして片手で細い顎を捉えて、少し強引に己の方を向かせると、口付けを幾つも落とす。口付けながら、自然にリアーネの身体を仰向けに返してやると、茫漠とした瞳のリアーネと目があった。リアーネがネサラにほんのりと微笑みかけた。

何故だろう、ネサラは、今にも涙が溢れそうになった。

こんな充実、こんな幸福を今までの生涯で感じたことがなかった。

ネサラは、リアーネを改めてきつく抱きしめながら、此度は深い口付けを与えた。

リアーネは、静かにそれを受けた。ネサラの漆黒の翼を優しく抱くように、リアーネの手がネサラの背に回された。

 

リアーネの中から、ゆっくりと引き抜いた。幾分力を失った己のものが、リアーネの胎内からぬるりと姿を現す。リアーネの愛液に塗れて濡れ光る自分のものと、リアーネの潤びた花弁が僅かに口を開けて、白濁した滴りを零してる様を目にしたら、たった今、放ったばかりのものは、あっという間に力を取り戻した。

まだだ、まだ足りない。20年分の俺の思いは、こんなものではすまない。

そう思った時に、ネサラは、またも、リアーネを組み敷いていた。同時に、思い切り、貫き、突き上げていた。

一度放った後とて、ネサラは更にもちこたえた。リアーネは、最後、声もでなくなってしまい、火のように熱く忙しない吐息を零すだけになって、漸く、ネサラはリアーネの中に再び放ち、たっぷりと注ぎ込んだ。ネサラが果てるや否や、リアーネも敷布に崩れ落ちるように沈み込んだ。リアーネの胎内は、今、ネサラの精で溢れかえっていることだろう。リアーネが僅かに身じろぎしても、溢れて滴り落るほどに。

そして寝台の周りには、リアーネが快楽を極めるごとに広げられた翼から舞い踊った白金の羽毛が花びらのように散っていた。

ネサラは敷布に突っ伏しているリアーネを自分の汗ばんだ胸元に半ば乗せるように抱えこんで抱き寄せ、たくさんの口付けを与えた。息が整いつつあったリアーネもそれを素直に受ける。

ひとしきり口付けを交わすと、リアーネはこてんとネサラの胸に頬を預け、白く滑らかなネサラの胸板に悪戯するように指を滑らせた。

『ネサラ…ケッコンって、気持ちいいね…すごく幸せな気持ちになって…私、もっと早くケッコンすればよかったな』

「リアーネ、それは、すこぶるいい男である俺と結婚したからだぞ?好きな男とじゃないと…誰と結婚しても、同じように気持ちいいわけじゃないからな」

『うん、そうだね、ネサラとだから気持ちいいんだね。ねぇ、これで赤ちゃん、できるかなぁ?』

「できてても、できてなくても、何度でもすればいいさ。子供、たくさん、作るんだろう?」

『そうだね、うふふ…』

リアーネが、嬉しそうに幸福そうにくすくす笑って、ネサラの胸にちょこんと頭を預けた。ネサラはそんなリアーネを瞳を細めてみつめながら、その細い肩を抱き、ふと、思いついたように声をかけた。

「リアーネ」

『なぁに?』

「その…なんだ…順番が逆になっちまったが、明日にでもキルヴァスの宝物庫から1番立派で綺麗な石の入った指環を持ってきてやるからな。それで…おまえが俺の嫁だってことを、一日も早くラグズの諸王たちにお披露目しないとな…」

『お披露目?』

「ああ、その時は…ベオクは好かんが…おまえが世話になったあいつらくらいは招待してやらんこともない」

『ベオク…アイク様たち?』

「まぁ、婚礼披露という名目でなら、あのベオクどもを、キルヴァス王宮にいれてやらんでもないってことだ。それにしても、ベオクのヤツに《様》なんてつけてやることないだろう?おまえ、俺のことは呼び捨てなのに」

『だってネサラはネサラだもん、ネサラ様なんて、変だもん』

「ふふん…ま、おまえはそれでいいか…それと、お披露目となれば、おまえの婚礼衣装も用意しなくちゃな…これは流石に明日って訳にはいかないが…おまえ、どういうのが着たいとか、あるか?どんなのでも調達してきてやるぜ」

『でも…だって…ネサラ、いいの?』

「何が?」

『お金…いるんでしょ?』

「ばーか、おまえはそんな心配しなくていいんだよ」

『悪いこと、ダメだよ?ネサラ』

「ああ…その心配もいらねぇよ、もう、今までみたいに、なりふり構わず稼ぐ必要はなくなったからな…」

『???』

「とにかく、おまえは何も心配しなくていい。万事俺にまかせておけ」

『うん…ねぇ、ネサラ…』

「何だ?」

『ネサラ、ありがとね、私をお嫁さんにしてくれて…』

「…礼を言うのは、俺のほうだ…」

『何?』

「いや、なんでもない、おまえは少し寝るといい、疲れただろ?」

『…うん…そういえば、眠い…ね、ネサラ、一緒に寝てくれる?』

「ああ、おまえは俺の嫁なんだからな…」

『うれ…し…』

というや、リアーネは、ことんと寝入ってしまった。すぐさま規則正しく穏やかな寝息が聞こえ始めた。

ネサラはリアーネの身体をふんわりと抱き寄せると、柔らかな白い頬に口付けた。漆黒の翼も自然とリアーネの身体を守って包みこむように弧を描いた。

そうだ、礼を言うのは俺のほうだ、リアーネ。

おまえが無事生きていてくれて、おまえに会えて…俺は、俺を闇雲に駆り立てていたどろどろした感情が…少しづつ薄れているのを感じるんだ。

多分、リュシオンも、ティバーンも…何もわかっちゃいねぇ、俺が…今まで、どれほどべオクを…ニンゲンを憎んでいたか…セリノスの森を焼き、サギたちを殺したニンゲンをどれほど呪い憎んでいたか…今もわかってやしないだろう。心底蔑み憎んでいるからこそ、俺が、ニンゲン相手にどんなに汚いことでもできたってことを。片っ端からニンゲンを襲って騙して金品をありったけ巻き上げた。ニンゲンの荷を奪って、ニンゲンに売りつけるのも、ニンゲン同士の物をやり取りしてただけだから、心なんて痛むはずもなかった。そして、俺は、俺達カラスを傭兵として雇って同胞の国に攻め込むニンゲンどもも、同族からの盗品とわかってても金を払うニンゲンどもも、心の底から侮蔑してたんだ。

それでも…金がほしかった、なんとしてでもキルヴァスを大国にしたかった。

あのベグニオンに…自分たちの仕出かしたことを思い知らせてやるために。

正当な抗議なんて、ニンゲンどもには通じやしない。20年間、ティバーンが、抗議の意味でどれほどベグニオン船を襲おうと、あいつらは、俺達のことを煩く飛び回るハエくらいにしか思ってなかった。ラグズの抗議なぞ無視しても、何ら痛痒を感じないからだ。あのデインの狂王アシュナードですら、ベグニオンとは正面きって事をかまえようとはしなかったのも、それだけ、ベグニオンが…サギを皆殺しにしたあいつらがこの世界一の強国・大国だったからだ。他国からの抗議などに耳を貸さなくてもいいほどの…何をしても、罰する相手が他にいないほどの…

それなら、ベグニオンが無視できないほどの力をつけるしかない。

だから、だからこそ、俺は力が…金がほしかった、ベグニオンが俺達を無視できないほどの国力をつけるためには、金はいくらあっても足りなかった…

金をため国力をつけ…どんな手段を持ってしても、ベグニオンの奴らにおまえたちサギの無念を思い知らせ、侘びをいれさせる。そして、何時の日か、なんとしてでも、セリノスの森を蘇らせる…それが、無残に殺されたサギたちへの…おまえへの手向けだと俺は信じて生きてきたんだ。そう思ってきたから、俺は、どんなに汚いことでもできた。最初は、ニンゲン同士殺し合い、潰しあいをして、べグニオンが滅ぶなら、それはそれで万々歳だと思ってた…自分の手で叩き潰してやれないのは業腹だが…いや、いっそニンゲンどもの国は全部共倒れになっちまえばいいくらいに思って、ニンゲン同士の戦いに介入する気なんてなかったんだ。

おまえに再会するまで…

おまえの身をニンゲン…ベオクが助けてくれたと耳にするまで。

…いまや、セリノスの森は、おまえとリュシオンが蘇らせてくれた。ベグニオンの神使も、サギの民に正式に謝罪をした。そして、何より大切なおまえは、今、こうして俺の腕の中にいてくれる。

なら、俺が…もう、汚い商売に精を出す必要がどこにある?

一番欲しかったものは、もう、この腕の中にあるんだから…一番大切なものを俺は取り戻せたんだからな…。

「リアーネ、おまえがいれば、おまえが俺の傍にいてくれれば、俺は…かなり、まっとうな生き方ができそうな気がするぜ、カラスに似つかわしくないほどのな…」

リュシオンは驚き、ティバーンは怪しみ、ニアルチは涙を流して喜ぶかもしれない生き方がな…

こんな自分の心の動きをふふんと鼻で笑いながら…しかし、どうにも気分がいい…ネサラは、リアーネの温もりを己の肌に染み入らせるようにして、リアーネのことを抱きしめ、目を閉じた。

途端に心地よい睡魔に襲われる。うつらうつらとする意識の中、ネサラは、リアーネの歌う、再生の歌を耳にしたような気がした。

俺の心もまた、おまえの歌で縛めを解き放たれ、この漆黒の翼は、自由に空を舞うんだ…おまえと、おまえの産む子供達とともに…。そんな幸福な思いに満たされて、ネサラは眠りについた。

FIN


 カラスの王様と白鷺のお姫様の20年越しの愛の物語はお楽しみいただけたでしょうか。
 こちらは青空給仕様の「骨董甲子園」で青空さんがお描きになっていたネサラとリアーネのラブラブな連作イラストを元に、由貴がSSを付けさせていただいたものです。
 元々は、青空さんがネサラとリアーネの愛の成就の過程を、アンケート結果に従ってイラストで連作するという青空さんお1人の企画だったのですが、青空さんが2枚のイラストを上梓された後、SSがついたらステキかも…みたいなやり取りがサイト上で出たことがありまして、それを見た由貴が「私でよければ、お話をつけさせてもらってもいいですか?」と名乗りをあげたという図々しい経緯で、このコラボレーションが誕生しました。
 この次点でイラストが既に2枚(キス編と愛撫編)完成していましたので、前半は青空さんのこのイラストのイメージにあわせ、青空さんが二人にしゃべらせていた台詞もそのまま頂戴してお話を進め、アンケート結果に従い、二人の初Hは対面座位で…という流れで私がお話を完成させ、それを見てもらってから、青空さんに後半2枚の挿絵を描いていただきました。 
 いつものコラボより、更にシンクロ率の高いコラボにしていただけて、私はとても幸せだったのですが、私が、SSを書きますと宣言したものですから、ネサラ×リアーネの愛のイラスト企画のアップは、SSの完成を待ってから…と青空さんが、更新の順序を変えて、私のSSの完成を待ってくださって連載企画を進めてくださり、大変お気遣いいただきました。おかげさまで、書いたお話は気にいっていただけたみたいだったので安堵いたしました(笑)
 で、私自身はせっかく蒼炎SSを書かせてもらえるのだから…と思い、自分なりの作品やキャラ解釈をこめてみました。
 一応、未プレイの方にもある程度の背景はわかるように書いたつもりですが、リアーネたち白鷺の一族は、20年前にある陰謀で濡れ衣を着せられて人間たち(この世界ではベオクと呼ばれています。ニンゲンと言う場合は蔑称です)に虐殺され、住んでいた森は火を放たれほぼ壊滅してしまっています。リアーネはその際、姉姫たちにより眠りの呪い歌を聞かされ、20年間、瀕死の森に匿われ守られ眠っていました(また、リアーネが20年ぶりに覚醒したのは、鷺の生き残り、兄・リュシオンがネサラに連れられ故郷の森を訪れ森の木に呼びかけたため、森がその声に呼応して、リアーネを目覚めさせたのではないかと、私は想像しています)ために、リアーネは肉体的には大人に成長していますが、精神的に幼い部分がかなり残ってます。
 ですが、ゲーム中でリアーネは、邪法で姿を変えられていた竜の真の姿を見抜いたり、20年ぶりの再会、しかもリアーネを救いだすため変装してたネサラのことが一目でわかったりと、物事の本質を直感的に正しく捉えることのできる聡明さを感じましたので、、物語上でも、素直で一途で健気、そして聡明な女の子にしてみました。
 また、ゲームでは守銭奴で幼馴染の鷺王子を人間に売り渡そうとしたりもしたカラス王ネサラですが、それもすべては自国キルヴァスを大国にしたいがためらしく、しかし、キルヴァスがトラキア(聖戦)ほど困窮してる…という設定は見当たらなかったので、彼が守銭奴なのは、多分、国力をつけて、鷺たちの弔い合戦をするためだったのではないか…なんて、かなりの拡大解釈?をしてみました。
 でも、そんな理屈はさておいて(笑)ネサラはリアーネを心から大切に愛しく思い慈しみたく思ってること、リアーネはどこまでも真っ直ぐ一途な気持ちで健気に、そして、情熱的にネサラが大好きなことを感じていただけたらと思ってます。
 そして、当サイトでは、私がおねだりして事後のラブラブいちゃいちゃな2人のイラストを青空さんからお借受いたしました。
 ネサラのリアーネを見つめる瞳の優しさに、リアーネのおなかに添えられた大きな掌の頼りがいに、もう、うっとりですよー。また、ネサラに慈しまれるリアーネの満面の笑みは、心からネサラが大好きで幸福なことが伺えて、見ていて本当に幸せな気持ちになれますねー。こんなにステキな二人を見せてもらえて、私も本当に幸せものです。
 もちろん青空さんが計4枚上梓してくださったネサラ×リアーネのイラストは、どれを見ても、ラブ&スイートの真骨頂ですー!ネサラはとことんリアーネに優しくラブく、リアーネはかわいらしさの極致です。どれを見ても、床をのたくりまわしたくなること請け合いです。ぜひぜひ、青空さんのサイトで、二人のラブ絵を4枚ともご覧になっていただきたい…ところなのですが、残念ながら、骨董甲子園は2010年1月に閉鎖されたようです、青空さんのイラストはこちらでのみご観賞くださいね


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